藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

続・運鍼時の考察 ※鍵コメさんからのご質問より


3日の夜に中途半端な体勢でくしゃみをしたら、右の腰に激痛が走り動けなくなりました。
その後、寝返りをうつにも難儀しました。翌日の4日は仕事が休みで安静にしてました。
5日は仕事に行き、動き回っていたらまた激痛が走り、歩くのにも時間がかかりました。
そのうち、右足が痛くなり、足首も痛くなり、ついには両脚の膝が痛み出しました。
今は腰にしか痛みはありません。次の日の6日は朝なかなかベッドから出れず、
這って歩いてトイレに行き、顔を洗うにもかがむことができず苦労しました。
起きてすぐは両脚が熱をもっていた様で熱かったです。
また出勤する際にかなり歩くのですが、いつもより時間が掛かります。


理論移植に伴い、一つ掲げた課題です。
発症日から3~4日経ってからのご相談です。
発症直後に適切な処置を行っていれば、下肢痛は現われなかったでしょう。
 
しかし、寝返りを打つ必要性のある就寝姿勢や、5日の日の受傷状態によっては
過負荷動作をした挙句、激痛となり、下肢症状へと発展しました。
その後、足首や膝へ疼痛を自覚されるのも、全ては彼女の生活や仕事時の
動きによる連関から推測されます。
 
症状発症の箇所や併発箇所、併発の度合いに関しては、
生活姿勢や生活態度、仕事内容、筋肉量、既往歴等々により異なってくる為に
全ての患者が同じ症状を発生させていくとは限りませんし、
ダブルブラインド等の試験がし難い鍼灸治療に於いては
データの蓄積が非常に困難である事も、
明確な治療基準が構築されない要因とも考えられます。
 
しかしながら、それはあくまで既存医学で患者の身体を診た場合に
起こりうる弊害であり、異なる学問から患者の身体を診た場合、
単純明快に答えを引き出す事ができ、受傷後から併発していく腰痛、
下肢痛の痛みも推察出来るようになります。
 
では、ここからが本題なのですが、
彼女が3日と4日の日に受療された場合、術者はどこに刺鍼をするでしょうか。
3日と4日の段階で受療された場合は、患者は右腰に激痛があると言ってます。
このような場合、右腰に鍼を刺しますでしょうか。
彼女が5日の日に受療された場合、右足と両側の膝部に鍼を刺しますでしょうか。
腰は痛くなくなったという彼女が6日の日に受療された場合は何処に鍼を刺しますでしょうか。
 
彼女はたまたま受傷から数日経っても改善が見られないから相談をされた為、
受傷からの時系列を結果論的に述べてはくれていますが、
受傷日と受療日によっては、彼女の発する症状の内容というのは変化していますね。
彼女は受傷後から症状変化に追いかけられている状態です。
 
術者も追いかけられている症状に対して追いかけるのであれば、改善は得られません。
年齢的にも若く、痛いながらも動けるような状態であれば、
後1週間もすれば痛みをほとんど忘れて生活出来るようになる症例です。
改善の理由は自然治癒であるのにも関わらず、術者が適当な治療で期間を引き伸ばし、
時間という薬で自然治癒に至っている症例に対して「鍼で治したんだ」とは言えないですね。


原発や刺鍼箇所の選定に関しては各々違うでしょうし、本当の答えというのは無いものと考えています。
全ては仮説に基づいた治療法であるのですが、何にせよ、逸早く患者の希望ラインまで
改善せしめる治効理論こそが正解であると考えています。


親亀こければ小亀もこける症状はゴロゴロ転がっています。
常に小亀ばっかりに鍼を打っていても、親亀が元気な限りは小亀に餌を与えます。
餌を与えられた小亀は叉元気に動き回りますし、新しい小亀を産むでしょう。
そうならないように、治療時に於いては原発の選定を最重要視して私は治療しています。
 
因みになのですが、
彼女の症例は右腰にも膝にも足首にも私は鍼を刺す事はありません。
このような受傷時から発症した併発症状の箇所に対して鍼を打っても無駄です。
何故、時間経過によって併発していったかを考察し、刺鍼箇所を選定する事だけを考えています。
そこには筋肉という概念が一切無い為に、話はどうしてもすれ違う事になります。
 
コメント欄にも記述致した内容ともなりますが、
私の理論は1行で終わる程度の簡単なものです。大小長短の鍼を自由に打てる医師や鍼師であれば
コピー治療も容易に出来るでしょう。但し、理論の裏づけが相当膨大な為、患者側の
治療毎の症状変化に対応出来るような裏づけを熟知していなければ、
理論に振り回されて終わる結果ともなります。
過去に知り合いの鍼灸師に伝えて実践してもらったら、思い切り理論にぶん回されてました(苦笑)
 
鍼灸治療は患者の最深部まで容易に到達させられ、器質的変性を加えられる脅威的な道具です。
そこに理論がなければ事故は起こるし、理論の上っ面だけ知った状態での刺鍼でも事故は起こります。
乗りこなせないバイクに跨り、患者を後ろに乗せて走らせるような状態です。
次のコーナーの曲がり方を事前に熟知していなければ、ラインは外すし、他の車両とクロスして
事故を起こすかもしれません。コースアウトしたりガードレールに衝突するかもしれません。
そして一番知っておかなければならない事は、バイクはブレーキを踏めば倒れる存在です。
術者と二人三脚で治癒過程に走り始めたら、術者は治療外に於いても患者を制御しなければならなくなります。
その責任を放棄した時には共倒れです。そんな事になるのだったら、初めから治療しないほうが良いのです。
その為に、ブログではあまり書かないようにしています。ご理解の程を。
 
コメント欄にも書きましたが、筋肉に対してのアプローチ法で考察していると限界が訪れます。
私は過去に書いてきたブログに関しても、「ここの筋肉が悪いからここの筋肉に鍼を刺すのです」
という各論的な見方で話を展開した事は一切無かったと思います。(あったらゴメンなさい)
 
私の内容は「治療」以前の問題を只ヒタヒタと書いているだけで、
話の中に出てくる筋肉が連関で負荷が掛かったり、制御不能に陥った結果、疼痛を発症したり、
モーメント云々の話はしても、そこに鍼を打つという観点とは違います。
健康な筋線維、非外傷性ながらも疼痛として自覚している筋線維、外傷により疼痛として自覚している筋線維、
様々な状態があるかもしれませんが、疼痛の有無を自覚させるのは何か、常に制御しているのは
何かを軸にして、刺鍼箇所を選定し、鍼を打ち込んでいます。
 
聞けば「なーんだ」的な簡単な内容です。
しかし、理論を用いる事で患者の治癒過程も他の治癒過程とは良くも悪くも大きく異なってきます。
そこを制御出来る術も併せて知らなければ、患者は不安に陥るだけでしょう。


治効理論を考えれば考える程、
鍼というのは驚異的な力を持っている(持たせる)事が出来るんだなと日々感じています。
何かの縁でお会いする事もあるでしょう。その時は全力で治療致します。
 
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 青森から鍼灸治療の意識改革を~