藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

神経根ブロック及び神経根近位ブロック(コンパートメントブロック)の注入圧に伴う神経損傷及び症状惹起時間の考察


神経根ブロック及び神経根近位ブロック(コンパートメントブロック)の注入圧に伴う神経損傷及び症状惹起時間の考察をします。治療由来のリバウンドと同様にタイムラグが生じるものですが、神経機能の賦活化に伴う一過性の痺れや疼痛感、筋弛緩時の容積変化に伴う筋肉痛様症状のような症状とも異なり、注入圧に伴う神経損傷、神経障害は特異的な症状を呈するものです。
最早関係ない人にはどうでも良い内容ですが、知っておいて損はない内容です。例えば神経根ブロックとなれば仰々しく透視し造影剤を入れたりしながら神経根実質に注射針を直撃させて麻酔を注入させます。鎮痛作用は極めて高く、術前に於ける神経損傷高位の同定にも用いられます。
取り敢えず、効果自覚の有無は別として(この話を始めると薬効時間の1~2時間しか効かないという話で溢れる為)、注入圧に伴う神経損傷からの神経損傷に伴う症状自覚のタイムラグが気になるところ。実にこれが幅がある。※あくまで以下の刺入部位は患者からヒアリングしたものであり、正確なものではありません

age 65 sex f
右上肢外側~橈骨茎状突起程度まで広範な牽引痛が起床時から伴い整形を受診。X-rayでC6/7に僅かに狭小化が認められた為に、頚椎症性神経根症と告げられ、透視等々は行わずブラインドでc6神経根近辺にブロック注射を行った。施行直後は症状が無痛となるも、約3時間後より以前よりも強い痛みが上腕外側及び前腕全般に伴う他、痺れが生じる
point 受療前⇒上肢外側から橈骨茎状突起までの牽引痛 受療後⇒上腕外側、前腕全般に疼痛及び痺れ 

age 80 sex f
両大腿外側に歩行も出来ない程の痛みが生じた為、整形を受診。患者本人は受診先の病院で入院を依頼する程の激痛が生じていた中、手術等の対象でも無いと言う事でリリカ、ロキソニンムコスタを処方。他、詳しくは施行した医者しか分からないので患者からの情報を元に推測でしかないが、両下位腰部に注射を刺入し、下肢に電撃痛の走るブロックを外来で処置(恐らくL4かL5)。約4回前後の受診で両大腿外側の疼痛は軽減したが、その2日後に両下腿全般及び足底に渡り強い絞扼感と痺れ、皮膚感覚鈍麻が生じる
point 受療前⇒両大腿外側の激痛 受療後⇒両下腿全般及び足底に渡り強い絞扼感と痺れ、皮膚感覚鈍麻

age 80 sex f
右下腿外側に牽引されるような疼痛を3ヶ月に渡り伴い、整形にて右L5に神経根ブロックを施行後、約3日後に同下腿全般に極めて激しい疼痛と痺れが生じ歩行不能状態に陥る
point 受療前⇒右下腿外側の牽引痛 受療後⇒右下腿全般に激しい疼痛と痺れ

~考察~
神経根ブロックは神経実質に対してアプローチを行う事を前提としている為、基本的に神経損傷は避けられない為、鎮痛効果は極めて高いが回数制限等も設けられているリスキーな治療手段ではあるものの、全施行の神経根ブロックが実質そのものに対してアプローチが出来ているかと言えば、幾ら造影剤や透視を用いたとしても、患者が「ビリビリきた」と訴える事を前提として施行する事には変わらないし、神経根近位へのコンパートメントブロックだとしても、ブラインドで行う以上、神経損傷が伴う事もあれば、伴わない事もある。では、神経実質にアプローチが行われず、コンパートメントブロックだとしても注入圧に伴う神経損傷と言うのも散見され、その多くは注入する時のピストンを押すスピードが速過ぎたり、患者自身が抱える神経そのものの脆弱性もあるかもしれない。
恐らく上記症例から考察するに、注入圧に伴い神経根部に炎症が起こり、容積変化が生じた事によって椎間孔部でのインピンジメントが容易に発生するようになったと推測するのが自然である。インピンジメントに伴う脊椎高位に応じた末梢(四肢遠位)への疼痛他、神経自体の萎縮や癒着等に伴う痺れ等々も併発したものと推測される。
ブロックに伴うの神経損傷の度合いや、炎症から容積変化(浮腫)、患者が保持する脊椎の状態等々によっても左右される為、時間差が生まれると思われる。これらの症状に対しては治療を行っていければ何れ消失するものではあるが、患者にとってはブロック注射からのタイムラグが生じて発生する現象である為、不気味なものである。
しかし、このようなタイムラグで生じる症状は結構少なくない。今件のブロック事例は置いといて、身近な症例で考えれば合点が付くもの。例えば、捻挫したては痛くないけど翌日から痛い。ギックリ腰したては痛くないけど翌日から痛いと言う話はよく聞く話である。受傷初期は患部の炎症も乏しいが経時変化で炎症は増大していく為、強い痛みを自覚するにはタイムラグが生じるのと同じ事である。

船橋の整形で狭窄症に前方固定の新しい術式に伴い、大腸に傷を付けて死亡したと言うニュースがありましたが、治療には必ずリスクが付きまといます。リスク低減に向けての取り組みは誰しも努めているとは思いますが、ヒューマンエラーは避けられない問題。その為、事故が時として起きるのは理解出来ますが、それよりも問題なのは狭窄症の50代女性に対して固定術を行った事です。この先も活動量の多い年代の患者に対して固定術を行うと後が恐いんですよね。上下の脊椎高位の脆弱性が高率になる為、直後は良いけど経年で悪化していく方々が後を絶たない。
ジーパンの穴を直したら周りが裂けていく感覚。その為、新しい術式がどうこうという事よりも、固定術自体に何れ位の価値があるのかを先ずは考えなければならないのかもしれない。
>>除圧術のみを行った場合と、固定術を追加した場合の2年後と5年後の転帰を比較する無作為化試験Swedish Spinal Stenosis Study(SSSS)を行い、これらの治療の有効性には差はないこと、固定術を追加すると、出血量が増え、入院期間が長引いて、費用も高額になることを報告にした。NEJM誌2016年4月14日号 スウェーデンUppsala大学のPeter Forsth氏ら

【電話】 0173-74-9045 又は 050-1088-2488
                             (携帯 090-3983-1921 Cメール可)
【診療時間】 7:00~21:00 時間外対応可
【休診日】 なし 土・日・祝祭日も診療しています
【PCメール 
fujiwaranohari@tbz.t-com.ne.jp お返事には数日要する場合も御座います

  ~針治療から病態定義の見直しを~