藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

家に帰るまでが遠足です

地球に重力が働いている以上、人間は立位、座位、就寝時の姿勢に至るまで
様々な負荷が身体の各箇所に掛かっているものと考える事が出来ます。
 
先のブログでも記載したフラットバックやスウェイバック等の姿勢症候群やヤンダの交差症候群、
防御反応や疼痛抑制姿勢に至るまで、各部位の脆弱化に伴う姿勢変化は更に重力に抗する事の
出来ない状況を生み出し、早期に適切な処置を取らない以上、
負のスパイラルを招かざるをえない状況に陥ってしまう事は明らかなのです。
 
フェルデンクライスの言葉を借りると「負の情動は屈曲に現れる」となり、
人間は自身の身を守る為の防御反応は屈筋群を短縮させ、この屈筋群の短縮が持続的に
継続された結果、頭部から足部まで様々な機関で代償作用が働き、
関節間の異常に伴う全身の筋肉群の持続的伸張、持続的短縮、
これに伴う血流障害の発生による当該関節間に於ける筋のスパズムや硬結の発生、
自律神経系の異常等々が症状として自覚されるようになってくるのでしょう。
 
では、患者の症状に対してどこまで的を絞るか、どこを原因と捉えるかに関しては、
受傷時期や歩行の状況等も含め様々なテスト法で判別する事になるのでしょう。
但し、鍼灸治療を望まれる多くの患者は、昨日今日痛めたケースは極稀で、
数年~数十年と疼痛に耐え続けてきた結果、拗れている状態である事が非常に多いのです。
 
逆算したアプローチと併行し、原因の箇所の暴走を止める事により、
症状の再発やぶり返しを防止しつつ疼痛の軽減を目指していく事にはなるのですが、
 
治療直後に膝の屈曲制限や腰の伸展制限の解除がなされた場合でも時間の経過に伴い症状が戻る。
 
これは無効治療でしかないと考えていますが、
炎症作用を軸に鍼治療を捉えた場合、炎症期~治癒期まで日数が掛かる為に、
しかとアプローチ出来ていれば、日数の経過に伴い改善はされつつ推移していくのが一般的だと考えています。
では、仮にこの一般的な条件が揃っている上で上記の赤字の状況になってしまう原因は何故でしょうか。
 
治療直後~翌日~翌々日と日数の経過にて、筋弛緩作用が働き各当該関節の適正化が進み
ROMや可動痛、荷重時痛の軽減が始まりだした段階では、
患者サイドの自助努力が治癒までの道程を加速させるものと考えています。
例えば、それは積極的な休養や運動であったり、
日常生活や仕事上で癖となっている動作の改善、姿勢の改善等、多岐に渡ります。
 
例としてレ線で器質的異常が見られず、右肩関節周囲炎と整形外科で診断名を貰い、
鍼灸治療なりを受療された場合。治療家はどこまで患者に対して治療と言えるのかを考えると、
患者の日常的な生活動作も把握しない限り、治癒までの時間は圧倒的に掛かってきます。
 
1)仕事はデスクワークでPCや書類作業が主
2)家では床で胡坐をかきTVを見ている
3)就寝時は右を下にして横臥位になっている
 
等の背景を全て変えていく事が治療以上に重要な要素ともなってきます。
 
 1)仕事はデスクワークでPCや書類作業が主
>>椅子の高さ・硬さ・足の置き方、PCの位置、視線の角度等々
 
2)家では床で胡坐をかきTVを見ている
>>胡坐の際の圧迫位置により腰下肢への血流障害は考えられないか、
  胡坐により円背となり肩背部への影響や前頚部の筋群の圧迫による上肢への血流障害はないか等々
 
3)就寝時は右を下にして横臥位になっている
>>患側圧迫による長時間の静的姿勢により、より一層の血行障害が見られていないか。
 そもそも横臥位に寝ているのには他に原因があるのではないか等々
 
が考えられてきます。
治療によりROM制限と疼痛が解除された場合でも、別な原因を除去していなかったり、
今まで通りの生活を行う以上、良化の保証がし難い状況ともなってしまいます。
 
患者指導を行っても、患者が実践しない限り術者の責任である為、
術者側のスキルアップが求められるポイントは多くあります。
 
症状の改善というのは、人生の改善だとも思います。
良薬は口にも耳にも苦いものですが、
一度でも改善していると実感を得られたら世の中が楽しく見えるものです。
大変かもしれませんが完治の為にもお互い頑張っていきましょう。
 
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 青森から鍼灸治療の意識改革を~