藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

【仮説】姿勢症候群と疼痛抑制姿勢から考察する治療の軸決め【改めて】

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上記の姿勢は(骨格と表現をする方もいるでしょうけど)、姿勢制御筋のオーバーユース等により、
対立する拮抗筋が弱まった結果、姿勢に現われている状態と捉えられます。
硬くなっている箇所や弱くなっている箇所を見抜く為の一つの目安となります。
 
例えば、Dのスウェイバックの場合、
・頭部中立姿勢であり、前傾骨盤の為、長期に渡りDの姿勢が維持された場合、
膝の腱、内腹斜筋、背中下部の脊柱起立筋、同側の大腿筋膜張筋(骨盤外側の歪みがある場合)が硬くなり、
股関節屈筋群、外腹斜筋、僧帽筋(中部、下部)、深頚部屈筋、同側の中臀筋(骨盤外側の歪みがある場合)が脆弱性を持つような理屈になります。                           
 
 
次に上位交差姿勢と下位交差姿勢を見てみます。ご存知の通りヤンダの交差症候群とも言いますね。
                                                  
 
 
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上位交差姿勢の
姿勢所見として、
肩は丸みを帯び、前傾した頭部、C0~C1の過度の伸張、
肩の隆起、翼状肩甲が見られ、
 
機能障害として、
胸筋が短い、後弯した上胸椎、後頭下が短く、
僧帽筋上部、肩甲挙筋が短い、僧帽筋(中・下部)と
前鋸筋が弱い状態と捉えられますね。
 
 
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下位交差姿勢の
姿勢所見として、
腰部の過度な前弯、前傾骨盤、突き出している腹部、
足が外向き、
胸腰椎移動部の肥大等が見られ、
 
機能障害として、
脊柱起立筋が短い、大臀筋が弱い、腹筋が弱い、
梨状筋が短い、腰仙結合部が過度に動きやすい、                                                          大腿筋膜張筋が短い
                                                 状態と捉えられます。
 
上記の各種姿勢による筋状態は全て日常生活の不良動作から派生し、
姿勢制御筋や主動筋群等の表面上にある筋肉を主体に、症状や愁訴を呈していく事になるとは思うのですが、
来院患者の大多数は、これらの姿勢状態に加え、防御反応を示す姿勢や疼痛抑制姿勢が絡んできます。
 
その為、治療を行う立場の人間としては
上記の図付きで示した各種姿勢の他に、
痛みや痺れの結果、ならざるを得ない姿勢も併せて治療を行う必要性が出てきます。
 
以前のブログの何処かにも記述したと思いますが、
痛みの箇所と原因の箇所は異なり、治療を行う上では原因の箇所を主体に今現在呈している症状及び状況を
逆算しつつ治療を行っていく事により、患者負担の軽減と共に、症状の再発を予防していけるようになると
考えています。
 
先日公表した治療レポートにもある通り、私は先の治療の際に
坐骨神経様疼痛の「痺れ」と、左腰臀部の過度伸張から発生した大腿筋群の「引き攣れ」を混同してしまった事により、治癒までの道程を遅らせてしまった経緯があります。
恐らく、3~4日分の無用な「引き攣れ」を患者様に出し続けてしまいました。
 
問診~治療時に関し、患者様の仰る僅かな言葉の表現方法や疼痛抑制姿勢の見落とし、見誤りにより、
治療結果に大きな差が生まれてくる事に、大変反省をしている次第であり、
失敗は無きように励んでいきたいと考えております。
 
鍼灸治療はあくまで患者の体内に鍼を刺し入れ、様々な反応を起こし治癒へと結びつける道程がある為、
場合によっては治療直後には結果は見えなくとも、翌日~1週間後程度に掛け自覚頂けるケースもあります。
しかしながら、患者不安を取り除く為には
 
・今すぐ分かる結果     ・後日分かる結果     ・治療による副作用
 
等はお話し、納得して頂かなければ少ない治療回数で終われない
重症患者等へは段階を追って治療を行えないのも現実としてあります。
 
話は反れてしまいましたが、今回は上記の各種姿勢に囚われずに患者を診る見方について
改めて考えていこうと思います。
 
では、例によって一つ症例をあげます。
 
腰痛悪化で憂鬱な日々です。
腰痛とは30年程のお付き合いで仲良くやってきたのですが、今回はなかなか良くなりません。
整形外科の診断では
腰椎4、5の分離、すべり症があり、L5~S1の椎間板が磨り減って殆どなくなっています。
MRIでは狭窄部があるがそこから下はまた広がっているので、様子見て良いでしょう。
とのことでした。
今の痛みは、朝起きるのが一苦労、しばらくはすり足ロボット歩き、毎朝痛みとの戦いです。
徐々に良くなり日中はコルセットをしたり、調子の良いときは外しています。
痛み止めは、殆ど飲まないようにしていますがロキソニンテルネリンを常備しています。
効果についてはあるような、ないような・・・また、日中横になると痛くて起き上がるのが一苦労、朝より悪いです。腰上げも出来なくなってしまい、脊椎の不安定な感じがあります。
また、自転車やバイクに乗っていると坐骨が痛くなり安いです。
先生のサイトから、また、日常生活のストレスを考えると臀部~腰部~ソケイ部~大腿の痛みは筋筋膜痛症候群だろうと考えていますが、脊椎の不安定な感じと、坐骨が磨り減っている為痛いのか?この先、痛みとの戦いは何時まで続くのか不安です。
先生にアドバイス、ご意見をいただければ少しは楽に慣れるかもしれないとメールしました。
宜しくお願い致します。

極々ありふれた症例ですね。
では上記のメールより、患者の症状を見ていきましょう。
 
>>腰痛悪化で憂鬱な日々です。
腰痛とは30年程のお付き合いで仲良くやってきたのですが、今回はなかなか良くなりません。
 
30年来の腰痛を抱えている位ですから気が滅入るのも仕方ありません。
悪化と良化の天秤は僅かずつではあったかもしれませんが、適切な処置が施されていない以上、
悪化の受け皿に重荷が掛かっているのは当たり前の事です。
 
>>整形外科の診断では
・腰椎4、5の分離、すべり症があり、L5~S1の椎間板が磨り減って殆どなくなっています。MRIでは狭窄部があるがそこから下はまた広がっているので、様子見て良いでしょう。
 
画像検査日が分離症やすべり症の発症日でもなく、L5~S1の椎間板の磨り減りも今日に始まった事ではありません。過去から現在に至るまでの仕事振りや生活態度、スポーツ等々に於ける患者の背景を画像所見から
知る事が出来ます。椎間板の磨り減る角度等々だけでもダメージを受けている筋群の
目星は付けられるでしょうけど、この先の問診にて更に確証を高めていかなければなりません。
 
>>今の痛みは、朝起きるのが一苦労、しばらくはすり足ロボット歩き、毎朝痛みとの戦いです。徐々に良くなり日中はコルセットをしたり、調子の良いときは外しています。
 
起床時間もない痛みの原因は先のブログでも記した通り、梨状筋の短縮による下肢の鬱血障害によるものですね。しばらくはすり足歩きを続け、日中に良くなるのは梨状筋の圧迫を避ける生活時間帯になると共に、
痛いながらも歩行による下肢の静脈のポンプ作用が兼ね合せられた事により軽減されてくるものです。
その為、起床時とは全く異なり、コルセットを外して生活が出来るまで回復する事も可能になります。
 
>>日中横になると痛くて起き上がるのが一苦労、朝より悪いです。腰上げも出来なくなってしまい、脊椎の不安定な感じがあります。

 
就寝時や昼寝、他、休憩時の寝方にも左右されてくると思いますが、運動量の多い日中を過ごし
疲労を抱えたまま休憩を取られると、痛みの為の代償を行っている筋群も満足な回復を得られない為に
より一層の増悪感を自覚するようになります。
 
>>また、自転車やバイクに乗っていると坐骨が痛くなり安いです。
 
座面の硬さや高さ、腰の前屈の角度によっては、臀部一点へ体重が集中する結果となります。
 
では、次に写真を見てみましょう。
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本人は真っ直ぐ向いているつもりでも左に傾いていますね。
先天的な側湾症でない限り、臀腰部の筋群の強い短縮は骨の位置を簡単に動かしてしまいます。
 
ここから問題なのは、
前後左右、どこから着手していくかで治療結果と予後が大いに変わってきます。
 
ここで、平成24年6月15日に記述した当ブログの
「【仮説】中枢感作への筋別簡略的アプローチ方法」を改めて見ます。
 
例えば、菱形筋が異常収縮、異常緊張していたと仮定する。
 
菱形筋が、異常収縮や緊張を伴う場合、他の後頚筋群や前胸筋群も多岐に渡りアプローチしなければならない事、他、心理的な面等々の部分は全て除外し、あくまで菱形筋という筋肉に焦点を絞り一つの提案を行いたいと思う。
 
当院に於いては、TPや硬結を一つの指標として刺鍼のポイントを絞る事になるのだが、
基本的にはどの筋群に関しても、軽く伸ばした筋肉の状態を作り刺鍼を行っている。
 
            ①強短縮⇒②軽短縮⇒③通常⇒④軽伸張⇒⑤強伸張
 
上記の5つの状態の内、④の状態を作りつつ治療を行うのが、
TPや硬結の確保、患者の安定感を得られ易い為採用している。
 
ここでご覧になられている方に間違えてもらいたくない事は、患者にとっての軽伸張というのは、
術者にとっての解剖学的軽度伸張位では無い事である。
 
その為、菱形筋を軽伸張にしたいからと云い、ベッドの端から腕をダランと伸ばして行う事は、解剖学的には
軽伸張となるかもしれないが、患者にとっては軽伸張とならない事も多々あるということである。
 
あくまで、患者にとっての軽伸張とは何かを念頭に於いて治療を進行していかねばならない。
 
では、今回の仮説に入りたいと思うのだが、来院時に患者が菱形筋の異常収縮、仮に①の状態としよう。
この場合、治療終了時に③にしなければならないのだが、
 
症状にもよるが、前述した通り、
患者が①の場合、腕をベッドから下ろしても②になる。
患者が②の場合、腕をベッドから下ろしたら③になる。
患者が③の場合、腕をベッドから下ろしたら④になる。
患者が④の場合、腕をベッドから下ろしたら⑤になる。
 
このように、患者の症状や状態により、我々の解剖学的な軽度伸張位を狂わせてくる場合が多くみられる。
一度、この考えを基に治療を行ったと仮定しよう。
 
その際に、今度は表層と深層の筋のバランスの崩れが出てくる。
要は、表層筋となる僧帽筋や菱形筋が軽度伸張位になったとしても深層筋との兼ね合いがずれてくる事になる。
 
表層の筋を僧帽筋や菱形筋とし、その奥にある筋群を深層筋と仮定した場合、
臨床の場面では僧帽筋や菱形筋は持続的に短縮傾向である場合が多々としてある。
 
しかし、深層筋群は更に短縮である場合がある。
 
このような場合、①~⑤の図式を菱形筋という部分のみにスポットを当てた場合、
表層筋群に対しては、過剰な刺激、無用な刺激となってしまう可能性も十二分に考えられてしまう。
 
上記の考えはあくまで筋別として患者の身体を捉えた場合となるのですが、
この理論を患者の全身に投射して考察する事で一つの答えは見えてくるのではないかと思います。
 
上記の相談内容と画像所見から見えてくる身体状況により、
①強短縮⇒②軽短縮⇒③通常⇒④軽伸張⇒⑤強伸張
この5つの状態が患者の身体の各箇所に見えてきますね。
この事により、治療箇所、治療順序を決めていきます。
 
結果から書けば、①から⑤の順序を追うだけです。
しかし、この「だけ」を実らせる為に一生掛かるかもしれません。
短縮という文字を、弛緩と捉えてみても良いと思います。
  
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症状によっては、このような落ち穂拾いの姿勢「しか」出来ない患者も存在します。
来院された際、術者の指導した治療ベッドへの寝かせ方一つで起き上がれなくなる場合もあります。
 
心していかねばですね。

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