藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

事前告知と症状改善後のフォローの重要性

一時的な症状の為に術者側からしたら軽視されがちな事かもしれませんが、
患者サイドから見た場合、非常に重要な事と思われる為、記載致します。
 
例として、長年、右臀部から右足部までの痛み
(一般的には梨状筋症候群や坐骨神経痛と診断されるでしょう。
 画像所見次第で脊柱管狭窄症だったり椎間板ヘルニアだったり等々)
を抱えており、痛む箇所を逃がすようにし、上半身が左に傾いている状態も長期間に渡り発生していた
場合、歩行時に使用される筋肉の箇所や筋肉量等々は、健常時に比べると大きく変化して参ります。
 
下記は、健常時に於ける歩行の際に使用される筋群です。

歩行周期からみた筋活動・・・立脚期と遊脚期に分けて考えましょう。
・全歩行周期を通して活動する筋:脊柱起立筋群、前脛骨筋
・立脚期前半に活動する筋:大殿筋、中殿筋、大腿四頭筋ハムストリングス
                 前脛骨筋などの足関節背屈筋群
・立脚期後半に活動する筋:腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋、長母指屈筋、腓骨筋群など
・遊脚期前半に活動する筋:腸腰筋、股内転筋群など
・遊脚期後半に活動する筋:大腿四頭筋ハムストリングスなど

機能面からみた筋活動・・・安定性、加速性、減速性と分けて考えましょう。
・股関節外転筋群:立脚初期に骨盤の安定性に関与
・股関節内転筋群:立脚初期に外転筋と共同して骨盤の安定性に関与
・股関節伸展筋群:遊脚後期の減速に関与 立脚初期における骨盤の下降の予防に関与
大腿四頭筋:立脚初期の踵接地から立脚中期の膝折れの予防に関与
ハムストリングス:遊脚期全般にわたり足関節背屈位の保持に関与
            踵接地時における足関節の固定に関与
・下腿三頭筋:立脚期全般であるが、立脚後期における蹴り出しに関与
・脊柱起立筋:歩行周期全般にわたり活動し、体幹の前屈に関与

 
歩行の際に使用される大まかな筋群になりますが、
治療に伴い疼痛が軽減されると、逃避性歩行も次第に無くなります。
 
この逃避性歩行が軽減されるに従い、上記の赤字で記した筋群の使用量や使用箇所が
大きく変化してきます。この事により、患者の身体に起こる症状として「筋肉痛」がおきます。
所謂、大した事の無い症状かもしれませんが、症状改善以後、日常生活を続けていた数日後に
現われる可能性が高まる為に、治療にて悪化したのではないかと心配される方もいます。
 
筋肉痛は様々な見解がありますが、以下のものを「筋肉痛」として仮定し、話を進めたいと思います。


遅発性筋痛 delayed onset muscle soreness: DOMS 
 
A)運動後数時間から1〜2日後に痛みが生じて、1週間程度で自然に消滅する筋肉痛。
 
B)不慣れで強い伸張性収縮運動 eccentric exercise contraction: ECCに伴って、しばしばDOMSを   生じる。ECCとは、筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する収縮。筋長が最大限に伸びた時に伸張  負荷が加わると、ECCが生じやすく、筋力低下、腫脹も顕著になる。
 
C)筋肉が短縮する動作のみの等尺性や短縮性収縮運動 concentric exercise contraction: CECで   はほとんど生じない。
 
D)下り坂走 downhill runningがDOMSを誘発することは知られている。
 
E)運動により筋線維にミクロの損傷ができ、それに伴い一連の炎症反応が起こることで痛みを感じる。  DOMSの本態は、筋と結合組織の損傷後の炎症反応に伴う現象。
 
F)痛覚受容器は、筋線維そのものにはなく、筋膜に存在する。
 筋線維の微細損傷の修復時にみられる炎症過程で発痛物質が発生し、
 これが筋膜を刺激して痛みが起こる。
 
G)伸張性収縮運動を行い、筋が損傷を受けると、筋線維の傷害を反映している
  クレアチンキナーゼ(CK)血中濃度で増加する。CKは運動後3、4日目にピークに達する。
  CKのピーク時点で、筋線維は壊死し、白血球の浸潤や腫脹などの炎症像が見られる。

 
では、冒頭の梨状筋症候群の患者の場合はどうなるでしょうか。
1)起床時が特に痛みが酷い為、布団から降りる前に、足を動かしてから歩行を開始する。
2)日中の活動時間帯は痛み等々が軽減される。
 
上記の2点の状況プラス、逃避性歩行を余儀なくされている患者へ治療を施し、
疼痛軽減に伴い逃避性歩行が解消されたとしたら、どのような経過が見られるでしょうか。
 
発症時期や度合い、年齢、体格、体重、筋肉量、生活環境、仕事等々でも大いに左右されて
くるとは思いますが、症状改善から逃避性歩行も無くなった1~2日後には
 
1)起床から初めの歩行に掛けて、症状軽減の為に足を動かしてからの歩行を始めても楽にならない。
2)日中の活動時間帯でも痛みが軽減されない
 
という、不安要素しか出てこない状況になる場合があります。
筋肉痛は微細ながらも筋損傷の為、動かしても楽になる事はありません。
これが1週間程度続くとどうなるでしょうか。結果的に筋肉痛が治まり、以前からの症状が
改善された場合であったとしても鍼灸治療に対しての不安しか出てきませんね。
 
イメージ 1
 
一番左の状態にて歩行をしていた患者が、治療を行い一番右の状態となり歩行をする事になった場合、歩行に使用される各筋肉の筋肉量が変化するのは想像に容易いと思います。
 
 
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このような僅かな差であっても床へ掛かる力や発生する筋力は大きく変化してきます。
 
楽になった後で突然襲い掛かる痛みは、例え筋肉疲労からくる筋肉痛であれど、
長年痛みに苦しんでいた患者にとっては状況把握するのが難しいでしょう。
気をつけていかねばですね。(自戒の念も込め)
 
 
 青森から鍼灸治療の意識改革を~