藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

鍼数

イメージ 1 1回の治療で使用する鍼の本数というのが、時折議論を呼びます。
 
 ネットや書籍から資料を引っ張り出してもつまらないので、私自身の臨床経験上での話になるのですが、効果を即座に実感してもらう場合は、少ない鍼で仕上げたほうが良い結果を生んでいるように感じます。1~2本の鍼という事ですね。
 
 生理学や解剖学的な話ではなく、あくまで主観的な自論になってしまうのですが、理由としては下記のようになります。
 
 簡単な例としては、膝OA患者が膝を酷使し過ぎた結果、内側の関節裂隙に圧痛を生じて来院。
 
 その際、圧痛点に1本だけ鍼を刺し入れる事により、局部の筋肉の短縮及び痙攣が解除され、即座に楽になったと喜んでくれる症例は非常に多い話かと思います。
 
 只、人間というのは、痛い時には痛いなりにも意外とバランスを取り生活をしていると思うのです。
上手い表現が見当たらないのですが、各部位事、(頭、頸、腕、腰、足等々)低空飛行なりにバランスを取って生きているという事です。身体のどこかの部位が膝の痛みをかばいながら生活を送ろうとしている訳です。
 
 そのような状況下で、膝に対してのみ、筋弛緩を目的とした鍼治療を取り入れた場合、各部位の低空飛行のバランスが崩れ、膝のみが低空飛行を脱出していきます。そうなると、他の低空飛行の部位が置いていかれ、身体のバランスは崩れてしまう状況に追いやられてしまうケースが非常に多くなります。その結果、膝の不調が改善されたと即座に実感してもらるのだと思います。
 
 局部的な治療というのは、良い意味でも悪い意味でも、結果的には全体のバランスを意図的に崩す事により、効果を出す手法であると私は捉えております。
 
 そして、局部含め、関連各所の低空飛行している部位の脱出を目的に全身に鍼を刺し入れていくと、今度は膝痛治療の効果が実感しにくいという状況が生まれるケースも出てしまいます。膝以外の部位も含め、低空飛行から全体をバランス良く脱出させると、膝の痛みに対しての鍼治療の効果を実感してもらいにくくなってしまうのです。実際には局部治療と同様に膝痛は良くなっているものの、治療者側と患者様側でのニーズがずれてしまうのですね。
 
 痛みというのは、どうしても客観的な評価がしにくいので、受け手側の評価に頼るしかないのですが、局部を含めた全身を治療するよりは、局部のみの治療のほうが、効果を実感してもらい易い為、患者様の評価が高くなってしまうというギャップが生じます。追跡していくと、治療自体の効果としては局部含めた全身治療を行ったほうが、効果も高く、予後も非常に良い状態が続いているのですが、「効いた」と思われるのは局部のみへの治療が圧倒的に多いのです。
 
 この辺りは治療者側としては非常に難しいところかと思うのです。
・悪いなりにも保ってる身体バランスを崩し、「効いた」と思わせる手法を取るか。
・全体のバランスを引き上げて除痛を目指すか。
 
 私は後者です。局部のみの治療に対して、偏見がある内容とはなってしまいましたが、当院ではギックリ腰等々の緊急時の対応以外は局部治療というのは一切行っていないのが上記の理由となります。
 
 柳谷素霊も残した「一本鍼」。全てを追試した訳ではないのですが、効果は高いです。
しかし、効果の高さの裏側には、上述の内容も含まれての結果かもしれないと考えると、再考察しなければならない課題は多く残されてきます。
 
 
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