藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

自律神経とは何ぞや


物事の何かを達成する為には目的や目標が有り、その目的や目標に準じた(沿った)手段が用いられる事で、初めて成し遂げられるものです。それは、治療と言う分野でも同様です。しかし、相手(患者)も又、私たちと同様の人間です。患者側にも患者自身が持つ疾患論や疾患に対しての治効理論を過去から現在に掛けて受療、若しくはセルフで取り入れてきた背景があり、その理屈が必ずしも術者とマッチングすると言う事は多くありません。
これは以下に述べる「自律神経」と言う概念のみならず、運動神経や知覚神経、それに伴う脊椎の構造的異常が波及する症状惹起のシステム、及び四肢遠位部で絞扼及び圧迫等が仮にも生じた際の症状の内容(質)の問題等、その患者背景及び患者の根底的思考が神経生理学に属するのか、薬理学に属するのか、麻酔科学に属するのか、整形外科学に属するのか、物理学に属するのか、解剖生理学に属するのか、又はそれ以外に属するかで、根底的思考が異なります。
当人にしか分からない症状に対して、外部からアレコレ言うのも私自身も含めて烏滸がましい話ではあるかもしれませんが、恐らく多くの方々は自身の症状から自然脱却(経時に伴う自然治癒)出来なくなった場合、第三者にコンサルトする生き物であり、その発信者側の内容とて、過去から現場での症例(他患者同症例及び類似症例)や、見聞内容等々があっての今でもありますし、各々異なるものである以上、それは見立てから治療手段まで全て異なるものかもしれません。
故に、仮に結果が生まれたとしても相互理解が及ぼない場合、単なる偶然と思われる面も少なからずあり、それは術者にとっては心身の疲労に繋がり、患者にとっては医療不信に繋がると言う、お互いにとってもメリットが生じないと言う不遇な局面を時として迎える時もあるでしょう。
その1つとして、臨床現場を通して理解の溝が大きく感じる分野が「自律神経」かもしれません。同業の方で、術者側と患者側での理解の差が埋められず困っている方がいましたので、個人的に少し書きます。何でこれほど迄に運動神経や知覚神経異常の整形外科的領域分野や、自律神経症状の分野に関しては、凡ゆる治効理論が転がり、そして治療手段が転がり、医療も代替医療も挙っているかと言えば、「よく分かっていない」からに過ぎません。画像所見上でも明確に認められる椎間板ヘルニアのような神経圧迫論すらも数十年に渡り議論が対立していると言うのに、一層目に見えない自律神経の働きなぞ、恐らく今後も数百年に渡って確固たる治療手段と言うのは見つからないかもしれません。
何十年も定義が曖昧で変動性を伴う症状や疾患と言うのは、残念ながら、そのような運命の星なのです。それでも尚、日常生活を脅かす諸症状としては年代や性差問わず、最も厚い層とも言え、もしかしたら厚い故に軽視されている側面もあるかもしれませんし、日常生活を起因とするケースが多い以上、如何せん早期回復には患者努力が必要な側面もあると言う事で、随分と患者側も不遇な想いをされている話を聞くものです。

では簡単に触れていきますが、患者側によっては「自律神経=精神疾患のみ」と言う固定概念を持つ方が何故か結構多いのですが、自律神経は精神状態(感情変動・感情変容・精神変動・精神変容・精神失調・精神症状)のみを司っている訳ではありません。
恐らく「自律神経=精神疾患のみ」と言う図式がオーバーグラウンドになっている理由と言うのは、過去にそのような擦り付けが何処かであったのかもしれませんし、「自律神経=自律神経失調症=精神疾患」と言う段階的刷り込みが過去に何処かであったのかもしれませんし、少々穿った見方をすれば、不誠実ながらも医療側と、各種検査で異常の無い、若しくは仮にも異常が生じていたとしても、当該薬物治療等で軽減の無い謎めいた症状に関しては、精神疾患と言うカテゴリに押し付けてしまえば、それで終了出来ると言う側面もあるからかもしれません。
この辺りに関しては、あくまで推測の域を超える事はありませんが、現場で伺う限り、そのような内情が伺えるものです。その為、少しばかりでも、解剖上の自律神経の走行や配置、そして機能を知れば、そのような不誠実な対応をされても動じる事はないかもしれませんし、結果的に処方される向精神薬では治らないと言う理由も分かるかもしれません。
人間の自律神経は視床下部を中枢とし、脊椎及び脊髄から、末梢となる各種内臓や腺、血管へ張り巡らされており、心臓も胃も腸の働きも自律神経機能の働きにより制御されています。その為、この段階でも確認の為にも書きますが、自律神経は各種臓器や血管、腺に配置されている存在でもあり、精神疾患を持つから自律神経失調症と言う事でもありませんし、自律神経失調症と言われたから精神疾患患者と言う訳ではありません。
時として異常が生じれば、動悸を感じ、胃痛を感じ、便秘をしたり下痢をしますし、感情にも変調を来たします。その為、「自律神経失調症」と言うものが、精神症状や精神疾患に直接的に繋がる因子も理由もありませんし、仮にも精神症状や精神疾患を持っているから動悸や胃痛や便秘や下痢を容易に引き起こすと言う事でもありません。勿論、不眠や不安、焦燥、興奮等と言う、世間一般的な精神変調に関しても、大カテゴリから中カテゴリ、小カテゴリに至る迄の症状を抱えていたとしても、それが「自律神経失調症」と言うゴミ箱に引っ括められる事に対しての意義も価値もありませんし、その論議が通用するのであれば、明確な内臓疾患が除外されている動悸や胃痛や便秘や下痢も「自律神経失調症」と言う括りにされたところで、意義も価値もありません。
ただ単に、「各種内臓器の自律神経症状」でしかないのです。例えば、簡単に例を挙げれば、腰神経由来で下腿外側が痺れた場合、恐らく、その痺れは腰神経である腰椎5番の神経の損傷によるものです。要は「L5の知覚神経部の損傷と推定される痺れ」と言うニュアンスと全く変わらないと言う事です。
勿論、これらの自律神経失調症と言われる症状に対し、金魚のフンのように付いてくる向精神薬を飲んでも「治る」事はありません。時にベンゾを処方されて症状が軽減されたから、抗うつ薬を処方されて初期的にでも症状が軽減されたとしても、それが精神病であったと言う根拠にもなりませんし、モノアミン仮説の根拠にもなりませんし、凡ゆる神経伝達物質を抑制傾向に動かすベンゾ系を飲んで症状が改善されたと自覚しても、それで永続的に症状が改善されるという理由もありません。
仮に年代別に分けてレッテルを貼られ易い「思春期」「更年期」「老年期」及び「成長痛」と言う部分に関しても、治療反応性から考察するに辺り、各々の年代によって簡便に説明が付くものです。確かに加齢に伴い、脊椎は変形し、追随するかのように脊髄の伸張率は変わり、且つ基礎代謝等々の問題も加われば、若年層と比較した場合、異なる症状を呈する場合もあるかもしれませんし、回復も遅い場合もあるかもしれませんし、仮にも、その症状が易発症性を伴うとしても、それが老年期と言う括りに入れられる理由もありませんし、納得する必要もありません。
例えば若年層を今回は例に挙げますが、思春期や成長期と言うのは、その名の通り、身体が大きくなっている時期です。骨は成長しても末梢部に配置されている軟部組織である筋肉や血管、神経の走行の成長も併行して比例して追い付いているかと言えば、決してそのような事はありません。
「骨だけ」が成長すれば、当該脊椎高位から抹消へ走行する運動神経・知覚神経・そして自律神経の伸張率も異なります。要らぬテンションが神経系に掛かり続ける(負担が掛かり続ける)事になります。ともなれば、各当該神経支配領域に関する負担も強くなれば、症状として教えてくれるのも一般的な事です。仮にもそれが、膝に負担の掛かる事をしていれば、容易に膝に痛みとして教えてくれますし、腰に負担の掛かる事をしていれば、容易に腰に痛みとして教えてくれます。勿論、それは末梢神経系の問題だけではありません。先ほども述べた通り、自律神経系の中枢部は視床下部にあればフィードバック機構も変動するかもしれませんし、脳内血流量の変動に伴い、中枢を起因とした運動や知覚、自律神経系の変動も生じるのも自然な事です。
机に向かって必死に勉強すれば、頭も容易に痛くなるでしょうし、目も疲れるでしょう。肩だって凝るかもしれませんし、それが極端に負荷が掛かり続ければ、神経系そのものの栄養供給も不安定となり、痺れにも発展するかもしれませんし、力が入らなくなる事もあるでしょう。しかしながら、大切な事は、仮にも症状が発症したとしても、早期治癒回復が得られる土台が本人に備わっているか、そして仮にも中長期的に症状を抱え込んでしまったとしても、それらの諸症状に対しての原因さえ既知していれば恐れる理由なんて何1つないと言う事です。
勿論、易発症性を土台とするにはコレだけでは不誠実な表現かもしれません。過去の怪我や事故、内科的疾患や脊椎の奇形や破格、構造的異常もベースとして存在する場合もありますし、仮にも机に向かうにしても、机の高さ、椅子の高さ、座面の硬度から照明の明るさ、そして机に向かっていた時間数、机に向かっている時間外での心身疲労状況、栄養摂取内容等々まで鑑みて考察すれば流石に面倒臭いので、取り敢えずここは置いといたとしても、
ここで問題なのは、「容易に痛くなる環境」である事は、このような症状を抱える方々にとっては、学業や部活や趣味に支障を来たし易いと言う事です。自身の抱える症状は、自身の日常生活の質を急激に下げ、それは仮にも学業が本業である年代の方々であれば、勉学の効率も下がるかもしれませんし、働いている場合であったとしても、生産性は下がると言う事に繋がります。

さて、では自律神経に話を戻しますが、自律神経と言うものは自身では制御が出来ない為、一度症状が出ると厄介なものです。腰が痛いのであれば、取り敢えずは姿勢の変化等で回避する事は出来ますよね。しかし、多くの自律神経系症状は姿勢の変化では改善させる事が困難な場合が多いのです。
改めてですが、思い浮かんだものを記載しても色々あります。頭痛、原因不明の視力低下、異常発汗、ホットフラッシュ、めまい、耳鳴り、難聴、立ちくらみ、胸の締めつけ、喘息のようなセキ、飲み込みづらい、喉の違和感、不整脈、息苦しさ、季節に関係ない手足の冷え、下痢、便秘、生理痛、生理不順、勃起障害、慢性疲労睡眠障害、うつ症状他、各種精神疾患様症状を言います。この他にも、数限りなく症状はあり、世間一般では「自律神経失調症」と言われる類に含まれる症状です。
※上記と重複する症状も含まれますが、このような症状もあります。本態性高血圧・動悸・頻脈・のぼせ・ほてり・顔が熱くなる・微熱・頭が重い・偏頭痛・めまい・ふらつき・耳鳴り・耳がよく聞こえない・音が大きく聞こえる・涙が出る・光が眩しい・瞼がけいれんする・声が出ない・どもり・口が渇く・顔色が黒ずんで悪い・胸が苦しい・胸がつかえる・胸が痛い・のどがつかえる・飲み下し困難・食物を飲み込む時に違和感がある・息が詰まる・のどが締め付けられる・ぜんそく・背中が痛い・胃の調子が悪い・胃潰瘍・大腸の調子が悪い・ガスが出る・便秘・下痢・慢性疲労・倦怠感・肩こり・冷え性・手足がしびれる・手が震える・多汗症・夜尿症・頻尿・インポテンツ・性欲が無い・不感症・神経性皮膚炎・じんましん・円形脱毛・生理痛・生理不順・強い不安感(漠然とした不安・特定のことに対する不安)・対人恐怖・人前ですごく緊張する・他人の視線が気になる・自分の視線が気になる・赤面恐怖・表情恐怖・体臭恐怖・外出できない・乗り物恐怖・高所恐怖・閉所恐怖・先端恐怖・不潔恐怖・確認癖・視界が気になる・イライラする・怒りっぽい・無気力・落ち込み・睡眠障害(眠れない・早朝覚醒)・集中力が無い・記憶力の低下・悲観的に考える・すぐに悲しくなる・暗い・死にたくなる・摂食障害(拒食症・過食症)。
日本心身医学会で発表されている定義を見ると、自律神経失調症のことを「検査をしても、その症状を裏付ける所見が見出されず、また器質的病変がないのにさまざまな不定愁訴を訴える状態」としているようですが、これは「検査上は異常が認められない症状」を定義としていると言う事であり、症状に起因する確定的診断要素は無いという事を定義としているだけの事で、定義されている事に対しての回復的希望は現段階では分からないと言う意味であり、前述の通り、仮にもそのような言われ方をしたとしても、特段心配する必要はありませんし、寧ろ心配するだけ損です。
このように、定義があるから回復が約束されている訳でもありませんし、診断が付いたからと回復する約束が結ばれる訳でもありません。その為、そこから派生する治療手段が如何なるものかを患者側が精査する必要性が極めて高くなります。それが対処療法的手段なのか、根治療法的手段なのか、ローリスクなのかハイリスクなのか等々ですね。
ひとえに、これらの症状群を見る限り、何でもアリと言えば何でもアリです。何でもアリ故に「自律神経失調症」と一括りにされがちですし、何でもアリ故に向精神薬を処方され、脳全般の機能を鎮静されがちな状態に陥っている方々も散見されるものです。そのような結果に陥らない為にも、事前に「自律神経とは何ぞや」と知っておけば、薬に頼る必要もなくなりますし、薬に頼っても良くならない事も分かりますし、年代別に貼られるレッテルにも動じなくなるものです。
と言う訳で何を言いたかったかと言いますと
1)「自律神経=精神疾患のみ」ではない
2)自律神経は精神症状のみを指すものではなく、各種内臓、腺、血管に配置、走行されている存在であり、「自律神経」「自律神経失調症」「自律神経症状」と言われたからと、精神疾患患者と言う意味ではない
3)年代別のレッテルに動じなくても良い
4)向精神薬(主にベンゾ)は脳の機能を鎮静させる
5)その薬による鎮静も耐性が獲得される以上、いつか爆発する
です。呼び水的内容でもありませんので、治療内容迄は書きませんが、症状発症の因子が自律神経だからと恐がる必要もありません。それよりも「自律神経失調症」と称し「向精神薬」を投与しようとする存在に関しては恐がっていて損はないと思います。日常生活を起因とする諸症状に対して向精神薬を処方されている段階で、患者に白はたを挙げているようなものなのです。そんな負け戦に付き合う必要はないですよね。
取り分け、針治療の強みってこの辺りじゃないかと思います。骨間を無視して各脊椎に配置されている交感神経節近傍まで簡便にアプローチ出来ますので、強制的な血管拡張⇒当該患部の栄養供給安定⇒症状改善が簡単に望めるのです。勿論、一般的な医療機関でも交感神経節ブロックは行っていますが、針治療の場合、保険制度やガイドラインの壁なんて無視出来ますから、圧倒的な効果の差を生む事が出来るって事がメリットであり、麻酔薬の浸潤もない為、合併症(副作用)のリスクも限りなく低いって事ですね。
結論としては、上述した「自律神経」に纏わる概念のみならず、その多くは原因が分からないから最後は結局向精神薬に頼らざるを得なくなり、その薬で僅かにでも初期的にベネフィットを感じた人にとっては、難治例の症状が軽減したと両手を挙げて喜び、医者や患者家族は拍手喝采しているものの、日本のように処方期限に制限の無い主にベンゾ系(睡眠薬抗不安薬・安定剤と表記されているもの)や他の向精神薬でもそうかもしれませんが、
必ず耐性が付き纏う以上、何れは破綻する時が来る、その時に、どのような対応をされるかにより、今後の人生が大きく左右してくるかに関しては、過去から散々取り上げてきたつもりですし、この話も恐らく何時まで経っても平行線を辿る事になる為、先ずは向精神薬に懐疑的であり、疑問視をしている、若しくはこれから処方される可能性のある症状を持つ群、及び、極々初期の服薬群に関しては、早期脱出と疾患及び疾患に付随してくる薬物投与のスタイルに対して学ぶ良い機会かとは思います。
そもそも論として、このような小難しい話を並べなくとも、世の中の内科的疾患含め、原因不明の疾患と言うのは山ほどあるでしょう。特発性、本態性、原発性等々の冠が付くものです。血圧もそうですね。コレステロールもそうかもしれないですね。最近であれば糖尿病がようやく日の目を見始めたかと言う段階でしょう。仮にもコレらとて薬物を用いず改善されても医学は無視の方向を決め込む傾向もあります。とは言え、よくよく考えれば、薬物療法が中心となって物事が進んできたツケと言えばツケなのかもしれませんね。

処方期間に制限の無い日本では短期服薬が約束されない(させてもらえないと言う表現でも良いのかもしれないし、短期服薬では飽き足らないと言う表現でも良いかもしれないが)、ベンゾジアゼピン系の作用は「抗不安作用」「睡眠作用」「筋弛緩作用」「抗痙攣作用」「健忘作用」と言う、臨床現場では有用に用いられる時もある為、短期服薬では、時に患者の有益性も高い場合もあるかもしれませんが、
中長期的に漫然と安易に服薬をしている患者群の話を聞いていると、責任の所在(このような書き方は好きではありませんが…)は何処にあるのかと疑問に思う時も少なくないものです。一体、誰がこうしてこうなったと言う事ですね。自身が中長期的な服薬に伴う有害性を既知していれば(有害性を既知するのは有害性と言う実害に遭ってからが大半ですが)、その多くは「こんな薬を飲んだ為に人生の相当を失った」的な発言は良く聞くものですが、
事実、向精神薬に繋げた経緯の多くは、産業医でありスクールカウンセラーであり、患者家族であり、それに納得及び同意した本人であり、場合によっては医師の制止を振り切り処方を求めた患者であり、医療従事者、非医療従事者問わずの向精神薬推進派でありと、これらは精神医学や精神医療と言う枠内では片付けられない、解決できない問題が多数見えてきます。
更に言えば、産業医でありスクールカウンセラーであり、患者家族のほうが、精神医療や向精神薬を推している実情も伺う事もでき、そして、アレやコレやと病名を付けたがるのも、上司であり同僚であり同級生であり知人友人や親戚や従兄弟やハトコでありと、如何せん、検査手段の明確性が無い故に、そして何とか病名を当人に付ける事で安堵の溜息が出来る人間も少なくないと言う事で、随分と精神医療は様々な方面、そして様々な人間にとって、用い方によってはメリットを見い出せる場合もあるのでしょう。しかし、実際に精神医療に繋げられ、向精神薬を延々と服薬した事によってのデメリットと言うのは果てし無く大きく、悩み苦しむのは結果的に薬を飲んだ患者当人であり、皮肉にも向精神薬の服薬を勧めた患者家族である事も、また事実です。
中長期的に服薬している患者群に関しては、服薬者本人が知ってか知らずか大なり小なり薬剤耐性は付き、常用量離脱が出ている傾向がある事は現場にいれば分かります。私は以前も書きましたが、私自身にバイアスが掛からぬよう、そして穿った見方をしないよう、基本的に現場では「患者から問われない限り」、向精神薬の服薬はヒアリングしませんし、意見も述べません(薬剤性かな、と言うものは、チョロっと言うかもしれませんが)。
無論、別に私は向精神薬からの脱却を専門にしている訳でもなく、あくまで向精神薬は凡ゆる諸症状の延長線上に存在するモノであり症状である事から、このように、本人から言わない限り、敢えて聞かない事で見えてくる事も多くあります。医療選択は患者の自由です。向精神薬でメリットを感じている患者には何も言わないのも、その為です。
さて、冒頭でベンゾ系の作用を書きました。「抗不安作用」「睡眠作用」「筋弛緩作用」「抗痙攣作用」「健忘作用」ですね(AMより)。ご存知の方には極めて当たり前の事かもしれませんが、薬剤耐性が付けば、これらの作用の逆転現象が生じる場合がある、と言う事です。
その多くは「不安」「不眠」「筋硬直」を多く見る事になるのですが、幾ら私たちの立場の人間が、これらの症状に対し、末梢神経系のみに対してリラックスさせようとも、仮にも筋肉と言う細胞に対して何かしかの操作しようとも、薬剤性由来で生じている中枢神経系を皮切りとした諸症状に関しては、それだけでは追い付かない現状を目の当たりにします。
中枢神経系がヤられての末梢神経系の結果を(この辺りを但し書きすれば、薬剤性云々関係ない話も全てになりますが)幾らイジっても極めて作用は弱いものです。それは私自身も数年前に散々経験した事であり、且つ、更に情報を収集すれば、各患者が過去から用いてきた治療手段の内容を聞く限りでも結果が追い付いていない現状も鑑みれば、これらの薬剤性由来の諸症状と言うのは困難を極めるものである事も伺い知る事が出来ます。如何せん、向精神薬由来の諸症状を、現にヒアリングしようがしまいが、仮にも患者が既知としていようがしてなかろうが、薬剤性由来の諸症状には傾向がある為、現場で結果を追い付かせる為には末梢神経系のみに対してのアプローチでは弱いのです。
そして残念ながら、向精神薬の常用量離脱、減薬期~断薬後の離脱に関しては許しを貰う事は出来ません。それ程迄に、向精神薬由来の諸症状と言うのは強いものです。大脳辺縁系から入力される情報は極めて鋭敏性を持ち、四六時中に渡り、自律神経系に対して襲い掛かります。その時、患者は二択を迫られます。向精神薬を増量するか、減量して抜ききるか、です。
多くの患者は離脱症状に耐えられず、薬の増量を求めます。現段階では増量の道と減量の道の是非は問わずに話を進めますが、向精神薬由来の諸症状との対峙に関しては、極めて辛い患者努力が待っていると言う事だけは事実です。但し、こちらに入ってくる情報(電話やメールも含め)を精査する限り、減~断薬のペースが早過ぎると言うのも事実としてあります。
そのペースは医師によるものか自己判断によるものかは扠措き、早い減断薬は離脱も極めて厳しくもあるのは数年経っても患者が変わっても同様である事も変わらず、それを言葉として表せば遷延性が示唆される状態に陥っている人も少なくありません。そして、事実として、私のとこに来る情報からヒアリングする限り、大体皆早過ぎると言うのも事実です。緩徐に行けば、そもそも離脱に悩み苦しむケースも少ないから情報として上がってこないだけなのですから、至極当たり前と言えば当たり前でしょう。
取り分け、患者個々が柔軟性を持たないと上手く脱出出来ない場合もあり、減~断薬を医師に頼り切る、若しくは他の人間に頼り切る場合、その多くは失敗に終わっているものです。やはり、向精神薬からの脱却には、本人の知識と柔軟性、そして強い意志が無ければ抜けられないものなのでしょう。その大体は、向精神薬のベネフィットしか重視せず、リスクに目を瞑る向精神薬推進派(一般の服薬患者)が邪魔をしていると言うのも、また事実でもあります。
その多くは「上手く病気と向精神薬と付き合おう」と表現しますが、その多くは「向精神薬の常用量離脱をフィルタリングする為に向精神薬を服薬している」と言う現実に気付いていないだけであり、根本的な疾患論や向精神薬に対しての考え方が異なれば、そのようになるだけです。
と、このように、向精神薬からの脱却には、本当に多くの障壁が立ちはだかるものです。どうしたもんだか、精神医療や向精神薬と言うのは、向精神薬を長期服薬し続けている推進派の患者によって鉄のように守られていると言っても過言ではないかもしれないですね。

【依存症(中毒)あるいは離脱症状とはどのようなものでしょうか?(経験したことのない方、詳しくない方向け)】http://www.benzo-case-japan.com/dependency-japanese.php
頭の中はいつもぼんやりとして、混乱し集中することは出来ません。気分のムラは激しく、突然爆発するように攻撃的になったりします。前触れもなく襲ってくるパニック発作に悩まされ、頭が完全におかしくなってしまうように感じます。
あたりを見れば、視界はいつもぼんやりしています。あるいは、光が眩しくサングラスが必要になったり、パソコンやテレビの画面を見ることが耐えられなくなったりすることもあります。夜には、視界に閃光が見えることがあるかもしれません。飛蚊症や他の目の症状を発症することもあります。皮膚には針でチクチク刺すような感覚がし、鳥肌が立つように感じます。あるいは、身体からは変な臭いがするように感じるかもしれません。また音が大きく聞こえ、例えば時計のカチカチという音など、何でもない普通の生活音に耐えられなくなるかもしれません。そして、絶え間ない耳鳴りに悩まされるようになります。
身体のバランス感覚もおかしくなり、いつも酔っぱらいのようにフラフラします。筋肉は極度に緊張、硬直し、関節や身体中が痛みます。頭はヘッドバンドを巻いているかのように硬直し頭痛に悩まされます。睡眠中には歯ぎしりを起こすこともあり、場合によってはマウスピースが必要になります。胸は苦しく、脈が速まり、動悸で心臓がドラムのように鼓動する感覚になります。息苦しくなり、パニックが始まることもあります。
夜は寝ようとしても寝付けず、ドキドキと心臓の音が聞こえます。また、突然ののぼせや寒気に悩まされ、絶えず、毛布をかけたり外したりを繰り返します。寝汗を酷くかくこともあります。そして、ビクッとした不随意運動にも悩まされ始めます。特に入眠時に起こります。また、一日中、筋肉が痙攣するようにもなります。セックスライフ?諦めた方が良いです。性欲はなくなり、ともかくしたいとは思わないでしょう。たとえしようとしても、おそらく上手くいかないでしょう。女性は生理の問題が出てくることもあります。
腹痛が起きたり、激しい吐き気に悩まされたりします。たとえ、何回も吐き出そうとしても何も出ってこない(dry reaching)が繰り返されます。また、頻尿になり夜中にトイレに行くために何度も起きなければいけなくなります。便秘になることもあるかもしれません。口の渇きに悩まされたり、金属様味覚がしたりします。体重は増減し、もう普通に生活できない状態まで極度の疲労に苦しむようになります。実際の年齢よりもずっと老けて見え始め、顔はやつれ目は暗くくぼみ顔色も悪くなります。皮膚には発疹が出て絶えず痒みに悩まされるかもしれません。認知機能の障害が悪化するため車の運転が出来なくなり、働く能力も無くなります。また、人と“普通”に交流することも出来なくなり、家庭生活、社会生活が酷く損なわれます。
続いてこれらすべてがより酷い孤立感や気分の落ち込みにも繋がっていきます。また、非現実的な感覚や偏執的な考えにとらわれ始めます。閉所恐怖や広場恐怖のような恐怖症が出てきて、買い物などの外出が困難になることもあります。感情も麻痺し、よくいう“ゾンビ”のような風貌やオーラが身に付いてしまいます。
あなたの主治医に悪化する体調を訴えても、医師は処方薬の危険性について全く何も理解していません。また、薬物依存や禁断作用の本質について知識を持ち合わせていません。それどころか、医師はあなたに別の病名を付けます。あるいは、あなたの元々の主訴が悪化しただけだと言ったり、問題を悪化させてしまう薬をどんどんと追加処方し始めたりします。友人に相談しようとしても、誰も理解することはなく、「全部気のせいだよ」と思われます。
体勢を変えることで一時的に痛みが緩和されることのある怪我の場合とは異なり、禁断症状による苦痛は心身に及び、来る日も来る日も一日中続きます。逃げ場所がないのです。この苦悩や苦痛は、実際には何が起きているのか全く理解できないこともあり、長期間続くと耐えられなくなって自殺念慮が頭に浮かんでくるかもしれません。しかし、このように思考プロセスが乗っ取られていても、これらの問題を引き起こしているのが薬であることにようやく気付き、医師の言っていたことが間違いであったことを知ると、あなたはそこからは、この薬を減断薬することに全力を注ぎ続けることになるでしょう。しかし、減薬するにつれ、多くの酷く不快は激しさを増します。それは恐ろしいもので、酷く苦しみます。それと同時に、その苦痛に耐えなければ、何とかして切り抜け脱出しなければと気付くことでしょう。ただ、脱出するのにどれくらいかかるのかは見えず、時には脱出し切れるかどうかも判らないのです。
幸運にも適切な減薬指導を得た場合、減薬は少しは楽になるかもしれません。しかし、医師側の教育や知識、そして減断薬施設が決定的に不足しているため、あなたが必要とする援助を見つけることは、不可能ではないにしろ、非常に困難でしょう。これは政府の責任です。そして、最終的に処方薬を完全に止めた後、これらの有害作用や禁断症状のいくつかが消えるのに、あるいはそれらと上手く付き合えるようになるのに、何か月も何年もかかることがあります。たとえ医療的に管理された状態で減薬を行っても長引くケースがあるのです。

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  ~針治療から病態定義の見直しを~