藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

【参考症例】ベンゾ系単剤の離脱症状惹起の経緯


低力価短期服薬群に関しては、傾向と言う観点から捉えた場合、回復迄の期間は早期かもしれません。反面、高力価長期服薬群の印象の例として挙げられるのが症状固定や遷延性、後遺障害的な、重症化を示唆するような表現も又見受けられるものですが、それが全症例に於いても傾向と言う確率論の中で推移するものでしかありませんし、
10年や20年掛けてでもジワジワ症状が改善するのであれば、症状固定や後遺障害と言う状態とも又異なる見方も可能です。向精神薬の害反応に関しての情報自体が浸透率が低い為、何を以て常用量離脱や離脱症状であると判定するかも個々に委ねざるを得ない部分もありますし、検査機器も存在しない事から余計な濁りを見せ続ける状況でもある事には変わらないのかもしれません。
事の発端となる服薬と言うスタートを無くせば、このような多くの惨状を回避出来ると思いますが、向精神薬の服薬に関しては患者個々の自由意志である事から、それはナニビトも制限出来るものではないと思います。そのような中、人間は自身の体内に入れた物質に対しては直感的に薬か毒かは判定出来る生き物だと思います。
その判断力を失させてしまうのも又、病気と言う不安かもしれませんが、その病気としての成り立ち自体、創設された経緯自体が既に曖昧であり、人間の特性や性格、状態に名前を付けただけ、付けられただけ、と言う側面も知るべきかと思います。
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多剤高力価長期服薬に伴う副作用や常用量離脱惹起のパーセンテージ高度は当たり前な中、単剤~2剤服薬は案外見落としがちかもしれない分野かと思い、その3症例を挙げます。
以前サインバルタSNRI)単剤の遅発性離脱症状を2症例挙げましたが、今回はベンゾ系離脱3例を挙げてみます。常用量離脱含む離脱症状発症迄の期間や症状含め、何が急性で遅発性となるのか明確に線引きされていない為、何を以て断言すべきかは判断に迷う部分もあります。
副作用の場合、服薬間も無く自覚出来る為に時系列を鑑み休薬可能な場合もありますが、服薬初期の副作用が起こる事を前提とした如く「副作用は苦しいかもしれないが〇週間以上飲み続けなさい」と言われ服薬し続けたり、「〇〇病(主に精神病名が入る)は1年以上飲み続けなさい」と言われ服薬し続けたりする内に薬剤耐性も生じる事から常用量離脱を引き起こす懸念は一層高くなると同時に、全症例ではないかもしれませんが、服薬期と比例して減~断薬時に発症する症状の種類や激烈さも異なる事から成功確率も落ちていくような印象を受けます。
失敗症例の多くは向精神薬に理解のない他者誘導による再服薬かもしれませんし、常用量離脱や離脱症状を〇〇病と言う型枠に入れてしまう事が1番の理由かもしれません。常用量離脱や離脱症状を病気として捉えた場合、その患者は何時まで経っても向精神薬を服薬し続け、更に、都度薬剤耐性が生じる事から増減量のコントロールをし続けなければ症状が落ち着かない綱渡り状態に陥るケースは非常に多いものです。
しかし幾度となく書いている事ですが、向精神薬の副作用や常用量離脱は未だ軽視され、存在しないものとする現行医療の姿勢や、向精神薬推進派層は非医療者にも多くいる事から、その極めて優秀な依存性物質は今後も賛辞され続け、衰退する事はないでしょう。そのように考えると、やはり患者個々の気づきと取り組み、患者個々が勉強し脱出する覚悟を決めない限り難しいものと感じます。
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中枢に反応を及ぼす薬物で人間の身体症状や精神症状をコントロールする行為は難しいものである事を多くの事例から学べます。下記に3症例簡単にまとめてみましたが、直接的か間接的かは分かりませんがベンゾ系離脱の多くは「不安」と言う症状を抱える方が多いように見受けられますが、ベンゾの一般主作用を振り返れば確かに納得の症状かもしれません。
身体症状のみをピックアップすると余りにも膨大な中枢神経系由来の自律神経症状を惹起しているように見受けられる症例も数多いですが、シンプルに考えれば鎮静や抑制、安定作用の逆反応(逆転現象)が生じていると捉えれば別に不思議なものではないかもしれません。
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以下3症例は、あくまでベンゾ系をメインとした情報ですが、向精神薬を単剤及び2剤程度の量を服薬している方は相当数いると思われ、別件別症例で治療をしている際にも、ベンゾの常用量離脱や副作用、又は効き過ぎ(?)を匂わす発言と言うのは多く聞こえてくるものです。
不安発作 パニック発作 記憶障害 易激怒性 攻撃性 羞明 原因不明の頻尿 整形領域的症状では考えられない頚部痛 肩部痛 三叉神経由来と思しき顔面痛 目の奥の痛み 副鼻腔炎様症状 項痛 歯痛 顎関節痛 何時まで経っても治らぬ肩関節の亜脱臼様症状(肩手症候群)など数限りなくあります。ベンゾ系に関しては服薬者層と比例してか害反応を抱える方も多く、ある程度の常用量離脱や離脱症状群は提示されているかもしれません。
しかし、薬剤性由来か否かの因果の多くは検査で出ない為、判定は困難である憎き諸症状です。勿論、死に至る程の副作用も多いのが特徴的な薬物かもしれませんが、多くは其処まで至らず、内分泌異常や、内分泌異常様症状、最も多いのが自然発症性の高い自律神経系症状が悪い意味で強化されたような症状と言う表現が分かり易いのかもしれません。
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case1 入院中、不眠を訴えた事で処方されたベンゾ単剤
age 60 sex f ハルシオン0.125mg 
激しい頭痛 目眩 吐き気が数日に掛けて憎悪した事から近医内科を受診。「風邪でも引いたのでしょう」と言う事で感冒薬を処方され服薬するも著効せず。その後、脳外を受診しMRI撮影。受傷時期は不明だが脳挫傷と診断され即入院。点滴治療で当初期の症状は寛解したものの、入院中に不眠を訴えたところハルシオンを処方される。
当初期の症状は点滴治療で間も無く落ち着き、3週間程度で退院。以降もハルシオンは処方され続け約3ヶ月後、不安 焦燥 健忘 離人感 宅内外問わず自分は何をしているのか全く判断が出来ない と言う症状が出始め、ハルシオンの常用量離脱を疑い、脳外を再受診するも「認知症でしょう」と抗認知症薬を処方される。
本人はハルシオンが原因であると直感で感じ減薬に励む。約8ヶ月程度の期間は3/4。当初は1/2で試みたが不眠や不安感が酷くなる事から極めて微細な漸減を用いる。8ヶ月後以降から12ヶ月後迄1/2で比較的症状が安定。12ヶ月後から20ヶ月後迄1/4。その後、フラッシュバックが惹起されたタイミングは増量する柔軟性を持ち調整しながら約35ヶ月後、当初期の症状は全て改善。20ヶ月以降は長期旅行も可能となり、日常生活に支障はなくなっていた。
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case2 整形領域下肢痛で生じた不眠によるベンゾ系単剤
age 65 sex f マイスリー 
下肢症状が継続する事で3~4時間しか眠れなくなり、その事を訴えた事でマイスリーが処方される。1週間程服薬したところで具合が悪くなり(症状不明)休薬したところ、当日から一睡も出来なくなる。布団に入るも目が冴えて眠れず。体力的な限界が訪れた時に気を失うように眠った感覚を覚える時はあるようだが、殆ど寝ていないに等しい期間が約2週間程続く。
本人曰く、「眠れる薬を止めたらもっと眠れなくなったから飲むのが怖い」と言う事で服薬拒否。2~3週間目以降から徐々に睡眠時間は取り戻されたが、その期間中、及びその後から頻尿 腹痛 下痢 不安が発症し、これらの抹消及び中枢自律神経症状は3ヶ月継続した。
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case3 脊椎変性疾患術後後遺障害に伴うベンゾ系単剤
age 25 sex f デパス 
腰椎変性疾患術後後遺障害を呈し、当該科でデパスを処方。5年間服薬。当初は術後後遺障害を呈した腰部痛及び下肢神経障害が全身痛に派生した事から服薬しているデパスを疑い自己判断に伴い一気断薬。
1週間程度は何事もなく、寧ろ全身痛が軽減された事より喜んでいたが、2週間目より全身痛ではなく全身に痺れが生じ始め、主に肩頚部領域は左右が日差変動を伴う強い痺れが出始める 両下腿激痛 不眠 頻尿 不安 仕事をしていても同僚や顧客の言動を全てネガティブに受け止める感覚に陥り3週間程度の休職。
不眠や不安感、頻尿は2ヶ月程度で改善傾向を示すも常に不安定なまま1年経過後、時折フラッシュバックしつつも徐々に波は治まり症状が安定する。
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