藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

既存病態定義と選択的脊椎高位の治療


軽重問わず自然治癒に至らぬ難治例の多くは脊椎脊髄に帰結する事を治療反応上知り、横軸損傷であれば上肢や体幹、下肢等の体性神経関与の諸症状や内臓器の自律神経関与の諸症状へ。縦軸損傷であれば脊髄近隣に存在する延髄や橋、中脳、視床視床下部等をメインとした身体症状や精神症状への発展、
その複合的な症状は傍から見た場合、極めて謎めいた諸症状に見えるかもしれませんが、全身投与となる薬物治療ではなく、選択的に内臓負担の無い治療を用いる事で病態は見えてくる場合もあります。代謝過程で内臓器に負担を及ぼさない治療手段を持つ事、そして保険制度に依存しない治療手段は、限り無く積極性を持たせた治療も可能でもあり、既存病態定義に対しての詳細な因子や誤認を掴み取る事も出来ます。
検査機器で所見が取れなくても、損傷部位に対して継続的に加療し症状が改善していくのであれば、現在の機器能力では所見が取れない程の微細な異常だと仮定する事もでき、病態定義の誤りの発見、「心因性」「気のせい」「思春期」「更年期」「老年期」「精神異常者」等、凡ゆるレッテルを貼られて爪弾きにされてしまう、又は高負荷な薬物治療を回避させる為の一助になり、医療は1歩前に進めるかもしれません。
様々な発症原因はシンプルではなく、具体的に書けばヨリ多くの説明を要しますが、「診断をする」「責任部位を探る」と言うスタンスやスタイルではなく、「治療をする」と言う立ち位置の為、1番の優先順位は症状の改善となります。症状を伺えば、どの部位がどのような損傷を受けているかをイメージするのは然程難しいものではありませんが、既存の病態定義や概念が治療の妨げになっているのも事実です。
如何なる症状も早期介入が出来れば早期回復するのかもしれませんが、多くは重篤化してからと言う状況を振り返る限り、未だまだ針治療の底の浅さ、信頼性の低さを感じずにはいられません。
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重篤化した症状、発症から時間の経過が著しい症状は、既存の病態定義や概念からは大きく外れていく事になり、何処にも存在しない病態論を説く必要も生じます。しかし、何処にも存在しない病態論を説くと、その多くは「医学的根拠、科学的根拠が存在しない」「どの論文からか」「情報源はどこか」と意見を述べる方も時折見掛けるものですが、患者自身から発症している症状が全ての根拠であり、情報源だと言う事を多くの方は気付いていないものです。しかし、臨床結果は実際に治療を受けた個の患者のみにしか寄与されないものであり、他患者には寄与されない拡散性のない結果です。
目の前の患者が訴える情報が全てであり、根拠や論文、情報源と言うのは過去と合致するものは存在しません。しかし、それでは不都合があるからと全国一律の治療を定めているのが保険制度やガイドラインである事は以前書きました。発症時期、症状の内容、個が抱える構造的な問題、既往疾患、既往疾患に用いてきた薬物、既往疾患に用いてきた非薬物治療の内容、手術の有無、免疫や代謝の問題など、思い浮かんだものを並べただけでも、仮に過去の根拠や論文通りに治療して治っているのだとしたら、症状で悩んでいる人は誰1人いませんし、年々医学書が改訂される事もないでしょう。
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年々病名は増えていき、年々病態定義も改訂されています。1つは検査機器の発達や侵襲性の少ない治療手段の開発等もあると思いますが、もう1つは分からないから細分化している→その結果病名ばかりが増えていると言う事に気付く事も大切ですし、病名が創設されれば利益を得る人間もいると言う事に気付く事も大切な事です。多かれ少なかれ、どの病名が付こうとも根治が不可能だと判断された場合は、キツい鎮痛薬や向精神薬が処方されるだけであり、結局どの病名でも治療手段は同じ所に帰結してしまいます。
症状群が病名へ格上げされる事も多く、その時代毎に診断を告げられ罹患者の増大となるのですが、ここ数年の精神症状領域に関しては「うつ病は誤診→双極性障害」や「ADHD」が幅を利かせているようで、何故この2つの罹患者が増大しているかの出元を知る事も必要だと思います。出元を知る為には歴史と其処に携わる人物を知る必要があります。さて、疼痛性疾患としての身体症状がメインとなる病名でここ数年幅を利かせているのは線維筋痛症(以下 FMS)です。私は8~9年前に初めてこの病名を知り、様々な患者群の追跡をしてきましたが非常に興味深いものです。
雲を掴むような曖昧な診断定義であり、雲のように症状が変動する事、それに絡む薬物の保険適用迄の歴史、保険適応させた人物、線維筋痛症に限らずですが、凡ゆる検査でも異常を見せない難治例と言うのは凡ゆる人間が絡みます。中には有益な結果を得た人もいるかもしれません。しかし、残念な結果を残す群も存在するのは事実です。
これらの全身性に渡る身体症状や精神症状の原因を、脊椎脊髄の横軸並びに縦軸の複合的症状であると仮定した場合、そして主に向精神薬の害反応(主に中長期的服薬に伴う常用量離脱や副作用で発生する可能性のある体幹硬直から全身性に渡る疼痛惹起)からFMSと診断された群は、どのような理由があるのかを治療反応上から考えていきたいと思います。
FMSの診断の有無は問いません。恐らく他の病名が付いている方もいるでしょう。類似症例であれば血清反応陰性関節炎等が近いのかもしれません。FMSは賛否がある為、認める認めないは現在でも大きく分かれている事から、あくまで、全身性に渡る身体症状や精神症状が出ている方に対して治療をし続けて見えた結果を幾つかの由来に分けて以下は書いているものです。
私はFMSと言う病名の価値や意義を否定している側の人間です。そのような症状はある、と言う認識ではいますが、何でもかんでもFMSにしてしまう風潮は良くないと思います。その為、今回はFMSと診断された群に対して加療、追跡して見えた所感を幾つか書きたいと思います。治療反応性云々は過去に詳細を書いたので、今回は概要を簡単にまとめたものです。
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1)純粋な整形領域疾患が多岐に渡り重なった(個人的には多恨性神経障害と呼んでます。多発性神経炎や多発性硬化症の類とは異なり、あくまで純粋な整形領域の末梢神経障害が多根に渡り障害を受けたもの)。医療機関では単根~2根程度の神経障害なら真摯に見ますが(片側の坐骨神経痛とか、50肩のような片側の挙上不能など)、それ以上の本数の末梢神経が損傷を受けた症状を呈した場合、FMSと診断される群が少なくありません。これは以下に関しても全て同様な事が言えますが、FMSと診断する、されるには幾つかパターンがあり、医師がFMSと診断をするのが好きな人間か、患者がFMSと診断されたいかの2つの意思が根底として存在している事に気付く事は大切です。
脊椎の変形が著しい高齢者の多くに当て嵌ると思うのですが、この場合、何もせず帰させるか、リリカやトラムセット他、向精神薬等のキツい薬を投与して茶を濁すタイプの事例は多く見掛けます。他、各種脊椎変性疾患に対しての手術に抵抗した場合や様々な鎮痛薬にも抵抗性を示した場合でもFMSの診断を告げられる方はいます。両側性の頚腕神経叢領域の体性神経系症状、両側性の腰神経叢領域の体性神経系症状を抱え、それに伴い、各当該領域の自律神経系症状を抱える群と言うのは案外少なくないものです。
脊椎変性疾患とFMSの概念の違いを説く人間も少なくありませんが、神経根症や狭窄症、脊髄症、椎間板ヘルニア等の現行病態定義を保有したままFMSとの差異を説くと躓くのがこのパターンかもしれません。冒頭にも書いた通り、多くは薬物治療と言う全身投与→原因部位は分からずとも取り敢えず中枢でも末梢でも抑え込め、と言うスタンスであれば見えてこないものも多いかもしれませんし、数度神経ブロックして反応しなければ手術→著効しない→FMS、と言う訳でもありません。流石にこれでは誠実さに欠けます。
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2)不眠や不安・パニック気質・うつ症状(病)等、初期的な服薬理由は何であれ、向精神薬の中長期的服薬者の常用量離脱や副作用をFMSと診断した事例。恐らく全国的に見てもこのケースが1番多いのではないかと思います。ご存知の方であればご存知かもしれませんが、線維筋痛症の症状群と向精神薬の常用量離脱や副作用は殆ど同じです。中枢神経系症状が多岐を占める為、その誘発要素として濃厚な向精神薬を減らしていったら症状が止んだ例は多数ありますが、
既に薬物依存により止められない人も沢山いるのは事実ですし、この場合、向精神薬の害反応に対しての患者側の知識が追従出来ていないケース、医療機関側が常用量離脱や副作用を軽視及び無きものと取り扱いがちである為(副作用や常用量離脱と認めると面倒臭い事になりますから)が大半の為、向精神薬等を好んで服薬し、身体症状や精神症状が惹起されている場合は治療上トラブルの元になりやすい。トラブル回避のポイントは、既に告げられた診断名に盲目となり、診断名に対して患者自身が利得を得ている場合、積極的治療は仇になりやすい。
治療には目的と目的達成に向けて指針を取る中、常に濁り続ける事になる例が向精神薬由来と推定される症状群との対峙です。それでも尚、向精神薬を好んで服薬している状態と言うのは未だまだ症状としては早期段階で持ち上げられる群でもある事は確実です。医療機関との関係性も悪くない場合も多く、良好な経過を示せる場合が多いものです。
しかし残念ながら、先述した通り向精神薬に対して懐疑的な視線を送れない場合、常用量離脱や副作用を向精神薬の追加服薬で誤魔化し続けていると言う可能性に関しても考えてもらう事は殆どなく、症状の段階的収束に至るケースは低いものです。プラスとマイナスを常にぶつけ続けているようなもので、何時まで経っても先に進めないのがこのような例でしょう。そのような中、決心をした人間だけが症状の改善、段階的収束に至れます。
その割合は100人いたら数%程度かもしれません。残りの数十%は既に薬を止められない身体状態である事態を受け入れなければならない位の試練に只立ち竦む事になるかもしれません。全てが適正か否かは知りませんが、アシュトンマニュアルは誰でも読めるように読み易く翻訳されていますので、100回位読んでからにしたほうが良いのかもしれません。針治療を受けるだけなら治療ベッドに寝てれば済むかもしれませんが、向精神薬が絡む場合、針治療を受ける以上の努力を患者自身が要するものです。
そのような状況の為、当院(藤原)を受療する大半が、医療機関や自己判断で一気断薬し(させられ)、若しくは自然災害等で薬の供給が絶たれた事により引き起こされた極めて重篤化した離脱症状に苛まれているか、追加処方でも誤魔化しが効かない位の常用量離脱や副作用が生じてからと言う、厳しい状態に置かれてからとなり、且つ医療機関との関係も悪化してから、と言うケースも増えてくる為、益々改善迄も厳しい状況に置かれる事になります。
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3)若年性FMSと診断された群。成長に伴い脊椎と言う構造的な伸張に脊髄が追随出来ず、1)のような多岐に渡る横軸の末梢神経系障害や、縦軸の脳幹や間脳等の損傷より中枢神経系症状を引き起こしている事例。1)よりは症状の重篤度は低いように感じます。FMSや向精神薬の常用量離脱が多発性硬化症と類似すると時折提示される例として、時に急に症状が出れば、急に症状が消える症状を持つ方もいるからです。
これは神経痛そのものの病態だと私は感じていますが、それを知らなければ不安ばかり重なるのと、若年性の場合は大体親御さんが情報収集し、共に不安や焦燥に陥るケースも少なくなく、FMSと診断してもらえる病院をハシゴする例も多数散見されています。個人的にはFMSと診断されたところで症状が変わる訳ではないのですから、極力安全な手段を模索してほしいと願うところ。若年性の場合は成人のようにキツい薬が投与される事はないように方針は立てられていますが、飲まずに済むなら飲まないほうが良いと言うのは一般論ではないでしょうか。
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4)過剰な糖質摂取に伴う低血糖症状を更に糖質でフィルタリングし続けたり、糖質摂取に伴う体内消費のビタミン群の補充なしで時間の経過をした群。この原因は1)~3)の土台となる場合も多いような気がします。
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5)直接見聞きした事はありませんが、ヘルペスウイルスやカンジダによるもの。抗ウイルス薬や抗真菌剤で治ったとか、そう言う話もあるようです。
恐らく、FMSと診断されるまで凡ゆる検査をし(多くは陰性)、陰性であったとしても処方される抗リウマチ薬や抗炎症薬、そして向精神薬オピオイドが処方された上で「FMSですね」なんて言われるケースが大半の為、凡ゆるネガティブな側面も含めて考察すれば、1)~5)が混合していると考えるのも又大変自然な事です。

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