藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

【参考症例】遅発性離脱症状の疑い【SNRI】


SNRI単剤の遅発性離脱症状と推定される諸症状を2例(※プライバシー保護の為に改変しています)

sex f age 40 遅発性離脱症状SNRI)の疑い
主訴 左上肢の痛み
既往 特筆事項なし
3~4年程前に左上肢全般に激痛が発症し、MRIで頚椎椎間板ヘルニア(c5~6)と診断され、NSAIDsやステロイドの経口薬他、神経根ブロックに対しても抵抗性を示した事からヘルニア切除の手術。
一旦は症状が消失したが2ヶ月後に再燃。固定術を提案されるも本人の意思により経口薬で対処出来ないかと相談した結果、NSAIDs SNRI ベンゾ オピオイド鎮痛薬等を処方されるも症状の軽快が見られず当院(藤原)を受療。
左上肢症状に関しては2ヶ月程度で消失(治療スパンとしては当初期は4~5day/1回、日常生活に支障がないレベルまで症状が落ち着いた頃から10day/1回に切り替え)した頃より、初期から処方されて残っていたSNRIの減~断薬を3ヶ月掛けて行う。
減~断薬過程では幸いにも離脱症状は起きず、断薬完了後も目立った症状は出ずに安定していたようだが、一ヶ月半後頃より「乾性の咳が止まらない」「鼻出血(片方)が止まらない」「一睡も出来ない」となった為、
医療機関で検査するも原因不明。鼻出血の原因は粘膜に傷が付いたのでは?と言われるも、本人は特に傷付けた記憶もなく、毎日のように鼻出血が継続するのは傷を付けたものではないと疑問に思うようになる。
他、一睡も出来ぬ不眠が1週間続く事から(不眠発症から2~3日経過した時に医療機関を受診。その際にベンゾを追加処方され服薬するも改善なし)体力的に厳しくなり、
先日断薬したSNRI離脱症状を疑い再服薬すると全ての症状が消失。睡眠障害も改善される。この事から断薬から1ヶ月半程度後に惹起された諸症状はSNRIによる離脱症状であったと推測される結果となる。
現在も未だ経過追跡中でもある為、現段階では此処までの事しか書けませんが、多くは5~10種類の多剤が大半な中、単剤での遅発性離脱症状は少数かと思われる為、1つの参考症例として載せておきます。
左上肢の激痛に関しては、痺れや知覚鈍麻等の知覚神経実質の著しい損傷も無いと思われる事、及び運動神経系等が損傷したような様態でも無かった為に、比較的良くある症例(病態的にも好発例)であり、治療反応上からも下位頚椎神経の持続的過剰牽引に伴うdrg損傷によるものと見て良く、上述の通り整形領域疾患に関してはコンスタントな受療も可能だった為に比較的安定性を保ったまま段階的に収束していったものの、
問題は処方された薬物による2次的被害(離脱症状)から抜けられるか否かが一番の問題となり、今件の症例に限らず、整形領域疾患⇒向精神薬処方⇒向精神薬依存~薬剤耐性⇒現症状である整形領域疾患は改善したものの向精神薬を止められなくなる、と言う類似ケースは多くある。
今に始まった話ではないが、患者が減~断薬に起こりうる諸症状を既知とし、柔軟な対応を自己で出来れば問題ないかもしれないが、一度薬剤耐性が付いてしまえば止められなくなるケースも散見され、少しの拍子で向精神薬を処方されたばかりに、一生飲み続けなければ症状が安定しないと言う状態に陥る患者も少なくないと思われる。

sex m age 50 遅発性離脱症状SNRI)の疑い 2
主訴 両足趾の冷感 腰痛
既往 腰部脊柱管狭窄症に伴う手術(椎間孔開大)
5年前の腰部脊柱管狭窄症の椎間孔開大術から数ヵ月後、実際に触っても冷たくはないが、季節関係なく極めて厳しい冷感を両足趾に感じ、夏場でも靴下を2枚重ね履きしても落ち着かないと言う事で受療。冷感自覚は大きく分けて2つあり、実際に触って冷たい血流障害型か、腰部神経叢の知覚神経の損傷に伴う偽陽性型冷感に分けられ、
今件の患者は後者に分類されると思われる事を臨床反応上示し、約数回の治療にて症状が改善され始めるものの、私(藤原)が伝達した腰部神経叢の知覚神経由来である事を気に掛けていたのか、MRI撮影を後日行うとL4/5に側方突出型の椎間板ヘルニアの所見が認められ、手術を勧められる事になる(この時点では下肢症状は当初の足趾冷感のみ)。
一度手術は考え直したほうが良いのではないかと告げるも、本人の意思は固く手術(LOVE法)となる。術直後は腰痛は軽減されるも2weeksで腰痛は再燃。両足趾の冷感は残存する。症状が残存する事から医師にその事を訴え、ファセットブロック×回数不明、仙骨ブロック×回数不明、神経根ブロック×3を受療するも症状軽減に至らず、当該術後領域とは異なる神経走行部位に症状が出始める。
後述する事にもなるが、当初は主訴の通り両足趾の冷感 腰痛だった症状が、両大腿前面、両下腿前面、両腰部、両臀部、両大腿~下腿裏へ激しい疼痛と、両大腿前面は皮膚知覚異常が出始める。1つの可能性を考察すれば、術後の脊椎の不安定性より、両上下の脊椎高位が神経損傷を起こした事に由来するものと後の治療で推測される。
少し話は戻すが、先のブロック施行にも反応性が悪い事、更に異なる部位に症状が拡大した事を訴えると、固定術の提案ではなく、精神病院への紹介状を出され、精神科へ9ヶ月程入院する事になる(理由は伏せ)。診断名 うつ病 身体表現性疼痛。その間、様々な薬物治療を受けた模様(この時点での薬剤名不明)だが、退院後はリリカ トラムセット デパス リボトリール サインバルタ ロキソニン ムコスタ等を服薬。
処方内容に関しては取り分け珍しいものではなく、針治療受療により両下肢症状は約4ヶ月程度を経てvas10→1程度となり(4~5day/1回~10day/1回)、日常生活には支障のない腰痛のレベルとなり、下肢痛は消失。一部大腿前面の皮膚知覚異常は残存しているが、経時的に改善模様の為、今後もフォローしていく事になるが、
症状の軽減と共に本人が薬物治療の必要性を感じなくなった事から、掛かり付けの医師に相談をしたところ(そこの外来には3人担当がいる)、1人は薬物を止める事を認めてくれなかった為、もう1人に相談したところ、そこの親分的存在から既に当該患者の情報が伝達されており(薬を止めたいと言う意思)、「止めるなら止めれば」と言われ、今後の診察を拒否される。本人も止められるチャンスだと思い断薬する事になる(自己判断に伴う一気断薬)。
幸いにも1ヶ月程度は症状(離脱症状)を自覚する事はなかったようだが、その後、シャンビリ 頭鳴 耳鳴 めまい 歯肉出血 不眠 胃痛 動悸 肋間神経痛様症状に悩まされる事になり、本人も「精神科に入院させられる位なのだから精神病なんだろうな」と思い込むようになり、
再度精神科を受療し同様な向精神薬を服薬したところ(サインバルタのみ 他の薬物は整形外科から処方されている)、3日程度の期間を経てシャンビリ 頭鳴 耳鳴 めまい 歯肉出血 不眠 胃痛 動悸 肋間神経痛様症状が消失。この事から上記症状はSNRIによる離脱症状と推測される結果となる。その結果から本人も薬物の恐さを知り、再度減薬に励んでいる。
向精神薬は「止めるなら止めれば」で済むような薬ではなく、止め方次第で直接的にも間接的にも本当に死人まで出る場合もあり、如何なる理由でも向精神薬を一気断薬へと結び付けてしまうような対応と言うのは極めて危険である事が分かる1例でもある。

古くから整形領域疾患に関しては、ベンゾ系を始め、SSRISNRI等の処方はあったかもしれないが、H28/3よりSNRIであるサインバルタは過去の適応症である「うつ病うつ状態」「糖尿病性神経障害」「線維筋痛症」に加え、極めて曖昧な病状である「慢性腰痛」にも承認を得た事(自殺企図を副作用に含む薬物が整形外科で漫然と処方される事に対して、厚労省の審議ですら異例の多数決判定で承認を受けた。)、
更にH28/12より一層曖昧な「変形性関節症」にも承認を得た事によって服薬者は更に増えるものと思われる。その服薬者の増大を見込み、今まで運転禁止薬として指定されていたサインバルタが、H28/10には運転注意薬として切り替えられた事は記憶に新しい。
......................................................
サインバルタ副作用 添付文書より抜粋
セロトニン症候群、悪性症候群、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、痙攣、幻覚、肝機能障害、肝炎、黄疸、 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、アナフィラキシー反応、高血圧クリーゼ、尿閉、発疹、そう痒、蕁麻疹、接触性皮膚炎、光線過敏反応、血管浮腫、皮膚血管炎、倦怠感、ほてり、脱力感、発熱、悪寒、脱水、傾眠、頭痛、めまい、不眠、立ちくらみ、しびれ感、振戦、あくび、浮遊感、味覚異常、焦燥感、気分高揚、注意力障害、錐体外路症状、不安、異常夢(悪夢を含む)、頭がぼーっとする、性欲減退、躁病反応、錯感覚、無感情 激越、オーガズム異常、嗜眠、睡眠障害、歯軋り、失見当識、攻撃性、怒り、歩行障害、開口障害、下肢静止不能症候群、悪心、食欲減退、口渇、便秘、下痢 、腹部痛、嘔吐、腹部膨満感、腹部不快感、消化不良、胃炎、口内炎、歯痛、胃腸炎咽頭不快感、咽頭炎、咽喉緊張、口臭、嚥下障害、顕微鏡的大腸炎、耳鳴、視調節障害、眼乾燥、霧視、耳痛、散瞳、緑内障、動悸、頻脈、血圧上昇、起立性低血圧、上室性不整脈,失神 、ALT(GPT)上昇、AST(GOT)上昇、γ-GTP上昇、総ビリルビン上昇、Al-P上昇、LDH上昇、赤血球減少、ヘモグロビン減少、ヘマトクリット減少、鼻出血、異常出血(斑状出血、胃腸出血等)、白血球減少、背部痛、肩こり、関節痛、筋痛、筋緊張、筋痙攣、排尿困難、性機能異常(月経異常、射精障害、勃起障害等)、頻尿、尿中アルブミン/クレアチニン比上昇、排尿障害、血中クレアチニン上昇、BUN上昇、尿流量減少、多尿、閉経期症状、精巣痛、高血糖、トリグリセリド上昇、総コレステロール上昇、尿中蛋白陽性、血中カリウム減少、甲状腺機能低下、低ナトリウム血症、乳汁漏出症、高プロラクチン血症、血中カリウム上昇、発汗、体重減少、体重増加、CK(CPK)上昇、浮腫、冷感、熱感、呼吸苦、胸痛、冷汗、咳嗽 ※副作用発現率90%以上 ※治験中、健康な成人男性が原因不明で自殺(4人)】
......................................................
添付はプラセボとの比較です
イメージ 1

【電話】 0173-74-9045 又は 050-1088-2488 (携帯 090-3983-1921)
【診療時間】 7:00~21:00 時間外対応可  【休診日】 なし 土・日・祝祭日も診療しています
【pcメール】 fujiwaranohari@tbz.t-com.ne.jp 適応症状・非適応症状・病態解釈・経過予測・リスク・費用・治療内容等のご相談はメールでも受け付けています。お気軽にご相談ください。
  
 ~針治療から病態定義の見直しを~