藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

「〇〇病」でいなければならない理由はどこにあるのか


サインバルタのコピーに「うつ(鬱)は痛む」と言うのがありました。違和感を覚えた方も多いと思いますが、私は納得していました。パキシルのコピーは「うつ(鬱)は心の風邪」でしたね。これらも視点を変えれば正確な表現だと個人的には思っています。しかし、コピーには否定はしていませんが「うつ症状」や「身体が痛い」事に対して、SSRISNRIを飲む事に違和感を覚えます。
常々違和感を感じる表現が「精神異常」「心因性」「年だから」です。言われただけなら未だ問題はありません。人によってはホッとしたりムッとしたり不安に思ったりするかもしれませんが、恐らく、このような異なる感情を表現するケースがあるのは、医学と言う概念では語れない患者自身の背景に左右されるものだと思います。
このように、言われた事に対して受ける感情はどうであれ、未だこの段階では幸いにも無害です。このような表現をされた先に向精神薬の存在が待っている事が問題なだけで、中枢神経に強制的に反応を齎してしまう薬物の中長期的な投与が開始される可能性が示唆される事が有害であると捉えます。しかし、先ずは何故このような表現方法を用いる事になるかと言う根本的な問題を考えなければ解決に至らないものです。幾つか理由が考えられます。

1)既成概念に存在しない症状が惹起されている例
2)自身の臨床経験に前例のない逸脱した症状を訴えられた例
3)薬物や手術を代表とする現行医療の治療手段では反応しない例

が、今思い浮かぶ中では代表的な例かもしれません。既成概念に存在しない症状が引き起こされた場合、その分母数が大きければ誰かが何処かで新たな疾患名を創りますが、それだけでは解決に至る事はありません。その為、診断が付いた事で安堵は出来ないものです。
その大凡は、高力価の鎮痛剤や向精神薬に皆帰結している歴史を鑑みる限り、近い将来も残念ながら然程状況は変わらないと思います。このように、診断を告げられる事と回復と言うのはイコールで結ばれず、1)~3)に当て嵌る症状を呈した場合、残念ながら医学は急速に無力になります。その結果がどうなっているか、どうなってしまうかは向精神薬被害者が教えてくれます。
とは言え、ここで一息ついて考えてみれば、世間一般で見られる難病奇病以外にも、世の中には分かっていない、治せない症状は山ほどあります。高血圧も既成概念に存在しない為、現行医療では薬で下げるしかありません。コレステロールも薬で下げるしかありません。身体的な疼痛も自律神経系症状も、既成概念も治療法も存在しない為、各種薬物治療で抑える事しか出来ません。
そして患者にとっては残念な話ながら、教科書通り、保険制度上通り、ガイドライン通りに対応するのは自分の身を守る為です。自分が可愛いい場合、守ってくれる存在の言ったとおりに治療をすれば、それで治らなくても免責されます。このように自己のプライドと保身を貫くと、不利益を被り続けるのは患者です。そして、自己のプライドと保身の為に「精神異常」「心因性」「年だから」は使われます。その結果、疼痛性・非疼痛性症状問わず、現行医療の概念から逸脱している事情を抱えている患者群は向精神薬等の処方対象となるのですが、向精神薬処方と言うのは既に白旗を上げられている証拠です。
向精神薬は仮説で提示されている症状の起因を本説にしてしまう事が問題で、一過性ながらもこれらの薬物で症状の寛解自覚を得られた事が仮説を証明する根拠にもならない事は書いてきました。それどころか、一過性の症状寛解に伴い、結果的に中長期的な服薬に陥る事で、今度は抜けられなくなると言う現象に悩む患者が後を絶たなくなるのが向精神薬の大きな問題点です。その為、多くの他国では依存性を懸念し、処方期限を4週間程度迄と定めているのです。
しかし、これは向精神薬に限らず、鎮痛剤でもホルモン剤でも同様な事が言えますのでこの限りではありません。医学と言う冠を携えていると、向精神薬や鎮痛薬は「治療」と言うイメージが付きますが、理由なき使用は「乱用」や「依存」と表現されます。しかし、医学と言う冠の有無に問わず、向精神薬や鎮痛薬はそれ以上でもそれ以下でもない存在です。医学が背景にあり、医学的根拠と言う概念に基づいて飲めば薬理作用は変わるのか、医学と言う背景がなく、不正入手と言う背景で飲めば薬理作用が変わるのかと言う問題ではなく、薬局で貰うデパスも友達から貰うデパスも飲めば同じデパスです。
さて、向精神薬等を筆頭に、これらの薬物にて見事な難治例症状、難治例患者、抜くまで終わらない蟻地獄、抜いた後も暫く地獄を見る可能性のある厳しい状況を生み出してしまった原因と言うのも、その多くは冒頭で述べた「精神異常」「心因性」「年だから」等のレッテル張りに起因するものですが(個人的には思春期や更年期、成長痛等もレッテルになると思います)、これらは既成概念から逸脱している諸症状故に言われるだけで、これらの概念が身体内部の何処から派生しているものかを各論的に述べ、且つ、このような既成概念下に於ける症状が出たとしても、薬物等を用いずに安全に自然治癒出来る方向に持っていく事が出来れば問題はないと思うのです。
そうすれば、これらの表現方法を提示されても不安になる必要もありませんし、向精神薬の処方対象からいずれ除外される事になると思います。但し、これらを国まるごと覆す事は私達が生きている間は恐らく無理だと思います。何故なら、薬を飲ませて治す事が伝統であると最近は感じるようになったからです。残念ながら今の伝統と言うのは薬物治療だと思います。

先日HPVV症例を挙げましたが、恐らくこれが「社会的」に認められる事はないでしょう。もっと数を出しても認められる事はないでしょう。臨床医学と言うのは基礎医学と比較しても極めて立場的に弱い存在なのです。嘘だと思うなら患者に直接聞けば良いと思うのですが、結局聞いたとしても「軽症だったから」「偶然だ」と騒ぎ立てるのも、既に過去症例を見ても想像が付きます。
回復が事実だとマズイ状況に追いやられる方々も沢山います。とは言え、これに関してはHPVV症例に限らず、脊椎変性疾患1つとっても手術するしない、アトピー患者にステロイドを塗る塗らない、糖尿病患者への食事内容や薬物治療等でも既に数十年も似たような対立が起きているのですから別に不思議な事でもありません。

と言う訳で、大分どうしようもない状況と言う事は多くの方が薄々勘付いていると思いますし、私もこんな事は随分前から分かっていますので対団体は一切相手にしないのもその1つです。あくまで症状と言うのは個の所有物であり、団体のものではありません。個が抱える症状を団体が「あなたは副反応です」とよく言い切れたもんだと思います。
これ程迄に謎めいた病態に対し、HPVV接種背景が「有る」と言うだけで何故全てを副反応だと言い切れるのでしょうか。私の先日の症例内容に関しても「副反応」と言う言葉は1つも使っていないように、あくまで「接種後の不快症状」としか表現を出来ないのは、「骨折ですね」なんて単純明快な事が言えない病態である事を治療反応上知っているからです。
どちらかと言うと、10代の接種後に起きた不快症状に対し、向精神薬オピオイド鎮痛剤、抗認知症薬等を急激に出したり引っ込めたりした薬物治療の背景のほうが余程問題だったのではないかと思っています。ご存知の通り、中枢神経系に反応を齎す薬物は抜き方次第で大変な状況になる場合があり、原因特定が益々困難に陥ります。
明瞭な画像所見を持つヘルニア患者とて、手術をしても症状が残存している人は山ほどいると言うのに、短絡的な表現をするのは危険な事です。個の症状と個の人生を安易に利用するべきではありません。

さて、最近はHPVVのケースがタイミング的に賑わってますから全てこの案件と結び付くイメージがあるかもしれませんが、実はこれ、HPVVの問題だけではないのです。私は以前も書いた通り、様々な中枢神経系疾患を抱える被害者団体や患者団体と接してきた過去があり、随分と嫌な部分を見てきたと書きましたが、何故、このような団体が出来上がるかと言うと、原因がよく分からないから数を集めて何かしているのです。
「腕の骨折患者団体」とか「風邪症候群被害者団体」と言うのは存在しないですよね(あったりして)。要は症状の由来が曖昧なもの、且つ上記レッテルを貼られた分母数が多く、且つ分母数が多い故に疾患名を創らなければならない事態になった人が「〇〇病」と創り、当該症状に当て嵌る人間を集め、現行医療枠内での手術や薬物治療での症例集めをするのですが、残念ながら先程も書いた通り、その多くは何処の団体も治療の中心は鎮痛剤と向精神薬です。
今回は各治療法がどうこうと言う話ではなく、原因不明の中枢神経系疾患名、又は原因不明の中枢神経系疾患様症状群名は本当に様々あります。そして、スポット的な展開や全国展開している団体もあるのですが、昔とある被害者団体のトップとホテルで同室した事があるのですね。そうこうしていると、これらの団体が掲示している症状を持った何処かの一般患者から代表に電話が掛かってくるのです。
そして、その症状を聞いた代表は「あなた『も』〇〇です」と、自身の抱える症状及び団体に引き込む現場を幾度となく見ています。この時、私は非常に違和感を感じました。勿論様々な検査をした上で、と言う話も付け加えているかもしれませんが、それらが陰性だから〇〇となる根拠と言うのは実はないと思いますし、陽性だったから現症状とマッチしているかと言えば、これも又違うケースは沢山あります。辺りを見渡せば、極めて類似する疾患名が山ほど並んでいるものですから。
このような事は電話だけではなく、メールや手紙でも起きている事かもしれませんが、患者は自身の症状をネットや書籍等で照らし合わせ、過去の自身の背景等から「自分も〇〇かも」と思うのは自然な事だと思います。其処までは全く問題ないと思います。言うのも言われるのも自由です。でも、〇〇ではない可能性もある訳で、〇〇と言われた事が解決に至るキッカケにはならない事は歴史が教えてくれます。恐らく、この辺りの疾患名に至った場合、〇〇でも△△でも□□でも大差はなくなります。薬物治療の内容も全て同じようなものですから。
取り敢えずここは、診断権を持たない人間が患者に対して疾患名を言い切るような診断行為は法的に抵触しているのでは?的な野暮ったい観念は扠措き、このような事象と言うのは案外何処でも行われていると思います。そして、ここではどのような問題が起きるかと言うと、その団体のトップにどのような人間が立っているかと言う問題でもあり、その人間が何処にスポンサードされているかも問題であり、何の為にトップに立っているかも知らなければならない部分かと思います。
原因不明の症状と言うのは山ほどあります。本当に治らない病気も存在するでしょう。単純な神経障害1つとっても加療時期が遅ければ遅いほど何をやっても治らない場合もあるでしょうし、その加療内容が如何なるものかで確率と言うのも随分と変動するものかもしれません。でも、探してみたら案外治ったりする病気も沢山あると言う事に気付く為には、団体とか集団内でトップの同行に付いて回って情報を待っているだけでは現行医療が標榜する治療手段しか情報は下りてきません。これらの過去症例を振り返る限り、現状では結果は厳しいかもしれないですね。

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