藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

拗らせるという意味


70歳 男性
既往歴 特になし。 若い頃に盲腸と肺結核程度。
 
昨年末に雪道で転倒の際に右肩を強打。
受傷時は痛みを伴わなかった為に仕事を続ける(肉体労働)
その1週間後、右上腕外側にズキッと痛みが走り、一時的に挙上不能となる。
 
上腕を外転させること90度程度で痛みは走るが
仕事には支障が無い為に医療機関への受診はせずに市販の湿布薬で様子を見るも
4ヶ月経っても痛みが引かない為に近所の整形外科へ受診。
 
レントゲン撮影を行うも異常なし。
肩甲上腕関節付近に痛み止めの注射を週に1回打ちにくるように言われ、
3ヶ月間、計10回程度行うも効果なし。
 
その後、友人知人の口伝いで内科と整形外科が一緒になっている病院へ受診。
その際も痛みの強い箇所を患者が指で示した箇所(肩甲上腕関節付近)に痛み止めの注射を
週に1回、1ヶ月間通うも著効なし。
 
その後、口伝いで再度別の内科と整形外科へ受診。
過去の治療歴を告げると、肩だけの原因でないかもしれないと
言われ、脳のMRIを撮るも異常なし。
 
高齢者だから…。痛みが長引いているから…。痛みで眠れないのなら…。
不眠で胃腸の調子が悪いのなら…。
ん?コレステロールが少し高いね。
念の為に血圧の薬も出しておきますよ。
 
この事により
セレコックス、ロヒプノールレンドルミンドグマチール、リバロ、ディオバンを処方される。
 
薬の効果が見られず月日が経ち、右腕に痺れが出始める。
再度不安になり病院に行くと、メチコバールとリリカが追加される。
頚部のMRIは異常なし。
 
その後、両腕と両脚に痺れが出始める。処方されている薬が増量される。
四肢の痺れの他、腰臀部や肩背部に痛みを覚え始める。
単なる凝りかと思い、揉み屋に通い続ける。
その間も眩暈や頭痛、口の渇き、下痢、便秘が起こり、その度に病院に行けば薬が追加される。
「薬でお腹一杯やわ」が隣近所への挨拶代わりとなる。
 
しかし一向に症状の改善は見られず。
 
その後、身体を動かすのも面倒になってくる。面倒に感じてくる。
身体がダルイ。重い。やる気が湧かない。呂律まで回らなくなってきた。
呼吸障害や嚥下障害まで感じるようになる。
 
再度、病院に行き検査を受けるも異常なし。
 
「歳だからね」で済まされる。
 
少し知っている医者であれば「CRPSだね。」「FMSだね。」って言われるかもしれない。
但し、言われたところで症状が楽になる訳もない。
聞きなれない病名だからと家に帰って調べたら「原因不明」「治療手段無し」と書かれていた…。


と、思いつくまま書いてみましたがこんな感じでしょう。
結構当てはまる方が近くにいませんか?
 
事の始まりは単なる上腕外側の打撲なのにですね。
 
大方の流れはこのようにして拗らせて症状を悪化させていきます。
受傷箇所は肩でも肘でも膝でも腰でも同じ事が言えますけどね。
受傷起点は単なる打撲なのに、何でここまで悪くならなければならないのか。
要らぬ薬と原発を外した治療手段がもたらした結果です。
 
受傷時に適切な処置が施されていれば1~2週間で完治する内容です。
それは、鍼灸治療を受けていなくてもです。
人間には元々自然治癒力が備わっています。
 
無駄な事を付け加えていった結果、この患者は悪化の一途を辿り、
逆戻りをするのさえ困難な状況に追い込まれました。
 
医者からは薬は一生飲む必要があると言われた。
歳だからと言われた。
治らないと言われた。
この症状と一生付き合っていくことになると言われた。
 
馬鹿ばかしい限りですね。
でも、現実ではこのような状況がアチコチで生まれています。

 
拗らせに拗らせてからの場合、治癒までには時間が掛かります。
そして、鍼灸治療に来られる大半が上記のような患者で溢れてくる。
 
その為に、我々は上記患者に対して対峙出来る術を身に付けなければなりません。
単なる運動器疾患ではない。
 
薬害も伴った状態です。
 
症状改善には患者自身の努力も必要でしょう。
付き合いのある医者とも決別しなければならないでしょう。
信用して付き合っていた医者と私は正反対の事を言うでしょう。

 
ここまで拗らせられた事を自覚し、反省し、前に進まなければならないのです。
 
拗れた身体状況は治療を追う毎に思いもよらぬ箇所に痛みとして自覚するかもしれない。
服用期間が長ければ長い程、種類が多い程に離脱症状に苦しめられるかもしれない。
 
それでも尚、治癒までの道のりを共に歩くのなら覚悟を決めなければなりません。
治りたくなければ医者の言いなりになっていれば良いだけの事ですが、
「一生今の痛みと付き合う」なんて甘い考えを患者自身が出してもいけません。
この症状は悪化する可能性を十二分に秘めています。

 
さらっと書いた上記患者の症状は、
このまま月日が経てば、最悪、腎障害、赤い尿、そして最期は死です。
この頃には残念ながら我々とお会いする事の出来ない場所へ押し込まれる事になります。
 
だから早く気付かせなければならないのです。
そうでなければ患者は病院に殺されてしまいます。

 
しかし、今後はこのような患者は激増するでしょう。
理由は過去の当ブログに書いています。
私達は対処法を探り、患者の症状と闘わなければなりません。


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この糸は何時になったら解れるねん。
 
しかし、そこに結果を出すのが我々の責務なのです。
 
ここに答えを出せ続けたら、鍼灸は一気に伸びていきます。
 

 
読売新聞 - 2013年3月30日
読売新聞 - 2013年3月13日
中日新聞 - 2012年9月4日
SAPIO - 2012年8月8日
NHK クローズアップ現代 - 2012年6月13日
SAPIO - 2011年11月5日
J-CASTニュース - 2011年11月4日
SAPIO - 2011年10月26日
J-CASTニュース - 2010年5月4日
読売新聞 - 2010年1月7日
 

 
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