藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

椎間板ヘルニアに対しての疑問6

通常のヘルニア摘出術が49%(38~60%)
顕微鏡下ヘルニア摘出術が64%(48~78%)
経皮的髄核摘出術が83%(76~88%)

椎間板ヘルニアに対しての疑問3で取り上げた、
驚異の再手術率と共に、未だに圧倒的多数の「ヘルニア=痛み」を
ベースに理論を持つ方々の保存療法的治療について考察してみようと思います。
 
へルニアが神経を圧迫して坐骨神経痛が発症するという考えは、
1911年、ゴールド氏が生理学との矛盾をブッチギリ、「椎間板ヘルニア=痛み」
と発言した事をキッカケで、我々の世代まで椎間板ヘルニアに対しての医学的考察が、
何時まで経ってもどん詰まり状態になっているのだと思われます。
 
ラブ法<顕微鏡下手術<PN法と、低侵襲、短期間を銘打つ新しい術式程予後が悪いのは
術式以前の問題で、「ヘルニア=痛み」の考えがそもそも間違えているという事に早く気付いてほしいものです。

では、現代医学の大多数的考を改めて見ながら進めていきましょう。

腰椎椎間板ヘルニアとは

ヒトの神経には、脳からの命令を手足や身体各部に伝える運動神経と、
身体各部からの知覚情報(熱い・痛いなどの感覚)を脳へと伝える知覚神経があります。
腰椎は5個あり上から順に第一腰椎・第二腰椎と名付けられています。さきほどの神経はこの5個の腰椎が縦に並んでできている管(脊柱管と呼ばれます)の中におさまっています。第二腰椎より下の部分では神経は馬の尻尾のように縦に並んでおり(脊髄馬尾と呼ばれます)、この脊髄馬尾神経はそれぞれの腰椎のところで順次左右一対ずつ枝分かれして、下肢へと向かいます。
これら5個の腰椎は幾つかの靱帯や椎間板と呼ばれる一種のクッションのような働きをする組織によりつながれています。この椎間板は正常ではかなりの弾性を有しており、腰椎を支えるとともに、この椎間板のおかげで腰椎はある程度前後左右に運動することが可能になっています(図2)。
この椎間板はもう少し詳しくみてみますと、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、
中心部に含まれるかなり軟らかい髄核とよばれる構造物から成り立っています。
この椎間板のうち線維輪が弱くなって全体として膨隆したり、線維輪が断裂して中の髄核が脱出したりして、
近傍にある神経を圧迫するようになったものが腰椎椎間板ヘルニアです


なぜこの椎間板が壊れるのかに関しては、各個人により異なった原因があると考えられますが、椎間板という組織自体は加齢とともに早くから老化しやすい組織であること、人類が二本足歩行を開始したために、下位腰椎に過剰な負担がかかりやすくなっていることが、椎間板が損傷されやすい大きな原因であろうと考えられています。椎間板ヘルニアの患者さんの年齢は50歳代にピークがあり、男性はおよそ女性の2倍の頻度でみられ、
20歳以前と70歳以降では比較的稀な病気です。

 
症状
通常は腰痛やいわゆる「ぎっくり腰」のような症状が数日みられます。これに続いて一側の下肢へと放散する激しい痛みが生じます。この痛みは激烈なものが多く、数日はほとんど満足に動けないことも多く、睡眠も妨げられるほどです。しかしながらこの痛みは2-3週間でピークを迎えることが多く、その後は下肢へと放散する鈍痛がみられ、徐々にこれが薄らぐという経過をとります。典型的な場合には症状は一側下肢のみに限局しますが、時には両下肢が痛んだり、排尿排便障害がみられることもあります。
 
検査法
腰椎椎間板ヘルニアの検査には脊髄造影、CTscan、MRIなどが用いられます。
特殊なタイプのヘルニアでは椎間板造影や神経根造影などの検査法も必要となることがあります。
 
治療法
前述の如く、腰椎椎間板ヘルニアは自然経過で軽快するものが多いといわれています。
現在までの研究では腰椎椎間板ヘルニアのおよそ80-85%の症例は自然経過で軽快すると報告されています。
手術以外のいわゆる保存的療法としては、安静・腰椎コルセットの装着・腰椎牽引や腰部マッサージなどが
行われます。痛みが高度の場合には腰部硬膜外神経ブロックなどの鎮痛を目的とした治療法も行われます。
内服薬としては、鎮痛消炎剤・筋弛緩剤・ビタミン剤などが投与されます。
これらの保存的療法が無効の場合には、手術的治療法が行われます。
手術的治療法としては、経皮的髄核摘出術(レーザーを使用するもの、内視鏡的に行うものなど)も開発されています。ここでは、手術用顕微鏡下での腰椎椎間板ヘルニア切除術につき説明します。
 
手術療法
各種の保存的療法を2-3ヶ月行っても効果のない場合、痛みの発作が繰り返す場合、痛みが激烈な場合、
下肢の運動麻痺が著名な場合などには以下に述べる手術用顕微鏡下での椎間板ヘルニア切除術を行っています。手術は原則として、腰椎麻酔下に腹臥位(腹ばいの姿勢)で行います。各種画像検査で確認したレベルを中心として4-5cm長の皮膚切開を背中の正中部分に縦に設けます。次いで腰椎に付着している筋肉を一時的に剥離します。これ以降の手術操作は手術用顕微鏡下に明るい術野のもと、色々な組織を十分に拡大しつつ慎重に操作を進めます。腰椎の一部分を削除し、これに付着する黄色靱帯を切除後、圧迫されている神経を確認します。この神経を保護しつつこの神経を圧迫している椎間板ヘルニア塊を摘出します。止血を確認後、排液管を留置し閉創します。手術に要する時間は60-90分前後です(図4)。
 
切除後の術後経過
術後は腰椎コルセットを装着して翌日に起床し、歩行器を用いて少しずつ歩行を開始します。術後7日目に抜糸し、術後10-14日目に退院となります。外来は2-3週間に一度来院して頂き、神経症状のチェックと腰椎X線撮影を行います。腰椎コルセットは術後3週間程度装着します。簡単な仕事なら術後1ヶ月ごろから開始します。

 
切除術の合併症過
  • 神経損傷による下肢麻痺、下肢知覚鈍麻、排尿排便障害
    これらの神経損傷は、腰椎を高速回転のドリルで削除する際やヘルニア塊を摘出する操作の際に生じやすいとされています。
  • 創部感染あるいは椎間板に炎症がみられる術後椎間板炎
  • 神経を包んでいる膜(硬膜)の損傷による脊髄液の漏出、およびこれに引き続き生じる髄膜炎
  • 創部の血腫形成による神経麻痺・下肢痛
  • 腹部の大血管の損傷による術中の大出血
  • その他の稀な合併症として深部静脈血栓症、肺炎などの感染症などが生じることがあります

という訳です。幾つか抜粋していきます。
>>この椎間板のうち線維輪が弱くなって全体として膨隆したり、線維輪が断裂して中の髄核が脱出したりして、
近傍にある神経を圧迫するようになったものが腰椎椎間板ヘルニアです(図3)。
 
髄核の脱出は「ヘルニア」で間違いないです。では、その後の「治療法」を見てみましょう。
 
>>手術以外のいわゆる保存的療法としては、安静・腰椎コルセットの装着・腰椎牽引や腰部マッサージなどが行われます。痛みが高度の場合には腰部硬膜外神経ブロックなどの鎮痛を目的とした治療法も行われます。
内服薬としては、鎮痛消炎剤・筋弛緩剤・ビタミン剤などが投与されます。
これらの保存的療法が無効の場合には、手術的治療法が行われます。

保存的療法として、安静、コルセット、牽引、腰部マッサージ、腰部硬膜外神経ブロックが行われるようです。
安静やコルセットで血流低下を助長させたり、牽引や腰部マッサージで
防御反応を示している筋群にストレッチを掛けて痛みを爆発させてしまったり、
硬膜外ブロックを打っても一時的な緩和しか無い理由は以前にも書きました。
何故に麻痺を生じると考えている箇所に麻酔を掛けるのでしょうか。疑問は尽きません。
 
内服薬としては鎮痛消炎剤も投与すると書かれています。
意地の悪い書き方をして申し訳ないですが、炎症が発生しているであろうからと、
鎮痛消炎剤を投与すると同時に、牽引や腰部のマッサージを行うのは、
矛盾しているのではないでしょうか。牽引やマッサージのような、
炎症箇所に炎症を呼び起こす治療をぶつけるのはナンセンスです。
 
前も書いた通り、そもそも炎症なんて起きていないと思います。
その為に鎮痛消炎剤も効く訳がないというのは、ロキソニンの項よりお分かり頂けるかと思います。
 
色々と保存的治療法はあるようですが、本来はこの段階で患者を快方に向かわせるべきはずなのに、
腰からヘルニアが出ているからと言って、腰にばかり焦点を絞った保存的治療法しか行わなかった為に
結果的に手術となる。そして、術後も再発するというケースが後を絶たないのですね。
何でヘルニアが発生したかの原因を考察しない限り、間違いはいつまでも繰り返されます。
 
>>なぜこの椎間板が壊れるのかに関しては、各個人により異なった原因があると考えられますが、
椎間板という組織自体は加齢とともに早くから老化しやすい組織であること、
人類が二本足歩行を開始したために、下位腰椎に過剰な負担がかかりやすくなっていることが、
椎間板が損傷されやすい大きな原因であろうと考えられています。
椎間板ヘルニアの患者さんの年齢は50歳代にピークがあり、男性はおよそ女性の2倍の頻度でみられ、
20歳以前と70歳以降では比較的稀な病気です。
 
椎間板が壊れる理由に関しては、人類が二本足歩行を開始した為、
加齢と共に早くから老化しやすい組織であることと挙げられています。
>>年齢は50歳代にピークがあり~
無症候のヘルニア患者は80%弱というデータがあります。50歳代の人間が、
たまたま足腰が痛いからと整形に行き、たまたまMRIを撮った結果、
ヘルニアが見つかっただけとは捉えられないでしょうか。
MRIの撮影日が、ヘルニア誕生の日ではないですね。
症状はないものの、過去からヘルニアが発生していたケースも多々あるものと思われます。
 

 イメージ 1
健常な人間に対して発生する腰部の負荷姿勢を数値化したものです。
この絵から、物を持ち上げようとする動作や座位姿勢を取る時に、腰の関節を使っているでしょうか。
どの関節を一番曲げて、物を拾おうとしていたり、座位姿勢を取っているでしょうか。
腰椎椎間関節の屈曲だけでは、上図のような姿勢を取る事は出来ません。
 
あくまで、ヘルニアの脱出(突出)は腰部筋群の極度な緊張や短縮より引き起こされるものであると思います。
交通事故やスポーツ事故等、明確に腰椎にダメージを受けたという機序が無く、
日常生活や仕事、スポーツのオーバーワークを起因とした
腰部筋群の異常に関しては、単なる結果であり、原因ではないのです。
 
これで、上記の保存療法的治療が全くの無意味である事が分かるかと思います。
腰が痛いからと腰を揉み、足が痛いからと足を揉んでも無駄な行為である理由が分かったと思います。
入り口を間違えている為に、その過程の保存療法も的外れになってしまい、
何れタイムリミットが迫り、結果的に手術となる。
(これは、患者側が保存療法でも著効を示さない為にシビレを切らすという側面もあると思います。
最終的には手術で良くなるという考えを事前に医師に植えられる、若しくは周囲の声を聞くetc…)
しかも原発を取り違え続けるから再発してしまう。
そして、画像所見に異常が無くても痛み痺れが出た場合は、老化現象だストレスだのと患者に責任転嫁をし、
言ったもん勝ちの台詞を吐かれたものでは、患者はどうしようもなくなってしまいますね。

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