藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

腰痛ガイドラインを考える5

今回は腰部脊柱管狭窄症です。
椎間板ヘルニアや狭窄症の類の話は食傷気味かもしれませんが、
非常に大切な事なので、痛みや痺れに苦しんでいる一人でも多くの方が気付いてもらえるように
書き記していきたいと思います。日常的に頻発するような症状に関しては、
現代の日本は研究を蔑ろにしている面があります。症状の度合いや感じ方は
各々の患者の相対的なものでは無いと考えるべきかもしれませんが、
どうしても難病奇病に対して研究費は注がれ、極々一般日常的に発生しうる疾患に対しての
研究は不十分である事が、前項のヘルニアのガイドラインからも読み取れる事が出来たと思います。
 
診断名は何であれ、腰下肢痛に悩まされる大方の患者の手元にはNSAIDsが転がっているでしょう。
阻害するのはCOX1でもCOX2でも構いませんが、NSAIDs各種で効果はありましたか?
プレガバリン(リリカ)は効きましたか?症状がボヤッとした程度ではありませんか?
 
プレガバリン(リリカ)に対しての臨床結果⇒
「痛みのレベルを、痛みなしの0点から、これ以上ない痛みの10点のあいだで自己採点する方法です。
その日記を集めて集計したところ、この薬を飲んでいた89人の平均は約4点、プラセボ(似せ薬)を
飲んでいた97人はおおよそ5点でした。この薬により、
痛みのレベルが平均して1点ほど下がることが証明されたわけです。」
このような臨床試験結果では、効いた内に入りません。
椎間板ヘルニア患者や脊柱管狭窄症患者に対してのNSAIDsとプレガバリン(リリカ)の処方は、
ほぼ無効であると私は捉えています。
私がとやかく言う以前に、患者自身が一番「効かないわ」って事は分かっていると思います。
※但し、例外的に効果を出す時があります。それは以前に軽く触れました。
 
前項で触れた日経新聞の記事を再度切り抜きます。
 
>>椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症など、個別の病気の診療ガイドラインは既にある。
  しかし「腰が痛い」という症状全般への対応を、
  最新の科学的な知見をもとに使いやすくまとめた腰痛ガイドラインはなかった。
 
と言う訳で、ある程度ガイドラインに沿った振り分けを患者はされる事にはなるのでしょうが、
神経症状あり」群が画像検査を受けて、腰部脊柱管狭窄症と診断された場合、
腰部脊柱管狭窄症のガイドラインが待っています。

日本脊椎脊髄病学会の脊椎脊髄病用語事典には
「脊柱管を構成する骨性要素や椎間板,靱帯性要素などによって腰部の脊柱管や椎間孔が狭小となり,
馬尾あるいは神経根の絞扼性障害をきたして症状の発現したもの.絞扼部によって,
centralとlateralに分けられる.特有な臨床症状として,下肢のしびれと馬尾性間欠跛行が出現する」
と記載されている.

North American Spine Society(NASS)のガイドラインでは,
「腰椎において神経組織と血管のスペースが減少することにより,腰痛はあってもなくてもよいが,
殿部痛や下肢痛がみられる症候群と定義できる.腰部脊柱管狭窄症の特徴は,
関与する因子によって症状が増悪したり軽快することである.
運動や特定の体位により神経性跛行が惹起される.また,前屈位や座位の保持,
あるいは安静臥床時には症状が軽快することが多い」と定義している.
 
歴史的に腰痛のみの症例は本疾患から除外されてきた.NASSの定義で「神経性間欠跛行」ではなく
「神経性跛行」という表現をしているのは,ある特定の姿勢で下肢症状がでたり,
歩行にて症状がでるものの歩き続けられる患者がいるためと思われる.

腰部脊柱管狭窄症では,腰椎部の脊柱管あるいは椎間孔(解剖学的に椎間孔は脊柱管には含まれていない)の狭小化により,神経組織の障害あるいは血流の障害が生じ,症状を呈すると考えられている.
しかしながら,現在のところその成因や病理学的な変化が完全には解明されておらず,
定義についても上記のごとく,さまざまな意見がある.
 
このため,腰部脊柱管狭窄症は複数の症候の組み合わせにより診断される症候群とするのが妥当である.
原因が明確になれば,将来疾患として再分類あるいは再定義される可能性がある.
 
一般に腰部脊柱管狭窄症の重症度は,下肢痛の強さに基づいて定義されていることが多いが,
厳密な区分ではない.
腰部脊柱管狭窄症の手術治療に関する前向き研究で,対照群に無作為化した18例の転帰について報告した.いずれも中等度で,手術適応ありと判断されたが,薬物治療・その他保存治療が行われた.
これら18例中10例(56%)では6ヵ月の時点で症状が増悪しており,
9例は,10年の時点で手術治療群に移行していた.残る9例のうち1例は死亡しており,
8例中6例(75%)は中等度ないし重度の疼痛,また8例中2例(25%)はごく軽度ないし軽度の疼痛を有していた.その他,無作為化の対象とならなかった軽度の患者50例に対しても10年間の経過観察が前向き形式で実施されている.これらの50例のうち,10年の時点では27例中15例(56%)が中等度ないし重度の疼痛,
また27例中12例(44%)がごく軽度ないし軽度の疼痛をそれぞれ有していた.
両群間ともに患者の移行(クロスオーバー)が大幅に行われていた。

手術成績に関する後ろ向き比較研究の一部として,
腰部脊柱管狭窄症の無処置患者19例を対象とした平均31ヵ月の経過観察後の転帰を報告した.
いずれの患者にも治療は施されていなかった.16例は神経性跛行,2例は神経根症状,
1例は神経性跛行と神経根症状を併発していた.
経過観察終了時における歩行可能距離の改善度はごくわずかであった.
最終的に,無処置患者のうち30%の患者の症状は改善し,60%の患者の症状は不変であった。
10分以内の間欠跛行を示し,2~3週の入院のうえでの保存治療(ベッド上での骨盤牽引,体幹ギプスの装着,硬膜外ステロイド注射,神経根ブロックの順で効果がみられるまで行う)が効果を示した
170例中120例(男性70例,女性50例)を最低5年間経過観察した.経過観察中は患者の求めに応じて,
ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を頓用にて投与した.その結果,19例は手術を受けた.
最終経過観察時,自覚症状では52例(43.3%)が改善,20例(16.7%)が不変,48例(40.0%)が悪化していた.
 
ADLはJOAスコアをもとに評価した.優はまったく症状のないもの,良は症状を有するが,
ADL障害のないもの,可はある程度障害のあるもの,そして不可は重度の障害があるものと定義した.
その結果,26例(21.7%)が優,37例(30.8%)が良,35例(29.2%)が可,22例(18.3%)が不可であった.
神経根型の患者および初期治療にてよく改善した患者では,その他の患者より良好な成績であった.
しかし,変性側弯がある患者では成績が不良であった.
 
手術により改善しにくい症状について,腰部脊柱管狭窄症患者の手術症例63例中55例の
自覚症状を術後1年で評価した.その結果,安静時症状が,歩行時に出現する症状よりも改善しにくく,
安静時の下肢しびれが残存しやすかった.術後1年以上経過した298例(全366例中81.4%)に
対するアンケート調査を行い,術後に足部のしびれが78.2%に残存していたと報告している。

脊柱管狭窄症と診断されて、その診断に沿った手術ないし保存療法を行った成績は、
上青文字の以下3段をご覧になって頂いても分かる通り、惨憺たる結果である事が分かると思います。
 
前項の椎間板ヘルニアと同じような書き方となりますが、
患者はレントゲンで写っている椎間の狭窄化を問題視しているのではなく、
現在発生している腰下肢痛を何とかしてもらいたいのです。
 
>>術後に足部のしびれが78.2%に残存していた と言う状態を示しているのでは手術損です。
 
骨は砕ける事なくボルトは締まり、脊柱は安全に安定して固定され、
「手術は成功です。」
なんて言われても、患者にとっては痛み痺れが取れなければ成功ではありません。
 

Sinikallioらは,腰部脊柱管狭窄症の手術患者に対する術前,術後3ヵ月の調査から,術前のうつ状態が術後のOswestry Disability Index(ODI),Stucki重症度,visual analog scale(VAS)と高い相関があることを示し,術前に各症例のうつ状態を評価することが重要と結論した(EV level IV).
また,松平らは,腰部脊柱管狭窄症患者の症状と抑うつおよび健康関連QOLを調査した.
その結果,抑うつ傾向は32%の患者にみられ,精神的健康度の下位尺度点数が低下していた.
このことから,腰部脊柱管狭窄症患者に対しては,
抑うつのスクリーニングおよび精神的ケアが必要であると指摘した。

術前までのうつ状態を作ったのは誰ですか。
椎間板ヘルニアでも狭窄症でも分離症でも各種整形外科的領域の疾患に対しても色々と言えますが、
術後成績を患者の精神状態や患者の周囲の環境に原因を求めようとするクセは望ましくありません。
さっさと道筋を立てて治さないと、誰だって精神状態と周囲の環境は崩壊します。
 
因みに、世間一般では狭窄化した脊柱が神経を圧迫して云々と言われていますね。
ヘルニアと同様、そんな事で痛み痺れは出る事もなく、本来の椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症は
麻痺の症状しか患者は提示しません。痛みや痺れは全く別の由来です。
ヘルニア同様、画像所見に頼り過ぎた結果、長年に渡り解明されない状況である事が示唆されています。
 
以前ブログで取り上げた歌丸さんは、ボルトを入れて結局は抜きましたね。
抜いても問題はないのです。未だ手術をしていない患者層は、手術をするべきではありません。
 
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 青森から鍼灸治療の意識改革を~