藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

腰痛ガイドラインを考える6

今回は分離症です。
下記の分離症と診断された3例をご覧になって頂ければ分かるかと思いますが、
過去に取り上げた椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症と同様な症状を呈していると思いませんか?
勿論画像所見は各々違いますが、患者は一様に同じ事を言っています。
 
各疾患に対しての共通点というのが、髄核や骨が神経に触れているから痛みや痺れを
出すという事ですね。それが、
ヘルニアと診断されたら「ヘルニアでね~」
狭窄症だったら「背骨が詰まってるとさ」
分離症だったら「骨が折れているんだって」
と患者は告げられた診断名を元に、自身の腰下肢痛の原因を見出そうとします。
しかし、患者を絶対に責める事は出来ません。
誤った痛み医療を植えつけられてしまっているだけなのですから。


A)30代男性の友人が、「腰椎分離すべり症」というものに悩まされています。
 レントゲン写真を見せて貰った所、腰にはボルトのような物が四本入っていました。
 痛くて痛くて、座っていても冷や汗が出るそうです。歩くのが、すごく遅くて、かなり辛そうです。
 仕事も出来ず4年ほど休んでいます。精神的にも辛いようで、今は話すのも嫌だそうです。
 この症状は、いつの日か治るのでしょうか?(もしくは無痛に)

 ボルトのような物は、いずれ外す事が出来るのでしょうか?
 どうにかしてあげたいのですが、どうする事もできず、見ているだけで辛くて、私も頭がおかしくなりそうです。
 本人は、もっと辛いでしょうから、何も言えずにいます。
 何か私に出来る事はありますか?
 友人は、金属製のボルトが背中に入っており、
 定期的にブロック注射をして、毎日、痛くて眠れないため睡眠薬を飲んでいます。 
 この現状から治るのは可能でしょうか?もう末期でしょうか?


B)腰椎分離すべり症の手術について
 腰椎分離すべり症についてなのですが、私は現在27歳の男なのですが、
 5年前の5月に交通事故にあい、同年12月に立ってても、座っていても、寝ていても腰からの激痛及び、
 右足に痺れという症状が出てきました。
 当時かかった医者には、「急性椎間板ヘルニア」と診断され、
 「このまま今の仕事を続けていたら動けなくなる」
 と言われ、前職を離職し、約1年間、保存療法を行い痺れや痛みはなくなりました。
 が、ここ1年間ぐらいまた、腰痛や右足の痺れが再発し、
 接骨院にてマッサージや電気治療をしていたのですが、
 7月の下旬に5年前の症状とまったく一緒の症状がでるようになりました。
 広島のこの道で有名だと言われる整形外科で検査をすると、
 「腰椎分離すべり症」と診断され、「完全に治そうと思うのなら、固定術しかない。」と言われ、
 この痺れや痛みから解放されるのであれば、手術に踏み切るのもいいかな?と思っています。
 現在、営業職をしていますが、30分以上の座り仕事が一番しんどいです。


C)3週間程前からジワジワと腰が痛くなり、整形外科でレントゲンをとり腰椎分離症と診断されました。
 中学生のころ骨折し、そのままくっつかなかった様なのですが、今まで気がつかず。
 今回30代になり、はじめて腰痛で発覚しました。
 痛み止めの注射とモーラステープロキソニン、胃薬でしのいでいますが、まだ腰が痛みます。
 気になるのが昨日から左のお尻、左足の付け根まで痛みが出てきました。
 病院ではレントゲンと尿検査、あと腹部や背中を上から押さえて痛みがないかの検査をしました。
 それから1週間ですが腰痛というのはこんな風に長引くものなのでしょうか??
 腰椎分離症だけじゃなく他の病気なのでは?と不安になってます。
 大きい病院でMRIもしてもらうべきでしょうか??
 腰痛、左足の付け根の痛みがあり前屈みや体をねじる、重い物をもつと痛みます。
 真っすぐ立っている時と歩行は大丈夫です。熱や足の痺れはありません。


上記3例が分離症と診断され、保存療法ないし手術を行った方々の声です。
しつこいようですが、他の腰下肢痛を抱える患者と全く同じ事を言っていますし、
全く同じ治療法である事が分かると思います。勿論治ったり治らなかったり、
痛み痺れが再発したり、憎悪したりと様々なのも、他の腰下肢痛患者と同様です。

分離症の絵はアップしていなかったと思うので、一度見てみましょう。
イメージ 1
 
分離症は椎弓が分離した状態の事を指します。
因みに、すべり症は椎体が前方移動してしまった状態の事を指します。
共にこれらの状態で発生し得ると考えられているのは、神経圧迫による腰下肢痛と言われています。
中には、骨癒合時の段階で偽関節を起こした為に腰下肢痛を発症したという人もいますが、
私には信じられません。勿論、癒合時に神経を圧迫する事もないでしょう。
何故なら、神経が圧迫された場合に発症するのは麻痺ですからね。
 
何らかの拍子で分離してしまったものは仕方ありません。
ただ、手術をするような状態ではありませんから、自然治癒を望むのが一般的でしょう。
 
では、上記の赤字の方々なのですが、

A)の方は、既に固定術を行っているにも関わらず、座位、歩行含め、
  四六時中辛そうな状況が見受けられます。ブロック注射をしても、睡眠剤を飲んでも眠れないほど。
 
B)の方は、交通事故を機に腰下肢痛が発症した為、MRIを撮り、椎間板ヘルニアであった事が判明。
  一度は腰下肢痛が改善するも、再発。30分以上の座り仕事が辛い。
 
C)の方は、10代半ばでの骨折(10代半ばの段階で写真を撮ったかは不明)が30代になってから腰痛が
 発症した事により発覚したとの証言。注射、湿布、飲み薬でも改善せず。立位時と歩行時は症状を自覚せず。

要点をまとめてみると分かる通り、他の診断名を告げられた方々と同じ状態である事が明確化すると思います。
分離症を発症した時点では、あくまで骨折ですので、局部的な疼痛を生じる事になるでしょう。
器質的な構造変異が見られての疼痛に関しては、この程度であれば数日で炎症も治まるでしょうから
痛みはなくなるはずです。寧ろ、その際の衝撃で筋肉が異常短縮や異常伸張し続け、
痛みを出し続けるでしょう。現に私の左足の腓骨は10年前の交通事故の時から折れっぱなしです。
それでも痛みを出した事は一度もありません。
 
このように、器質的異常が疼痛の原因である事はないという事を、
様々な腰下肢痛をお持ちの方には是非とも分かってもらいたいのです。
 
腰下肢痛の発症により、専門機関で検査を受けると様々な診断名が並びますね。
しかし、患者の症状を聞く限り、本質は一つに絞られている事が分かりませんでしょうか。
 
古くから言われている言葉ですが、病気ではなく患者を見ろって言われていますね。
現実は結局のところ、湿布とロキソニンと注射に終始しているように感じます。
 
治らないから(改善がみられないから)違う薬や強い薬を出すのではなく、
根本を間違えているからどんなNSAIDsだろうが、
注射の中身を替えようが、「効果がパッとしない事=原因を間違えている」
と考えたほうが良いのではないでしょうか。
 
分離症も発症初期の局部的な痛みに対しては、NSAIDs等々も著効を示すでしょう。
しかし、数日立ってからの漠然としたような痛みが出始めた患者には効果はないと考えています。
この段階ではロルカムに変えようがセレコックスに変えようが同じ事でしょう。
分離症に関しても、分離症が腰下肢痛を出していると捉えずに、適切な治療を行う事が大切です。
でなければ、何時まで経っても分離症の事が頭から離れずにご飯が進みませんよ
 
 青森から鍼灸治療の意識改革を~