藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

腰痛ガイドラインを考える4

前項で触れた日経新聞の記事を再度切り抜きます。
 
>>椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症など、個別の病気の診療ガイドラインは既にある。
  しかし「腰が痛い」という症状全般への対応を、
  最新の科学的な知見をもとに使いやすくまとめた腰痛ガイドラインはなかった。
 
と言う訳で、ある程度ガイドラインに沿った振り分けを患者はされる事にはなるのでしょうが、
神経症状あり」群が画像検査を受けて、
椎間板ヘルニアと診断された先には、
椎間板ヘルニアガイドラインが待っています。
 
もうお分かりかと思いますが、
椎間板ヘルニアガイドラインが既に破綻している理論の為に、
患者はドンドン深みにハマリ続け、結果的に患者は増え続ける事になるのですね。   
        

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会提唱の診断基準
 
1 腰・下肢痛を有する(主に片側,ないしは片側優位)
2 安静時にも症状を有する
3 SLRテストは70°以下陽性(ただし高齢者では絶対条件ではない)
4 MRlなど画像所見で椎間板の突出がみられ,脊柱管狭窄所見を合併していない
5 症状と画像所見とが一致する

腰椎椎間板ヘルニア患者の治療法を選択する際には,障害の程度だけでなく
個々の患者のライフスタイルを考慮して決定していく必要がある。
したがって、各種の治療法の短期の成績だけでなく長期の予後についても熟知し、
それらの情報を患者に提供し、十分なインフォームドコンセントを得たうえで治療を行うことが肝要である。
一般に、腰椎椎間板ヘルニアの手術適応は急性の膀胱直腸障害を呈した場合を除き
進行する神経脱落症状が認められる場合Lasegue徴侯などの神経緊張徴侯が強陽性で
重篤な神経脱落症状を伴う場合、手術以外の保存療法が無効であった場合であるとされている。
 
一方で,発症当初に著しい疼痛が認められても、
手術以外の保存療法だけで支障なく生活できるようになることも多いので、
初期治療の基本は保存療法ということになる。しかし、保存療法で疼痛はいつ頃よくなるか、
あるいはいつまで保存療法を行うべきであるか、神経脱落がある場合に保存療法だけで
どのような経過をたどるのか、復職はいつ頃可能かなどの情報が必要である。
 
また、手術を選択した場合では、どのような術式を選択し、その手術でどのような経過がもたらされ、
復職はいつ頃から可能で、再発率はどの程度であるかに関する情報も必要である。
ヘルニア手術例の対人口比率に関するデータはあるものの、ヘルニア患者の総数のデータがないため、
ヘルニア患者のなかで手術に至る割合は正確には把握できていない。
 
しかし、強い症状を呈するか病状が長期に及んだと考えられる腰椎椎間板ヘルニア患者群において、
手術に至るのは10~30%程度と推定される。保存療法と手術療法を比較すると、
臨床症状に関しては手術療法のほうが長期的にも良好な成績を示すものの、
復職に関しては保存療法と手術療法間には差が認められない。
手術術式による治療成績の差は通常のヘルニア摘出術と顕微鏡下ヘルニア摘出術は同等で、
chemonucleolysis(わが国未承認)はこれら手術療法よりも劣り、経皮髄核摘出術はさらに劣っている。
 
手術療法を選択した場合、男性、画像の明瞭な異常所見があること、
罹病期間が短いこと、心理状態が正常であること、術前の休職期間が短かいこと、
労災関連ではないことなどが疼痛や日常生活動作に関して成績を向上させる要因となる。
しかし、再就労では関連する要因が異なる。手術後の後療法に関しては、
術後早期に活動性を低下させる必要性はないものの、
手術直後から積極的なリハビリテーションプログラムを行う必要性も認められない。
 
しかし、術後1ヵ月経過した頃から開始されるリハビリテーションプログラムは、数ヵ月間は機能状態を改善させ、再就労までの期間を短縮し、職場での医療アドバイザーによる介入も就職率の向上に有効である。
通常のヘルニア摘出術後の再手術率は経過観察期間が長くなればなるほど高くなるが、
10年を超えると一定の傾向を認めない。同一椎間での再手術例を再発ヘルニアとすると、
術後5年間程度は再発率が経年的に増加する傾向があるものの、5年以降は一定の傾向を認めない。
経皮的髄核摘出術やchemonucleolysis(わが国未承認)の再手術率や再発率にはばらつきが大きいが、
通常の手術に比べ高頻度で、特に再手術率が高い。
 
今後の課題
 
腰椎椎間板ヘルニアの診断基準が明確に定義されていないので
腰椎椎間板ヘルニア患者の総数の把握が十分にできず、対人口比の発症率やヘルニア患者のなかで
手術に至った比率などに関しては正確なデータが今のところない。
保存療法と手術療法の比較に関しては重要な項目ではあるものの、
論文数が少ないだけでなくエビデンスレベルの高い研究がなされておらず、
今後の大きな課題として残っている。


 
椎間板ヘルニアの診断は簡単です。
MRIを見て、椎間からビョコッと髄核が出ていれば、その人は椎間板ヘルニアで間違いありません。
見たままを伝えるだけなので、小学生でも診断出来る位に簡単なものです。
 
大切なのは患者は検査を望んでいるのではなくて、治療を望んでいることです。
勿論、レッドフラッグを除外する為の検査は大切です。しかし、自ら
 
>>保存療法と手術療法の比較に関しては重要な項目ではあるものの、
論文数が少ないだけでなくエビデンスレベルの高い研究がなされておらず、
今後の大きな課題として残っている。
 
なんて書いているような状態である事は、治療する側も結果が伴わない治療法(保存療法含め)ばかり
行っている事を自ら暴露しているようなものです。
 
ヘルニアを手術で除去しても結果が出ないという事を自ら述べているのと同義であり、
効果の乏しい的外れな薬ばかりを処方しているのが現状です。
にも関わらず、低侵襲だ短期間だのと新しい手術方法は開発され、メディアに取り上げられる度にわんさと
患者は詰め寄るものの、蓋を開けてみれば古典的なラブ法が一番結果が良かったりしているのも事実です。
しかし、そのラブ法ですら100%ではない。この理由に関しては以前書きました
 
そもそも、ヘルニアが神経を押さえつけて腰下肢痛を発症しているんだったら、
さっさと手術をすりゃ良いでしょという話ですわ。それにも関わらず、医者は保存療法を先ずは勧める。
何故、椎間板ヘルニアを切らない選択を患者に強いてくるケースも存在するのか。
 
切っても良くならないケースを多く見てきているからでしょう。
手術しても良くならないと患者にどやされるのは医者です。
その為に、保存療法で出来るだけ粘りきろうとする気持ちも分かります。
但し、その大半の保存療法すらも的外れであったりして。(後述します)
 
上記のガイドラインの中で正しいと思う内容は、
>>腰椎椎間板ヘルニアの手術適応は急性の膀胱直腸障害を呈した場合
この一文のみです。これが本当の椎間板ヘルニアの症状です。
この場合は、麻痺も伴います。
何度も書いて恐縮ですが、知覚鈍麻ではなく麻痺です。
 
麻痺という感覚が分からない方も結構いらっしゃるようですが、
筋力の低下や知覚鈍麻なんてものではありません。
例えを探すのが難しいですが、簡単に言えば、脊髄損傷の完全型をイメージしてみれば
良いかもしれませんが、熱感も冷感も触感も運動の感覚もまるっきりゼロの状態です。
この麻痺と、痛みや痺れ、筋力低下や知覚鈍麻はまるっきり正反対のものです。
 
ついでに書いておくと、上ガイドライン内で
>>重篤な神経脱落症状を伴う場合
とありますが、椎間板ヘルニアでこんな事が起きるんかいなと。そんな話は聞いた事がありません。
念の為に書いておきますが、知覚鈍麻が酷くなった結果、麻痺に移行する事はありません。
「病院でこのまま痛みや痺れを我慢していると麻痺になるよと言われた」
という患者も来院しますが、生理的にまるっきり異なる現象が突然変異する事はありません。
 
一見小難しい事を書いているように見える椎間板ヘルニアガイドラインですが、
結局のところ、何にも分かっていないという事がこれで分かったと思います。
当ブログでも書いている、「椎間板ヘルニアに対しての疑問シリーズ」もご覧になって頂ければ、
より一層ヘルニアに対しての日本の医療が間違えているかが分かるかと思います。
 
腰痛ガイドラインで振り分けられ、椎間板ヘルニアと診断された日には、
こんな恐ろしいガイドラインが待っているのですね。
 
湿布も効かん、
薬も効かん、
注射も効かん、
どうしよう…。
 
そんな時に待ち受けているのが、
「手術しましょうか?」の一言です。
これだけ痛みに堪え苦しんでいる状態では、ついつい首も縦に振りたくなりますね…。
 
しかしそれ以前に、湿布も薬も注射も貴方の症状に対しては完全に的外れなのです。
そもそも、ヘルニアが神経を触っていたところで、痛みも痺れも出す訳がないのは散々書いてきました。
そして、その痛みや痺れはガイドラインで振り分けられる「神経症状」群ではありません。
 
痛みや痺れのヒントはhttp://blogs.yahoo.co.jp/anti_white_supremacy/8604794.htmlで書いています。
そりゃ各種保存療法の段階でも良くなる訳がないですわ。
皆が皆ではない事は分かってますが、
医者はヘルニアを神経症状だと思っているのでしょう。
ただ、それだけです。
神経症状だと思っているから神経症状を抑える治療法を患者に対して行います。
 
しかし、私はヘルニアを神経症状だと思っていません。
その為、アプローチ法が異なるのは当たり前であり、医者から散々言われ続けてきた内容とは
まるっきり異なる解釈で話しをする為、既存の保有知識で来院された患者側は戸惑うかもしれません。
 
但し、どっちの理論が正しかったかなんて話は、改善した患者が答えを持ってきてくれます。
 
だから、我々鍼灸師も現代医学の隙間産業的な仕事ばかりをしているのではなく、
正々堂々と理論を立て、結果を出し、患者を治さねばならんのですよ。
医者の顔色を見て仕事をしている内は患者は治りません。本当に。
 
※余談ですが、ガイドライン内にある一文で、
 >>Lasegue徴侯などの神経緊張徴侯が強陽性で重篤な神経脱落症状を伴う場合 と書かれてますが、
  神経脱落症状とは膀胱直腸障害を発生させる麻痺を示唆した状態です。
  脱落状態で神経学的所見を全く取れない患者に対しては、ラセーグの陽性も陰性もありません。
  それにも関わらず、>>神経緊張徴侯が強陽性 だなんて絶対に起こりえません。
  この内容には随分と多くの矛盾と疑問が付き纏います。
 
  何となく言いたい事は分かります。
  実際に患者は似たような状況を示す事はあります。
  しかし、患者を仰臥位にし、患側の腸骨が逃げぬようにグッと押さえ、膝関節伸展位の状態で挙上した場合、
  引っ張られているのは神経だけではないですね。もっと大切なものが強伸張状態に陥ります。
  何故、該当箇所が強伸張状態を日常的に持続してしまっているのか。
  そして、ラセーグのような神経学的検査に於いて、強く痛みを発するのか。
  これらを統括する母体はどこか。
  患者の話を良く聞けば、簡単に答えは導き出せるはずです。
 
 青森から鍼灸治療の意識改革を~
 
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