藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

椎間板ヘルニアに対しての疑問5

前回は、介達牽引について考えてみました。
前項で前述した通り、椎間板ヘルニアの患者に対して牽引を行う目的は、
椎間から脱出(突出)しているヘルニアが神経根に触れて痛みを出しているという
理論が下地となっている方々が、牽引によって椎間を広げ、
除圧を行う目的である事に意義を求めている手段となるものです。
 
その為、「ヘルニア=痛み」と考えている方々等にとっては、牽引を行う目的というのは、ある意味
正しいという解釈が出来ます。しかし、現実問題として成果が上がっているかと言ったら、
まるっきし成果を上げられていないのが現実です。
 
症状が強く出ていない患者に牽引を行えば、腰部筋群のストレッチ効果ともなり、
要はサッパリしたという結果を残す事は出来るかもしれませんが、
原発の取り違えにより、その場限りのサッパリ感しか得られないと思います。
 
前項の患者のように劇症化するケースは少ないかもしれませんが、
無効治療で終わる患者群のパーセンテージは大変高いものと思われます。
治療という言葉の解釈は人それぞれかもしれませんが、
 
「その場限りの効果」 「治療後2~3時間だけしか効果を実感出来ない」
 
この2つの効果も、データに加えて結果が出ていると大々的に宣伝しているケースも
多くあるのが現状です。確かに、効果は出たかもしれません。
しかし、それは持続性のある効果とは違い、上記二つに関しては、私は無効治療でしかないと受け止めます。
 
では、牽引の話に続き、今回は病院で処方される薬から椎間板ヘルニアに対して考えてみましょう。
有名なNSAIDs(エヌセイズorエヌセイド)です。別に読み方はどうでも良いですが、
患者が一般的に見聞きする薬の名前としては、ロキソニンが有名かと思います。
 
全部コピペすると長いので、作用の部分だけ抜粋すると、
 
【働き】
http://www.interq.or.jp/ox/image/dot/dot.gif炎症をしずめて、腫れや発赤、痛みなどの症状をおさえます。熱を下げる作用もあります。
ただし、対症療法薬ですので、熱や痛みの原因そのものを治すことはできません。
 
【薬理】
http://www.interq.or.jp/ox/image/dot/dot.gif炎症や発熱を引き起こすプロスタグランジン(PG)という物質の生合成を抑制します。
プロスタグランジン(PG)の合成酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX)」を阻害することによります。
 
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炎症部位では、ヒスタミンやブラジキニン、ロイコトリエン、プロスタグランジン(以下PG)が放出されます。
ロキソニンはCOXを阻害し、PGの合成を抑制し、痛みの閾値を下げないようにするのが目的となります。
通常、人間の感覚(痛覚)というものは、ある程度の外圧(歩く、座る、寝る姿勢も含み)は、
痛みとして感じませんが、強くつねられたり、お尻を叩かれたりすると、「痛み」として認識します。
 
これが、炎症が起きPGが放出される事で、この痛みの感覚が敏感になり、
ちょっとした動作でも簡単に痛みとして感じるようになります。
この痛みのライン(閾値)をPGは下げてしまう為に、通常時よりも痛みの感覚に対して鋭敏になります。
 
上図のように、NSAIDs(取り敢えず分かりやすいように今は以下ロキソニンで…)は、
シクロオキシゲナーゼ(以下COX)の阻害薬であり、痛みの増強物質となる、PGの合成を抑制し、
痛み閾値を下げない状況を作るのが目的です。
 
んで、小難しい話はここまでにしておいて、
椎間板ヘルニアと診断され、腰下肢痛患者がロキソニンを飲んでも「効果がない」という声が
圧倒的多数を占めているのは、過去のブログをご覧になっている方にはピンときたかもしれませんが、
 
今現在発症している腰や下肢の痛みって「炎症」なのか?という問題です。
 
ヘルニアによる痛みの機序を炎症として捉えている医師の場合、
神経根にステロイド(抗炎症薬)を注射したりする場合もあると前項で記載しました。
ただ、これも大した効果が無い。
そしてTrPブロックでもステロイドを注入する場合もありますが、目覚しい効果は現われない。
効果が無いと判断された治療手段を見続けていると、そもそも炎症ではないのでは?
との疑問が浮かびますね。
 
椎間板ヘルニアと診断され、腰下肢痛に悩む患者の大半の共通点は、
・痛みが移動する ・日内変動がある ・姿勢変化で症状が変化する
が挙げられます。このような症状は炎症とは言い難いですね。
 
そもそも炎症の4大徴候とは、
発赤(;rubor)、熱感(calor)、腫脹(tumor)、疼痛(dolor)です。
機能障害も含め5大徴候と言っている方もいるかもしれませんが、
腰下肢痛を伴う患者に関しては、疼痛(dolor)以外の発赤や熱感、腫脹は見られていますでしょうか。
 
逆に症状発症箇所は冷感を伴っていたりと、
熱感とは真逆の症状を呈している方が圧倒的多数ではないでしょうか。
 
しかしながらも、ロキソニンもある程度効果があったと認める患者がいるのも事実。
ここからは推論でしか無い為に賛否はあるでしょうけど、
 
「足腰が痛い!」⇒「でも動かなきゃならん!」
という、痛みに堪えて動かぬ体を動かせば、
運動生理学上、人間は症状発症箇所と同一範囲に(主に下肢外側)に、
通常時より多大な負担が掛かると思います。
 
このように無理に動きを取る事で、微細な筋断裂を生じるケースもあるでしょう。
この時に炎症というのは少なからずとも発症します。
恐らく、この段階でロキソニンを飲んだ方は、下肢痛が和らいだ感覚を得られるのでしょう。
しかし、下地となる腰下肢痛はまた別問題なので、全く変化を感じられないのだと思われます。
 
では、腰下肢痛の痛みとは何なのか。
 
炎症性の疼痛ではない。
神経性の疼痛でもない。
炎症性でも神経性でもない…。
 
という事は、やっぱり筋肉なのではないでしょうか
 
筋肉となると、痛み成分が何なのかは直ぐに目星が付けられます。
薬が全く効かない理由も説明が付けられます。
 
そして重要課題なのが、鍼やマッサージでも何でも良いですが、
簡単に言えば硬くなっている筋肉にアプローチする事で、弛緩作用は生まれます。
しかし、これらの治療に於いてもその場限りの効果しか得られていないケースが多いというのも事実。
何で、その場限りの治療に陥ってしまうのか。
 
それは何故なのか。
 
疑問を掘り下げると行き当たる答えは見えてきますね。
理論先行型の治療が出来るようになってこそ、鍼灸業界の発展はあるはずです。
業界はコノ部分を疎かにしてきた傾向があります。
 
一つヒントとしては、私はこの非常に低い視点で治療を行う事が多いです。
効果を出す治療には必ずリスクが付き纏います。
その為、我々は常にリスクを背負って患者と向き合います。
しかし、患者にはリスクを背負わせないようにしなければなりません。
その為にこの姿勢をしなければ出来ない治療が多くあります。
 
別に私の口が臭いからといって、この姿勢をしている訳ではありませんよ
 
「たばた食堂のタヌキ蕎麦大盛りをいつも食べてます」
なんて気軽な話をしながらも、絶大な効果を出せる治療家になるべく、励まなければですね。
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