藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

椎間板ヘルニアに対しての疑問4

「昨年の12月12日に腰椎椎間板ヘルニアの手術をしました。
11月中旬に腰痛と右足の坐骨神経痛が発症し、街の整形外科でMRI診断でL5とS1間の
ヘルニアと診断され保存療法をしていましたが牽引によって右足の痛みが著しく悪化し、
激痛と歩行困難で近くの総合病院に救急車で運びこまれ、動けない、激痛、右足の感覚が麻痺する状況の為
顕微鏡下で摘出手術を行ないました。手術は成功に終わったとのことです。

手術後、右足の痛みは残ったものの、歩けるようになり、昨年末に退院し
それなりにリハビリを進め、30分+αの歩行や1時間半の座位が
出来るようになったのですが、1月末に2時間弱座ったところ腰痛が発生し、10分も座れなくなってしまい、
3月上旬の現在も状況変わらず、寧ろ悪化しているような状況です。

症状的には手術跡周辺のギリギリした痛み中心に腰からお尻まで広範囲で痛みが出ます。
座るとすぐに痛みが出て、我慢できなくなります。歩行時は痛みが軽いので
毎日20分強散歩するようにしていますがそれ以外は横になって安静にしています。
安静時も波はありますが痛みがあります。なお今は右足の痛みはほとんどおさまっています。

また病院で腰痛体操のプリントを渡されましたがどれも腰に響いて今は控えています。

主治医はレントゲンもMRIも異常がないのでヘルニアの再発でなく筋肉系の問題ではということですが、
明確な原因はわかりません。ブロック注射や鎮痛剤で対応していますが、あまり効果がありません。
今は「時間がかかるものだから」と様子見の状態ですが悪化して一ヶ月以上経った今でも改善の兆しがなく
このままでよいのかどう手を打てばいいのか迷っています。」         相談日時2013-03-08 17:04:56

今回は、とある相談サイトに寄せられている内容から、椎間板ヘルニアに対して考えてみましょう。
2013-03-08 17:04:56に寄せられた相談内容なのですが、私が以前から散々書いていた内容が、
まるで丸写しされたかのような状況を辿っているのが分かると思います。
 
そうなんですね、過去に於いても、痛みや痺れに悩む患者がどうしようもなくなってから相談されたり、
鍼灸治療に駆け込むまでには、大抵どの患者も同じ道程を辿る事になります。
その為に、患者の過去の状況と治療を重ねる事での未来予測が出来るようになってくるのです。
 
要は、病院に行ってもどうにもならんって状況になってから動き出すのが人間ってもんです。
本音を言えば、四の五の言わずに早期段階で来院頂ければとは思うのですが、
この点は私達の業界の力不足とも言えますので反省しております…。
 
他の治療家の方がどのような見解を示すかは分かりませんが、
私が治療を行った場合という尺度で書けば、
昨年末の牽引前の段階で治療を開始すれば1~2回で済んだでしょうけど、
今の段階では3倍程度(多めに見積もって5~7回位)の治療回数と1ヶ月弱の期間は要する事になるでしょう。
 
では、このように劇症化する患者に共通している点は、
病院でもマッサージでも整体でも何処でも構いませんが、
リハや治療時に、どこかの段階でヘマをされているという点です。
 
痛みが強く出ている段階で、腰にバンドを引っ掛けて牽引されたり、
急激な捻転や圧力を不用意掛けられて、痛みが強く発生するケースは少なくありません。
 
上記の患者さんの場合も、牽引をしなかったら急激な痛みに襲われる事なく、
手術をせずとも回復出来た可能性は大いにあった訳です。
 
痛みが出ている時の患者の姿勢を見れば直ぐに分かるかと思いますが、
疼痛抑制姿勢は顕著に出ていると思います。
姿勢変化を起こす程の痛みを庇っている段階という事は、
各当該筋肉の異常短縮や、それに拮抗する筋群の異常伸張が起きているのは明らかで、
相当患者はへばっている状態である事を示しています。
 
そんな時に牽引でもしようもんなら、腰部の短縮している筋群を無理矢理引っ張ってしまう事になり、
痛みが強く出てしまうのは当たり前ですね。頚椎のヘルニアでも腰椎のヘルニアでも、
牽引を行う意義や目的としては、椎間板を引っ張って除圧を試みる為だとは思いますが、
私には傷口に塩を塗る行為にしか思えません。
 
上記の患者さんの現況の情報をピックアップしてみると、
 
・2時間弱の間、座り続けた事により腰痛が悪化。その後、座位時間は急激に短縮し、悪化傾向である。
・手術痕周辺のギリギリした痛みの他、腰からお尻に広範囲の痛み。
・歩けば痛みが軽くなる。
・右足の痛みに関しては、今はおさまっている。
・腰痛体操を行う事で(どんな体操かは知りませんが)腰に響く。
・ブロック注射や鎮痛剤では、あまり効果がない。
・発症より1ヶ月経つが、改善の兆しがない。
 
医師の見解としては
 
・レントゲンでもMRIでも異常が無い為に筋肉の原因ではないかという事だが、原因は分からない。
 
ですね。そして、こちらの患者さんの治療を行う為に必要な情報は、
 
・長時間に渡る座位での静的姿勢で悪化。
・歩けば痛みが軽くなる。
 
です。この2点で原発は特定出来ますね。これで治療箇所は一点に絞られます。
実際には、こちらの患者さんの場合は手術も行われているので、
手術痕への処置も必要にはなってくるでしょうけど、上記2点の情報があれば十分事足ります。
 
どのようなブロックを行ったかは書かれていないので分かりませんが、
効果が芳しくなかった為に医師も原因は分からないと言っているのでしょう。
しかしながら、原因は筋肉の問題から派生する症状、愁訴としか考えられません。
 
これで、原発を定められた方々は牽引の意味は一切無いと直ぐに分かるはずです。
何故なら、牽引では原発の筋肉へは全く何の作用も起こす事が出来ない為、
幾ら牽引しようと無効でしかありません。
 
しかも、防御反応の出ている筋群は無理に引っ張られるもんだから、
悪化させるという要らぬオマケまで作ってしまう事になるのですね。
 
患者は人生を掛けて治療を受けているって事を忘れちゃいかん。
 
病態も見ずにライン作業の如く35点の小遣い稼ぎをし続けていたら
患者は大変な事になってしまうって事です。 

理論が違えば治療内容も異なります。
 
患者のニーズは治りたいという一心なのですから、
ニーズに応えられれば理論や治療法なんて何でも良いと私は思います。
 
しかし、病態把握を間違えればこのように悪化させる危険性も潜んでいるという事を、
今一度肝に銘じて治療に励まなければならないですね。
 
 
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ほんまかいな
 
牽引は
健康じゃないと
やりません
    
          こうた

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  ~針治療から病態定義の見直しを~