藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

椎間板ヘルニアに対しての疑問3

先月から今月頭に掛けて、往診の他に県外の中規模総合病院に断続的に出入りさせて頂いていたのですが、
多数のスタッフを抱えた中でのチームワークには本当に感心させられると共に、
私には合わないな(苦笑)と再認識させられた時間を過ごさせて頂きました。
 
基本的に内部でも意見の食い違いはあるでしょうけど、そこは影に潜められたまま
上の人間の裁量次第で術式や術後管理、患者の症状改善の度合いや入院期間、リハビリの進み具合が
変化していくのは、どれだけコメディカルの方々が素晴らしい知識と技術を持ち合わせていても
跳ね除けられてしまうのは、非常に心苦しく「組織ってこうなのね」と
 
病院に限らず、どこの社会でもこんなものなのでしょうけど、
これを「仕方ない」とコメが諦めてしまうと前に進むものが進まない。
当時より意見を闘わせる人間も内部にはいたでしょうけど、
梨の礫であった事が、ヘルニアに対しての現況の治療手段を見れば分かります。
 
椎間板ヘルニアに対しての診断~治療(手術)~治療後のケアに対して、
入り口を完全に間違え続けた為に矛盾と疑問ばかりの結果を残し続け100年も経ってしまったのです。
 
今回は軽く内容を変えて医科で椎間板ヘルニアの手術をする為に発生する費用から考えてみたいと思います。
我々が保険を用い鍼灸治療をする時も、厚労省により定められた治療費があるのと同様、
医科の保険診療も同様に全国一律で定められています。
 
「椎間板摘出術
  1. 前方摘出術…26,780点
  2. 後方摘出術…18,090点
  3. 側方摘出術…21,700点
  4. 経皮的髄核摘出術…12,930点
注:2について、2以上の椎間板の摘出を行う場合には、1椎間を増すごとに所定点数に9,045点を加算する。
   ただし、加算点数は36,180点を限度とする。                                      」
 
1点につき10円となりますので、   
  1. 前方摘出術…267800円
  2. 後方摘出術…180900円
  3. 側方摘出術…217000円
  4. 経皮的髄核摘出術…129300円
です。勿論、この他にベッド代や食事代、コルセット代等、入院に際しての細々した出費を見た場合、
入院期間にもよりますが30万前後~40万弱位は掛かるようです。
その後も経過観察の為に通院を余儀なくされるでしょうから、もう少し掛かると思います。
 
余談ですが、私が事故で入退院を繰り返していた10ヶ月程度の間は、
患者の加入していた生保の支給の関係で、
あの手この手で長期入院をしていたツワモノのヘルニア患者もいましたが、今はどうなったか知りません
 
足腰が痛くなった患者が整形外科で写真を撮って、たまたまヘルニアや狭窄が見つかった場合は
ヘルニアや狭窄の器質的異常を痛みの原因と断定し、治療を進めていく事になるでしょう。
 
ガイドラインにも手術と保存療法では経年経過による痛み痺れのパーセンテージは
同程度であると示している為に、昔のようにバンバン手術に踏み切れない状況ではあると
聞いていますが、ヘルニアを痛みの原因として投薬やリハビリ、注射等を数ヶ月も繰り返し
全く良くならなかったら最終的には結局手術に踏み切るのが現実です。
手術に踏み切るまでの保存療法的治療の段階で、一体幾らの費用と時間を掛けてるのかと思うと恐いですね。
 
術後、痛みや痺れの症状が消えなかった場合、
 
「時間が経っていたから痛み痺れが消えない」
「ヘルニアが大きかったから取りきれなかった。まだ僅かに神経に触れているみたいだからもう一回手術する?」
「ヘルニアが原因ではないかもしれない」
「精神科を紹介します」
 
等々、言いたい放題です。
 
周囲の人やネットでヘルニアに対しての知識は仕入れる事が出来たとしても、
既に間違いだらけの医学から構築されたヘルニアの情報は、間違えた情報しか伝わってきません。
しかも、その情報は誰も間違っているとも気付くことが出来ない為に、誤りの情報も正しくなって浸透します。
ヘルニアに対して疑問を持ち、医師と闘える患者は一部でしょう。しかし、手術をしてしまったらもう遅い。
 
まだまだメジャーなラブ法で大きく切り広げられた傷口は、縫合後、
皮膚は引っ張りあげられ、体表から深層までの可動性を激減させる結果となり、
中長期的にQOLは低下する事にもなるでしょう。
 
高額療養費の対象にもなるでしょうし、
生保の事は詳しく知りませんが、加入している事により患者の実質的な負担は少ないかもしれません。
しかし、患者は大きな傷を負う事になるのは間違いないのです。どんな事柄に対しても言える事ですが、
 
傷が入ってしまった以上はもう遅いのです。
 
後々に「あれは間違いでした。スミマセン」「二度と同じミスをしないようにします」
と口で言われたからといって、患者の心身の傷が消える訳ではありません。
患者は大きな憎しみと痛みを抱えて鍼灸治療を受ける事になります。
 
ヘルニア手術の名医も何もあったもんじゃない。
ヘルニアが痛みの原因で無い以上、
ヘルニアを中途半端に切り取ろうが、キレイに切り取ろうが結果は変わらない事に対して気付く事が先決です。
もしも気付いていた上で手術件数ばかりを積み重ねていたら重大な問題です。

前々回のブログで書き忘れた内容があったのでここに追記します。
ドクターのQ&Aで
 
 Q 神経を圧迫するってすごいつらそうな感じがしますけど、症状としてどのようなものがあるんですか?
 A 腰椎椎間板ヘルニアの症状はまず腰の痛み、そしてお尻から足にかけての坐骨神経痛です。
   圧迫される神経というのは坐骨神経と呼ばれ、腰から足先にかけて伸びています。  
 
神経を圧迫して痛む理論や手術成績、術後の経過については置いておいて、
沢山の患者を見ていれば、多くの患者の話や症状の経過もドクターは見聞きしていると思います。
そして、このアンサーの中には原発を特定出来る大きなヒントが隠れています。
 
椎間板ヘルニアの症状は、まず腰の痛みが起こり、お尻から足にかけての痛みが出ると書いています。
理論が異なると時系列による情報も蔑ろにされている感じはありますが、
個人的には重要な答えが書かれていると思います。
 
まず腰痛 その後に下肢痛
 
何で先に腰痛なのか、何で腰痛の後に下肢痛が出るのか。
髄核が脱出(突出)しているからといって、腰と下肢の痛みが同時発症ではないのです。
もう一つ言えば、坐骨神経痛という概念も捨てるべきです。
末梢神経には膜がある以上、神経根で何かが触れていようが坐骨周辺で何かが神経に触れていようが、
神経が痛むだの痺れだのが発症する訳がありません。
 
本当の神経痛というのはウイルスによる侵食や転倒や手術で発症する神経損傷時、
これに派生するカウザルギー等に限局されるのではないかと思います。
 
症状の度合いや発症時の環境こそ個人差もあるでしょうし、
突発的な発症では痛過ぎて患者自身も気付く暇も余裕もないかもしれませんが、
私自身も多くの腰下肢痛を訴える患者はこの順序を辿っているように問診時で伺えます。
時系列を考察する事により、治療は急激に応用範囲が拡大し、
結果として様々な症状に立ち向かえる治療法を構築する事が可能となるはずです。
 
原則的に鍼灸適応と判断した症状に関しては、
医師が告げた診断名より紐解いて鍼灸の治療法を構築しようと思うと、見事にドツボにはまり治せません。
 「椎間板ヘルニア」で本を開けば、神経を圧迫しているから痛みや痺れが出ていると書かれている為、
考える間もなくお手上げとなる(苦笑)。かと言って、手術で良い成績が出ているかと言ったらそんな事もない。
 
どうでもよい診断名から治療を構築するのではなく、
患者の発する症状から治療法を構築しない限り、医療と患者の明日に光が差し込むことはないのですね。
 
イメージ 1
 
通常の椎間板ヘルニア摘出術の再発率と再手術率
 
顕微鏡下ヘルニア摘出術の再手術率と再発率
 
経皮的髄核摘出術とchemonucleolysisの再手術率と再発率
 
症例数30以上、平均年齢30歳以上、follow-up率75%以上、最短follow-up期間1年以上、
平均follow-up期間2年以上のシステマティックレビューによれば、
術式を問わずfollow-up期間が長くなればなるほど再手術率は高い傾向があった。
通常のヘルニア摘出術では、平均6年前後の報告で4~14%であった。
顕微鏡下ヘルニア摘出術はfollow-up期間が3年程度の報告しかないが、2~7%であった。
術式間の差をはっきりと比較した文献はなかったが、再手術例のなかで同一椎間の手術例の割合は
通常のヘルニア摘出術が49%(38~60%)、
顕微鏡下ヘルニア摘出術が64%(48~78%)、
経皮的髄核摘出術が83%(76~88%)であり、経皮的髄核摘出術で同一椎間の再手術率が高かった。
 
某クリニックでの再発率の回答
Q、再発率は?
A、内視鏡ヘルニア摘出術(MED法)は平成16年11月から始めて早くも1800例行いましたが、
  1年以内で約3%です。
 
青文字のデータを信じるかどうかは、ご覧になっている方々次第かもしれませんが、データを読む上で重要な事は、ここのクリニックでMEDを行い、再度、ここのクリニックでヘルニアの再発を確認したデータが3%です。
 
痛みや痺れに耐えかね手術を行い、数日~数ヶ月、再度痛みや痺れが出てきたとしましょう。
再度同クリニックでMRIを撮り、ヘルニアが認められた場合はデータに加えられ、
ヘルニアが認められずとも同様の痛みや痺れが認められなかった場合は、
パーセンテージに加算されないでしょう。そして重要な事は、痛みや痺れを再発した場合、
同クリニックで診察をせず、違うクリニックで診察を受け、再手術なりをした場合もデータには残らないのです。
 
しかし、実際のところは1年という短スパンで見なかった場合の再手術率は上記の赤字にもある通り、
通常のヘルニア摘出術が49%(38~60%)、
顕微鏡下ヘルニア摘出術が64%(48~78%)、
経皮的髄核摘出術が83%(76~88%)
となります。再手術率は非常に高い数値ではないでしょうか。
 
この経皮的髄核摘出術(PN法)は、ヘルニアを起こしてしまった患部に局所麻酔をかけて
背中に直径4ミリ程度の管を刺し込み、X線透視下(もしくはMR透視下)で確認しながら
突出した髄核を摘み出します。
 
もう一度原点に立ち返り、現代の医学が奨める手術の術式による術後の差を見ると明らかにおかしいですね。
 
「ヘルニアを取れば痛みや痺れが取れるんじゃないの?」
との疑問は私だけではなく、患者が一番に大きく沸く疑問だと思います。
何故、術式の違いでコレほどまでに再発率と再手術率の違いが起きるのかという問題ですね。
前にも少し触れた内容ですが、ヘルニアの再発率及び、痛み痺れの再発率の違いは、
全身麻酔か局所麻酔か、術後の安静にしていられる期間がどれだけ長いかの違いだけではないのでしょうか。

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