藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

向精神薬由来症状/離脱症状の安全な取り組み方の検討と治療 7

向精神薬の弊害による症状群も、星の数ほどある疾患名に上手に名前を変えられて闇に葬りさられているだけで、数十年前からこのような問題は存在していました。只、それを知った上での対処法も、栄養その他で末梢の神経伝達物質や末梢の内分泌を弄る程度で、そもそもの罹患部位となる中枢の神経伝達物質や中枢の内分泌の問題には誰も突っ込んで加療していかなかった為、脆弱性の高い手段しか存在しない歴史があります。

離脱症状は断薬後も残存する症状群や治療反応性、そして経過を追跡する限り、中枢神経の損傷です。大脳や小脳、脳幹、脊髄由来の諸症状です。当該薬物が何処に反応を及ぼしているかを考えれば、極めて当たり前の事かもしれません。

多くは誰にも理解されない事に苦悩している日々かもしれませんが、そのような事はこっちも同じかもしれません。しかし今は、その欲求はないほうが楽な事に気が付きます。前が無ければ今のように思う事もなかったので、当時の事も今にして思えばメリットかもしれませんが、分かってもらいたいを前提とすると、何処かに無理が掛かり、その無理は余計な問題が生まれ、様々な面でデメリットが生じる印象を持ちます。また、断薬したい集団も数多くありますが、分かってもらえたの欲求が満たされた事がイコールとして断薬へ導かれる事もなく、無理な断薬で死者が出ている情報は幾つも入ってきており、情報提供の在り方も幾度となく見直す必要性も感じます。

勿論、もっと小さなコミュニティ間でも、危険性を知らぬなか「飲み続ければ危ないんだってよ」レベルで断薬や減薬を促し、余計危ない状況に陥っている例も少なくありません。人間は集団化するほど情報の内容は感情論に近くなり、その結果として安全性が失われていきます。その為、症状を抱えているのは自身であり、誰にも理解されないを前提とするのはネガティブな事ではないと思います。

~今の生理と脆弱性を知った上で考えるベンゾ結合部位の状況~

リガンドが確定的な場合、ある程度の現象は絞って述べられるのではないかとの解釈も可能です。ベンゾ離脱は数え切れない程の症状が惹起されますが、それらは結果論で、ダウンレギュレーションやベンゾサイト(主にω1、ω2)の損傷による雑な開口やダメージによる派生と推測され、更に論点を絞れば要トリート部位はベンゾサイトである事も分かります。

それらのトリートが同一薬物の増減や類似薬物で行われる可能性は極めて低いと考えられますし、SSRISNRI、メジャーその他でも、枝葉の症状の改善自覚は得られても、根本的な問題解決には寄与出来ないどころか、中長期的な将来を視野に踏まえた場合、リスクが上回ります。イメージが付き難い場合は、痛みを抱える変形性膝関節症患者に対し、筋力が低下するからと鎮痛剤を飲ませて歩け歩けと促している内に、関節破壊が更に進行するような事態と等しく、それこそ薬物を離し難い状況に陥ります。

ベンゾ離脱を背景に抱える中で考えるグルタミン酸脱炭酸酵素の働きと日常生活の送り方~

ベンゾ離脱の基礎概要に、ダウンレギュレーションによる自己分泌能力の不健全な状況と、レセプタ側の機能又は器質的損傷が示唆される状況により、生物的な機能全般まで失する懸念が生まれます。回復過程に於ける日常生活内での時間を如何様に送るかで、僅かでも症状を柔和にする事が可能であれば、中長期的に及ぶ闘病も、闘病と呼称しなくても良いレベルまで落とす事も出来るかもしれません。抑制系神経伝達物質のGABAのレセプタは脳や脊髄に散在し、生成は興奮系神経伝達物質グルタミン酸が元となりますが、触媒となる脱炭酸酵素は低温の環境、低酸素の環境で活発化します。

見方を変えると、ネガティブな環境でGABAは多く生成され、他の興奮系神経伝達物質となるドパミン等の分泌も自律的に抑えられ、心身の平衡を保とうとします。では、ベンゾ離脱を抱えた状態で、低温や低酸素、又は思い付く限りのネガティブな環境に陥った場合、その人間が表現する言葉は何でしょうか。「(離脱)症状が悪化した」です。ベンゾ離脱を基礎に持つ場合、GABAの分泌とレセプタが都度のネガティブな環境に適応出来ない状況故です。その結果論として、先のモノアミンやグルタミン酸が過剰となり、且つ後者は過剰分泌によりニューロンに傷害を与える事が示唆されています。

その証拠とし、無理な断薬や急減薬が背景にある場合、極めて長期に及ぶ中枢神経症状が残存してしまう理由として考えられます。では逆の見方をすれば答えもある程度は見えてくるのかもしれません。現場感覚では、多くの人間は症状が辛い故に冷静な判断が出来ず、又は服薬中の薬が原因だと既知した場合、周囲の扇動もあってか行動を急ぎますが、これが最も不幸な将来を迎えます。ベンゾに限らず他の中枢神経に反応を及ぼす物質全般に述べられるかもしれませんが、中枢神経に至る物質を取り込んでいる場合、既に一心同体であるという覚悟を持つ必要があるのかもしれません。ステロイド薬の離脱は有名かと思います。

そのように考えれば、引き剥がす遣り方次第では大きな弊害が生じるのはイメージに容易いかもしれません。冒頭の通り、GABAが生成される酵素がネガティブな環境下で活発化される事で、その時に応じた環境に適応しようとポジティブに抑制反応を全身状態へ反映させようとします。しかし、ベンゾ離脱が基礎に場合、ネガティブの度合いに比例して身体状態に大きく反映されると考えると、如何にあらゆる閾値が低迷しているかも分かるかもしれませんし、日常生活上での各々の対応策も生まれると思います。

ベンゾ離脱を背景に抱える中で考えるグルタミン酸脱炭酸酵素の働きと日常生活の送り方2~

低温や低酸素等のネガティブな環境ではGABAを生成する酵素が活性化し(補足ながら補酵素はビタミンB6です)、全身的な抑制が働きますが、酵素補酵素の話はベンゾ離脱を基礎に持つ場合、決して無駄ではないと思いますが、元も子もない話かもしれません。ベンゾに頼っていた手前、前駆体となるグルタミン酸から環境適応量のGABAが生成し難く、諸々の興奮系神経伝達物質が過剰となり、身体/精神症状が鋭敏に表現されると推測されます。先ほどの酵素/補酵素の話に戻ると、種が多過ぎて水が足りずに芽が出ない事になります。

結果、抑制の効かない身体では血糖値上昇、免疫力低下、筋力減少、骨形成低下、外傷等による治癒遅延、脳細胞の萎縮、ニューロンの生成阻害等の諸々の症状が代表的に訪れますが、これらはあくまで交感神経が持続的に亢進していれば起こる現象の為、ベンゾ離脱に限らず自然発症でも十分考えられます。ベンゾ離脱が多大且つ継続的に害を及ぼす理由に、自己分泌の不全状態、及びレセプタ側の異常と推測される事から、自然発症性とは異なる恒常性の乏しさであり、また、症状の深刻さは暴露時間の長短で傷害度合いも決まると思います。

その為、少し具合が悪くなる環境に身を置いた場合、必要以上に全身症状が長期化、増悪し、都度述べている断薬後も数年数十年症状が継続する理由を見ても、自力回復が不可能な程の損傷が無ければ継続しないと捉える事も出来ます。この概念がない場合、又は概念を持っていたとしても以後のリスクを把握していない場合は頓服的にベンゾを追加したり、増量するのが一般的かもしれません。中長期的にベンゾ離脱を持つ人間が追加/増量しても従来の効き方とは異なるケースが散見されるのは、頓服なり増量なり、症状が落ち着けば減量なり、服薬時間を早めたり遅めたりと、血中濃度の落ち着きの無さが以後の症状の落ち着きの無さとして表現され、第三者的にも評価不能になります。

定量維持が前提の、ベンゾ離脱を知らずに漫然と服薬している層が最も治療安定性が高いという皮肉な結果になる事も以前述べましたが、その結果からベンゾ離脱を既知とした場合も、定量維持に努める事が現症改善に寄与出来る手段と考えられます。ベンゾを服薬している人は沢山います。そして私はベンゾ離脱を知らない場合には「(こりゃ離脱だな)」と思ったとしても全くタッチせず治療をし続け経過を見ています。(※途中でベンゾ結合を外す懸念のある抗生物質NSAIDs等が介入し、突発的に急性症状を出す患者もいますので、その時はヤンワリと触れます。最も大切な事は、ベンゾ離脱を知らない人にベンゾの話は危険過ぎて出来るものではない事です)

私にとってはベンゾ離脱でも無くても何でも良い訳ですが、ベンゾ離脱を既知とした層のアクロバットな服薬の仕方が不安になる時があります。それらも含め、安定性の保持は患者依存の側面もあるのがベンゾ離脱からの回復となるのですが、一旦今迄の前提を考え直す必要もあるのかもしれません。そもそも論としてベンゾ離脱という言葉を患者が知っている時点で、既に極めてデリケート且つハイリスクな身体/精神状態に置かれていると思います。それらの患者感情も含めての安定性の保持には、様々な角度から見ても時間が掛かる印象は拭い切れないものです。只、常々書いている事は過去にベンゾ離脱を抱えた人が、どのようにしたら悪くなってしまったか、どのようにしたら悪くなり続けたかです。先ずは其処を踏まえ、増悪環境に身を置かなければ、一先ずの安定と症状の改善は成し遂げられると思います。

今の生理と脆弱性を知った上で考える日常生活の送り方~

神経細胞の破壊はサリン中毒が分かり易い為に度々例に挙げています。毒性の高い中毒系は、基本的に暴露は一撃の為、何か月も何年も掛けて増減や服薬休薬を繰り返して拗れていく向精神薬由来症例より想像が付き易いものです。筋肉に存在するレセプタ(Nmレセプタ)に、アセチルコリンが結合して筋収縮が執り行われますが、サリンアセチルコリンが結合するレセプタを塞ぐ為、アセチルコリンの行き場が失われ、シナプス間隙で当該伝達物質が過剰となり神経細胞が破壊されます。

不可逆という表現が世間では一般的で、治らないとされています。只、治る治らない、何処まで治るか治らないかは、薬物治療その他で施行された累積データでの結果ですし、治るか治らないかは、誰かに決められるものでもありませんのでそれはさて置き、事実上の実質的な脆弱性は抱えています。例えば実際の現場では「また腰をやっちまったよ」はザラで、再発例/脆弱性を未だ有する、の範疇に含まれます。神経の牽引力が高まって生じている程度の軽症例から、椎間孔とのインピンジメント等により神経細胞が相当ダメージを受けている例まで様々なので一概には言えませんが、症状改善速度や再燃率は様々な要因で変動します。

只、経時経年で徐々に再発頻度と発症エリアの狭小化、再罹患後の改善速度は急速になる印象は、どのような再発例でも共通している為、人間の治癒力は捨てたものではありません。しかし、各々の再発例は以後の予防と発展に繋げられる要素は極めて高く、重要な情報源になってきます。これらの良化、悪化、再発、脆弱性等々の問題と課題が、試験管や管理された環境下で犬猫に行われた検証結果の基礎理論と、否が応でも日常生活を送り続ける人間の中で判定を取っていく臨床理論の異なりかもしれません。

再発や増悪自覚云々に関しては、耐痛閾値の問題も絡みますが、脆弱部位に対しての身体又は(及び)精神負担の内因、環境その他の外因の暴露量と暴露時間で決定されますが、疼痛性症状の場合は即時的に自覚が得られる為、以後の行動量も自己で抑えられますが、非疼痛性症状は何処まで行動したら良いかの自己判断が出来ない脆弱性も持っています。これをベンゾ離脱で考えてみればどうなるかです。例えばベンゾ離脱で筋硬直等々が発生した場合、指が曲げられなくなる人もいます。靭帯等々の軟化や硬化、肥厚でもなく、神経筋接合部疾患でもなく、自己免疫疾患のような関節包内の炎症所見も取れず、上位/下位運動ニューロン疾患も否定された状況です。

硬直により各々の関節のアライメント異常が生じ、動かし始め、歩き始めにポキポキと音が鳴る人もいます。痛くて曲げられないという理由もあるかもしれませんし、皮膚表在の過剰な血管拡張による血管性の疼痛発赤を抱えての曲げ難さもあるかもしれません。ベンゾ離脱の多くの初期は数十もの症状が複合する為、「よく分からない」が正直なところで情けないものですが、治療も累積する事で症状の数も絞られ、残存する症状が明確になると結果的に症状の原因や成立過程も考え易くなります。

アセチルコリンを由来とするか否かの判定は難しくなく、これらの多くは曲げるのは難儀するも、伸ばすのは容易です。曲げる=収縮です。交感神経と副交感神経がシーソーで動いているとする一般的な表現は未知な部分はありますが、α2レセプタがノルアドレナリンと結合する事でアセチルコリンの放出抑制が掛かり、アセチルコリン ↓ になります。このようにアセチルコリン ↓ の状態と捉えた場合、指の曲げ伸ばしを見る事で、度々触れている本態性ALSとの鑑別も可能かもしれません。経過を追えば更に分かりますが、本態性ALSは原則的に一方通行です。只、ベンゾ離脱に関わるALS様症状は一方通行ではありません。

しかし、このような状態が継続している事は、全身状態も常に脆弱性を抱えている事も示唆されますし、それが自然だと捉える必要もあり、全身管理としての問題を提示し続ける必要が生れます。アセチルコリンや対とする(ノル)アドレナリンは筋肉のみならず臓器等へも及んで機能していますので、当該由来を抱えている内は、全身が常に脆弱性を抱えている見方もでき、それに応じた日常生活の送り方も、環境が許す限り考慮する提案が生じます。

~中枢神経症状と高負荷のステロイド薬介入による再燃例~

ベンゾ由来の中枢神経症状は、あらゆる症状の延長線上に存在するリスクである為、代表的に述べているものの、様々な事情で中枢神経症状は惹起されます。外傷、感染、脳血管障害、代謝性疾患、遺伝性疾患、低酸素出生その他でも生じる為、症状のみで言えば珍しいものではありません。受傷度合いで不可逆的なイメージが生まれるのは脳血管障害等の器質的損傷が明瞭な中枢神経症状かもしれませんが、1つの希望とし、向精神薬由来や参考として取り上げるHPVV症例のような、良い意味で画像所見に乏しい症例は伸びしろが高い事が挙げられます。

只、ひとたび抱えた中枢神経症状が無症候へ進めたとしても、暫くの期間は脆弱性を抱えている事も知る必要があるかもしれません。その思い出深い症例の1つに、下記症例の「7診と8診の間に起きた諸々のエピソード」です。今件はこちら側の治療経過中に生じた薬剤使用による再燃例で、分かり易い為に参考として挙げましたが、向精神薬の離脱を当初抱え、断薬及び無症候となり1~2年経過した後に、薬剤使用がなくても、僅かな拍子で軽度とは言え中枢神経症状が惹起される例も散見される事から、無症候となった上でも不安定な要素は抱える事になるのでしょう。 https://blogs.yahoo.co.jp/anti_white_supremacy/14065281.html ※文字制限の為、前後を省略しています

Sex f  age14 
全身の痛み 体全体がガクガクする 右上肢・右下腿のチクチク感 左鎖骨部痛 殴られるような頭痛 左腰部痛 視力低下 皮膚感覚鈍麻(右半身のみ) 就寝中の不随意運動 脱毛 便秘 お腹の張り お腹がビクビクする 足の冷感 右膝が崩れ落ちる感覚 右手で箸が持てない(当初は自立歩行が難しく、移動は車いす、以後、クラッチ歩行から自立歩行)リズミック メインテート ロキソニン(とん服) ※抗てんかん薬も当初は処方されていたようだが、飲むと具合が悪くなると言う事で1ヶ月程度の服薬で終了している

初診時のヒアリング
右上肢・右下腿の疼痛増悪感や不随意運動が頻発するタイミングは、疲労時に強く起きるとの事。現在(2014/2)、毎日のように登校は出来ないが、所属している部活動(運動部)に見学で顔を出す時は階段昇降が多くなり、当該患者にとっては運動量が多くなる日に諸症状が強くなる。右半身の感覚は全体的に「遠い」と表現される事から、痛覚に異常が起きているか。温冷覚は正常。皮膚は全体的に硬く厚い。HPVV接種後に視力低下が著しく、当院の受診迄の期間に眼鏡を2回変えている。

2014/3 4診
3診目以降、小走り以上の事は出来ないが、日増しに歩行に対しての自信が付く。この頃には杖を外して日常生活を送る事が出来るようになり、~3診目迄は杖歩行での来院が、4診目には杖を外して来院出来るようになる。3診目から4診目迄の期間に平地で2回転倒。一時的に右手首にズキンズキンとする痛みが走るが、この手首の痛みが転倒に伴うものかは不明。便秘、お腹の張り、足の冷えは改善傾向。頭痛は時折出る。視力低下は依然変わらず。             
2014/6 5診
4~5診目迄の期間、就寝中に右上肢と右下肢がピンと硬直したようになる。昼夜問わず、右上肢と右下肢(以前の下腿ではなく)の疼痛が出る。全体的に少々状態としては悪いように見受けられる。
2014/6 6診
発熱が改善されている。投与されている薬(リズミック)を飲むことで左胸が痛くなる事に気付く。
2014/7 7診
部活動(運動部)を再開。部活動では問題なく動けている模様。右上肢・右下腿の痛みはなし。両下腿裏に筋肉痛様症状があるが、恐らく、部活動を再開した事によるものと思われる。確かこの日の針治療は、部活動の終了後だったと記憶している。視力低下は依然変わらず。
2014/12 8診
7診目の治療から約2週間経過した同年7月中旬に原因不明で片耳が全く聴こえなくなる。高度な突発性難聴と診断を受ける。難聴治療として、ステロイドパルス×5、高圧酸素治療、鼓室内へのステロイド注入×3を行うも、これらの治療で難聴は改善せず。又、この頃よりHPVV接種後と同様の疼痛や不随意運動等が再燃する。この時から併行して難聴改善を目的とする治療を行う。針治療直後の難聴の改善自覚なし。
2014/12 9診
右上肢及び右下腿に全般的な痺れが出ている。針治療直後の難聴の改善自覚なし。
2015/1 10診
前回の針治療後より、ザワザワと音が聞こえ始める(正確には雑音が鳴り始める感覚となる)。※難聴の回復過程に関しては、過去症例の回復過程と照合し、回復時に雑音が鳴り始める事は事前に伝えていた。

ベンゾ離脱の基礎病態の持続に伴う脆弱性事例(ALS様症状/筋減少)~

ベンゾ離脱にも軽重はあれど、数十も症状が惹起されます。原因部位は脳及び脊髄を由来とする事は確実視され、自己分泌能や当該伝達物質のレセプタ、GABAの前駆体、グルタミン酸の過剰に伴う興奮性細胞死の問題が大きな軸と推測され、その事で他の中枢/末梢の神経伝達物質や内分泌にも異常を来す事から、症状の数は膨れ上がると推測されます。全症例の特徴と共通点とし、他の由来を持つ症例と同様、身体/精神/環境因子のストレスに連動し、重症度が高い程、増悪自覚の鋭敏さは顕著な印象を持ちます。また、状態が改善するに従い、あらゆる因子に暴露しても当初ほど増悪せず、仮に増悪自覚後の改善速度も急速になる模様を受けます。

他、大脳や小脳、脊髄の極めて密で広範囲に及ぶ神経細胞の何処の部位がどのように受傷するかは、症状の内容や軽重も個体差が見られる以上、個々人で異なるのが自然です。また、ベンゾ離脱と表現していますが、ベンゾ単剤例だけではなく、抗うつ薬やメジャーの類も混在している例も多い為、一概に説明出来る内容ではありませんが、いずれにしてもシナプス間隙で異常が生じた諸々の波及によるエラーだと捉えると、応用的な考察はし易くなります。

数十もの症状が惹起されているものの、その個人の症状の訴えが最も強いものが、やはり重症度の高い症状である事は以後の治療累積によっても明確化してきます。結果論としての話になるかもしれませんが、軽度の症状から改善、そして安定し、重度の症状は軽度の症状が安定しても尚残存し、不安定感の高さが見られるのは、他の由来を持つ症例でも同様で、それを順繰り順繰り繰り返す事で、いずれは無症候、改善へと繋がっていくものと思います。

良化への昇華は治療と病態がマッチングしていれば改善へと進みます。それらを根気よく擦り合わせていく事で、様々な病態解釈に繋がりますし、治療内容は薬を変えて反応を見る薬物治療とは異なり、針を刺すという行為でしかない為、その個人の脆弱部位も見えてきます。前置きはこれで終わり、表題の通り今回はベンゾ離脱でも少々的を絞り、筋減少の推移に関しての脆弱性を考えていきたいと思います。

治療動機は様々な理由があると思いますが、大半はあらゆる行為も無効且つ検査も異常が見られていないケースも多く、進行増悪期の為、一旦は停滞期から回復期に向かう迄の期間も考慮すると、改善自覚を強く得る迄も数か月単位は必要かもしれません。今件の症状の推測と問題点は数年来に渡り述べ続けてきましたので、以前と同様の記載はあると思いますが、ベンゾ離脱の基礎病態となる交感神経の持続的な亢進に伴う異化の促進が大カテゴリに挙げられます。この状態が基礎に存在し続ける限り、改善しても前程ではないが脆弱性は常時ある、が課題と問題点に挙げられます。

異化の促進に関わる内分泌等々の類の説明は一旦割愛し、どのような状況で脆弱性が高まるかだけ改めて述べると、好発部位は抗重力筋全般、頻回使用部位、同一姿位部位が全症例の共通となり、更にベースとなる飲食物の消化/吸収を左右する胃腸機能の問題も挙げられます。筋肉と胃腸機能を担う副交感性の神経伝達物質は、サブタイプレセプタは異なるもののアセチルコリンです。勿論ベンゾ離脱により中枢のみならず末梢のセロトニン濃度も変化すると推測される為、下痢が続く患者もいれば、便秘が続く患者もいますが、両者共に健全な胃腸機能とは言えない状態だと思います。では、以下はそのベンゾ離脱に伴う脆弱性事例を見ていきたいと思います。
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異化の促進(亢進)に関わる図の引用)大柳治正:栄養状態と生理機能.「コメディカルのための静脈・経腸栄養ガイドライン」(日本静脈経腸栄養学会),p.5,南江堂,2000

・age 50 sex f ベンゾ(ステイ) ※掲載許可及び事前に内容をご確認頂いた上で掲載しています

ほぼ全身に視覚的な確認も顕著な程の筋減少。主に手関節周辺、胸部、背部、臀部、大腿部周辺、膝関節周辺。体重は10キロ減。

・筋減少以外の症状 (受療初期)
希死念慮 虚無感 無興味 以前の自分とは異なる喪失感 呼吸抑制 恐怖感 不安感 絶望感 焦燥感 フラッシュバック 特に朝方に嫌なイメージが浮かぶ 起床時に音が聞こえる 慢性疲労 睡眠障害 食欲低下 字を丁寧に書けない 認知力低下 手指足趾の振戦 下痢 頭痛 頭鳴 耳鳴 両下腿の痺れ むずむず脚(アカシジアの範疇かは不明) 傷が出来た際の治癒遅延 身体が動かしにくい ファシクレーション(全身)手指の発赤疼痛 屈曲障害 知覚過敏等々により日常生活にも多大な障害を及ぼす

・手指及び上肢の運動障害、筋減少/筋力低下に伴う日常生活上の障害
箸を持って食事できない 割り箸を割れない ペットボトルのふたを開けられない 車のサイドブレーキ下ろせない 車のハンドル操作が難しい 極端な握力低下 包丁使えない 冷蔵庫を開けるのも大変 手が過敏になり新聞紙など紙に触ると痛い 部屋のスイッチを押すと痛い スマホを持つのが難しい スマホがとても重い 本のページをめくれない ゴミ出しに行けない 玄関のドアがとても重くて開けるのが苦痛 ボタンをとめられない 等

・現在の残存症状
手指の使い難さ 上肢の易疲労 頭痛 頭鳴 両下腿の痺れ 睡眠時間に長短が見られる 日常生活動作の不便さも現状残存するものの、ペットボトルの蓋は開けられない 以外は改善傾向

・所見
十数か月に渡り経過を見るなか、時折数か月単位に及ぶ全体的な増悪時期も経つつ、残存する症状は未だあるものの、幸いにも全身状態も安定的に改善傾向となり、数年来に渡る食欲低下と下痢も改善された事も相成り、順調に体重も増加し、筋減少の好発部位となる抗重力筋や頻回使用部位も比較的保持されて弾力性を保つ等、当初の特異的な筋減少も改善された印象を持っていました。行動範囲もそれに応じて驚異的に拡がるに従い、手指及び手関節の負担も日常生活の範囲外のレベルとなり続けたところで、改めて第1背側骨間筋、短母子外転筋(親指と人差し指の間のお肉の事)及び周囲の痩せが見られるようになりましたが、当該患者曰く、十数日に渡り使用頻度を下げる事で改善していると告げられています。

第1背側骨間筋、短母子外転筋は日常生活やPC、スマホ等で頻回使用される部位の為、当該部位のエネルギー消費が高度な中、エネルギー供給が遅延傾向を示す基礎病態が持続している場合、視覚的にも減少自覚は顕著かもしれません。しかし、受療時に訴えていた他部位の筋減少は見られていない他、他症状も消失後、再燃する事無く安定的に推移している症状群もある為、全体としては改善傾向と捉えて良いと思います。幾度となく同様な内容を過去に書き連ねていますが、異化の促進に伴う筋減少の好発部位と、本態性ALSの痩せ自覚の好発部位共に両筋群が共通する事で、当該症状を惹起した場合は相応の不安を抱える事になると思います。

只、異化の促進に伴う筋減少は本態性ALSと比較しても、筋減少の進行速度が前者の場合は速過ぎる事も1つの鑑別的な役割を持っていると思います。痩せる速度が速過ぎるのは1つの不安材料になるかもしれませんが、運動神経の脱落による痩せでこのような速度は流石に考えられません。添付写真は4枚です。周囲の急速な痩せが目立ちます。当時の状況を伺う限り、使用頻度が極めて高かった状況の翌日と伺っています。また、上記の通り使用頻度を落とす事で十数日で回復する模様です。このような写真を見る限り、今件の症例や類似症例でも、患者表現の「ゴッソリ痩せていく」「目が覚めたら痩せていた」の意味が分かります。

いずれにしても、筋減少が改善~安定を見せたと思しき時期に、その他の症状群の良化と共に行動範囲も飛躍的に拡大し、今まで以上に負担を掛けた事で、再度の痩せ自覚を得たタイミングで撮影された大変貴重な症例です。

「1枚目」


「1枚目の翌日」


「2枚目から8日経過」


「2枚目から11日経過」


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イメージ 1  ~針治療から病態定義の見直しを~