藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

各々の症状の成立理由と脆弱性、傷病名依存の弊害 2

 

コハク酸を生成する酵素欠損から、ベンゾ離脱の病態概念を考える」

コハク酸を生成する酵素コハク酸セミアルデヒドヒドロゲナーゼが、先天的に代謝異常を惹起している臨床像を見ます。以前もGABAを生成する酵素グルタミン酸デカルボキシラーゼの障害で発症するスティッフパーソンシンドロームも、応用的に取り上げましたが、コハク酸に生成する酵素異常も参考になります。※ b)の障害がスティッフパーソンシンドローム、d)の障害がコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素欠損症とイメージすると理解が早いかもしれません。

 

グルタミン酸からコハク酸までの代謝/生成 a) グルタミン酸 → b) グルタミン酸デカルボキシラーゼ(当該酵素の障害でスティッフパーソンシンドローム/抗体確認約60%の自己免疫疾患?) → c) γアミノ酪酸(GABA) → d) コハク酸セミアルデヒドヒドロゲナーゼ(当該酵素の障害でコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素欠損症/先天性疾患) → e) コハク酸

 

4. 症状 臨床症状は、通常乳児期の初期に現れ始めその症状には軽度から中等度の 発達遅滞、精神遅滞、言語表出障害、著しい筋緊張低下、睡眠障害、不注意、多動、不安腱反射低下、非進行性小脳失調、けいれんと多彩であり、通常は非進行性だが、まれに(10%)進行性の場合がある。運動失調は年齢と共に改善する場合がある。頭部MRIでは、典型的にはT2強調像で淡蒼球の対称性の高信号を認める。5. 合併症眼球運動失行、舞踏病アテトーゼ、自閉症の特徴、攻撃行動などがある。※1)
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「GABAの代謝産物、コハク酸の消費/低下を考える」

視点を変えれば、適応とは生命維持の為の進化と捉える事も出来ます。連続飲酒に近い方々は、グルコースやケトンに脳の栄養を依存せず、エタノール代謝産物となる酢酸を優先的に栄養とする示唆がされています※2)。その為、何らかの理由で断酒すると、その個にとっては栄養としていた酢酸が途絶する為、中枢神経の栄養状態が不健全となり、中枢神経障害が発症する懸念が挙げられています。人間は外部から連続的に何かを摂取し続ける事で、当該物質の代謝産物を必要以上に栄養にし始める可能性がある、という視点の場合、GABAの代謝産物は何かなと見たくなります。

GABAはコハク酸セミアルデヒドでした。GABAから4-アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼで生成、コハク酸セミアルデヒドヒドロゲナーゼで酸化、コハク酸となってTCAサイクルへ入ります※3)。栄養摂取の例に、欠けた桶の絵※4)がよく用いられます。偏った食べ方をしてもダメだから満遍なく食べてね、という話だと思います。只、このような話は万人向け、健康な人向けの話かもしれません。極端に欠けていれば流石に悠長な事は言ってられない為、例えばアルコールで惹起されるウェルニッケ脳症であれば、VB1(チアミン)を積極的に補充すると思います。

 

それと同様、アルコールやベンゾ、バルビツール酸等でGABAAレセプタにアプローチを掛け、GABAの濃度を高め続けていた場合、コハク酸が必要以上に消費され続ける身体へと適応し、TCAサイクルが機能異常となり、全身状態の悪化に繋がると推測も出来ます。または、常用量離脱症状離脱症状は、GABAの自己分泌能が低下した病態と推測出来る為、コハク酸そのものが生成され難い身体環境になると推測も出来ます。それと前項のコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素欠損症と結び付けるのは乱暴ですが、何らかの共通因子はあるのかもしれません。

 

このように、連続飲酒や服薬でGABAの濃度異常を持続した身体で、常用量離脱症状離脱症状の際は、コハク酸の過剰消費(又は自然な流れで考えると、コハク酸が生成出来ない)により、TCAサイクルの異常から増悪が見られると仮定した場合、コハク酸の積極的な摂取が恩恵を齎す、又は今後傷む予定の部位を最低限に食い止めると推測する事も可能かもしれません。

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「ベンゾ離脱にTCAサイクル異常が在る場合のリスクを考える」

人間は自己修復機能が存在しますので、具合いが悪くなってもそれを邪魔しなければ良いだけです。軽症ほどQOLも維持出来ますし、自力回復の確率も上がります。その為には何をすれば悪化し、何をしなければ良化出来るかを考えます。アルコールやバルビツール酸ステロイド等でもGABA濃度は上昇する為、ベンゾに限らずですが、個体差を排除すれば多くは暴露時間に依存され、病態の成り立ちは耐性に起因し、日常的には連続飲酒やGABAレセプタを作動させる薬物に偏ると推測されます。

 

耐性は神経適応を意味し、当該物質なしでは生命に危険が生じる生体に変化した事も意味します。また、各々の場面で離脱症状/禁断症状/退薬症状等と表現方法は異なりますが、中枢神経障害には変わりません。前項ではGABA濃度を外因に依存した結果、その代謝産物から生成されるコハク酸の過剰消費(カタプレロティック反応?)、及び離脱時はGABAの自己分泌能低下により、コハク酸の生成がされ難く、TCAサイクルの異常により、全身状態へ反映される事を推測しました。

 

参考までにTCAサイクル内の異常による疾患は幾つかあり、どの酵素が障害されるかで症状や傷病名が異なります。また、TCAサイクルを過ぎた上位異常の総称にミトコンドリア病が存在し、古くは遺伝子由来と推測されていましたが、そればかりでもなく、また、薬物による異常も近年では示唆されています※5)

 

折角ですから薬物によるミトコンドリア障害とは、どのようなものかを見ます。>>アスピリン代謝産物のサリチル酸などによる、ミトコンドリア代謝障害が原因と考えられている。発熱は生体防御システムの一つであり、NSAIDsは発熱だけではなく、それ以外の生体防御機構も阻害してしまった?※6)と 推測されています。その他も様々な薬物が関わりを持つと推測されますが、上述のNSAIDsの反応や、TCAサイクルでの異常も踏まえた全体像の総論は、嫌気代謝異常による細胞の脆弱化、細胞の破壊とされ、細胞毒性の強化因子に、アルコールやタバコ、数種の抗生物質、パルブロ酸等が挙げられています。

前項で >>進行性を示唆する神経変性疾患との対峙は、原始的な栄養と酸素に回帰しつつあります。只それは、進行性を示唆する神経変性疾患が主です。と書きました。また、今にも先にも興奮をリスクに持つ可能性は撤廃する必要があります。様々な疾患を調べていると、疾患により同じ薬物に対する考え方が、研究者で此処まで異なるかと驚きます。何を以て軽いか重いかは判定出来ませんが、希少な疾患ほど隅々までリスクを心配する傾向があり、カジュアルな疾患ほどリスクを無視する傾向があります。

 

例えば、ベンゾによる睡眠呼吸障害や夜間低換気の悪化、NSAIDs等の嫌気代謝は、神経変性疾患には脅威です。しかしそれは、疾患云々以前の共通事で、カジュアルな疾患とてリスクは同様です。また、ベンゾ離脱時は特に、直接的にベンゾ結合を外して増悪させる因子や、間接的に増悪させる因子も数多く存在し、上述のミトコンドリア異常の際に示唆される細胞毒性因子とも重複する他、未知の増悪因子や相互作用による増悪の懸念も含めて考えると、消去法的に価値の高い手段も見えてきます。

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「嫌気代謝の継続と捉えたベンゾ離脱の全体像」

抑制性神経伝達物質の自力分泌が難しくなった体内環境を大雑把にイメージすると嫌気代謝の為、ATPの産生量は好気代謝と比較すると極端に低く、好気代謝のATP産生量が「36」に対し、嫌気代謝のATP産生量は「2」 です。恒常性が機能していれば自律的に抑制性に傾けたり、胃腸機能の障害もなければ、食事も素通りせず栄養になると思います。その恒常性を神経伝達物質が担っている為、ベンゾ離脱期は体内で大問題が起きていると推測されます。

 

嫌気代謝とは無酸素代謝無酸素運動と表現も出来ます。抑制性神経伝達物質の自力分泌が難しい状態とは、延々と100メートル走を全力で走り、休みの時間がない状態の事を指し、恒常性が効かないと表現するのが適切です。それに応じた身体変化は、酸素要求量の高度な中枢神経や脳神経(主に視神経/内耳神経/三叉神経)(選択的脆弱性?)、脊髄や脊椎のROMを皮切りに症状を自覚する他、ベンゾの標的は大脳や小脳、脊髄に散在するGABAレセプタの為、当該部位を中心とする症状が惹起されても不思議ではありません。

多くは画像所見や血液検査等から有意義な情報は得られません。この問題は、生体のシナプス間隙やレセプタの状況を簡単に描写出来る検査機器が今後登場すれば、展開も変わるかもしれません。只、ACTHが高めな例も少なくありません。ACTHが高い=コルチゾルの分泌が高いも意味しますが、長期に及べば下垂体前葉にネガティブフィードバックが掛かり、ACTHの数値も落ちる=数値上は正常、となるのかもしれません。追随してコルチゾルの自己分泌能が低下した場合、内外因子の環境に耐えられない(鋭敏に増悪自覚をする)=閾値の低下となり、今までなら耐えられていた暑い寒い痛いその他にも耐えられなくなります。

この2つの問題が起きた全体像をシンプルに述べれば、ベンゾの主作用の鏡面となる眠れない、不安になる、身体が硬直する、痙攣する他、全ての刺激に極めて弱く、強い疲労感と、上述した中枢神経症状や脳神経症状が付随する、となります。

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「ヒドロキシインドール酢酸までの代謝/生成過程の酵素欠損から、セロトニン絡みの離脱症状の病態概念を考える」

要は外部から内分泌物質や神経伝達物質の分泌量をコントロールしてきた為、自己分泌能力が低下し、全身に反映される結果論を指すと考えれば理解は早いかもしれません。表題通り、この度は三環系、四環系、SSRISNRI、NaSSA、5HT1A刺激薬、SARI辺りです。正確には各々標的や性格は異なりますが、一旦は大枠で見る事で全体的なイメージは出来るのかもしれません。上記はセロトニンだけでなく、抗コリンやノルアドレナリン絡みばかりですが、あくまで耐性なり何らかの理由で外部と接点が切れた場合、当該神経伝達物質が上手く分泌されない身体はどうなるか、という視点です。

 

トリプトファンからヒドロキシインドール酢酸までの代謝/生成 a) トリプトファン → b) トリプトファン水酸化酵素 + c) 芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(当該酵素の障害で芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素/先天性疾患) → d) セロトニン+ドパミン → e) モノアミン酸化酵素(当該酵素の障害でモノアミン酸化酵素欠損症/先天性疾患) + f) アルデヒド脱水素酵素 → g) ヒドロキシインドール酢酸

 

大概はベンゾやメジャー他も絡むので、単剤での離脱症状の成り立ちや病態の考察に意味があるのか不明ですが、ヒントが増えればきっと答えも見えてくるかもしれません。c)の先天的な欠損/低下状態を、AADC欠損症と呼ばれています。酵素が機能しない為、セロトニンドパミンの生成がし難く、その結果が全身状態へ反映されます。乳幼児の臨床像を第三者が文字に起こした症状群と推測される為、大雑把に見えますが、年齢性別問わずに発現リスクのあるセロトニン絡みの離脱症状の病態概念を考える上でも、掴める部分はあるかもしれません。

 

また、e)のモノアミン酸化酵素とは、薬剤を挙げれば耳馴染みがあるかもしれません。「MAO阻害薬(モノアミン酸化酵素阻害薬)」です。ここにアプローチを掛け、セロトニンドパミンを増やす働きを持つと言われています。こちらのe)も、先天的に欠損/低下するモノアミン酸化酵素欠損症も存在するようですが、臨床像のデータが乏しかった為、この度はc)の欠損/低下状態を見てみます。また、AADC欠損症の動画がありましたので、どのような臨床像を呈するか参考になるかもしれません。

 

主症状は、典型例では、①随意運動の障害、②間欠的な眼球上転発作(oculogyric crisis)と全身のジストニア発作、③筋緊張低下、④自律神経症状(発汗や皮膚の発赤、下痢など)です。発症年齢は、生後1か月以内が多く、ほとんどの症例で6か月以内に重度の運動障害で発症します。症状の進行とともに嚥下困難や呼吸障害が出現し、最重症型では乳幼児期に肺炎で死亡した報告もあります。

 
初発症状は、新生児期には筋緊張低下、哺乳困難、易刺激性、眼瞼下垂、低血圧、低血糖などがみられます。乳幼児期には運動障害を主体とした症状が出現してきます。Oculogyric crisis(※藤原加筆 眼球上転発作(注視発作, 注視痙攣, 注視けいれん))、全身のジストニア発作やアテトーゼ、随意運動の障害、重度精神運動発達遅滞などです。一部例にはてんかんを合併します。
 
自律神経機能障害としては、心拍・血圧の調節障害、突然の発汗上昇、唾液分泌増加、情緒不安定、睡眠障害などがあります。多くは頸定、発語がなく、生涯臥床状態でにとどまります。一方で軽症例の報告も有ります。筋緊張低下と眼瞼下垂を主症状とし独歩と会話が可能であった例の報告もあり、症状の幅は広いと考えられます。※7)

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離脱症状や自然発症は、前駆物質の過剰/欠乏や、酵素/補酵素に原因はない理由を考える」

離脱症状は全ての症状の延長線上に存在するリスクです。前者を読み解く事で、自然発症の成立と共通点も透明化します。症状の出方から改善の仕方までの経緯を踏まえて考えていきます。私の体感的な要素もあるかもしれませんので、なるべく文字で起こしたく思いますが、自然発症や傷病名が冠にある場合は、そもそも薬剤性とは何ぞやですし、「〇〇病や〇〇症候群じゃないの?」的な思考でも見えないかもしれません。

 

また、類似の境遇だとしても、傷害部位を含めた個体差やプラセボ、認知的不協和等の人間らしい精神動態の変化により昏迷します。逆説的に個体差はあると理解し、プラセボは短期に収束する現象と知り、認知的不協和を持たないほどストレスも少なく有利です。実際には時系列を追えば分かる事ですし、神経毒性ならではの症状群も目立つのですが、薬剤性も自然発症も何とか病も重複する症状は多く、検査上も異常なしが大半で、それが様々な場面で一層の昏迷を極める理由になるのですが、何故これほどまでに離脱症状と言われる中枢神経障害の根が深いのかを考える必要があります。

両者ともシナプス伝達による問題である事、離脱症状は自律的に動態したものではなく、強制的に濃度を上下させた(させ続けた)事で惹起される自己分泌能の低下やレセプタのダウン/アップレギュレートが重症度を高める事、標的部位が広域の為、自然発症とは比較にならない症状に溢れる事と推測されます。要は傷が広く深い、そしてデリケートです。深追いして考えると、例えば多くの薬剤の副作用欄に「原疾患の悪化」と記載があります。「この症状の為に飲んだらもっと悪くなる(なった)」です。これには2つの理由が考えられ、1つは奇異反応等による服薬初期から訪れる現象。もう1つは耐性や減薬/休薬で訪れた現象(離脱症状)です。

 

前者は直ぐに気が付けますが、後者が理由で惹起された現象を考えます。症状を自覚している=シナプス伝達/間隙間やレセプタに何らかの異常を既に示している→強制的な動態変化を齎した結果、当該部位に更なる脆弱性を持ち合わせたと推測します。恐らくこの場合、前者も後者もタイミングの違いだけで、レセプタのアップレギュレーションのタイミングなのかもしれません。俗にいう過感受性、キンドリング等の表現が薬物の業界的には名称が付くのでしょうか。

 

又は、症状を抑える為にと自律的に分泌量が増えている(増えていた)→レセプタのダウンレギュレーション→自己分泌能の低下が惹起されている場合、恐らく鍵穴を埋めても効果自覚が乏しく増量を繰り返す事になるのかもしれませんが、原疾患の悪化とはならなさそう(薬物は罹患部位のみの鍵となるか鍵穴を埋める訳ではなく、標的部位全ての鍵となるか鍵穴を埋めるので、別な具合いの悪さは生まれるかもしれませんが)なので、原疾患の悪化とはアップレギュレーション時の状態を以て表現されるのかもしれません。

 

上述の通り、薬物は罹患部位のみならず、標的部位全ての鍵となるか鍵穴を埋める為、俗にいう作用や反作用と呼ばれるものが生まれ、各々でそれを作用と見るか副作用と見るかは異なるかもしれませんが、標的部位が幅広い場合、その後の離脱症状も幅広いと推測は容易に付きます。では、自然発症のシナプス伝達も同様かと考えると定かではないものの、重症度の高さと症状の数、各々の症状の度合い、それに伴う症状の変化(例)1本の体性神経とて、重症度で症状の内容は変わります)は比例する印象はありますので、近い何かはあるのかもしれません。

次に自然発症と自然軽快の道程も考えたいと思いますが、ここで一旦、よりイメージのし易い炎症で例えます。>>炎症は,生体侵襲が加わった際に恒常性を維持するための,防御反応である.一方,痛みはさらなる侵襲を回避し治癒のために安静を促す,警告的な感覚 >>NSAIDs,オピオイド,局所麻酔薬などの鎮痛薬は抗炎症・免疫抑制作用を有するものが多く,鎮痛目的で炎症を抑えてしまうことにより炎症・治癒過程が遷延し,逆に痛みが慢性化する可能性が示唆 ※8)

 

何らかの理由で惹起された炎症は、安静を促す警告だけでなく、組織回復を促す材料にもなります。その際、強制的に合成を阻害したり、中枢神経で抑制させる事は、逆に治癒遅延に繋がる示唆があります。表面上は忌々しい「痛い」も、何らかの理由で生まれたものを抑え付ける行為は、何れ大きく自身に跳ね返ってくるのかもしれません。

 

以下は恐らく薬剤性の離脱症状の成立と共通点も多いですが、自然発症から自然軽快までの成立を考えてみます。身体/精神/環境ストレスに対応しようと、自律的に分泌を高めていた結果、受け皿側は濃度が高いなぁ、もういらないなぁと受け皿を減らす(ダウンレギュレーション)。受け皿が減れば、必要な量しか届けなくても良くなる(自己分泌能力の低下)。

 

分泌量が下がれば、仮にGABAやグリシン等の抑制性神経伝達物質の場合、興奮性神経伝達物質の抑制が効かなくなる。それに応じ、脈管系や内分泌等にネガティブな動態変化が生まれる。そのうち、自己分泌量が乏しい為、自律的に受け皿を増やして待つようになる(アップレギュレーション)、受け皿が増えれば自律的に分泌量は上がり(自己分泌能力の上昇)、受け皿のぶんだけ届けられるようになり、その結果、脈管系や内分泌その他の動態も平穏を取り戻す、のかもしれませんし、理想の着地点と推測します。

この流れを踏まえ、改めてベンゾ離脱を見ます。分かり易いよう極端な書き方をすれば、耐性獲得後は「GABA↓ セロトニン↑ ノルアドレナリン↑ ドーパミン↑ アセチルコリン↑」になり、抑制性<興奮性の状態が否応なしに継続します。GABAが抑制する神経伝達物質が抑制出来なくなる理由に、レセプタのダウンレギュレーションによる自己分泌能力の低下と上述しました。ベンゾで強制的にGABAを増やし続ければ、何れはレセプタ側も受け皿を減らしますので、同一量では満足な抑制が掛からず、増量しても中朝的な視野で見ると、今一つな結果になるのでしょう。

 

例えば「自己分泌能力が 5 、ベンゾによる分泌が 5 の、合わせて 10」で成立している場合、ベンゾを無くせばGABAは 5 の力でしか興奮性神経伝達物質を抑える事が出来なくなり、具合いの悪さが際立ちます。耐性獲得 = 既に離脱症状の素地が形成 = 既にその個にとってはベンゾが足りない為、更に足りない状態にする減薬や休薬等をすれば、更に離脱症状が増悪するのは目に見える為、一旦はその状態から症状の改善を見込むのが無難となります。

 

自然発症と薬剤性の離脱後の経過、自己分泌能とレセプタの関係性が共通し、抑制性<興奮性の「GABA↓ セロトニン↑ ノルアドレナリン↑ ドーパミン↑ アセチルコリン↑」と経過を示した場合、これら興奮性神経伝達物質の受け皿もダウンレギュレーションを惹起し、自己分泌能が低下する可能性もあると推測が立てられます。実際のところ、数値化や可視化は出来ない為、それを以てどのような臨床像となるかは個々で異なると思われるものの、その過程でSSRISNRI、メジャー(抗精神病薬)等も併行させる/奏功する臨床像が形成される意味も見えてきます。しかし誰が奏功と評価するかは別問題かもしれません。

 

>>我が家の娘は統合失調症の診断をうけ、抗精神病薬の服薬が始まりました。 >>不登校から始まった強めの反抗期のような状態はなくなったものの、その顔からは表情が消え、小刻み歩行に緩慢な動作、娘は半開きの口からぼんやりとつぶやく >>「好奇心がなくなった。人の話がわからなくなった・・・」何が起こっているか、まるで理解できない私。そんな娘の変化に主治医は満足そうに微笑む「やっと、薬が効いてきたようですね。そう思いませんか?お母さん」 >>・・・鳥肌が立った。これが治療の成果なのだろうか。私には悪化しているようにしか見えなかったのです。それについても主治医は言葉を付け加えました。 >>「今は良いお薬が出ていますが、病気の進行の早さについていけなかった。娘さんは薬の効きにくいタイプ。もう少し量が必要」※9)

 

このような経過は全ての症状の延長線上に存在し、純粋な腰痛患者も起こり得るリスクなのは現場を通しても目にします。「症状は分からなくなったけど、自分も誰だか分からない…」、文字だけでは絶対に見えない側面もあり、これを以て良くなったとは流石に言い難いものです。また、これらの話はフィードバック機構、ネガティブフィードバック機構に沿っている為、神経伝達物質に限らず、以後の内分泌その他、全てに当て嵌まる話かもしれません。

前置きが長くなりましたが、前項まで抗体の存在を示唆されたり、先天性の酵素障害による疾患を例えに、ベンゾの離脱症状や、モノアミン系の離脱症状との類似性を見てきました。メカニズムはどうであれ、症状のみを切り取れば類似しています。只、様々な欠乏症や欠損症、血圧や血糖値、自己免疫疾患や感染症や腫瘍等による、付随としての中枢神経/脳神経症状は検査で分かると思います。その為、離脱症状とされる中枢神経/脳神経症状が、前駆物質の過剰/欠乏や酵素/補酵素の原因でないと結ぶ事も可能です。


逆説的に考えると、特定的な前駆物質の摂取や、酵素/補酵素の摂取が何処まで有益かも知る事が出来ます。これは肉や魚を適当に食べていれば十分で、それ以上は考えなくても良い = 考える負担がなくなる、無駄がなくなる、に繋がります。針治療に来る = 色々やってもダメだったが患者背景に存在しているので、私が持つ情報も恐らく偏りはありますが、各種媒体で挙げられている様々な情報も、患者は踏襲済みなのも事実で、それを常に踏まえた視点となります。今件の前駆物質や酵素/補酵素に関しては、離脱症状や自然発症を考える上で必ず付いて回る議論ですが、現場感覚としてはどこまで有益か、今現在も不透明な印象を持ちます。

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「ベンゾ離脱は興奮性神経伝達物質の亢進に選択性のない理由と、セロトニン/ノルアドレナリン関与の併用薬剤との離脱の両者を兼ね備えた身体状態を考える」

服薬歴にベンゾ単剤/単種の離脱症状ほど経過は割と良く、他の薬剤も絡むと、どこかその薬剤がアプローチを掛ける部位が根深い/目立つ/主訴になり易い可能性と、その理由を考えます。薬剤性は症状の数も夥しく惹起されるものの、経時的に症状の数も絞られてきます。そこからより一層絞られた残存症状が、何やら併用薬剤の持つ性格が色濃く反映されている印象を受けます。

 

また、ダウン/アップレギュレーションは、生理的/自律的な生体反応、適応反応、防御反応と捉える事も出来る為、単語のみを切り抜いて、良い悪いの表現をするのは難しいかもれません。一旦、前項に引き続き薬剤の絡まない自然発症でもレセプタのダウン/アップレギュレーションや、追随する自己分泌能の低下が、経年的に惹起され続けたと仮定した流れと全体像をイメージします。

 

1)ストレッサーの暴露で、自律的に抑制性の分泌も長期に及べば、当該レセプタのダウンレギュレーションにより、自己分泌能が低下し、2)興奮性の抑制が困難となる全身状態は、各々の神経伝達物質の機能を理解する事で、凡そどのような状態となるかも見えてきます。3)只、抑制性の自己分泌能が低下した場合、今度は当該レセプタも自律的にアップレギュレーションに移行し始め、4)自己分泌能を上昇させようと機能してくれるかもしれません。5)また、興奮性側のレセプタとて、長期的に抑制性による働きかけがなければ、ダウンレギュレーションにより自己分泌能が低下する可能性も十分に考えられます。6)只、興奮性の自己分泌能が低下した場合、今度は当該レセプタも自律的にアップレギュレーションに移行し始め、7)自己分泌能を上昇させようと機能してくれるかもしれません。

 

恐らく1)~7)は継続的なストレッサーの暴露で、オーバーラップをしながらループしていくと推測されます。その時々の細やかな症状は変化すると思われますが、イメージが付き易いよう精神症状のみで捉えた場合、鬱と躁を高低のある螺旋階段を下りるような経過を辿る流れも見えますし、改善過程も、画像2を180°回転させた、高低のある螺旋階段を上がる印象があります。どのような怪我や病気も、摩擦力と暴露時間で重症度は比例する為、罹患要因を積極的に除去、又は回避する取り組みが、理想論であるものの大切かもしれません。

話は本題に戻し、ベンゾに限らず多くの物質は、罹患部位のみに選択的なアプローチを掛ける事は難しく、標的部位の全ての鍵となるか鍵穴を埋める為、一般的に作用や副作用とする表現も生まれ、ベンゾ離脱の際も、当該レセプタが関与する全てのダウン/アップレギュレーションが示唆されます。

 

前項でベンゾは抑制性神経伝達物質のGABA濃度を上昇させ、「GABA↑ セロトニン↓ ノルアドレナリン↓ ドーパミン↓ アセチルコリン↓」の反映となり、神経適応後は逆転現象の「GABA↓ セロトニン↑ ノルアドレナリン↑ ドーパミン↑ アセチルコリン↑」へ変化する旨と、そのなりで興奮性神経伝達物質のダウン/アップレギュレーションも経時的に惹起され、その身体状態はSSRISNRI、メジャー等を処方したくなる状態になると考えました。

 

その為、初期段階のベンゾ離脱では、諸々の興奮性神経伝達物質が抑制されず、抑制性<興奮性となるものの、経時的に興奮性側のレセプタも、自律的にダウンレギュレーションを起こした身体状態になると推測されます。では、初期段階で亢進する神経伝達物質の1つ、セロトニンで考えます。セロトニンも様々なタイプが確認されており、セロトニン含むモノアミン系は、協調的に機能している側面もある為、あくまで大雑把な1つの考え方です。

 

>>GABAを伝達物質として持つ抑制性介在ニューロンは興奮性セロトニン受容体(5-HT2A・5-HT3)と抑制的セロトニン受容体(5-HT1B・5-HT1C)を持つ。1次ニューロンの終末は興奮性セロトニン受容体(5-HT2A・5-HT3・5-HT4)と抑制的セロトニン受容体(5-HT1A・5-HT1B・5-HT1C)を、2次侵害受容ニューロンは抑制的セロトニン受容体(5-HT1A)を持つ。※10)

 

引用元はベンゾ離脱の概念がない為、誤りがないよう回りくどいですが改めて考えると、抑制的セロトニン受容体と表記されているものが、ベンゾ離脱では破綻すると考えるのが自然です。そうなると5-HT1A、5-HT1B、5-HT1Cの3つが挙げられます。SSRI等は5HT全てにアプローチが掛かると推測されていますが、考える上で煩雑さを回避する為、選択的にアプローチが掛かる既存薬の作用を一部切り取って見てみます。

 

>>5-HT1B/1D受容体作動薬 トリプタン製剤 片頭痛群発頭痛※11)  5HT1Bは、主に三叉神経に関与すると推測されている為、選択的にアプローチが可能なトリプタン製剤等が存在し、選択性のないSSRI等と比較すると、危険性は低いかもしれません。臨床像からは、例えばベンゾ+SSRIの服薬があり、両薬物共に離脱症状が惹起された身体症状の根深さを持つ症状に、先述の5-HT1A、5-HT1B、5-HT1Cが大きく関与した身体状態が表現される印象を持ちます。改めて上記リンクに記載のある、選択性を持つ薬剤とその作用から考えます。

 

取り分け私の立ち位置的に、疼痛性症状を見聞きする機会は多いのですが、ベンゾとSSRIのように、セロトニン絡みの薬剤が併用された離脱症状は、当該神経伝達物質が関わる症状が根深い印象があります。ベンゾとSSRI/SNRIの両者が関与した離脱症状は、三叉神経が関与した症状が目立ち、根深い事を現場感覚で感じただけの為、推測の域は超えませんが、例えばベンゾ単剤で離脱が惹起された際は「GABA↓ セロトニン↑ ノルアドレナリン↑ ドーパミン↑ アセチルコリン↑」」になると書きました。

 

只、長期的にセロトニンノルアドレナリン等の分泌にGABAによる抑制が掛からないままでいると、経時的にセロトニンノルアドレナリン等のレセプタもダウンレギュレーションを起こし、↓になるかもしれません。その為、SSRISNRIを処方したくなる身体表現となり、実際に併用している方も多いのかもしれませんし、どのような理由かは知りませんが、極めて初期から併用されているケースも少なくありません。この辺りは処方する側の臨床背景等による好みやクセもあると思います。

SSRISNRIも耐性の獲得で離脱は生じる為、例えばこの流れを汲んでいる場合は(煩雑さを防ぐため、ベンゾ離脱+SSRI離脱と仮定)、「GABA↓ セロトニン↓↓ ノルアドレナリン↓ ドーパミン↓ アセチルコリン↓」と、他の興奮性神経伝達物質と比較しても、セロトニン絡みの離脱症状が深く、ベンゾ離脱+SNRI離脱の場合は「GABA↓ セロトニン↓↓ ノルアドレナリン↓↓ ドーパミン↓ アセチルコリン↓」となるのかもしれません。

 

大概はベンゾやメジャー等の向精神薬が絡んでいるか、リリカやトラムセット、NSAIDs等の鎮痛薬が絡んでいると思うので、実際はより複雑で、生理的にも人間は脆弱部位が存在する為、先行的且つ選択的に症状を惹起し易い部位も存在し、一定の偏りは見られますが、現場感覚として、ベンゾ離脱により選択性のない興奮性神経伝達物質の亢進により、経時的に興奮性神経伝達物質側のレセプタのダウンレギュレーションが自律的に惹起された状態に、SSRISNRI、メジャー等が処方され、更にそれらも経時的に当該レセプタのダウンレギュレーションが惹起されると、当該レセプタが関与する神経細胞の重症度は一層高くなり、その結果として症状が浮き彫りになるのかもしれません。
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「時間経過による自律的な機能の弊害を、アップレギュレーションを示唆するタイミングで考える」

人間は都度の環境変化に自律的に適応しようと機能し続けるものですが、その弊害も考えられます。先日は、薬剤による強制的な神経伝達物質の上げ下げによる弊害以外にも、自然発症に至るストレッサーの暴露や摩擦によるレセプタや自己分泌能の経年変化と、それに伴う経過を考えました。アップレギュレーションによる問題は、メジャーによるドパミンレセプタを由来とする過感受性精神病が有名と個人的に思っていますが、全てのレセプタは経時経年で自律的にダウン/アップレギュレーションをし、次いで自己分泌能も変化すると思います。

 

薬剤側の視点に立った場合の障壁としては、人間は何らかの物質を摂り入れた事で自律的にレセプタや自己分泌能が変化し、その環境(この場合は薬を飲んでいる環境)に適応しようとしてしまう事かもしれません。それを耐性と表現するのかもしれませんが、常用量離脱症状離脱症状の存在を知ったことで、その焦りや不安からアクロバティックな行為に及んだり、離脱症状を知らずとも、何か具合いが悪いなぁと思えば、最も身近にある薬剤を弄ろうとするのが人間の性かもしれません。只、なぜ良かれと思って増やしたのに具合いが悪くなるのか、その背景にアップレギュレーションのタイミングが存在するのかもしれません。
 

例1)ベンゾ離脱による、興奮性側のレセプタや自己分泌能の問題に視点を置いた場合

→ ベンゾ離脱(抑制性のダウンレギュレーションと自己分泌能低下) → 興奮性の亢進 → 興奮性レセプタのダウンレギュレーション → 興奮性の自己分泌能低下 → 時間経過による自律的な興奮性レセプタのアップレギュレーション → SSRISNRIなどを安全と言われる量で入れる → 興奮性レセプタがアップレギュレーションしていた為、必要以上の反応を起こす → 躁転アクティベーションシンドローム(表現は何でも良いですが、予期せぬ反応が惹起)

例2)ベンゾ離脱による、抑制性側のレセプタや自己分泌能の問題に視点を置いた場合

→ ベンゾ離脱(抑制性のダウンレギュレーションと自己分泌能低下) → 時間経過による自律的な抑制性レセプタのアップレギュレーション → ベンゾを安全と言われる量で増やす → 抑制性レセプタがアップレギュレーションしていた為、必要以上の反応を起こす → 奇異反応(表現は何でも良いですが、予期せぬ反応が惹起) etc…

この展開が正しい場合、その他の現象も見えてきます。例えば減らし過ぎたと思った時、以前の量まで戻す期間は短期なほど持ち直す事が出来る確率が高く、期間が経てば、以前の量まで戻しても不変かムラ、又は悪化するケースは珍しくなく、雑に書けば服薬と休薬を繰り返す事で、以後の離脱症状が重症化し易い理由も見えてきます。また、服薬に至る契機に、大半は何らかの症状が惹起され、存在している(していた)為と思われます。そのタイミングから既に抑制性/興奮性問わず、レセプタや自己分泌能の自律的な制御が困難である身体状態と捉える事も可能ですし、当該部位を薬物でコントロールする事になる為、当初から諸々のネガティブを示す可能性もあるのかもしれません。

 

他、薬物に限った話ではありませんが、全ての共通事項として、症状の成立や軽重の因子を考える上で、暴露期間や摩擦力は重要ですが、それプラス、イレギュラーな側面を考察する上で、時間経過による自律的な機能を概念に取り入れると、様々な物事が鮮明に見えてくるかもしれません。前項で若干の高低がある螺旋階段の図で例にしましたが、経年で身体/精神症状は移り変わる可能性がある為、その時々の病態に追随するように、ICDやDSMでも傷病名は増え続けるのかなと思う時があります。オピオイドドパミンが依存=耐性を生む代表的な対象とされていますが、快楽や満足を生む物質は全て、依存=耐性を呼ぶ可能性があります。

 

その将来にある離脱症状は、物質による標的部位で若干の身体/精神症状に左右はあるものの、離脱症状の時点で既にその個にとっては物質量が不十分な生体に変化している為、その物質を減らすと更に不穏な状態に陥ります。しかし、当該物質の増量も決して良いとは言えない状態を形成するのも、上記の通りその背景には、自律的な抑制性/興奮性レセプタのダウン/アップレギュレーションや、自己分泌能の変化、薬剤コントロールがあるのかもしれません。

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離脱症状と呼ばれる中枢神経障害が遷延化する理由に、濃度異常による神経細胞死の背景と、検査所見なしの理由を考える」

自然発症性や薬剤性の、レセプタのダウン/アップレギュレーションと、自己分泌能の変化、各々の神経伝達物質が関与した結果に、内分泌や外分泌、脈管系等へ障害を与え、選択的脆弱部位や既往等から、身体/精神に表現される可能性に明るみが見えたところで、改めて遷延化の理由を考えます。

 

離脱症状は、時系列を追跡出来ればエピソードが明確です。遺伝子変異や酵素欠損、トランスポータが原因ではなく、自己免疫疾患でも神経筋接合部疾患でもなく、目立つ栄養障害やそれに伴う血圧や血糖の抑揚も見られず、見られたとしても、各々の症状を契機としたもので、生理反応であるhypothalamic-pituitary-adrenal axisの機能も、前段階の炎症その他、脳委縮も原因ではなく結果です。その為、上記理由から溢れる症状群に、1つ1つ病名を付ける事は可能かもしれませんが、あまり意味を感じません。

離脱症状が惹起されても、ある程度の期間で、ある程度の症状は自然軽快する例は散見されます。また、途中経過で突発的に新規症状が惹起されても、突発的な症状は、上記同様に自然軽快する確率は高い印象を受けます。問題は、遷延化する症状群がどのような理由で遷延化するかです。

 

恐らくその代表格の理由に、グルタミン酸の過剰流入による興奮毒性で惹起する細胞死が重度化し、自力回復が不可能なレベルに達したものが、遷延化すると考えられます。傷が深いものは中枢/末梢問わず自力回復の確率は低下する為、回復を求む場合は何らかを加えて後押しする必要が生まれますが、細胞死は更なる向精神作用や鎮痛作用を持つ薬剤では、そもそものベクトルが異なります。

 

その他、以前イメージが付き易いようサリンVXガスで例を挙げました。アセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用で、アセチルコリンの分解を妨げ、当該物質がシナプス間隙で濃度異常となって神経細胞を破壊します。このように、濃度異常で神経細胞を破壊する可能性がある為、普段から離脱症状 = 逆転現象側の濃度異常、動態異常による神経細胞の破壊を述べていますが、服薬初期で中枢神経障害を惹起し、直ぐの休薬でも症状が継続する例も、経由は違えど似た理由かもしれません。

 

ベンゾ離脱であれば、GABAの前駆体のグルタミン酸も、離脱時の過剰興奮により、触媒となるグルタミン酸デカルボキシラーゼの機能を超えれば、グルタミン酸の過剰流入によって、様々な部位で興奮性細胞死が訪れる可能性もあります。また、ベンゾでアセチルコリンの分泌を抑制した手前、当該レセプタも当初はダウンレギュレーションが示唆され、経時的なアップレギュレーションによる過感受性により、又はダウンレギュレーションの継続でも、異常な硬直感や、立位や歩行、姿勢維持も困難になるケースが散見されるのかもしれません。

 

個体差はあるものの、上記は横紋筋の神経筋接合部の異常を指した内容で、ここだけ切り取れば重症筋無力症様症状ですが、平滑筋や心筋その他でも同様な現象が生じる可能性があります。他、各々の神経伝達物質でも同様な経過を辿ると推測される為、症状は膨大になると思われますが、何れも検査で明確な異常が得られないのは、目で見えるレベルではない、シナプスやレセプタが皮切りの為と推測されますが、目に見えたとしても課題もあります。

 

例えば抗重力下で腰痛を自覚するも、MRI等では異常が見られないケースは多いかもしれません。この理由に撮影時は寝ている = 荷重分散 = 重力が抜けている = 疼痛理由が解除されている = 構造上は目立つ所見なしと同様、生体のシナプスやレセプタが見れたとしても、ファンクショナルな状況に対応出来るかは別問題です。その為、検査が行える時代になっても、暫くの間は推測を超えた話は出来ないのが現状かと思いますが、各々の神経伝達物質の機能面や、様々なネガティブ面、時間経過の面を踏まえれば、病名はともかく罹患原因部位が何処かは明確になります。
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「着地点はどのような状態で、どのような表現をすれば良いかを考える」
 

GABAは様々な興奮性の抑制に働き、ストレッサーからの摩擦や暴露に対応しようと機能しますが、力価や継続時間で当該レセプタのダウンレギュレーションと、追随する自己分泌能の低下で興奮性の抑制が困難となり、その結果、過去のストレッサーに対応出来なくなる/過剰な興奮反応が惹起される身体/精神状態に陥ると推測されます。この状態を、一言で閾値の低下と表現しても良いかもしれません。

 

興奮性の分泌も継続性が高い場合、当該レセプタのダウンレギュレーションと自己分泌能も低下し、「抑制性↓興奮性↓」となる、生物的な全体的低下が見られる懸念も挙げました。カタレプシーや過鎮静とは薬物を用いた上での表現ですが、似た状態は非薬剤性の経年的なストレッサーの暴露でも惹起されるかもしれず、その経過はダウン/アップレギュレーションを都度繰り返し、天井が低くなりながらの、若干の高低を有する螺旋階段を下りる臨床像となります。

 

他、GABAの前駆物質、グルタミン酸の興奮毒性による細胞死も、GABAの自己分泌能が低下するタイミングと推測され、当該由来が遷延性を持つ症状群を占め、薬剤性であれば、断薬後も年単位で継続する症状群の由来になると推測されますが、個の治療反応を鑑みる限りも、受傷度合いも軽重ある事が窺い知れます。今件に限らず、症状は重度なほどデリケートに推移する為、ストレッサーには鋭敏な反応を示し、症状に深みや幅を見せるケースも珍しくありません。その逆に、軽度に移行する程、又は軽度な程、ストレッサーに強固な反応を示します。

このように、ストレッサーの摩擦や暴露で細胞がダメージを受けて閾値が低下した場合、また、摩擦や暴露を除去又は回避し、閾値が上昇した場合の悪化/良化共の適切な表現に、ダウン/アップレギュレーションに追随する自己分泌能の高低次第と言えます。個々で生活環境や様式、既往の有無や内容は異なるので一概には言えない側面は含まれますが、広義的な表現としては、傷める前と同様の都度のストレッサーに適応/対応/防御反応を示し、今迄通りの環境で、今迄通り安定的に過ごす事が出来た時が1つの着地点となるのでしょう。

 

また、抑制性や興奮性が適宜分泌されて確と機能するには、生成物質や酵素/補酵素の高低等の問題のみならず、ニューロンシナプス、レセプタの器質性を示唆する回復を以て、初めて安定的な伝達が得られると推測されます。他、個々で症状は異なって当然とする視点も大切かもしれません。人間は生理的な脆弱部位が存在する為、先行的且つ選択的に脆弱部位から罹患し、一定の偏りは見られる側面はありますが、体性神経1本取り上げても、千差万別な症状を惹起します。

全体的には生物学的な幾つかの病態仮説等に則した内容となりましたが、とても大切な事に、薬剤性はその仮説に則って反応を起こした結果である以上、仮説を無視した説明は出来なくなります。只、自然発症性と薬剤性を比較すれば、後者が時系列も追い易く病態も鮮明で分かり易い為、薬剤性が濃厚に絡んでいる病状としても、リスク因子を拾わない事も容易になります。また、薬剤性のリスク因子が把握出来れば、自然発症性にも応用的に賄える為、両者のリスク回避が出来るメリットが生まれます。

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 イメージ 1 ~針治療から病態定義の見直しを~

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