藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

向精神薬由来症状/離脱症状の安全な取り組み方の検討と治療 10

1)断薬後も残存する症状群から病態を読む事で回避出来る服薬中のリスク

自己分泌能の低下とダウンレギュレーションによる全身症状への反映に、服薬しているからの理由を直結させる印象を受けますが、この理屈では断薬後も残存する症状群に対する辻褄が合わなくなります。後述する事にもなりますが、常用量離脱症状離脱症状の発症理由は、継続的な服薬による薬剤耐性の獲得で生じる状態、又は断薬後に生じる状態で名称は異なりますが、病態的には同一視しても良いと思います。

離脱症状は以前の服薬から形成され続ける流動性且つ脆弱性を持つ、脳脊髄の広範囲に渡るシナプス間隙の事情と分枝的な派生症状によるものと位置付ける必要性を感じます。度々「離脱症状」という表現がヤク切れ的な印象を持ちますが、急性症状は別として、断薬後も遷延的に惹起され続ける症状群を以てしても「離脱症状=ヤク切れ」とする、軽視的な理解は後に大きな痛手を生みます。

今迄はベンゾ結合部位とGABA濃度上昇による中長期的な抑制現象から惹起された、神経節前部の弊害とレセプタ側の機能/器質的な異常の懸念、及びGABA合成の前駆物質となる興奮性神経伝達物質のグルタミン酸の過剰流入による、NMDAやAMPA等の各レセプタのアップレギュレートによるリスク、それに伴う内分泌異常等で考えてきましたが、より概念的で総論的な要素で考えていきたいと思います。

離脱症状は服薬しているから惹起され続けているのではなく、既に当該症状を惹起する部位を薬物を理由に傷めた為、2次的3次的かも含めて持続性が発揮され、その下支えとなる薬物血中濃度が服薬如何で不安定性を抱える要因となり、内外の様々な環境と暴露が寛解増悪の一因になると考えられます。

当該薬物で神経変性を来した生理現象が全身へ反映されていると捉えるのが、様々な角度から考察を入れるに於いても、また、以後の安定性へも繋げられる前提材料になります。この部分の解釈と判断を誤ると「今の症状は薬が原因だ」と直線的な思考になり、急減薬や一気断薬行為へ繋がり、既存症状の増悪や新規症状惹起のリスクが上がります。

2)ベンゾを飲んでいるから発症するのではなく、ベンゾで傷めたニューロンシナプスが原因となり症状自覚に繋がる生理的現象 = 症状である事を理解する

先日はメカニズムに対して理解を深める為、サリン中毒を例にしました。サリンは神経終末シナプスコリンエステラーゼを阻害します。結果、副交感性神経伝達物質のアセチルコリン(※以下ACh)が分解されずに濃度異常となりニューロンを破壊し、諸々の関連症状を惹起します。もう一度発症段階を振り返ります。サリンの暴露が理由でコリンエステラーゼを阻害し、AChが分解されず濃度異常となりニューロンを破壊している原因は、サリンではなくAChです。

サリンが身体を破壊しているのではなく、神経伝達物質が濃度異常を起こしニューロンを破壊します。サリンのイメージが湧かない場合は、類似性の高い薬剤に認知症治療薬とされるアリセプト(ドネペジル)が存在します。

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左手 現在(撮影時)の最大屈曲 2指からROMが改善傾向を示し始める 右と比較すると1指IPのROMが弱いのが分かる

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右手 現在(撮影時)の最大屈曲 症状完成時のROMは左右差なく、1指を除き屈曲不能に近かった。左右で回復過程が異なる

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左手 3か月弱経過 撮影時の最大屈曲 屈曲障害は改善されつつある その他の手指関連の症状(極めて強い知覚過敏や安静時及び動作時疼痛、発赤)は、現在無症候に近い

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右手 3か月弱経過 撮影時の最大屈曲 屈曲障害は改善されつつある その他の手指関連の症状(極めて強い知覚過敏や安静時及び動作時疼痛、発赤)は、現在無症候に近い

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左手 5か月経過 先日の写真と比較する限り、更にROMの改善がみられている。 その他の手指関連の症状(極めて強い知覚過敏や安静時痛及び動作時疼痛、発赤)は、引き続き無症候に近い

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右手 5か月経過 先日の写真と比較する限り、ROMの改善はみられていない。その他の手指関連の症状(極めて強い知覚過敏や安静時及び動作時疼痛、発赤)は、引き続き無症候に近い 

ベンゾ離脱もAChの関連は切れぬ縁で、神経末に位置する心筋や横紋筋、平滑筋にレセプタを置く以上、各々の運動機能にも影響を及ぼします。添付写真は今現在曲げる事が出来る最大です。例えば好発例となる手指の屈曲障害を以て、当該部位の外傷や靭帯や腱等の肥厚もなく、頚椎症性のような末梢神経由来もなく、他症状も踏まえれば脊髄症の類でもなく、バレリューの誘発因子となる高エネルギー外傷も他症状を交えれば考え難く、自己免疫疾患でも神経筋接合部疾患でもない。

伸展は容易いが屈曲が困難を呈する状況から運動ニューロン疾患でもないとなるとAChの分泌不全、副交感性神経伝達物質の異常 = ベンゾ離脱の背景が思い浮かび、加療部位が見えてきます。参考迄に挙げた写真は、以前は殆ど曲げられない真っ直ぐな状態でしたが、曲がり始めた事を契機に記録として残す余裕が生まれ、頂いた写真です。

AChの分泌不全は筋収縮を不健全にします。その何故はベンゾの逆転現象で説明は付けられると思いますし、参考までに内臓も筋肉です。迷走神経から分枝し各器官に配置される終末の神経伝達物質異常は、胃腸機能障害を容易に惹起します。では、上記前提を踏まえた上で次を考えていきます。以下はwikiからベンゾ離脱の症状群を並べました。以下の通り中枢神経系を由来とした症状群が色濃く発症します。

うづきと痛み 動揺また落ち着かない アカシジア 不安 恐怖とパニック発作もありうる かすみ目 胸痛 離人症 抑うつ 自殺念慮もありうる 現実感喪失 下痢 瞳孔拡大 めまい 複視 口渇 不快 電撃の感覚 血圧の上昇 疲労と衰弱 インフルエンザ様症状 胃腸の問題 聴覚障害 頭痛 火照りや寒気 嗅覚過敏 高血圧 入眠時の幻覚 心気症 触覚に対する過敏 音に対する過敏 頻尿 優柔不断 不眠症 集中力低下 記憶と集中の障害 食欲不振と体重減少 金属味 軽度から中等度の失語 気分変動 筋けいれん 筋肉痛 筋攣縮 吐き気と嘔吐 悪夢 しびれとうづき 強迫性障害 痺れ 偏執病 止まっているものが動くような知覚 汗 羞明 起立性低血圧 反跳性REM睡眠 むずむず脚症候群 音がいつもより騒がしい 凝り 味覚と嗅覚の障害 頻脈 耳鳴り 振戦 視覚障害 角質減少 緊張病 混乱 発作 死に至ることもある 昏睡 振戦せん妄 妄想 幻覚 熱中症 殺人願望 躁病 悪性症候群様事象 器質性脳症候群 心的外傷後ストレス障害 精神病 自殺念慮 自殺 叫ぶ、投げる、壊す、他害する 暴力 筋萎縮 筋減少

度々述べている事に「この症状が出たからベンゾ離脱」はなく、時系列に沿わせた判断しか出来ないのが現状ですが、これらの症状群は自然発症でも十分あり得る理由に、薬物そのものが原因ではなく、薬物で惹起されたシナプス間隙のエラーを皮切りに発症する生理現象です。その為「ベンゾ離脱は自分の弱いところを狙い撃ちされる」の意味が生まれます。

これらを前提に考えると、減らせば治るのか、増やせば治るのか、それ以前に離脱症状は薬物で治るのかに対しての疑問が湧くと同時に、その疑問はリスク回避に繋がります。リスク回避は曲りなりにも進行抑制に寄与し、安定性を高めます。

3)ベンゾ離脱の深刻さは反応部位に比例する

抑制の反対は興奮です。継続的興奮は興奮性神経伝達物質の過剰分泌による多くの分枝的症状に溢れます。有限の体内で惹起される生理現象で生じる症状群は、未知な部分はあるものの基礎的な解剖生理で説明はし易くなります。上記に羅列した症状群はwikiに掲載されているものを上から順にコピペしたものですが、例えば脳神経(第I~第XII)関与の症状で見てみます。

かすみ目 胸痛 めまい 瞳孔拡大 下痢 複視 聴覚障害 嗅覚障害 頭痛 胃腸の問題 頭痛 音に対する過敏 金属味 頻尿 羞明 音がいつもより騒がしい 味覚と嗅覚の障害 耳鳴り 視覚障害 

辺りでしょうか。実際には更に膨大ですし、患者表現も交えれば脳神経由来のみでも星の数ほど存在すると思います。脳神経も知覚神経~運動神経領域が受傷すると顔面部、頭部、項部だけでも多彩な症状が惹起され、その異常性を察すると思いますが、以下の3症例のように服薬契機や服薬内容も異なり、症状は複合するのが当たり前の為、知らない人には病態を掴み辛いかもしれません。
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age 35 sex f 

四肢抹消を中心とした全身性の振戦 眼瞼痙攣 肩頸部及び腰部に激痛と硬直感 背部に違和感 下肢脱力により歩行不能 膝関節及び足関節に強い違和感 頸部後面及び胸部前面に熱感 急激な体重減少 味覚及び嗅覚障害 副鼻腔炎様症状 眼痛 羞明 眉間痛 一睡も出来なくなる 唾液分泌過多 毛髪、髭、爪が伸びない 頻尿 皮膚のたるみ及びくすみ 不安感 焦燥感 うつ状態 現実喪失感 上記症状が惹起された為、再受診するも身体表現性障害、うつ病等と診断

age 40 sex m  

動悸 身体の揺れ 吐気 一歩も歩けない 身体に力が入らない(ほぼ寝たきり/移動は車椅子) 手足の浮腫み 肌や白目の部分が黄色くなる 足の皮膚感覚異常 足の冷え 足の指が時折動かなくなる お尻が勝手に動く 右半身を中心とする身体の揺れ 胃腸が常にバクバク動いている 37℃台の持続的な微熱 食事量は変わらず2年前は175㎝95㎏の体重が昨年夏に70㎏、現在48㎏ 流涙症 呂律が回らなくなる 歩行時のふらつき 誤字脱字やひらがなが極端に目立つようになる 暴力的になる キレる 過食

age 50 sex f

人間関係から 不眠 うつ症状 を発症。ベンゾ、SNRI、NaSSA、オレキシン受容体拮抗薬を順次処方され、継続的な服薬で約4か月後に改善自覚。その後ベンゾの有害性を知り、他薬剤を残し2週間の漸減を以て断薬。以後、両前腕と両下腿に熱感(CK値異常なし) 頭部、顔面部、胸部、背部に皮膚感覚鈍麻 両手指、両足趾に激痛 頻脈 踵部の角質の菲薄化 split hand syndrome 全身の痩せ 脱力 客観的評価不能の身体全体の揺れ ファシクレーション が惹起(神経内科で運動ニューロン障害は否定)
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次に脳幹(延髄/橋/中脳/間脳(視床視床下部))機能の障害を見てみます。脳幹に間脳を含めるか否かは人それぞれですが、簡便さを求めたいので含めます。また、大脳や小脳の機能も含めています。

不安 恐怖とパニック発作もありうる アカシジア 離人症 抑うつ 自殺念慮もありうる 現実感喪失 不快 血圧の上昇 火照りや寒気 高血圧 入眠時の幻覚 優柔不断 不眠症 気分変動 吐き気と嘔吐 悪夢 強迫性障害 汗 起立性低血圧 反跳性REM睡眠 むずむず脚症候群 頻脈 緊張病 死に至ることもある 混乱 発作 死に至ることもある 昏睡 

になると考えられます。ここで青斑核のノルアドレナリン作動性ニューロンだとか、ドパミンレセプタのA1~18細胞群が脳幹を跨ぎ、各細胞群で機能が異なるとか、当該部位の機能/器質的異常による異なり等の野暮な話をしないのは「A8障害を単独で加療出来るのか」の問いには、恐らく私達が生きている内に実現する事は不可能ですし、単独受傷はベンゾ離脱では考えられない為です。

今明らかに不可能な話を追い求めても目の前の患者が良くなる事はないので、今出来る限りの事を考えて始めていかなければなりません。また、針治療の特性からも、単独的な加療が不可能で、中枢神経全般の加療に為らざるを得ないデメリットを有しているのが、個別的な検討が難しい1つの理由です。この問題は「治れば何でも良い」の受療者側にはメリットになるものの、「何処が悪いかよく分からないけど治ったから良いや」では済まない加療者側のデメリットです。選択的に加療が可能な末梢神経由来の症状であれば未だしも、臨床理論の脆弱性は中枢神経症状、特にノーマンズランドが相手となるとデメリットが際立ちます。

元来、大脳皮質から外部情報を入力し、皮質脊髄路へ下降したりループしたりカスケード的な反応を起こしながら生きている人間は、単独的なクラッシュも幾多の症状へ生まれ変わり、ベンゾのような脳脊髄のレセプタへ影響を及ぼす薬物によりエラーを起こす状況で、シンプルなダメージは有り得ないと前向きに捉える事が得策です。

では次に、僅かに大脳や小脳の機能障害に寄せて考えた症状群を挙げてみます。軽度から中等度の失語 集中力低下 記憶と集中の障害 妄想 幻覚 殺人願望 躁病 心的外傷後ストレス障害 自殺念慮 自殺 叫ぶ、投げる、壊す、他害する 暴力 等の世間一般として脳外傷後の後遺障害、高次脳機能障害認知症のような症状になるのでしょうか。先日も触れたグルコースのトランスポータ1が先天的に欠損した脳機能障害や、低酸素脳症等と類似する症状群が惹起されると考えるのが理解は早いのかもしれません。

只、傷め方は何であれ、その症状が惹起される部位を傷めると、それに応じた症状が惹起されるだけの事で、傷病名は受傷エピソードによって変動する事と、傷病名そのものの価値や意義、創設背景を知る事も大切です。

内分泌障害や代謝障害、2次的3次的な派生症状群として挙げられるのは 振戦 食欲不振と体重減少 角質減少 筋肉痛 筋攣縮 凝り 筋萎縮 筋減少 辺りでしょうか。ベンゾを大雑把に述べると、抗不安、睡眠、筋弛緩、抗けいれん、健忘が5大作用です。ベンゾ離脱は主作用の逆転現象が主となる為、不安になり、眠れなくなり、筋肉は固くなり、けいれんを起こすのも自然な流れです。

都度検討を入れている、ベンゾ離脱特有の交感神経の持続的亢進による代謝異常で生じる 筋委縮 筋減少 体重減少は、球麻痺や手指足趾、上肢下肢、体幹全般に対して運動障害を呈する為、ALS様現象と称され久しいですが、経時経年の運動ニューロンの脱落で惹起される運動障害と、ベンゾ離脱の代謝異常と筋硬直等のダブルクラッシュで生じる運動障害との鑑別は、指や足の動かし始めの初速で直ぐに分かりますし、ベンゾ離脱の筋萎縮や筋減少は進行が早過ぎる事も鑑別要因になります。

4)様々な事情で混迷を極めるベンゾ離脱の今

諸々含め要約すると、ベンゾそのものが脳脊髄の極めて広範囲に渡り反応を及ぼす結果、その弊害も広範囲に渡る為、症状も多種多彩に表現されるのも自然な事、中枢神経症状は末梢神経症状と異なりセルフコントロールが効き難く、見慣れぬ症状に溢れる事、見慣れぬ症状に説明し難い状況となり、周囲の理解も乏しくなる事、

治療薬という看板を背負っている事で生じる理解の剥離がある事、現在の検査機器能力/検査能力を超えた微細障害が皮切りの為、検査上も異常なしとなる事、異常なしの為に価値のない傷病名が宛がわれる事、ベンゾ離脱の概念が希薄である事、仮に知っていたとしても、自分のところで出した薬で起きうるべくして起きた事象を認めるのは難しい事、

ベンゾを飲んでいるから今の症状が出ているのではなく、ベンゾを飲み続けた事で生じた受傷部位が治らない内は症状が持続する事、ベンゾを飲んでいるから今の症状が出ている訳ではない為、ベンゾが離脱の進行抑制の下支えになる事、その為、急減薬や一気断薬は危険である事、しかし残念ながら、多くは2~6週間程度で断薬まで促す、ほぼ一気断薬に等しい手段が一般的な為、激しい離脱症状が惹起された群は、それらの症状群に対して傷病名が宛がわれては再度の薬物投与に至る事、又は再服薬に至る事、

それらの繰り返しはキンドリングの懸念が生まれ、より一層の鋭敏性とデリケートな状態が生まれる事、傷病名が宛がわれる事でベンゾ含む向精神薬全般の害反応に疎くなる事、宛がわれた傷病名に対する薬物も向精神薬や中枢神経に至る鎮痛薬、免疫抑制剤等である事、併行してベンゾ結合を外しベンゾ離脱を増悪させる薬物の服薬リスクが上がる事、

等の障壁が存在する為、恐らく今後も早期的に事情を解決する事は難しいでしょう。処方制限や減算処置、薬物の販売中止等の措置は簡単です。しかし制度改正や販売中止により、これからの人は良いかもしれませんが、これまでの人は重大且つ重篤なリスクが生じるのも過去事例からも容易に予測は可能です。

前項でも神経適応の負の側面として述べた通り、多くの国では2~4週間までと処方期限を設けている理由に、それ以上の期間に渡って飲み続けると、引き剥がす際には命掛けになるリスクが急上昇するからです。

5)薬物の害反応を無視した上で既存傷病名に信頼を寄せる弊害

飲み続けているだけで始まる常用量離脱症状の存在は、2017年3月にPMDAよりベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性について」 https://www.pmda.go.jp/files/000217046.pdf として発表されました。この発表によりベンゾ離脱を危険性や有害性を知った方々も多いかもしれませんが、急減薬や一気断薬(又はそれに近しい)行為が各地で行われ、重篤例が生まれているのも事実です。

先述した「傷病名が宛がわれる事でベンゾ含む向精神薬全般の害反応に疎くなる事」のリスクを考えます。私個人の全体的な懸念はベンゾ以外の比較的組織化され認知度の高い薬害関係に、サリドマイド薬害エイズMMRイレッサ、スモン、ヤコブ大腿四頭筋拘縮症や三角筋拘縮症、殿筋拘縮症を代表とする筋肉注射後の弊害、陣痛促進剤(子宮収縮薬)、薬害肝炎、HPVV等があり、上記を理由に向精神薬の服薬も目立ちますが、その害反応は無視されている印象を受けるのが残念なところです。

また、それ以外の非薬害関連の症状に関しても同様で、〇〇病、〇〇障害、〇〇症候群と看板を背負うと、それに付随する薬物全般の害反応への理解が乏しくなる印象を受けます。以下に改めてベンゾ離脱で惹起れる症状群を列挙します。※4~5年前にまとめた症状群なので古いですが…

向精神薬服薬による反跳性筋硬直という概念の表面化を目指して」
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・精神症状及び身体症状

易興奮性(イライラ・落ち着かない) 不眠 悪夢 睡眠障害 不安の増大 パニック発作 広場恐怖 社会恐怖 知覚変容(痛覚過敏等) 離人感 非現実感 幻覚 錯覚 抑うつ 脅迫観念 妄想的思考 激怒 攻撃性 易刺激性 記憶力 集中力の低下 侵入的記憶 渇望 痛み・筋肉の凝り(四肢、背中、頸、歯、顎) ピリピリする感覚 痺れ 感覚の変容(四肢、顔、胴体) 脱力(下肢に力が入らない等) 疲労感 インフルエンザ様症状 筋肉がピクピクする ミオクローヌス チック 電気ショック様感覚 震え めまい 朦朧感 バランス失調 霧視(ぼやけて見える、目がかすむ) 複視(二重に見える) 眼痛 ドライアイ 耳鳴り 過敏性(光、音、触覚、味覚、嗅覚) 消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、腹部膨満感、嚥下) 体重の変化 口渇 金属様味覚 嗅覚異常 潮紅 発汗 動悸 過呼吸 排尿障害 月経異常 皮膚発疹 かゆみ ひきつけ

・臨床現場で高頻度で見受けられる症状

顔面や背部が重い 頸部や背部に雑巾を絞るような痛み 抓られるような痛み 背部が引き下げられる感覚になる 顔面が詰まる感覚になる 微熱の持続 涙が出る(もしくは涙が出そうになる感覚が持続する) 頭痛(側頭部~頭頂部~後頭部) 耳鳴り(耳閉感も含む) 飛蚊症 ドライアイ様症状 強い不安感 強い孤独感 両鼻共、空気は通るのに鼻が詰まった感覚がする(副鼻腔炎様症状) 粘膜出血 体内(もしくは頭部)に熱がこもる感覚 目を常に押し付けられている感覚がする 顔面や背部が硬直するような感覚になる 異常発汗 口が苦くなる(金属臭や味覚障害的症状も含む) 血圧の異常上昇 下肢が重い 下肢が落ち着かない 背中を押される、若しくは引っ張られる感覚 手指・足趾の強張り アロディ二ア 動悸 睡眠障害 生理痛 胃腸障害(腹痛・便秘・下痢・便秘と下痢を繰り返す) 過食 食欲不振 集中力低下 思考低下
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これらの症状群に既存傷病名を宛がう場合、整形外科的疾患からイメージすると、発症部位が両手指、両足趾、両前腕、両下腿、両上肢、両下肢、両肩頚等が左右差なく呈している(非対称性の場合もある)、各脊椎高位の神経根症状や頚椎症性脊髄症が疑われる症状、日内日差変動が著しく(固定している場合もある)、血清反応陰性関節炎や脊椎関節炎、

多発性筋炎、多発性神経炎、多発性硬化症、関節リウマチ、シェーグレン、ギランバレー等の自己免疫疾患との類似、線維筋痛症慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群等と診断、アイザックス症候群様症状、スティッフパーソン症候群様症状、自律神経失調症や身体表現性障害等などがイメージとして湧き易いと思います。

只、これらには相当な誤解が含まれている事も知らなければなりませんし、傷病名の創設背景、流行り廃りの傷病名も含まれている事も知らなければならない事です。傷病名の考察は無害ですし、新規傷病名の創設も自由ですが、付随する薬物投与が更なる増悪を惹起する懸念材料となるのが、この問題を大きくする部分かもしれませんし、ベンゾ離脱の概念が希薄な為に、幾つもの科を跨いで取っ散らかっているアクシデントかもしれません。

また、既存傷病名や向精神薬への捉え方次第では向精神薬由来で生じた症状も更なる悪循環を生むエピソードも多数あります。純粋に理解の相違と言われればそれまでですが、知っているか知らないかの差は大きく以後を左右します。
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age 65 sex m 診断名 逆流性食道炎 うつ病 線維筋痛症 

15年前に逆流性食道炎様症状が惹起され検査。同症状の改善目的で当該薬物が処方されるも著効せず2週間経過。その事を医師に訴えると「精神的なものでしょう」とされ、うつ病と診断。三環系抗うつ薬とベンゾ系薬を処方。

本人曰く処方された薬物に好感触を得たのか、1週間程で逆流性食道炎様症状が改善された後も、日中は抗うつ薬、就寝前にベンゾ系、嫌な事があった時には頓服的にベンゾ系の服薬と、次第に量が増える。

(服薬量の変動迄は分かりませんが)服薬内容は変わらず約5年後、両前腕と両下腿、両背部に姿勢変化問わず持続的な疼痛、不安感や焦燥感、睡眠障害等が惹起、これらの症状群から情報収集したところ、線維筋痛症と言われる病名を見つけ、遠方の病院まで診察に行き、線維筋痛症と診断を受ける。その際に抗てんかん薬を処方。

しかし当該薬物でも著効せず、次第にベンゾ系の量が増えていく。以降身体疼痛も全身に拡がり、精神症状も更に起伏が激しくなってきた頃、知人より精神病院を紹介され入院。入院直前迄は際限なく過量服薬する傾向があり、主にベンゾ系を服薬すると幾分落ち着く事から入院先での管理された服薬内容では納得がいかず、退院を申し出。

退院以降もベンゾ系を主として服薬を継続するも症状が落ち着かない事から再入院。この頃から過眠と不眠が繰り返される。今度は高用量のベンゾ系や抗うつ薬抗精神病薬を処方された事から症状が一見落ち着いたように見えるも、患者家族が服薬内容を見て驚愕し(要は多剤大量処方)、退院と減~断薬の申し出をする。その事で病院側は患者の退院後、1週間で半分。2週間でゼロとされる。

その後、間も無く全身性の身体疼痛や精神症状以外にも、アカシジア、ジスキネジア、全身の痙攣や痺れ等が出始め、再度医療機関に掛かるも相手にしてもらえず、再服薬をするも変化自覚なし。

異なる医科を巡るも精神科の通院履歴がある事を理由に、入院先の精神科外来を受療するよう促されるか、異なる心療内科や精神科で向精神薬が処方される程度で回復の兆し無し。唯一ベンゾ系には若干反応していた為、ベンゾ系の過量服薬が再度始まる。その頃、当該患者と親交のある別の方より当院に連絡が入り治療開始となる。

治療中及び直後は全身性の疼痛や極度な不安感、焦燥感は治まるも、翌日弱再燃傾向を繰り返しの治療が2度過ぎた頃、知人が患者宅に用事で伺った際、患者の姿が異様な光景に見えた事から(アカシジアやジスキネジア、不安発作状態を見ての事と思われる。知らない人が見れば確かに異様と言えば異様と言う表現も分からなくもない)そのまま車に乗せ、以前の入院先とは異なる精神病院に連れて行き入院となる。

後日連絡者の方から電話を頂き伺った話では、向精神薬の点滴とECT(電気けいれん療法)を受け、微動だにせず寝ているとの事。古典的な治療を好む精神病院に入院した模様。
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6)中枢神経性疼痛や多彩な自律神経症状が有名になる歴史の傍には必ずベンゾがいる

全身性の疼痛や自律神経症状が有名となるベトナム戦争以降、データとして新しめの湾岸戦争病(湾岸戦争症候群)を例に約2年前にまとめたので振り返ります。

湾岸戦争病は様々な危険因子の指摘があります。神経剤に対する防御手段としての臭化ピリドスチグミン(PB)錠剤の服用と兵士の展開中における殺虫剤の使用 心理的ストレス クウェートの油井火災 劣化ウラン(DU) ワクチン 殺虫剤 神経剤 感染症 戦場でのその他の被曝 被曝の組み合わせ 等があり、

両戦争共に兵士の士気を高める為、モダフィニルやアンフェタミンの使用が許されていた為に様々な要因は考えられますが、ベトナム戦争の少し前より、ベンゾが販売され始めた事も忘れてはならない事です。
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ジョン・ケイドによるリチウムの抗躁作用の発見あるいはクロルプロマジンの合成と治療効果の発見をもって、近代における精神薬理学の幕開けとされる。1949年にジョン・ケイドがリチウムの抗躁作用を見出す。1952年には、フランスの精神科医ジャン・ドレー(英語版) (Jean Delay) とピエール・ドニカー(英語版) (Pierre Denike) がクロルプロマジン統合失調症に対する治療効果を初めて正しく評価し、精神病に対する薬物療法の時代が幕を開けた。

1957年には、ベルギーの薬理学者パウルヤンセン(英語版) (Paul Janssen) がクロルプロマジンより優れているとされる抗精神病薬ハロペリドールを開発する。1957年に、スイスの精神科医ローラント・クーンによってイミプラミンが、精神賦活作用を有することが見いだされ、うつ病薬物療法への道が開かれた。1960年頃までに、初のベンゾジアゼピン系の抗不安薬であるクロルジアゼポキシドと、その類似の化学構造を持つジアゼパムが販売されるようになる。 
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湾岸戦争症候群 概要及び症状 ※ポイントは戦争中ではなく(暴露中ではなく)遅発性を示している事

診断と治療の方法は確立されていません。このため、医師は症状の緩和に重点を置きます。湾岸戦争症候群の症状を訴える帰還兵たちは、同世代の人と比較して入院率や死亡率が特に高いということはありません。湾岸戦争症候群はまだ十分に解明されていません。ペルシア湾からの帰国後数カ月以内に、米国、英国、カナダの異なる部隊の帰還兵が、頭痛、疲労感、不眠、関節痛、胸痛、皮膚の発疹、下痢などさまざまな症状を訴え始めました。

しかしほとんどのケースで、患者が訴えた頭痛や吐き気などの症状は、医師による客観的な確認を得られませんでした。皮膚の発疹など症状が確認できたケースでさえ、原因の特定には至っていません。症状は主に神経系です。記憶力、論理的思考力、集中力、注意力などの低下、不眠、抑うつ疲労感、頭痛などがあります。その他の症状には、身の回りを認識する能力(見当識)の喪失、めまい、勃起障害(インポテンス)、筋肉痛、筋肉疲労、脱力感、チクチクする感覚、下痢、皮膚の発疹、せき、胸痛など

(執筆者: Margaret-Mary G. Wilson, MD, United Healthcare, Maryland Heights) 
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イギリス海外ドキュメンタリー  湾岸戦争症候群 1993 より 1:50~

https://www.youtube.com/watch?v=Vkvb5wTXFbQ(現在は視聴出来ません)

病状が酷く働けなくなった者もいれば、自殺を図った者もいます。帰還兵の一連の病状を指す湾岸戦争症候群という言葉も生まれ、議会も原因究明に乗り出しました。「呼吸器に異常があります」「出血すると血が止まりません」「下痢 吐き気 むかつき 歯茎から血が出て歯が抜け 目やに 鼻水が止まらない」「時々、記憶がなくなってしまいます」「はじめは自分だけだと思っていました ところが同じような帰還兵が大勢いる事が分かったんです みんな 倦怠感や関節の痛み 皮膚の異常など様々な症状を訴えていました」

「当局はそれらを、全て「心理的な要因」によるものだと片付けていました」「身体の調子がおかしくなったのは湾岸戦争が終わって直ぐ 2週間の内に体重が27キロも減って身体が思うように動かなくなってしまったんです 歩くこともままならず、這って戦車に入り仕事をし、出てきて休むというのを繰り返していました」「私は自分の病気が何か調べてほしいと頼みましたが、軍の病院は「精神病」だと言う主張を変えませんでした」
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7)認める認めないの論争と回復は別な話

今も昔も患者への対応は同じようなものです。様々な歴史は誰にも認められないから始まります。そしてそれらを心理的な要因、精神病、気のせい、とするのは受け止める側も含め、自ら発展を閉ざしている事に気付く必要もあります。機能性障害の発端は目に見えない為に上記理由に帰結する印象を覚えますが、微細な障害は現在の検査機器能力を超えて発症している、又は異なる部位に原因が在ると考える前向きさが見られないのが現状です。

また、このような事象を誰かに認めてもらうか否かは、治る治らないとは無関係であり、そこに力を入れるか入れないか、それが必要な労力か否かは1人1人の判断でしかないと思いますので是非はさて置き、私個人は認める認めないの立場でも、隠す隠さないの立ち位置でもなく、在るものは在るで考えていくしかない為、気持ち的には楽な側面はありますが、全身に異常を及ぼすベンゾ離脱ほど楽なものはなく、患者を苦しめる原因だと現場感覚からも見て取れます。

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イメージ 1  ~針治療から病態定義の見直しを~