藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

向精神薬由来症状/離脱症状の安全な取り組み方の検討と治療 5

ベンゾ離脱の急性症状と慢性症状を、シナプス間隙間ギャップと興奮性細胞死に置き換えて考える~

離脱症状の病態検討のメリットは増悪因子を呼び込まない事に繋がります。中枢神経に幅広く深く反応を及ぼす薬物による弊害は、僅かな理由で症状増悪に至る極めて悪質な性格を持つ事から、先ずは増悪要因を探す事で、消去法的に回復因子を見つけ出す事が出来るかもしれません。

人間は具合が悪くなるほど様々な情報に煽られ誘導される生き物のようで、「このクスリ危ない」「止めよう」の直結的な断薬ありきで物事が進む算段に不安を覚えると同時に、急減薬や雑な服薬に至った事で収集が付かなくなった患者群が歩んできた道のりを、これからの方も同じ道を歩む懸念もあり、それを少しでも抑える事が出来れば、既知とした上でも不安に囚われる事無く、曲りなりにも一先ずのQOL維持に努められると思います。

病名や障害名に拘り、薬物治療による中長期的な経過が如何なる状況になるかのデータは存分に存在します。そして有害性を既知した上でも、薬物の手放し方1つで如何なる状況になるかのデータも存分に存在します。昨年から今年に掛けては厚労省やPMDAの働きもあり、時世に乗ってかベンゾの単剤症例の危険性が浮き彫りになった印象も持ちますが、多剤単剤問わず、リスクを取る手段を真似をしなければ良いだけで、難しいものではありません。

また、私は治療を交えた経過追跡等々の情報を下に述べている為、薬物調整のみで症状対峙している例とは異なる視点かと思いますし、自力回復が不可能と判断した結果の重篤例が占めますので、普段から書いている内容も、仕事ができ日常生活を送れる患者像でもありません。

只、薬剤性由来は僅かな拍子で寝たきりに追い込まれ、全てを失する可能性もあり、他人事では決してないと思います。向精神薬の有害性の未知既知問わず、何らかの拍子で薬物の途絶や急な変薬が起きた場合に高確率で起きる事象の為、理由はともかく誰でも起きる懸念があります。寝たきりに至った患者群のエピソードを伺っても、爪切りのヤスリで僅かに削って減らしたところ、動けなくなる程の離脱症状が惹起される等、常々危ないと書いている一気断薬とは掛け離れたデリケートなレベルで推移する例もあります。

その為、現実問題として減量は速い遅い多い少ないと表現するのも困難な部分もあり、杓子定規に物事を述べる危険性も感じる他、ラムネみたいなものを僅かに弄るだけで寝たきりに追い込まれるほどの過敏性を示す例もある事から、個々人の軸が定まらない内はリスクが上回り、「減薬しなければこんな事にはならなかったのに」と嘆く患者も少なくありません。それほどまでに向精神薬が絡む事例は深刻です。では、症状増悪とは何を指すかと言えば、既存症状の悪化と新規症状の惹起と捉えています。常用量離脱症状は薬剤耐性の獲得によるもので、高力価、短時間作用型、長期服薬で確率が上がりますが、金ハル単剤1週間でも厳しい離脱症状に侵される例もある為、例外は溢れていると思います。

大切なのは時系列に沿って離脱症状だと自覚/理解出来るか否かであり、既存の説明できる病名や障害名を探さない事です。只、離脱症状は遅発的にも惹起され、且つ慢性症状は比較的見聞きする症状群に溢れる事が以後を拗らせる一因になるのは否めません。一気断薬や急減薬でコールドターキーレベルになれば周囲も逆に理解を示すのかもしれませんが、大概は服薬しながら緩徐に始まる常用量離脱症状で日常生活を侵食し始める事で初めて異変に気付き、そこから薬を弄り始めて転げ落ちていく例が最も多い印象を持ちます。

1)常用量離脱症状に気付いたら減薬するしかないという選択肢について 

常用量離脱症状の発症理由を振り返る事で、減らすしかないという昨今の考え方に対しての危険性を改めて考えます。離脱症状が起きている時点で、大カテゴリではシナプスやレセプターでトラブルが起きている証拠と捉えて問題ないと思います。既にシナプス間隙間でギャップが生じている為、外的内的問わず、入力情報に対し恒常性が効かない状況です。中カテゴリで表現すれば内分泌異常や代謝異常、免疫異常、各神経伝達物質の分泌異常に伴う身体/精神症状の自覚、小カテゴリで表現すれば、睡眠障害や不安障害、筋硬直、痙攣その他の類となります。その為、既にシナプス及びレセプター間でトラブルが起きている状態を無視し、更に薬物を減らせばトラブルは拡大します。

2)継続的な新規症状が惹起されるタイミングはいつか 

ステイ中でも時折新規症状が惹起されるタイミングはありますが、大概は数日~数週間以内で自然軽快する軽微な例が大半です。しかし、中長期的に渡り継続する症状群の出始めの直近エピソードを伺う限り、一気断薬や急減薬の過去を持っているケースが圧倒的で、その際に何処かを受傷した名残りが残存している状況に見受けられます。この事から、新規症状は急性症状を惹起する行為を行う事で確率が上がると推測され、これはシナプス間隙間ギャップが突発的に強まる事で生じた細胞死に由来すると推測します。

3)同一個人が抱える症状群にも軽重はある 

治療介入初期は同一個人が抱える症状数も20や30は珍しいものではありません。只、そのような中でも結果論としての話になりますが、治療過程で順々に症状数が減少し、症状の度合いが減弱する経過を見る限り、離脱症状にも軽重がある事を窺い知れます。大概は当初から主に訴える症状が重症度は高い傾向にある為、回復するとしても最後まで当該症状が残存する傾向にあります。極めて微細な部位でのトラブルの為、末梢神経の損傷でイメージすると理解は早いかもしれません。末梢神経も損傷度合いにより自力回復が可能か観血的治療を要するかまで幅広く、損傷度合いにより神経修復術や機能再建術の後も症状が残存する例は少なくなく、実際の治療反応性も「反応しなくなる」になります。

4)シナプス間隙間ギャップと興奮性細胞死の差異 

いわゆる「ヤク切れ」は急性症状の事を指すと思います。服薬で治まる症状は急性症状かもしれません。反面、服薬で治まらない症状は、過去の急性症状で受傷した部位と仮定すれば、服薬による効果自覚は乏しくなる図式が容易に見えてきます。恐らく効果自覚の乏しい症状群は、シナプス間隙間で生じているトラブルでは既になく、当該部位が細胞死を起こし、機能し難い器質的異常を示唆する状態である為、服薬しても効果自覚が得られ難い症状群と自覚させ、断薬後も継続する症状群の理由になると考えられます。

5)1)~4)を踏まえて離脱症状を考える 

離脱症状に限らず、急性症状は急激に抑えられるものではありません。前進している船がいきなりピタッと止まり後進出来ないのと同様、進むところまで進まない限り、後ろに下がる事が出来ないのが現実です。その為、この急性期の度合いにより、以後に残存する慢性症状が反映されると推測される為、極力強い離脱症状は起こさないように注意する必要が生れます。

6)慢性症状の病態を改めて考える 

脳外傷や脳血管障害、てんかんその他の中枢神経損傷でも興奮性細胞死は生じ、回復速度や回復可能か否かは損傷度合いや発症時期に依存します。離脱症状も中枢神経症状のカテゴリの1つであり、発症起因が異なるだけで、当該部位が如何なる理由でも受傷すれば、受傷部位に沿った症状が発症するはずです。薬剤性由来に慎重性を高めている理由は、手元の薬を簡単に調整出来てしまう環境故です。反面、断薬後に治療介入する症例であれば、既に増やすも減らすもありませんし、減らす意志が元からない症例が安定した推移を見せるのは皮肉ですが現実です。現症状が現症状のレベルで推移しているのは、薬物によりシナプス間隙間が良い意味で保たれている証拠かもしれません。様々なリスクに暴露したくない場合はクスリゼロが理想ですが、それ以上に今を先ずは何とかしなければ先もありません。

7)安定した経過を辿るにはどうすれば良いか 

受療タイミングの多くは、急性症状となる進行が極めて強い時期となる為、即時的に治療効果云々は自覚し難いものですが、累積される事で症状数は減り、日常生活が円滑になり始めます。これは何を意味するかと言えば、当該機能の回復が成立した事で起こりうる状況だと思います。時期の長短は個々人あるかもしれませんが、薬剤性症例は薬を弄らない限り、安定的に回復する経過は見ています。また逆に、都度の減薬を忍容レベルで推移及び維持させる為にも、身体状態の回復が前提になります。

私の持つ治療作用は極めてシンプルなもので、罹患部位となる中枢神経に栄養となる動脈血を強制流入させている(させ続けている)だけに過ぎません。逆の見方をすれば、軽症例ほど自力回復例が存在する理由もこれで分かります。人間は元々自己の体内トラブルを修復する機能を持っています。それを先述した恒常性と呼称するのかもしれませんが、軽症例ほど恒常性が機能し易いのは全ての由来を持つ症状で同様かもしれません。ベンゾ離脱が時に自力回復が不可能になるのは、反跳作用となる睡眠障害や不安障害その他の身体/精神症状が強力に働き続ける事で、体力は奪われ、内分泌の変動も著しく、恒常性を奪う事かもしれません。

8)悪化させようと思えば幾らでも悪化させられる 

ベンゾ単剤としても急性症状を幾度となく繰り返せば、恐らく症状は何処までも悪化します。上述した外傷由来や脳血管障害等とは異なり、症状の完成が存在しない離脱症状は、薬物調整の仕方1つで如何様にも症状は深みを増していきます。只、原因は薬物かもしれませんが、症状自覚の由来は自己のシナプスやレセプター、又は当該部位の機能を失した影響と思われる為、自己の身体から起きている症状です。この意味を冷静に考えれば、薬物を急激に手放す事の危険性も分かりますし、薬物調整で回復は得られ難い意味も分かると思います。ベンゾ離脱にはメジャーも抗うつ薬も患者自覚としては好感触の反応をするケースもあると思いますが、下地が削られているだけと気付くのは先の事かもしれません。

ベンゾ単剤症例の病態を単純に考察する~

大雑把に自律神経症状と述べても漠然な為、GABAとアセチルコリンを交えて簡単に病態考察する事で理解が深まるかもしれません。モノアミンの働きも併記するべきですが、あくまで簡単な概要としての話です。ベンゾ離脱は多種多彩な症状が惹起されるのは確かな事ですが、症状を分解する事で如何に薬物が全身に影響を及ぼすかが分かるものと思いますし、弊害も想像し易くなるかもしれません。また、自然発症性の自律神経症状が何故治り易く、薬剤性の自律神経症状が何故治りにくいのかも見えてきます。それは恒常性云々以前の問題で、恒常性を機能させる為の自己のGABA合成や分泌能力の問題に帰結します。この度は比較的単純な症状群を惹起した症例を交えて考えたいと思います。※掲載許可は頂いています

age 40 sex m 服薬歴 10年前より様々な向精神薬を服薬以後、昨年よりリボトリール6㎎の減薬を開始。0.25㎎まで減薬した際、動悸、身体の揺れ、吐気、一歩も歩けない症状等が生じつつも、3回の断薬失敗の末、今年5月以降は服薬していない

現症 身体に力が入らない(ほぼ寝たきり)、手足の浮腫み、肌や白目の部分が黄色くなる、足の皮膚感覚異常、足の冷え、足の指が時折動かなくなる、耳が出てきている、お尻が勝手に動く、右半身を中心とする身体の揺れ、胃腸が常にバクバク動いている、37℃台の持続的な微熱、食事量は変わらず、2年前は175㎝95㎏の体重が昨年夏に70㎏、現在48㎏となり、胃腸機能の回復を見込み断食したところ更に動けなくなる 既往歴は特になし

直近の特筆すべき身体症状のエピソード 断食後、パン食を中心に食事を摂り続けたところ、今迄にない便秘が生じる。小腸や胃の辺りまで詰まってきている感覚となり、下腹部の張りも酷く脱水症状も生じ腸閉塞を疑う。自己で浣腸をするも少量しか出ず。翌日には急激に緩くなり、自己排便が可能になる

直近の特筆すべき服薬エピソード 4か月に渡り断薬し続けたものの、経時的な症状の増悪に不安を覚え、リボトリール1㎎を服薬したところ、30分程度で自分の力でベッドに腰を掛け続けられる、歩くことが出来る、力こぶを作れるようになる、身体の揺れ等の他症状も消失した事に更に不安を覚える。また、薬効自覚が以前と比べて短時間である事にパニックとなり3㎎まで増量

簡単な病態考察 ベンゾ離脱は、耐性獲得や断薬後に、GABAの自己分泌や合成能力を薬物に頼っていた為に不全状態に至り、抑制系神経伝達物質であるGABAの分泌不全が起こる事で、興奮系神経伝達物質の抑制が効かない状態と推測されます。

また、アセチルコリンは副交感神経の神経伝達物質で、心筋、平滑筋、骨格筋に対して迷走神経や運動神経で枝を伸ばし、各々のレセプターが受け取り機能していますが、ベンゾ離脱でGABAの合成/分泌が低迷し、内/外部情報の入力に際し抑制機能が働かない為、平滑筋となる胃腸機能の障害や、骨格筋の収縮障害(運動障害)が訪れると推測されます。只、今症例の運動障害も、いわゆる運動ニューロン疾患を由来とした症状群ではなく、また、栄養失調や筋量減少だけの問題でもなく、ベンゾ離脱に誘発されたアセチルコリンの分泌不全に伴う、神経筋接合部の疾患に類似する症状である事が患者エピソードからも分かります。

他、体重減少に至る理由も様々あるかもしれませんが、1つは持続的な過興奮による基礎代謝の向上や、胃腸機能の障害により、幾ら食べても消化/吸収が出来ない身体環境に陥ったものと思われます。今症例も、使用した部位の筋肉から痩せていく、異化が促進されている事が裏付けられる特異的な経過を辿っています。手足の浮腫み、肌の色や白目に黄色味が帯びてきたのは胃腸機能の障害による栄養失調と考えられ、ベンゾ離脱は2次的にも3次的にも弊害を生みます。大概はこれらの症状が出た時点で甲状腺ホルモンの疾患が思い浮かび、当該治療を受けても無効となるケースが多数を占めますが、時系列に沿うとベンゾ離脱と分かります。それは上記の再服薬により得た症状変化で更に明確になりますが、離脱症状の概念が存在しなければ、以後も無効治療が続いて拗れていく事も容易に想像が付くモデルケースかもしれません。

ベンゾ離脱の慢性症状に対する再服薬後のシナプス間隙の事情を考える~

ベンゾはω1、ω2の各当該レセプタに結合し、シナプス間隙のGABA濃度が高まる事で脳全般や脊髄の鎮静/抑制反応を齎すものの、外部物質がレセプタに滑り込むように結合する時点で節後神経の変性は惹起されると推測され、その結果論で自己分泌能/合成は不必要と判断され、アポトーシス的な細胞死が生じた場合、後に追加したベンゾがレセプタに結合しても、レセプタ側の既存変性と節前神経側の能力が低下している事で適切な効果が発揮される事はないと推測する事が可能です。それと併行し、抑制が常時効かずに過興奮に陥る中枢神経系の身体表現の多くは所謂逆転現象を呈し、不眠や不安、筋硬直や痙攣等々が生じる他、急性症状の際に惹起された興奮性細胞死が更なる罹患部位の拡大と、断薬後も残存する症状群に発展し、シナプス間隙間で起きている事情のみならず、左記事情で誘発された興奮性細胞死が慢性症状/残存症状へ至ると推測されます。

大脳や小脳、脳幹や分枝する脳神経、脊髄細胞膜の何処にどのようなダメージを及ぼすかは結果でしか評価出来ませんが、大脳皮質であれば虚血性・低酸素脳症辺りをイメージすれば分かり易く、各々の層で酸素要求量は異なる為に脆弱性にも段階があり、このような段階的な細胞死を層状壊死と表現する事もあります。また、先日より挙げている各種脳神経の酸素要求量の高い部位が脆弱性を持つ事より、視神経や内耳神経、現場では三叉神経由来の各種症状が惹起される他、筋硬直等々も目立ち、HPA系の異常も間接的に誘発される他、興奮性細胞死に誘発されたアセチルコリンの分泌不全に伴う、心筋や平滑筋、骨格筋由来の症状群も散見される為、多種多彩な症状群に溢れるのでしょう。

上記事情に至る諸々の理由はベンゾが直接的に関与したものではなく、ベンゾ離脱で生じたシナプス間隙間の異常やグルタミン酸細胞死で至るものと推測するのは、断薬後も残存する症状群から見えてきますし、ベンゾ離脱でノルアドレナリンドーパミンの興奮系神経伝達物質が常時過剰に分泌される弊害も生まれる為、双極性障害統合失調症様の症状群が誘発される理由になると推測されます。結果的にメジャー系の処方も積もれば、いずれパーキンソン症候群等々も見られて抗パ剤を出される等、訳の分からない状態に陥る例も見られますが、薬物でどうにかしようとすると、そのような過程を踏んでいくのが現実かもしれません。

度々私が治療を経過させる際に、先ずは直近量でのステイが最も安全としている理由にも繋がりますが、離脱症状はベンゾそのものが惹起しているのではなく、ベンゾにより誘発されたシナプス間隙間のギャップや興奮性細胞死による、自己から発せられる症状群の為、善悪の話はさて置き、また、ケースバイケースかもしれませんが、安全に進める為には継続的且つ安定的な服薬が必要なタイミングもあるかもしれません。

只、向精神薬の有害性や危険性を既知された多くの方々は、ベンゾを飲んでいるから症状が起きていると思われている場合も多く、離脱症状を既知とした段階で急減薬や一気断薬を行う傾向が高いのも現実としてあり、理解の剥離は少なくないのも現状です。他、以前より反向精神薬派の流れとして、離脱症状はヤクが抜けている証拠とする良きもの的な風潮が患者を危険な状態へ追いやっている例も散見されます。数年来この手の症状と私自身の立ち位置的な視点で患者と治療者の流れは見てきましたが、離脱症状は良いものと肯定するのは、治療者側の心理としては楽なのです。要は目の前の患者が離脱症状でのたうち回っていても、それをヤク抜けの途中だからと肯定させ続ける事が出来れば、治療者は幾らでも言い訳が可能になります。

しかし、現実はヤク切れによる急性症状のみではないと思いますし、大半は断薬後も残存すると示唆される慢性症状に移行すると思います。他、ステイ及び断薬後も残存する症状群を元疾患だからと逃げる風潮もありますが、元々はその症状があり、向精神薬を服薬する契機を辿る場合も多いのですから、離脱症状か元疾患かに関わらず何とかする姿勢が治療者/助言者なのではないでしょうか。話は戻し、離脱症状の基礎は薬物が足りていないから生じている状況である為、足りていない状況から更に減量すれば一層の足りないにより脳や脊髄は暴れ出します。しかし、足りないから増やせば良いというのはまた異なる結果を齎す例が多いのも、レセプタの変性が服薬初期から生じている為、時期が過ぎてからの再服薬では、急性症状には薬効自覚は得られても、慢性症状には適正な効果、適正量が不明瞭となるのでしょう。

ベンゾ離脱を薬物調整で対峙する難しさを考える~

ベンゾの服薬がレセプタへの結合を標榜する以上、変性が約束される懸念を述べましたが、離脱症状を抱える経緯に至る服薬歴を辿れば、その多くは服薬と休薬を幾度となく繰り返している例が多数を占めます。また、異なる視点で見ると初期の服薬と休薬では、断薬後(休薬後)に支障を来す症状自覚は然程目立っていない印象もあります。仮に何らかの症状が惹起されたとしても、極めて軽微な場合は離脱症状等と考える事もなく、自然寛解していると思います。ベンゾ離脱は中枢神経系の症状群に溢れますが、中枢~末梢神経症状問わず、症状は軽微であるほど恒常性は機能し易いと思われる為、放置しても自力回復が可能かもしれません。

只、一般的には自力回復が不可能だから治療という手段を模索する事になると思う為、結果的に現場での重症度は飛躍的に高い層が占め、発症からのタイムラグも大きいものです。度々の服薬と休薬でも当該レセプタに同様な穴埋めが出来ていれば良いかもしれませんが、恐らくそのような事はないのが現実です。上手く穴が埋まらなければ効果自覚は無いかもしれませんし、自己分泌能/合成能力が低下していれば尚更かもしれません。いわゆるダウンレギュレーションが生じてからの再服薬の問題です。

単に効果自覚が薄い程度であれば以後のトラブルは少ないかもしれませんが(いずれ乱用に陥る懸念はある)、薬剤過敏やキンドリングが起きた場合が大きな問題になります。薬物の反応を良いも悪いも全て受け止め続ける事になった場合、どうすれば良いかの対策を講じる必要もあります。急いで止めれば酷い離脱症状に曝され、飲む都度に具合が悪くなる状況は考えただけでも恐ろしいものです。

https://www.facebook.com/kouta.fujiwara1/posts/2090368261054429 で挙げた症例の続きを踏まえて考えていきます。こちらの方は断薬から4か月後、離脱症状に耐え切れずリボトリールを約7~8時間に1mg/1回のスパンで服薬する事になりました。以後、どのように症状が変化したかの経過を見ていきたいと思います。先ず、体重は48kgから52kg(元々は175㎝95㎏)に一時的に増量しました。このスパンで服薬している理由は、此の位の時間が経過すると運動機能が落ちる為と伺っています。薬効時間が過ぎると直立すらも不可能になる(この時の移動は車椅子)為、その機能が再服薬により再獲得されたのはメリットかもしれません。

只、再服薬により2時間程しか日々眠れなくなりました。一見不思議な現象かもしれませんが、ベンゾ離脱後に薬剤過敏を併発し、以後の再服薬で逆転現象/脱抑制が生じる懸念があると考えれば不思議な事ではありません。他、迷走神経由来と思しき胃腸機能の障害及び腸閉塞様状態も一時的に改善したかのように見えましたが、数日後には再服薬前と同じ状態に戻りました。また、新たに流涙症と複視が惹起される他、呂律が回らず足のフラツキも見られ、日内日差で変動はありますがメールの内容が平仮名になる、誤字脱字が目立つ、暴力的になる、キレる、腸閉塞様状況にも関わらず過食が止まらず結果的に排便がより困難になる等、再服薬から10日程経つ今も、平行線どころかトータル的には悪化傾向を示しています。

結果、直近の情報では体重も52kgから51kgに減少し、薬効自覚も7時間を切り始めています。既に以前の服薬でレセプタが変性している部位に対しての追加的な服薬は同様の効果自覚を示す事はなく、薬効時間が短縮される事を筆頭に、離脱症状が惹起された後は薬剤過敏的な状況に陥る為、当初の6mgではなく3mgでも、副作用的な呂律の問題や酩酊感、眼症状その他も新たなに併発したと推測されます。

また、このような事態になると当初の服薬量は参考にならず、常に予想外、規格外の展開が起きるでしょう。例えば今件では3mg/1dayの服薬量がどのような理由で算出されたかは分かりませんが(伺う限り衝動的に1mg玉を放り込んだものと思いますが)、再服薬で新規に惹起されたネガな症状群を読む限り、身体的なキャパを超えている印象もあります。しかし恐らく、再服薬による適正量は誰にも見つける事は出来ないと思います。その為、結果論に対してアレコレ評価を付ける事は容易かもしれませんが、当時の状態や患者感情を汲み取れば、1mg玉をわざわざカットしたり、タイトレーションを行う事はないと思います。また、仮に0.5mgならネガな症状が惹起されないかと言えばそうではないでしょう。

このように再服薬で得られるメリットはあるものの、デメリットも生まれ易いのが離脱症状後の再服薬ですし、ベンゾ離脱を既知とした上での再服薬の場合はある程度の知識も既にあると思う為、留まれる事も出来るかもしれませんが、知らない場合の短期的未来は、薬物の増量と症状増悪の懸念が生まれ続けるリスクがあります。このような状態に陥り続けて薬漬けになる例が一般的かもしれませんが、離脱症状の存在とメカニズムを既知とする事で、その後の弊害を回避出来ると推測されます。

ベンゾ離脱により慢性症状に至る興奮性細胞死で発生したと推測される症状群の場合、再服薬で改善自覚を得る事は極めて難しいと考えられますし、シナプス間隙間の事情だとしても、レセプタの変性や自己分泌能の問題が基礎にある為、仮に同一量に戻したとしても平衡が取り難くなる理由でもあると考えられます。大切な事は仮に再服薬で平衡を取り戻す事は出来たとしても、それは楽になっているだけで治している訳ではない事、シナプス間隙間の事情を再度薬物で埋めた場合、自力回復が入り込む隙間が無くなる事を知る事でしょう。

治療作用による奏功症状群を改めて考える~

ベンゾの標的と目的はω1、ω2のレセプタの穴埋めによるGABAの濃度上昇に伴う鎮静/抑制であり、常用量離脱症状離脱症状は、耐性獲得や減~断薬による自己分泌能力や合成能力低下に伴うグルタミン酸の濃度異常による細胞死や、レセプタの変性による当該神経伝達物質の不適切な処理により惹起された状態が基礎にあり、誘発されるアセチルコリンの分泌不全、ノルアドレナリンドパミンの過剰分泌による内分泌や外分泌異常、代表的に持続的なコルチゾル濃度上昇によるネガティブフィードバックに伴う下垂体前葉の機能低下や、海馬を代表とする脳細胞萎縮等々が段階的に起こり、症状は色濃く変動を見せ、重症度を高めたり複雑化すると推測されます。

罹患部位はベンゾの反応部位に依存すると推測され、損傷度合いも個々で異なり、症状数や症状の内容、改善速度や期間も全く異なると推測されます。罹患理由及び部位から発せられる症状群を書くと莫大な為に省略しますが、機能/器質的な面を含め、受傷内容を鑑みても引き続きの薬物では治らないと容易に察しも付きます。元も子もない話をすれば薬物治療は何も治していないのですが、それはさて置き、離脱症状を惹起した段階で服薬している患者は、大きく分けて3つの症状を保有しています。急性症状と副作用(厳密に書くと、ネガポジ含む薬物全般の反応)と、何らかの形で急性的なベンゾ離脱を惹起した後に移行する慢性症状です。

その内、針治療が奏功するのは慢性症状です。急性症状や副作用は服薬している限り大なり小なりリスクを抱え続ける部分です。只、日常を維持し続ける為にも、また進行増悪を続ける厳しい中枢神経症状に暴露しない為にも、支えとして置く時期は必要かもしれません。度々ながら、離脱症状はヤク切れの急性症状を示しているものと捉えられ、実質的に冒頭理由で惹起され続ける症状群は、脳/脊髄損傷の類に変わりありません。その為、離脱症状という表現だけでは言葉が足りない/誤解を生む表現かもしれません。

そのような中、針治療は何をしているかを改めて述べると、大脳の栄養血管は総頚動脈系、小脳や脳幹の栄養血管は椎骨動脈系となり、左記の血管周径は頸部交感神経節が担い、脊髄の栄養血管は神経根近位を経由している為に当該部位の処置に過ぎず、元来保有している器官を利用している手段です。機械的刺激が交感神経節に加わる事で収縮の後の強制拡張が起こり、神経根近位の細動脈の血管拡張等の強制的な血流増進による罹患部位への栄養により、代謝促進/細胞新生を求め続けた自力回復を非日常的な速度で押し上げていると推測しています。

作用が弱く作用時間も短時間であれば、効果も弱く症状改善へ至らない為、治療作用を上げ続ける模索は日々の課題ですが、何に効き、何に効かないかは確と区別しておく必要はあると思います。ひとたび急性症状を惹起した以降は薬物の過敏性も高まるのか、数値上のみの判断で直近量に戻す、数値上のみの判断で増量した場合、以後に奇異反応やキンドリングも高確率で鮮明に起きているケースもある為に一概には言えない部分も多いですが、改めて要旨を述べると、ヤク切れによる症状は日にちの経過で大概は消失するものですし、副作用も大なり小なり放置していても比較的短期間で消失します。

その為、「離脱症状は2週間もあれば消えると言われた」と言うセリフをよく聞くのかもしれません。私自身も経過を追跡している限り、痙攣や高熱等の急性症状の多くは4~5日から2週間程度で収束しています。しかし、それよりも深刻且つ問題なのは、急性期に受傷した脳/脊髄が進行性/各種器官の誘発的な症状惹起を伴い増悪し続ける症状群です。あくまで針治療の範疇は、冒頭理由で受傷して誘発された嫌気性代謝/低酸素代謝による細胞死部位に効果を示し、それらの回復を以て、アセチルコリンの分泌不全やモノアミンの過剰分泌の是正、内分泌や外分泌異常が是正されていくと治療反応性及び追跡にて捉えています。

副作用に針治療は効かないというのも、添付文書の副作用欄をにらめっこした上での話でもありません。個人的には副作用欄に羅列している症状は、治験期間を踏まえれば常用量離脱症状や薬剤により惹起され移行した慢性症状も混在している→それを副作用と記載している、に過ぎないと考えています。何より時系列を追えば難しい話ではありません。

只、危険性や有害性を知った上でも、具合の悪い患者は常に誘導され易く、急減薬や一気断薬、過剰服薬等の最もハイリスクな手段から入り、そして拗れていく例を散見している以上、安定的な過程を踏みながら回復へ運ぶ事は全体で見た場合、まだまだ容易ではない印象を持っています。過程に感情は必要ないと思いますが、人間は具合が悪い程に感情を抑えきれない生き物だとした場合、その感情を抑える事が出来れば一層の安定感を示しながら経過を踏む事が出来るのかもしれませんし、衝動的且つ突発的な行為を抑える為にも、今の症状が何故起きているのかを考え続ける事と、今以上に増悪させない取り組みが大切です。

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イメージ 1  ~針治療から病態定義の見直しを~