藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

向精神薬由来症状/離脱症状の安全な取り組み方の検討と治療 8

~ベンゾ離脱の進行病変の抑制手段を考える~

離脱症状が中枢神経の回復期を意味する事は決してなく、症状自覚を有する時点で急性期か慢性期に分類される極めてデリケートな状態に置かれている基礎病態を知る事で、如何様にも変動するリスクを僅かでも回避する手段も生まれます。神経節前部の機能異常とレセプタ側とのシナプス間隙のギャップによる脱抑制状態、追随するグルタミン酸の濃度異常のニューロン破壊が、症状として表現される状態と推測されます。

ベンゾ離脱と対峙する上での目標は、急性期を如何に最低限で留めるかが中長期的な将来の展望を見越す課題となり、以後の症状残存数や内容、度合いを左右すると思われます。冒頭で述べた離脱症状イコール回復期の説明をする方々の意味が私には分かりませんが、仮に離脱期に神経適応に生じた賦活期イコール症状自覚と捉えた場合、断薬後もVAS値が変わらず5~10年に渡り残存する症状群と矛盾が生じます。

身体を考える大前提に、ベンゾ離脱を有しており、且つ服薬中の状態か否かかと思います。後述する事にもなりますが、人間は如何なる環境にも適応しようとする生き物である事を忘れてはならないと思います。寒くなれば身体を震わせ産熱し、暑くなれば汗をかいて放熱するように、一定量のベンゾを中長期的に服薬した場合のベンゾ結合部位(以下、ベンゾサイト/サイト)とて適応しようとし続けるものと推測されます。その結果、以後にベンゾを増減する事で様々なネガティブなケースも発生します。

ニューロンアポトーシスの抑制に最大限のブレーキを掛け続ける手段がステイで、減量が進行増悪となり、増量が曲りなりにも服薬に対して適応しているサイトを抉じ開ける増悪の懸念となり、ベンゾ離脱を有している事態を無視した行為は、機能異常を持つ神経節前部の不利な環境に適応出来ず、症状増悪や新規症状惹起が成立すると推測されます。

減量や服薬忘れで忍容レベルを超えた増悪自覚に対して、早期的な再服薬で症状の改善自覚が得られるのは、以前の量に現在も維持されている状態と推測され、遅延的な再服薬で改善自覚なしや増悪自覚が発生するのは、減量又は断薬で以前の量の結合が見られなくなった事により、ネガポジの解釈はさて置き器質性の高いサイト変性が生じた為の、数値上の問題ではないその個に対しての超過量になると推測されます。

その為、現場感覚からも過去に服薬と休薬を頻回的に繰り返していたり、形式は如何なるものであれ、投与間離脱が起きる確率の高い薬物や服薬の仕方等のエピソードを過去に持つと、以後も厳しい離脱症状に遭いやすく、反面、数年数十年と飲み忘れもなく服薬し続けた群が、一気断薬に近い休薬でも平然としているケースが散見されるのかもしれません。

また、一般的な減薬スタイルは後者に合わせていると思われる為、「2~6週間程度でゼロまで減らす」「離脱症状は出ても数週間~数か月」の説明が通用するのかもしれません。その逆に、前者に上記スタイルを適用させた場合、恐らく大変な事になります。

病態考察にホメオスタシスと環境適応能力と時間進行の概念を加える事で、一定のリスク回避は可能になります。人間は劣悪な環境に置かれても適応しようと機能する生き物で、それは極めて微細なベンゾサイトへの外的因子による持続的な暴露環境下での適応もその1つです。
ネガティブが耐性に伴う常用量離脱の懸念です。

もう1つが症状自覚の有無問わず、雑なチャネル開口にも適応しようとするサイトのアロステリックの機能的な脆弱性から派生する症状惹起や、サイトの機能/器質面の雑な環境かもしれません。上記を踏まえた上で、中長期的な服薬で受傷し続けた脆弱なベンゾサイトは、常に極めて不安定である事を一旦は前向きに考える必要があります。

チャネル開口の度合いを左右するベンゾジアゼピンやバルビツール、フルマゼニルやペニシリン、アルコールやコルチゾル等の働きかけも当該サイトには相互する側面もあり、日常生活的にカジュアルに触れる物質や濃度依存は後者2つかもしれません。善悪はさて置き、応用しながら平衡を保たせようとする方々がいる一方、取り込み方次第で症状増悪の一因となります。

常に人間は現在の環境に適応しようとする機能を働かせている為、ベンゾ離脱の既知未知問わず、その状態から進む(減量)も戻る(増量)もリスクは多大となる事を意味し、現症由来を理解した時点で留まる事の手段をポジティブに捉える必要性と、現段階での環境適応が満たされた上で、順次先々の事を検討する重要性が伺われます。

1)抹消循環改善の是非

ベンゾ離脱を有した際の末梢循環改善の是非は以前も触れましたが、未知な方が今現在の症状が急性か慢性かを知るのは困難です。その為、ベンゾ離脱の存在や概念を既知した上で、以後のリスクを回避する為の対策です。症状増悪の好発例は風邪に罹患した際、アセトアミノフェンを含有した感冒薬が好んで処方され、服薬している印象を持ちますが、その都度に増悪自覚を訴える例が散見されます。

他、少数ですが末梢血管の拡張を示唆する降圧薬(カルシウム拮抗薬、レニン阻害薬、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、α遮断薬等)による増悪事例も見掛けます。左記は降圧薬のカテゴリで述べましたが、β遮断薬はアカシジアや不安神経症パニック障害、上がり症その他の身体/精神症状に用いられ、個人入手している方々も見受けられますが、ベンゾ離脱を基礎に有している場合、リスクが高い印象を持ちます。

NSAIDsやキノロン系の抗生物質が、ベンゾ結合を外して急性的に増悪させるメカニズムとは異なり、浴槽に浸かったり、運動したり、ビタミンB3の意図的な過剰摂取をしたり、末梢血管の拡張を示唆する漢方薬、抹消循環の改善を標榜する様々な手段や手技で見られる現象と類似すると捉えるのが理解は早いと思います。

上述の通りチャネルの開口にはコルチゾルも関与します。全身炎症が起きるレベルの運動も、抗炎症反応でコルチゾルは分泌されますし、後述しますが低酸素状態でもGAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)は活性化する為、無酸素運動も増悪自覚に繋がります。また、有酸素運動も継続時間により無酸素運動に切り替わります。

只、増悪理由も一過性の取り込みであれば症状増悪も一過性で済むかもしれませんが、取り込み続けた場合は芳しくない印象を持ちます。その為、事前に既知しておく事で、仮に増悪しても精神衛生上は保たれるかもしれません。

2)ニューロンアポトーシスを最低限に留める

ベンゾ離脱の症例では少数ですが、急性的に中枢神経症状を惹起した群の過去に、年代性別問わずメマリー(メマンチン)が処方されている例が散見されます。私が情報として持つ以上、服薬しても奏効しない為に受療している事が前提となる為、効果自覚が乏しかったからと読み取れますが、濃度異常による細胞死が起きてから服薬しても、既に傷めた細胞が回復する訳ではありません。

その為、元も子もない服薬かもしれませんが、ベンゾ離脱に考察を応用させた場合、原因部位はシナプス間隙のギャップであり、厳密に述べればベンゾサイトの機能/器質面の為、当該部位の回復が見られない限りは常に身体/精神状態は噛み合わない状態が続くと思われます。

前項でも述べた通り、ベンゾ離脱に伴いホメオスタシスが効き難い環境故、グルタミン酸含めたドパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン等の興奮性神経伝達物質の過剰分泌状態を抑制させる為、定型/非定型の抗精神病薬や、SSRISNRI、NaSSAの処方に至りますが、ベンゾサイトのトリートに寄与するかも極めて不確実で、結果論への姑息的手段と捉えざるを得ません。

3)ベンゾ離脱が脳細胞の栄養を変化させる事を前提とした取り組み

脳は糖により原則的に栄養されますが、緊急的にケトン体が栄養になります。ベンゾ離脱を大雑把に述べると、持続的な恒常性の乏しい交感神経の亢進です。基礎生理としてビタミンやミネラルの過剰消費の他、コルチゾル濃度の高まりで糖新生の亢進や脂肪代謝の促進、カルシウムの吸収/再吸収の阻害等々の弊害も見られます。

体内備蓄の糖は急速に消費され、代替となるケトン体を合成する為に、筋肉や脂肪を燃焼して脳に栄養として運ぶ結果、通常では考えられない速度で筋量減少、脂肪減少、その結果として体重減少へ繋がり、飢餓状態へ追い込まれます。

異化の促進(亢進)とひとまとめで述べていますが、患者表現から抽出すればイメージが湧くと思います。「使用部位から筋肉の減少が起こる」「筋力トレーニングをした部位から痩せる」「強い疲労やストレス、睡眠不足で筋減少が起こる」「朝起きたら痩せていた」「食べても痩せる」「爪の菲薄化や変形、伸びが悪い」「髪質の変化、伸びが悪い」「肌質の変化、保水機能の低下」「傷が治りにくい」等です。

交感神経の持続的な亢進によりCRH↑→ACTH↑→コルチゾル↑→糖新生亢進(ケトン代謝へ移行)→インスリン分泌↑→低血糖低血糖様症状及び血糖乱高下に伴う血糖上昇ホルモンの分泌による身体症状や精神症状の易惹起)→コルチゾル高値又は低値に伴うニューロン等の脆弱性惹起(下垂体機能低下に至った場合、下垂体機能低下を由来とした諸症状や各種ホルモン分泌能も落ちる懸念と症状惹起)等の悪循環と読み取れば理解は早いと思います。

上記理由の他、主に酸素要求量の高い視神経や内耳神経等の脳神経、網膜や心筋が先行的に受傷していきますが、ベンゾ離脱関連の表現は以下のようになります。以下は以前の症例から2つ抜粋しました。

age 35 sex f ベンゾ

四肢抹消を中心とした全身性の振戦 眼瞼痙攣 肩頸部及び腰部に激痛と硬直感 背部に違和感 下肢脱力により歩行不能 膝関節及び足関節に強い違和感 頸部後面及び胸部前面に熱感 急激な体重減少 味覚及び嗅覚障害 副鼻腔炎様症状 眼痛 羞明 眉間痛 一睡も出来なくなる 唾液分泌過多 毛髪、髭、爪が伸びない 頻尿 皮膚のたるみ及びくすみ 不安感 焦燥感 うつ状態 現実喪失感 上記症状が惹起された為、再受診するも身体表現性障害、うつ病等と診断

age 40 sex m  ベンゾ

動悸 身体の揺れ 吐気 一歩も歩けない 身体に力が入らない(ほぼ寝たきり/移動は車椅子) 手足の浮腫み 肌や白目の部分が黄色くなる 足の皮膚感覚異常 足の冷え 足の指が時折動かなくなる お尻が勝手に動く 右半身を中心とする身体の揺れ 胃腸が常にバクバク動いている 37℃台の持続的な微熱 食事量は変わらず2年前は175㎝95㎏の体重が昨年夏に70㎏、現在48㎏ 流涙症 呂律が回らなくなる 歩行時のふらつき 誤字脱字やひらがなが極端に目立つようになる 暴力的になる キレる 過食

現場感覚では肥満体型ほどベンゾ離脱に耐えられ、普通体型や痩せ体型は症状の訴えが強い印象も見受けられます。GI値が高い飲食物は極力控え続けたほうが良いと思われますが、糖代謝異常を来す以上、一般的な健康思考、手段が全て裏目に出続ける事態も散見され、糖質制限の危険性が浮き彫りになる症例も多く、栄養指導にも危険性が潜んでいる事も意味します。

4)ドパミンの前駆体となる摂取の是非

既知未知問わず、ベンゾ離脱の大概は統合失調症の陽性/陰性症状を往来したり、双極性障害の症状を呈する経過に対し、先述の通り各種抗うつ薬や、定型/非定型抗精神病薬の処方が一般的です。モノアミンを標榜する薬剤ですが、その前提を変え、ドパミン合成の前駆体となるフェニルアラニンチロシンを含有する飲食物を是正する事で、機能異常による症状惹起を抑制する可能性もあります。陽性症状が激しい時期に制限する程度で良いのかもしれません。

5)GAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)の特性を理解する

低温や低酸素、酸性等の身体/精神/環境ストレスが掛かる事でGADは活性化し、グルタミン酸から環境適応量のGABAが合成され、身体/精神の均衡を取ろうとします。ストレスでGABAレセプタはエンハンスし、グルタミン酸の分泌抑制が一般的ですが、ベンゾ離脱を基礎に持つ場合、抑制性機能が脆弱且つ不安定な為、鋭敏且つ強大に興奮性神経伝達物質が体内を巡る結果、症状自覚も恒常性の効き難い身体環境では継続性が生じると推測されます。

ベンゾ離脱は中枢神経、脳神経の広範囲に影響を及ぼす為、何でもありを前向きに捉えるべきですが、それでは逆に分かり辛い為、一旦一部を切り取ってみます。世間的にイメージが付き易いものに、上記でも僅かに触れた不安神経症パニック障害を例にします。動悸、呼吸困難、めまい、吐気、不安等が急速に惹起されますが、延髄の青斑核にノルアドレナリンの作動性ニューロンの核が存在し、当該部位の抑制にはGABAの働きが安定的である事が前提と考えられますが、その働きをベンゾ離脱が奪い続けていると捉えれば理解は早いかもしれません。

先述の統合失調症双極性障害、不安神経症パニック障害等の傷病名に私自身は関心はありませんが、何故そのような状態に至るかの原因に、ベンゾ離脱その他の抑制性機能の破綻的な基礎を有している可能性は高く、また、如何なる症状も枝葉を切り取る手段や蓋をする手段では、いずれ抑えきれなくなるものです。

今件のようにベンゾ離脱を有しており、内外のストレス因子に脆弱性を持つ身体環境である事、ホメオスタシスと環境適応能力と時間進行の概念を既知していれば、一気断薬や急減薬、増量等のリスクに向かう行為も無くなると思いますし、GADの特性を知る事で症状増悪を取り込む行為も減ると思います。

6)GLUT1(グルコーストランスポーター1)を理解し、先天的な機能欠損疾患と改善手段を交えてベンゾ離脱へ応用する

神経細胞は原則的に糖(グルコース)で栄養されていますが、インスリンに依存せず、安定的に運搬(トランスポート)してくれるGLUT1を理解し、ベンゾ離脱の安定性を高める可能性を考えます。GLUT1に先天的な機能欠損がある場合、代謝性脳症のカテゴリに分類される中枢神経症状を呈し、ケトン食やアトキンス食(修正アトキンス食)、年齢によっては専用の粉ミルク等で対応します。

脳に糖を運搬する機能が欠損する為、致し方なく意図的に脂質重視の栄養を摂取しなければ、ニューロンアポトーシスネクローシスが促進され、痙性麻痺や筋緊張低下、てんかん発作や発達遅滞、精神遅滞ジストニア等の各種不随意運動などを呈します。

また、当該疾患の際には、GLUT1の機能抑制に関わるアルコールやカフェイン、バルビツール酸やテオドール等を避けるようにと一般的にされていますが、大雑把に低血糖を来す可能性のある飲食物や薬物全般と、低血糖を来す(来し続ける)手段と捉えて良いのかもしれません。

ベンゾ離脱は非日常的な身体/精神状態のストレスから、体内備蓄の糖が急速に消費され、緊急的に脂肪や筋肉を燃焼してケトン体が合成され易い状態に陥りますが、この緊急反応を極力回避する為にも、本能的に血糖上昇の飲食物を摂取し続けると推測されます。

その事から結果的に低血糖症に陥り易く、且つコルチゾルやアドレナリン、グルカゴン等の血糖上昇ホルモンの煽りも受け、必要以上に増悪自覚を抱える懸念も生まれます。これらは食生活で簡単に修正出来る為、先述したGADの特性と併行して理解する事で、症状も穏やかに出来るかもしれません。

7)血液脳関門の未成熟期及び脆弱性のタイミングを知り、ベンゾ離脱へ応用する

ALSの実験モデルに、血液脳関門(以下BBB)が未成熟な出生間もないラットに対し、グルタミン酸の皮下注射をし続けたところ、数日後に前角細胞が喪失する神経変性例がありますが、当該部位の喪失のみならず、他部位の中枢神経細胞の損傷も示唆される状態に陥る例は散見されます。

興奮性神経伝達物質のグルタミン酸を、BBBが未成熟で透過性の高い時期に投与する事で、意図的に中枢神経に興奮性細胞死を惹起させ、相応の症状自覚をさせるケースですが、当該部位の成熟後にBBBの透過性を高める(脆弱性を高める)身体環境の代表は炎症かもしれません。

日常生活で持続性の高い炎症の惹起理由に考えられる例としては、食事内容や活発な運動が好発例かもしれず、次点に外傷や感染症、自己免疫疾患の罹患かもしれません。BBBの破綻と称されますが、ベンゾ離脱を基礎に有する場合の不安要素も考える必要があります。

ベンゾ離脱とグルタミン酸の関係を概要程度に述べると、GABAレセプタがダウンレギュレーションを発生する事で症状自覚へ繋がり、グルタミン酸レセプタとなるAMPAやNMDA等がアップレギュレートされた結果、GABAを合成するGADの制御が効かず、グルタミン酸の過剰流入ニューロンの破壊が促進されるものと推測されます。これが1つの基礎ですが、下駄を履かせるようにBBBの構造的脆弱性を抱えた場合、どのような現象が生じるかの検討も必要かもしれません。

レセプタもBBBも基礎構造はアミノ酸で、血液で栄養を授受されている事には変わりませんが、血液が流れている部位には炎症というアクシンデントが付き纏っている事も忘れてはならず、炎症惹起が懸念される生活を回避する事で、慢性炎症や追加的な損傷、症状の不安定な推移、随伴的合併が示唆される内分泌の要らぬ変動を避けられるかもしれません。
 
8)常用量離脱症状が起きたら、GABAレセプタを回復させる為に減薬しなければならないとする説の是非

シナプス間隙でギャップが生じた状態が常用量離脱症状の始まりであれば、現時点の服薬量で一旦の回復を見越す必要があり、減薬しては余計な症状増悪に繋がります。既に足りないのにそこから減らしたらもっと足りなくなり、それは症状の悪化を意味します。

冒頭でも述べた、離脱症状がイコールとして回復期を意味する説と同様、離脱症状は風邪で熱や鼻水を出してウイルスを追い出す身体メカニズムとは異なり、ベンゾサイトが既に雑になっている為にチャネル開口が不安定となり、抑制性の機能に脆弱を持ち、その結果として身体/精神症状が表現されるとした場合、この2つの説を信頼した解釈論は健康被害拡大の懸念があります。

減量や断薬は症状改善の行為ではなく結果論で、一気断薬をしても問題のない服薬背景を持つ人間が、微量減量から断薬して問題がないのは自然な事で、その減量過程を服薬背景に問題のある人間が真似をしたら大変な事になります。

9)断薬後に残存する症状と症例から、離脱症状と表現される中枢神経症状/脳神経症状と改善後の脆弱性を理解し、慎重性を高めた服薬を今からでも検討する

age 25(初受療時) sex f

10年程前から緊張時に発生する不快な身体/精神症状を抑えようとベンゾを継続的に服薬。約5年後、不眠や目眩、動悸や過呼吸、周囲への攻撃性が目立つ事から入院(させられる)。入院先でSSRIとメジャーを追加処方されるも改善自覚は乏しく、異なるベンゾを追加処方した当日深夜、過剰な興奮と高熱が生じた為、過去から継続的に服薬していたベンゾを含め漸減なく断薬。

以後、既存症状は残存したまま、頸部から尾側に掛け温冷覚、痛覚の異常(熱い冷たい痛いを感じ難い) 両下肢中心に突発的な電撃様疼痛 両下腿に痺れ 顔面部痛 両眼底痛 羞明 心窩部痛 アカシジア が5年弱継続。各種検査も異常はなく、アカシジアに対してと推測されますが、β遮断薬(インデラル/プロプラノロール)を処方されるも1週間程度で耐性が付いたのか、その後僅かに増量してみるも効果自覚が乏しく自然休薬。

当時は日常生活範囲内で身体/精神疲労が掛かる事で一過性の症状増悪自覚はあるものの、症状の変動は乏しく、断薬後から現症状の内容に落ち着いたまま、悪くもならないが良くもならない症状固定を5~10年弱過ごしています。これは自力回復が不可能なほど、諸々の当該症状を惹起する部位の受傷を意味します。

大切な事はひと言で離脱症状と述べても、自力回復が可能なレベルから不可能なレベルまで様々存在し、受傷度合いは服薬内容のみならず、減薬や断薬の仕方次第で大きく変動する事を、断薬後も長らく残存する症状を抱えた患者のエピソードから見えてきます。

向精神薬由来症例に限らず全ての症例でも同様ですが、損傷度合いが軽度ほど自然回復し易く、重症度が高くなれば何らかの手段を介入しなければ回復確率は向上せず、重症度も至れば如何なる手段を介入しても回復しません。イメージとしては治療を介入しても、良くも悪くも全く反応しない状態を意味します。

幸い今症例は不安定な入眠と中途覚醒を残し、十数か月に及ぶ経過を以て改善しましたが、そこから更に重要な事は、その約2年後、日常生活範囲外の動作が継続的に出来るまで回復した後、フトした拍子に両耳難聴と耳鳴、両上肢に痺れと疼痛、両下腿に再度温冷痛覚異常の、自然発症性とは考え難い中枢神経症状、脳神経症状が惹起された事です。

今回の発症由来に薬物の存在はなく、過去に大きな受傷を薬剤で負った場合、一旦は改善自覚を得た後も、異なる中枢神経症状や脳神経症状が惹起され易い身体環境と推測されます。その為、中長期的な安定性を保つ為にも、症状を左右する最大リスクとなる薬物とは、気が付いた時からでも慎重な向き合い方をする必要性を感じます。

10)「薬効自覚なし = 一気断薬は問題ない」「ベンゾ以外は離脱症状がない」「2~4週間の漸減を経れば離脱症状は出ない」「〇〇病は治ったから薬は要らない」「離脱症状は良きものだ」の誤った理解

age 50 sex f (経過不明)

人間関係から 不眠 うつ症状 を発症。ベンゾ、SNRI、NaSSA、オレキシン受容体拮抗薬を順次処方され、継続的な服薬で約4か月後に改善自覚。その後ベンゾの有害性を知り、他薬剤を残し2週間の漸減を以て断薬。以後、両前腕と両下腿に熱感(CK値異常なし) 頭部、顔面部、胸部、背部に皮膚感覚鈍麻 両手指、両足趾に激痛 頻脈 踵部の角質の菲薄化 split hand syndrome 全身の痩せ 脱力 客観的評価不能の身体全体の揺れ ファシクレーション が惹起(神経内科的に運動ニューロン障害は否定)。

身体に力が入らないこと、全身が痩せ始めたことから運動不足が原因と考え、階段昇降を繰り返したところ、膝関節/股関節の関連筋群の痩せが更に目立ち、ベンゾ離脱の可能性を感じ再服薬。筋量減少の速度は緩慢となる他、熱感は軽減するも他症状は残存。その後、ベンゾ断薬後の新規症状の原因を他剤の副作用/離脱症状と考え2~4週間で断薬。

断薬理由と離脱症状の回避理由の患者表現は「うつ病は治ったから」「飲んでも効いていない」「ベンゾ以外は離脱症状はない(と聞いた)」「今の症状は薬が原因だから止めれば治る」「一気断薬ではない。2~4週間掛けてゼロにした」。その後、他症状の進行増悪が認められた他、服薬初期とは比較にならない程の睡眠障害とうつ症状を再燃 手指の運動障害 が惹起。

今症例に限らず、最多例が「薬が効かない」「薬が効いてない」で一気断薬(又はそれに近しい)、「ベンゾ以外は離脱症状はない」で、ベンゾ以外を一気断薬(又はそれに近しい)するケースかもしれません。他、少数ですが「精神薬を飲んでいる子供と会話しているのが…」「精神薬で脳を作り替えられた子供と遊ぶのが…」等の理由で親が一気断薬(又はそれに近しい)し、余計残酷な結果を残す例があります。

向精神薬や傷病名に対しての捉え方は自由だと思いますが、上記で羅列した不安神経症パニック障害統合失調症双極性障害うつ病発達障害などの傷病名の存在に信頼を寄せ、有害性を既知とし始めた熱を帯びた感情論も背中を押し、「離脱症状は良きものだ」「解毒だ」「デトックスだ」等で深刻なダメージを生む例も散見されます。傷病名はともかく、飲んで具合が悪くなったら飲んでしまったなりでの対策を講じなければ余計に危なくなるものです。自然発症性とは異なり、薬剤絡み、薬剤性の症例には常に大きなリスクが存在します。

僅かでも症状を抑制出来るかもしれないセルフケアを取り込む為にも、現在が急性期か慢性期かを知る事、その判定材料を取り込んでどうかは客観的評価が難しい症状の類が多数を占める為、自身でしか評価出来ない側面はありますが、それをポジティブに捉える姿勢で日々を送り続けるのも大切な事かもしれません。

~まとめ~

向精神薬は、その名称から精神科や心療内科で処方されそうな薬ですが、整形外科を中心に適応症を増やし続けた今は他科が約65%を占めています。

近年ではSNRIサインバルタが良い例かと思います。当初の抗うつ薬としての取り扱いから、慢性腰痛症、変形性関節症に承認を拡げた途端、運転禁止薬物から除外されました。当時は自殺企図を副作用に持つ薬物が、整形領域で処方される懸念に異例の多数決で承認に至った事例も記憶に新しいものです。

整形領域は高齢層も多く患者層も厚い部類で、今迄台頭してきた効かなきゃ剥がす、効かなきゃ止めるが問題なく通じるNSAIDsの類とは全く異なる、複雑且つ極めて悪質な性格を持つ向精神薬も今では一般的になり、理解力を要する取扱いに常に不安を覚えます。

傷病名は時代で流行り廃りがあり、定義も曖昧且つ国よっても異なり、また同国でも年々変動する為、各々で更に曖昧に表現出来る世界です。

薬物も数年後や数十年後に新たな作用や副作用が分かったり、やっぱり飲み続けたら危険だったよと忙しない印象を持ちますが、傷病名と比較したら事実的な体内反応を起こす薬物は確立しています。その為、見方を変えれば分かり易い側面もあります。

只、それを認めるか認めないかも結局は世論だったり、様々な背景や事情を持った人間の為、主張が通るかは別としても、具合の悪い事実は変わらないと思います。その事を決して後ろ向きに考えず、前向きに考える事で様々な発見と発展はあるはずです。

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イメージ 1  ~針治療から病態定義の見直しを~