藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

向精神薬由来症状/離脱症状の安全な取り組み方の検討と治療 4

~知覚神経症状を、口腔/頭部/顔面症状から治療反応性を踏まえ、周辺事情と共に理解を深める~

脳幹から各器官へ分枝する脳神経の知覚神経異常から生じる表現は様々です。人間が言葉や文字で何かを表現する時は、過去に経験した症状と照らし合わせたり、外部の情報から得た表現を模倣する傾向があり、また、頭部や顔面部の症状は脳の近隣の為、不安や恐怖心も濃厚に絡んでの表現も特徴の1つです。

神経症状も各々ガイドライン等が既に存在する為、症状の訴え方が規定から外れていた場合、仮に当該神経を受傷していても否認されるネガティブもある他、今件の主となる三叉神経由来は、眼科、耳鼻科、脳神経外科、歯科を回る例が大半で、歯を何本を抜いても尚痛いとする患者がいるのも実際です。それくらい発症範囲が広域に及び、誤解が生まれる神経が三叉神経です。

消去法的としても、各当該科の検査や治療も奏功しない場合、心療内科や精神科という何かと便利な科が存在しますが、向精神薬の問題は、あらゆる分野の症状の延長線上に存在するリスクで、心療内科や精神科に辿り着く前より、古くはデパスに始まりベンゾ系は珍しいものではありません。

結論から書けば、どのような症状も向精神薬は効果自覚を発揮するでしょう。それが三叉神経でも以下に続く内耳神経でも、脳全般や脊髄を抑え付ける薬物は何処の部位が悪いとか症状の内容は関係ありません。肩こり腰痛でも三叉神経痛でも座骨神経痛でも睡眠障害でもパニック障害でも同じです。症状が異なるからと薬理が変わる訳もなく、デパスデパスです。

さて、この度は知覚神経の治療反応とリバウンドから見えてくる、誤解が生れ易い症状を取り上げます。大前提とし、知覚神経は痛みだけでなく受傷度合いで様々な表現を自覚させ、軽症順から冷様感、痛み、痺れ、麻痺様感覚がオーバーラップし、回復過程は逆順序を辿る為、受療タイミングによっては回復過程で非疼痛性症状から疼痛性症状に変化していく事も十分にあります。

この症状カテゴリと発症部位により患者表現が存在する為、症状は千差万別になると推測されます。初めにイメージが付き易いよう脳神経でもポピュラーな症状で例に挙げます。先天的な脆弱性や既往、骨性の構造的問題等、様々な罹患要因は存在しますが、それらは一旦除外した上で、酸素消費量の高低により受傷頻度は偏る為、視神経や内耳神経の症状が目立ちます。他、誤診率が高い為に結果的に流れ流れて訪れる三叉神経由来も目立ちます。

先ず、内耳神経の蝸牛神経由来として有名な症状に、突発性難聴/感音性難聴や耳鳴があります。では、これらの症状群を抱える患者像/臨床像をイメージします。恐らく蝸牛神経1本でも、様々な症状と表現をしていると思いますが、これが当たり前で自然です。腰神経が1本ダメージを受けただけでも、発症部位や症状の内容が全く異なるのと同じです。皆が皆、全く同じ壊れ方をして全く同じ症状の出し方をする事はありません。

これは私が〇〇病や〇〇障害、〇〇症候群という表現で普段から書かない理由にも繋がるのですが、病名や障害名で括るメリットは、社会的保護や各種保険の絡み、患者及び関係者の各種利得や集団化が容易になるだけで、治る治らないとは別な事情の為、私自身が括ったり拘ったりするメリットは何もありません。

只、それでは一般の現場では収集が付かなくなる為、原因は取り敢えず棚に上げ、アレとコレの症状があるから〇〇病とか、アレとコレの症状があるから〇〇障害としてガイドラインが作成され、その病名や障害名に患者や関係者が色々な形で乗ります。

結果、その網から外れた場合、仮に蝸牛神経が受傷している事実があっても否認される運命となるのです。それでも尚、蝸牛神経そのものは脆弱性が高い為に罹患層も厚く、難聴や耳鳴と聞けば周囲も大概は想像が付くと思います。結局、現症状が周囲に認められるか否かは理解の差ではなく認知度の違いです。

タバコやお酒の飲み過ぎは身体に悪いですよと言えば大概は納得しますが、ベンゾの飲み過ぎは身体に悪いですよと言っても大概納得しないと思います。これも認知度の違いです。それと同じですが、その前提が本人にない限り言うだけ無駄且つ危険です。

向精神薬が絡む場合、死が急激に身近に感じます。推進派が何人もの人間を殺してきたように、反対派も安易な情報提供と誘導と煽りで何人もの人間を殺してきているのは事実です。互いに都合の悪い事は表に出さないのは互いに責任が希薄な証拠だと捉えざるを得ません。

さて、近年頭鳴と表現する例が増えています。もしかしたら頭鳴という表現が浸透してきたからなのかもしれませんし、シャンビリの派生かもしれませんが、名称はさて置き発症部位や症状の内容が大切です。耳鳴は上記の通り認知度が高い為に皆知っていますが、頭鳴は未だ認知度が低い為か、幻聴と捉えている方も少なくありません。

念の為に書くと、たまに幻覚全般の存在を否定する人もいますが、視覚や聴覚、触覚、味覚や嗅覚等の幻は存在すると思います。主な発症理由は脳血管障害や脳外傷、脳腫瘍やてんかんが有名で、向精神薬他、アルコール摂取や内分泌疾患、代謝性疾患でも起きますので珍しいものではありません。

只、頭鳴と表現する症状の出方と寛解増悪理由、症状表現と治療反応性を追跡する限り、知覚神経の問題と捉える事が出来ます。幻覚は大脳と言われる中枢神経の問題と推測され、患者自覚は有るようで無い場合も見受けられます。

例えば、手で何かを振り払う動作をしている人に対して何をしているか尋ねても、虫を振り払っているのだと大真面目に言われたとします。これが中枢神経の問題です。自分自身を支配する大脳や小脳を受傷した場合、本人はそれを異変と察する事が出来ない場合があります。

しかし、頭鳴は聞こえ方は人それぞれ異なりますが、患者自覚が100%有ります。これは大脳や小脳の中枢神経の問題ではなく末梢神経となる脳神経の問題と推測する事が可能です。症状内容や発症部位を鑑みる限りでも、三叉神経第一枝や後頭神経の知覚神経由来であると推測が付きますし、蝸牛神経由来も併発している可能性も十分にあります。

また、頭鳴は治療後のリバウンドも起き易い印象を受けるのも1つの理由です。私は脳神経や大脳/小脳の問題と対峙する場合、頸部交感神経節や胸部交感神経節を標榜する手段を取り、脳や脊髄の血流量増進による機能回復を目的としていますが、幻覚の類でリバウンドが起きたケースは記憶を遡る限り存在しません。

その為、中枢神経や末梢神経という大カテゴリで区分けしても、小カテゴリで知覚神経や運動神経、自律神経と分かれて各々が症状を発し、罹患部位によってリバウンドの有無が存在するため、リバウンドが無いから治らないという訳でもなく、神経賦活がされても伸びしろが存在しない場合は、比例するかのようにリバウンド自覚も減少するのでしょう。

逆の見方をすれば、中枢神経症状はリバウンド自覚が見受けられ難い為、治療反応による症状変化自覚にもタイムラグが存在したり、ある程度の変化自覚を得られる閾値を超える迄は複数回又は数か月の期間を要する場合もある為、初期的な評価は治療効果なしとされるのかもしれません。

大脳や小脳は元々知覚がない為、血流増進による神経賦活の自覚がないと推測され、片や知覚神経が著しい反応を示すのは、その名の通り知覚出来る神経であるからなのでしょう。余談ながら、運動神経も名の通り知覚がない為、神経賦活時特有のリバウンドは見られ難い印象を受けます。

このように頭鳴という表現も、頭が鳴っている=幻聴ではない、と推測されますし、リバウンド自覚が存在する症状=末梢神経の知覚神経由来と推測されます。繰り返しの治療反応を以て発症部位を追う事で、罹患部位の再確認や、現行の病態定義の問題も洗えるのは意義のある事です。

~病勢増悪の抑制と新規症状回避の重要性、離脱症状の成り立ちから症状との接し方~

僕も私もこの症状が出ているから離脱症状だとか、〇〇という薬を飲んでいるからこのような症状が出ると考える必要は然程ないかもしれません。ベンゾやSSRIその他も各々性格や特性は異なるかもしれませんが、症状は何でもアリが恐らく正解です。不眠と過睡、脱毛と多毛、低血圧と高血圧、低血糖高血糖、鬱と躁、泣いてばかりと怒ってばかり等の両極端な症状を持つ症例は珍しくありません。

何らかの理由で当該機能を司る部位が受傷した場合、類似又は同様な症状が出ると思いますし、表現方法も様々です。ベンゾが此処まで問題視される理由は、反応部位が広域である事=弊害も広域に及ぶからです。只、分かり切っている事は受傷原因が薬物で、罹患部位が脳や脊髄です。

また、離脱症状を「ヤクが抜けている証拠」とする良き物な的な考えや、向精神薬は違法薬物と同じだから一気に止めろ的な考えが蔓延していますが、離脱症状が中枢神経の興奮性細胞死による発症理由なら、ヤクが抜けている抜けていないは関係ありませんし、違法薬物と類似する作用/成分を持っているからと一気断薬させる理由にも繋がりません。

向精神薬由来症例が特異的な理由に、「腰が痛い時に腰を使うと余計傷めるから腰を使わない」とする一般的な改善論の思考を持ち込むと悪化する事です。受療タイミングは様々な為、服薬中/減薬中で例に挙げると「病勢憎悪を抑制する為に薬物の反応を授受しながら回復を目指す」が最も低リスクとなり、それには後述する消化/吸収機能の役割を果たす、胃腸の中枢的機能となる迷走神経の回復も前提になります。

先ずは離脱症状の成り立ちから考える必要があります。継続する離脱症状は、広義に於ける中枢神経の神経変性症と捉えて問題はなく、薬が症状を出している意味でもない為、飲んでいるから離脱症状が起きる、ではなく、飲んでいるから今くらいの離脱症状で済んでいる、と言う発想が必要です。原因は薬物かもしれませんが、症状自覚の理由は自己の分泌能や受容体その他の体内で生じている問題であり、薬物の問題ではありません。

例えばAさんがベンゾを服薬した場合、「Aさん"と"ベンゾ」と言う分け隔てた説明が出来る身体環境ではなくなり、Aさんとベンゾは一心同体になります。その為、無理やり引き剥がそうとするほど深刻な症状群が引き起こされる結果となるのです。それが離脱症状を考え、対峙する根幹になります。

現在継続的に発症している離脱症状は、急減薬や一気断薬、雑な服薬や投与間離脱、服薬忘れ、災害時の薬物供給途絶等による受傷及び派生による未回復部位と推測します。これは断薬後も残存する症状群を以て真実味を帯びます。そして、病勢増悪の抑制と新規症状の惹起を回避しながら回復を目指す向精神薬由来症例がデリケートに経過する理由に、服薬環境が切れない縁になります。

当初は飲み忘れや高頻度の頓服、雑な服薬や一気断薬も問題なかったかもしれません。それも度重なる内に一時の飲み忘れで過敏に症状が増悪したり、今までの頓服という服薬の仕方では症状が気になったり、見慣れぬ症状や出来ない事が増えたかもしれませんし、色濃く症状が変化していくかもしれません。人が症状として感じるまでには、受傷しても耐痛閾値を超えない限り、ある程度の無症候となる潜伏期間も存在しますし、症状自覚後の服薬内容の変化等により、更に症状も変化していく可能性もあります。

これさえ無ければ向精神薬の問題は此処まで大きくなっていないと思いますが、発症由来に気付けただけでも以後のリスク因子を取り込まず、既存疾患名にも振り回されない日々を送る事が出来るかもしれません。

罹患要因は急性期の興奮性細胞死によるものと推測され、症状継続理由が受傷部位の未回復及び、自己分泌能不全や受容体側の機能/器質異常となり、常用量離脱症状/離脱症状が惹起された際、早期再服薬で急性症状の抑制は可能な場合も、当該タイミングで受傷した症状群の残存理由(結果論となる慢性症状)が、受傷部位と派生する自己分泌能や受容体の機能不全と仮定する理由に、少数ながらもメジャーやSSRISNRIの単剤で惹起されるシンプルな離脱症状群から見えてきます。また、先述の通り、断薬後も継続する症状群から明確性は高まります。

そして、何を以て回復とするかはそれぞれ異なるかもしれません。のたうち回り続けても薬をゼロにした事で回復とする方もいます。それを回復とするなら誰でも今すぐ回復と呼ぶ事が出来る状態は作り出せますが、その意識で他者が誘導されたら危ない症例しか生まれません。健康の為なら死んでも良いタイプなら問題ありませんが、皆が出来る事ではありません。

離脱症状との対峙は数十年と迷走を続け、類似境遇を持つ同士が集団化する傾向は今に始まった事ではありませんが、根性論によるトップダウンで死者や大きな障害が出る歴史も繰り返され、集団意識と感情論により、安全が尽く崩される例は少なくありません。

如何なる由来を持つ症状も、先ずは症状の自覚無しを目指すべきで、薬ゼロは結果論です。其処を妥協しては30点も60点も取れませんし、また同じ歴史を繰り返す事になります。そして日々を無事に積み重ねていく為には、先ずは曲りなりにも忍容可能な症状度合いで過ごす事が出来なければ、患者のみならず周囲の糸も切れてしまいます。

離脱症状と一言で述べても、同一個人で数十と症状を抱える事になります。その為、現症状の回復も去る事ながら新規症状の惹起防止と、既存症状が回復した場合の再発防止に念頭を置く重要性を感じます。現症状とは既に罹患した部位の存在を意味しますが、新規症状とは新しく受傷した部位を示唆する為に避けなければなりません。

其処を基礎とし、初めて既存症状の改善が成立する印象を持ちます。どのような症状も、急性期から突如として回復期に向かう事もありません。ある程度の抑制/停滞/慢性の期間を経てから回復期へ向かう例が大半な事から、新規症状が幾つも惹起されている状況下では何処かに問題があり、急性期で過ごさせているリスキーな状態である事を知る必要があります。

~消化管活動抑制に伴う全般的な常用量離脱症状増悪の可能性~

交感神経の持続的亢進は様々な身体/精神症状へと繋がります。その1つに消化管活動の抑制が挙げられ、派生する全般的な常用量離脱症状の増悪の可能性を考えたいと思います。ベンゾの常用量離脱/離脱症状を抱えた場合、急速な体重減少を経験する例が多いと思います。

摂取カロリーが足りない純粋な痩せも考えられますが、幾ら食べても太れない場合、消化/吸収/代謝器官の異常も考えられ、ベンゾ離脱の基礎病態の1つとなる脱抑制状態では、消化管活動の低下も踏まえる必要があります。

胃腸そのものが不具合を起こしている訳ではありませんので、症状は在っても検査上は異常がありません。離脱症状は大脳や小脳、脳幹や脊髄が原因部位となり、消化管の機能は脳幹に位置する迷走神経の異常、当該神経の伝達物質異常と推測される枝葉的な結果です。

服薬中/減薬中のみならず、断薬後も継続して消化管の機能異常が見られる場合や、治療累積により機能異常の是正が得られる場合が大半な事から、服薬中のみ(いわゆる副作用)の問題ではなく、自己の分泌能力が低下した結果と推測する事も可能です。

余談ながら、異常な痩せが継続した場合、セロクエルジプレキサの処方理由が生れます。服薬に伴う血糖上昇/食欲増加は脂肪合成/体重増加に繋がりますし、ベンゾ離脱の事情を知らないと、併発症状的にも用いられ易いのかもしれません。これが若年層であればリスパダールエビリファイと違いはあるかもしれませんが、既に病名や障害名が先行しての印象を受けるのは私だけでしょうか。此処までが消化管の活動抑制理由と、服薬中/減薬中及び断薬後も継続する胃腸機能の低迷理由の基礎です。

このように消化管活動が上記事情で低迷している場合、口から取り入れた飲食物は消化や吸収がされずに素通りする率が高くなります。では、この素通りする率が高くなる懸念は、朝昼晩の食事やオヤツだけに限らず、朝昼晩の薬の吸収率も変化する可能性です。離脱を起こした身体状態で、更に薬物の消化/吸収の問題が起きるとどのような事態になるでしょうか。

此処で改めて常用量離脱症状の概要を簡単に振り返ります。継続的な服薬により身体が慣れてしまう事で、反応部位となる脳や脊髄が今の服薬量じゃ足りないよと騒ぎ始めた事態の結果が身体や精神症状として顔を出し始める事が常用量離脱です。

足りないと騒いでいるのに、更に消化管の消化と吸収に不備がある場合、必要以上に症状の増悪自覚をする可能性も生まれ、当該部位の回復が得られていない場合、以後の減薬過程でも何処かで無理が祟る可能性もあり、QOLを極力落とす事なく駒を進める為の下地の重要性を知ります。

離脱症状との対峙は長期戦です。長期戦かもしれませんが、それは日々の具合の悪さの度合いにより、長くて苦しい日々と感じるか、短くて楽な日々と感じるかは左右されると思いますし、時間は掛ければ掛けるほど安定感が増すのは確実です。只、人間は具合が悪くなるほど地味を捨てて急ぎたがるものです。その結果が急減薬や一気断薬、又は大幅な増量へと繋がるのでしょう。

参考として常用量離脱症状/離脱症状の内容と成り立ちを挙げます。同量の服薬でも耐性が付く事で、作用とは逆の反応が身体に現れ始める事を指します。ベンゾのウリは抗不眠、抗不安、抗痙攣、筋弛緩、健忘です。その逆は眠れなくなり、不安になり、痙攣し、筋肉が硬直します。これらの身体/精神状態は、ベンゾを増量したりメジャーを追加したくなる症状群に変化していきます。

只、離脱症状が出易い身体とは、耐性が付き易い身体です。具合が悪いからとベンゾの増量やメジャーを追加しても、直ぐに耐性が付く懸念もあり、それでも尚、離脱症状の概念がない場合、又は離脱症状の概念があっても、この時点で相当具合も悪い為に結局追加し続けた末、過鎮静となる例も散見されます。

既に各々の症状が惹起されている他、消化管活動の抑制が併発し、飲食物のみならず薬物の吸収率も悪い場合、短期的将来の離脱症状増悪の決定的な理由に繋がると考えられます。常用量離脱が生じた際に増量しても症状の改善自覚を得られ難い場合や、減薬後の再服薬で症状の改善自覚が得られ難い場合、断薬後の再服薬で症状の改善自覚が得られ難い場合等も、上記理由が併行且つ残存している事も示唆されます。

離脱症状の対峙に於いて、腸を整えれば良いという話はありますが、中枢的役割を果たす迷走神経でエラーが起きている場合、何を食べても飲んでも無効となる理由に繋がりますし、病勢憎悪のブレーキとなる薬物の吸収率も格段に落ちる事が、事態の悪化に拍車を掛ける要因になるのかもしれません。

シナプス間隙間ギャップで始まる離脱症状

事の始まりは自力でGABAの合成且つ濃度を平衡に保つ事が不可能となった時点から、症状自覚の有無問わず離脱は始まると推測します。当該物質の分泌不全及びレセプター側の機能/器質異常、又はどちらかの異常で、神経伝達物質の全抑制を示唆するベンゾの逆転現象による継続的な過興奮により、GABAの合成が追随出来ない程のグルタミン酸が細胞外で濃度異常を起こす事で細胞死に至り、各種機能を失すると推測されます。

人間は日々代謝を繰り返すプログラム細胞死を備えていますが、経時的にベンゾという外力に委ねていた結果論として生じる自力分泌が不全な状態及びレセプター側の機能/器質異常による細胞死のメカニズムは、生理的な細胞死とは異なる速度で細胞変異が起きると容易に想像が付く為、破壊に回復が追い付かない損傷という表現が適切で、損傷度合いが激しい程に傷は深く、症状の数も膨大になると思われます。

元来ベンゾは大脳や小脳、脊髄細胞膜に存在するレセプターへの反応を標榜している為、高次脳機能症状や運動失調等の非疼痛性症状を主とする場合もあり、治療累積により「そういえばアレができるようになった、コレができるようになった」と評価を貰う事も少なくない事から、表現は好きではありませんが過去に可能であった行為も、損傷部位が中枢神経の場合、病識が身体/精神症状共に欠如する例も少なくないのでしょう。

このように、中枢神経症状は病識が伴わない例も多く、知覚神経も存在しない為、異常として患者本人が自覚しないケースも散見されますが、間脳の視床や脳幹の知覚/運動神経を有する脳神経の疼痛性/非疼痛性症状を惹起する事で、初めて異変と自覚する例もあるようで、離脱症状と既知する迄のタイムラグは避けられない事情も存る為、仕方のない事かもしれません。

話は戻し、シナプス間隙間ギャップをスタートとした興奮毒性による細胞死の過程では、嫌気性代謝による低酸素が基礎となる為、神経変性疾患と称される神経細胞の経年的な脱落を示唆する症例とは異なる経過と転帰を示すものと思いますが、離脱時の急性症状が激しい程、以後に残存する症状も数多く且つ深くなると思われますし、場合によっては断薬後も継続する症状の理由になると思われます。

勿論、現症状を離脱と既知せず既存疾患名に依存し続けた場合や、現症状が薬物で治癒すると考えている場合は一層の不安定性を高めていく方々も見掛けるのが現実です。これらの方々が、経口薬ではなく点滴に移行し始める例も増えるのは、消化管機能不全/迷走神経機能不全があるからなのかもしれません。

改めてとはなりますが、先述した離脱症状はヤク切れ説を仮に信頼して症例を振り返る限り、断薬から5年10年も継続する症状の説明が難しくなりますし、常用量離脱や減薬過程での再服薬が時期問わず持ち直す例ももっと散見されても良いと思いますが実際はそうでもありません。時期が過ぎるほど再服薬しても効果自覚が乏しいか無効です。また、脳幹含む中枢神経の細胞死による症状惹起と継続のほうが治療反応性から鑑みても腑に落ちる印象を持ちます。

~孤発性ALSとベンゾ離脱から、グルタミン酸レセプターのサブタイプの差異による罹患状況を考える~

孤発性ALSはグルタミン酸レセプターのサブタイプとなるAMPA型が家族性等とは異なり優位に発現するのは知られていますが、カイニン型、NMDA型とはどのように異なるかを改めて考える必要があります。カイニン型は脊髄にレセプターが存在しない為、下位運動ニューロンの起始となる前角細胞への影響はないと思いますが、NMDA型はAMPA型と同様、脳と脊髄にレセプターが存在すると言われています。

NMDA型が関与した場合の症状群は抗NMDA受容体抗体脳炎あたりで想像は付き易いですが、AMPA型との差異は上位運動ニューロンに然程関与していない事が分かりますし、運動ニューロンにAMPA型が多数存在し、ALSに罹患の際は緩徐に進行する(緩徐に脱落していく)とも言われている為、両側の病態を知る事で一層理解は早まると思います。

ベンゾ離脱でグルタミン酸の細胞外濃度異常による興奮性細胞死が生じると仮定した場合、関与するサブタイプのレセプターはAMPA型かNMDA型か、又は両方かを考える必要がありますが、ベンゾ離脱の症状群を振り返る限り、運動ニューロンが単独で障害を受けている症例/症状を知らないというのが今更ながら感じます。

実質的に3~4年前から見るようになった筋減少を訴えるケースも、今のところは全症例が迷走神経由来及び当該理由も絡む飢餓減少の継続を色濃く見せます。各関節の屈曲不全も運動ニューロンの変性/脱落とも異なります。筋量低下と筋力低下は別次元の話になりますし、拳が痩せたとしても経時経年でギュッと握れなくなってくるのが進行性の上位/下位運動ニューロン疾患です。その為、上記理由で筋減少が発生したと訴えたケースは発生機序が異なる為、山を下る確率は極めて低いと考えられます。

ALSは屈曲のみならず伸張もし難い「動かなくなる」病態を呈しますし、ベンゾ離脱の大概は疼痛性症状も含む為、その事で屈曲伸張がし難い印象も受けます。「痛い」「強張る」「曲げられない」の関節リウマチのような状態ですが、反射性交感神経ジストロフィー的な関節拘縮や骨萎縮はあっても関節破壊と異なりますし、血清反応も陰性です。

非疼痛性のケースで各関節の屈曲不全が生じる神経筋接合部様症状に関しては、持続的な交感神経によるアセチルコリンが不全状態に陥り、筋無力症/重症筋無力症のような状態を呈する事になるのでしょう。当該伝達物質は神経筋接合部のみならず心筋や内臓平滑筋にも関係している為、ベンゾ離脱が生じた場合、惹起されている症状群から鑑別要因としては容易くなるかもしれません。

これら上記理由より、筋無力症/重症筋無力症を抱える患者にベンゾの処方は禁忌とされ、呼吸器関連では筋弛緩作用で舌根沈下の懸念より、睡眠時無呼吸症候群を抱える場合の服薬が注意されています。また、仮性含む球麻痺症状も惹起されたり、失語症や顎口腔のジストニア/ジスキネジアが関与する場合もありますが、上記症状群も諸々上位運動ニューロン障害とは異なります。

これらの理由の他、様々な類似症状も存在しますが、ベンゾ離脱はALSと異なるとしか現段階では述べられないものの、可能性はゼロではない事を踏まえて考えると、ALSと確定診断に至った場合、ベンゾ処方が当たり前の現実と離脱症状を惹起する行為が起きた場合、それを起因とし、病勢を増悪させているのだとしたら極めて不幸な事です。

2014年発表の論文では、ALS発症には様々な要因があり、罹患要因の前駆的な状況も踏まえた内容ですが、その1つにGABAの合成が不全状態に陥る事で運動ニューロンの脱落の可能性が述べられています。また、血液脳関門が完成する前のラットにグルタミン酸を多量注入し、運動ニューロン疾患を作り上げる事が出来た実験結果もあり、ベンゾ離脱の興奮性細胞死が全て運動ニューロン以外の症状で済むかは未知な部分もあります。

只1つだけ言える事は、厳しいベンゾ離脱を惹起させる行為は身体に深刻な影響を齎すのは確かで、服薬しているから危険なのではなく、如何に離脱症状を強く惹起させないかの重要性が再認識されます。
 
しかし、孤発性及び家族性共に含んでいるかは分かりませんが、ALSと確定診断が下った後も停止する症例も数%存在するのも事実です。それを誤診とするか、停止するALSが存在すると考えるか、全く未知の疾患とするかはさて置き、神経変性疾患/神経変性症は、病名に振り回されたり囚われたりする事自体に意味は無いのかもしれません。そしてその姿勢と思考がプラスに運ぶ要因になるかもしれません。

また、ベンゾ離脱を臨床の土台で述べるのは本当に難しく感じます。多くは現症をベンゾ離脱絡みと気付いていない事、既存疾患名を宛がわれ一生治らない病気と容認している事、治療現場の主体が薬物治療である以上、症状が謎めいてくる事、他、精神症状を併発しているベンゾ離脱症例は治療積極性が乏しく脱落症例/評価不能症例が多数を占める為、身体症状を主とするベンゾ離脱症例しか集まり難い事です。

ベンゾは鎮静/抑制を主目的とする為、考える能力を奪う=アクシデントから脱却する為の思考も奪う、のも容易く、先日紹介した症例の一文にある思考状態に陥るのは少なくないと考えられますが、そのような中でも現症をベンゾ離脱だと既知した時点で十分に道は開けると思います。

>>向精神薬が多い時の状態は、何を考えるのも面倒くさくボーとしている。痛みは強いがどうでもいい考え。常にうとうとしてどこでも居眠りできる。どこでもハワイアンという気分で快楽という言葉がぴったり合います。~中略~ まるで二日酔いを起こさない強い酒を一日中飲んでる感覚です。これが麻薬中毒の感覚と思います。あっと言う間の出来事でした。心療内科のみではなく内科・整形外科でもこの様にされるとは想定外でした。

このような状況ですが、少しずつでも見えてくるものはあり、具現化がベンゾ離脱を既知とした場合のリスク因子取り込みの防止にも繋がりますし、回復に向けての第一歩になるのかもしれません。

向精神薬由来症例の前提の差異を埋める~

私が最も難解と感じるのが、治療以前に病態に対する思考が患者とマッチングしないケースです。只、無理に思考を寄せてと思わないのも、寄せても寄せなくても行う事は同じですし、治療部位も似たようなものだからです。只、初期の理解の差異は以後の全体に大きく影響を及ぼす可能性もある為、少しばかり知ってもらう事で早期回復の一助になる部分もあるかもしれません。

私が考えている事はその症状が末梢か中枢か、又は末梢と中枢の混合か程度で、大切なのは何処が傷んでいるかであり、〇〇病や〇〇障害、〇〇症候群と考えた事もありません。これらの名称を私が出した場合は私が患者に寄せているだけです。それでは何故、多くの方が既存疾患名を挙げるかと言えば、私が最初の窓口ではないからです。大概は異なる所で何かしかの既存疾患名を宛がわれ、手ぶらで帰る事もなく、何かを飲んだり切った貼ったしている過去がある以上、仕方ない事かもしれません。

症状の成り立ちの基礎から考えてみます。症状を訴えるには症状を訴える為の部位の損傷が前提となります。現行の検査機器で見れるか見れないかは別です。離脱症状MRI等で描出出来ないのは、シナプスやレセプターのトラブルと示唆される為、検査機器能力を超えているからです。超えているからと、それを気のせい、心因性、精神病等とするのは不誠実です。

場合によっては脳細胞の萎縮や内分泌異常、代謝異常も見られますが、脳萎縮が今の症状を出している根拠もありませんし、内分泌や代謝異常の数値的な問題が今の症状とイコールという根拠もありません。スペクトや脳シンチ、脳PET、光トポの結果も同様です。仮に所見が取れても結果であり原因ではなく、その所見が現症となる根拠もありません。

症状はドミノ倒しのように1が倒れる事で2も倒れる場合もありますし、びまん及びまだらに受傷し、各々のトラブルが全身状態へと波及されているかもしれません。何れにしても症状の数は膨れ上がる為、既存疾患名を幾つも保有する患者も少なくありませんが、中長期的な服薬は上記事情を容易に成立させます。

離脱症状の可能性がありますね、の一言で安全の確保と収束するかもしれない状況に対し、既存疾患名を宛がう価値がどれほど在るのか、そしてこの状況に対して向精神薬を更に突っ込む価値がどれほど在るのかは、既に先人達が教えてくれているかもしれません。

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イメージ 1  ~針治療から病態定義の見直しを~