藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

向精神薬由来症状/離脱症状の安全な取り組み方の検討と治療 3

アセチルコリン放出不全に伴う筋収縮機能の低迷~

表題からも概念として神経筋接合部の疾患が思い浮かびますが、個人的には向精神薬由来の症状群を各論的に考える意義は低いと考えています。それは度々述べていますが、各論的に述べても治療上は当該部位を選択的に加療出来ず、包括的に波及される事と、その他の損傷由来も極めて複合的に絡む為、単独の説明だけでは絶対に不十分です。只、何故このような身体状態に陥るかは考察しても無駄ではないと思います。

アセチルコリンの放出が不全(書き方を変えると副交感神経抑制/遮断)状態で表出される症状は、顔面紅潮、吐気、便秘、口渇、眼圧上昇、尿閉、消化管運動抑制等々です。得てして選択的にコリンを抑制させる事でベネフィットを得られる疾患は内科的になる為、リスクの羅列も脳や内臓平滑筋を標榜するムスカリン受容体をメインとする内科的ですが、ニコチン受容体をメインとする骨格筋となる横紋筋の話題に触れられていないのが実情かもしれません。

発生学的に後発となる筋肉で生じる事情は得てして結果論の場合が多く、当該部位を明確に損傷しているエピソードを持つスポーツ障害や、日常生活でカジュアル性の高い整形領域疾患、その他、亜急性期以降の一見四肢遠位の関節痛や、頸椎や腰椎に存在する後根神経節含む周辺由来で生じる諸症状の感作性が挙げられ、治療反応性は明確です。

運動そのものは上位運動ニューロングルタミン酸放出により脊髄前角のレセプターによって感知され、下位運動ニューロンアセチルコリンで支配され、当該神経伝達物質の作用は筋収縮を担う要素を持ちます。

離脱症状群の現実を患者に伝えない理由には様々な医療的事情や医療的感情があるかもしれませんが、その1つにニューロンシナプス、レセプター間での事情の為、現行の検査機器能力では表出出来ないのが1つ、所見が取れない⇒異常なし⇒精神異常その他、の投げ遣りな状態で捨て置かれている患者群が大半で、精神疾患名や、その他の類似する極めて定義が曖昧な症候群名や障害名を受容し埋もれている患者群が大半である現状も否定出来ず、上記事情により離脱症状群の各論的検証の発展が乏しいのかもしれません。

では「抗コリンの運動障害」の問題を考えてみます。その前に、向精神薬由来症例として挙げるには「抗コリンの運動障害」と書くと意味を履き違えそうなので、「アセチルコリン放出不全に伴う筋収縮機能の低迷」と書くのが適切かもしれません。

只、大半がベンゾも絡む為、GABAの放出が不全、又は当該伝達物質のレセプター側で生じる筋硬直や筋緊張もオーバーラップしての事かもしれませんし、例えばサインバルタのようなSNRIリフレックスのようなNaSSAはノルアドレナリンを弄る為、その離脱期に訪れる懸念のある脱力に伴う筋労働の不全、D2受容体を弄る事で生じる大脳基底核由来の不随意運動などキリがありませんが、各論的に考えると今回は痛みを伴わない運動ニューロンの問題です。

恐らく視覚的に有名なジストニアやジスキネジア、ファシクレーションやミオクローヌス等の所見が取れず(含まれるかもしれませんが)、痛みも伴う場合は身体表現性障害、線維筋痛症、血清反応陰性関節炎等々が昨今では並ぶのかもしれません。これらの疾患名(?)も時代により流行り廃りがありますので、今後はどうなるかは分かりません。

では先ず、筋収縮の概要を順序立てます。1)神経終末の小胞からアセチルコリンが放出し、2)レセプターと結合します。その際に3)レセプターが開大し、ナトリウムイオンが細胞内に流入する事で電位が発生し、4)ナトリウムチャネルが開口、5)横細管より細胞深部へ行きカルシウムイオンチャネルが開口、6)当該イオンが筋細胞へ放出され、7)トロポミオシンにカルシウムイオンが結合して不活性化を起こす事で8)アクチンとミオシンが結合後、9)ATPを使用し、ミオシンヘッドが内側へ屈曲し、10)アクチンがミオシンの隙間に滑走する事で筋収縮が起きます。

10段階で筋収縮に至るまでの概要を列挙してみましたが、この10段階の内、筋収縮に関与するアセチルコリンの機能は1)です。1)がないと2)にも行けませんが、当該段階での分泌が乏しい場合、筋収縮機能の低下は避けられない、それは得てして身体的な日常生活上の運動能力を著しく落とす現象に繋がると考えられます。このように考えると、全身の動作が明らかに固い(重い/動かし辛い/曲げづらい等)、アイソトニック、アイソメトリック含め、筋収縮し難い=力が入り難い要素の1つになるのかもしれません。

上記推測も含め、ベンゾ由来を代表とする向精神薬由来の身体的機能が、頚椎症性脊髄症の症状群や動作に類似する印象を持つのは、皮質脊髄路/脊髄視床路の解剖機能をイメージすれば理解が深まると思います。

発症部位に少し左右差が見られれば多発性硬化症や多発性神経炎とか、運動失調がメインになれば脊髄小脳変性症とか例えも変わるのかもしれませんが、その病名探索に意義も価値もありません。薬剤性の場合は何でもアリな症状が惹起される為、損傷部位が錐体路の上位か下位か、又は両側かで色濃く身体的機能も変化すると思われますし、それこそ上位にも下位にもレセプターが存在すれば、どちらも損傷を受ける=症状惹起の可能性もあると考えるのは自然です。

神経筋接合部でアセチルコリンの増又は減、及び当該レセプターの異常で生じる症状(状態)を振り返りますと、有名なのはサリン等の神経毒で、アセチルコリンの放出後、コリンと酢酸に分解されず、過剰にアセチルコリンムスカリン、ニコチン問わず貯留される事で神経破壊が生じ、各々の症状が惹起されます。次いで自己免疫疾患と推測され、レセプター側で生じる病態として筋無力症や重症筋無力症が挙げられます。各々軽重はあるので症状も多彩かと思います。向精神薬離脱症状でも、例えの1つに筋無力症を挙げる方は少なくありません。

では実際のところ、向精神薬離脱症状(脱抑制で生じた持続的な交感神経状態による症状。そのように考えると、非薬剤性⇒例とし、身体/精神/環境ストレスの長期的暴露でも同様の症状は惹起されると推測され、各々の既存精神疾患名や症候群名、障害名を宛がわれる結果に繋がると推測される(両者とも所見的には異常なし))により筋収縮の機能不全が生じた場合、冒頭から述べている神経筋接合部での病態か否かの問題です。その答えは筋無力症や重症筋無力症ではないかと推測し、検査や薬物治療を受けた経過を知れば自ずと見えるかもしれません。

向精神薬由来/自然発症の場合、血清中の抗AchR抗体価は陰性です。胸腺腫もありません。抗コリンエステラーゼ薬もステロイド薬も無効且つ、そればかりか、慢性的に離脱症状なり長期的なストレスに暴露している場合は只でさえ免疫が低下している身体環境下であり、そこに免疫抑制を求む薬剤を使用する為、症状が増悪する経過も見られます。これらの結果を踏まえる限り、筋収縮不全の原因は神経筋接合部ではないと推測する事も可能です。

先ほど1)上位運動ニューロングルタミン酸を放出し、2)脊髄前角で乗り換え、各々の筋肉(筋膜)に神経は枝を伸ばし、3)アセチルコリンを放出し、4)レセプター側が受け取り、筋収縮が発生すると書きました。神経筋接合部の疾患は3)と4)のトラブルですが、向精神薬のトラブルは1)と2)であると推測され、やはりこのケースも1)の回復が無ければ2)もエラーが起き、3)、4)へ身体的機能は反映され、中枢神経の回復が大前提であり必須課題となるのは、他の離脱症状群と同様でしょう。

向精神薬由来のALS様症状の成り立ちと周辺事情~

2年程前に「ALS症例から見る各種神経細胞仮死説を由来とする回復過程」https://blogs.yahoo.co.jp/anti_white_supremacy/13985098.html で記載した通り、ALSの発症仮説は幾つも存在します。

興奮性細胞死関連でのグルタミン酸放出過剰説、グルタミン酸トランスポーター異常説、ミトコンドリア障害説、酸化的ストレス説、蛋白構造異常や蛋白分解系の機能異常による異常蛋白の集積説、ニューロンの構造や分子の輸送に関わる細胞骨格蛋白の異常説、栄養因子欠乏説、免疫異常説、中毒・欠乏(重金属など)説、レトロウィルス説、外傷説等が現在では考えられています。

ALSは運動ニューロン疾患で、文字通り運動神経が経時的に脱落し、運動機能が廃退します。標的は随意筋の横紋筋の為、自律神経支配の平滑筋や心筋は侵されません。基礎的な病態は左記程度で構いませんが臨床像は少々異なり(長期臥床により整形領域的な頸部痛や腰部痛を惹起したりはします)、知覚神経症状や自律神経症状もありますが、治療反応性と経過を追跡する限り、経時経年で進行する可能性は低い印象を持ちます。

ALSの病態自体は態々触れなくても資料は数多く存在しますので以後は割愛しますが、向精神薬由来のALS様症状に関して改めて触れておきたい印象を持ちたく、個人的な解釈ではありますが述べていきたいと思います。先ずは何故ALSと表現してしまうか、です。これは私がALSをどのように解釈しているかではなく、患者側がALSという疾患をどのように解釈しているかです。

四肢遠位の痩せでALSと捉えたのか、手指足趾や上肢下肢の動きが悪くなったからALSと捉えたのか、上記症状含め、呼吸抑制等が生じたからALSと捉えたのか等です。ご存知のない方にも念の為に書きますと、ALSは「痩せていく」かもしれませんが「動かなくなっていく」転帰を辿ります。

書き方を変えます。「筋肉が痩せたから力が入らない」ではなく、「筋肉を動かす為に命令を出している神経がどんどん死んでいくため、痩せてしまい、そして動かなくなっていく」です。その為、運動ニューロンが機能していれば、外見は骨と皮でも不自由なく日常生活を送れます。

また、病名問わず症状のみであれば珍しいものではなく、下位の運動ニューロンの何処かを受傷すればファシクレーションは発生しますし、筋肉は痩せ、運動機能は落ちます。損傷度合いによっては、運動機能が落ちると言うよりも、自分の意思では極めて動かし難い麻痺状態になります。

整形領域の脊椎脊髄疾患で運動ニューロン症状を惹起する場合、脊髄の前角細胞の受傷が前提となりますが、前角の受傷頻度が低く、痛みや痺れ等の知覚神経症状に患者層が偏るのは、脊髄の腹側(前角)に運動神経が存在し、背側(後角)に知覚神経が存在する為、構造的又は労働作業含む日常生活動作程度では前角を傷めにくいだけで、受傷すれば同様な現象が生じます。

ALS様症状の発症に際し、この度は表題で向精神薬と記載したのは、ベンゾのみではなく、他の向精神薬でも十分にALS様症状を惹起する可能性がある事を意味し述べました。

前項で触れたアセチルコリン及び当該レセプター側の神経筋接合部由来の機能/器質異常を示唆する症状群(随意筋/不随意筋/心筋に影響を及ぼす)や、下垂体~視床下部~副腎が絡む所謂HPA経路の異常による内分泌の問題、中長期的に左記理由が継続した事で生じる下垂体機能/器質異常によるネガティブフィードバック由来の症状群、大脳由来の仮性球麻痺、延髄由来の球麻痺の混合的なトラブルは、ベンゾだけでなく抗うつ薬抗精神病薬でも発症するでしょう。

単に上記薬物に至る迄は大概ベンゾも入っている事と、ベンゾで発症するという風潮が近年ありますので、ベンゾばかりが危険視され、その他の向精神薬を一気断薬(又はそれに近い)する症例が幾つか存在し、既存で抱えていたALS様症状が増悪している例も数例ある為、この度は表題をベンゾではなく向精神薬としました。

進行=損傷度の高まり=他症状の惹起の懸念と回復迄の期間の延長、を意味しますので、先ずは今以上に進行させない事を最優先に考える必要があります。向精神薬由来症例に限らず、受療タイミングや患者個人が考える病態解釈、患者側の薬物に対しての捉え方は異なります。

異なりますが、起きている症状や飲む事で起きる反応、薬を止めると起きる反応や針というツールを生体に刺す事で起きる反応は、各々の病態解釈や向精神薬に対しての解釈、感情論とは関係なく共通するはずで、私はその事を淡々と述べているに過ぎません。

只、どのような解釈も自由だと思いますので、私自身の考えを伝えても否定的/反論的な意見や行為をする方も少なくありませんが、私はそれを発展の契機だと思っています。物事に100%は存在しませんし、機械と異なり人間とは不確実性の高い生物です。そして症状を抱えているのは私ではないので、私は他の類似症例と経過を見てきた中での安全な傾向と対策を述べているに過ぎません。

これは何を意味するかと言えば、危険で上手くいかない症例も多く見ているという事です。その理由は上記の通りベンゾ以外は安全だから一気断薬OKという考えや行為、患者周囲の環境も大きいと思います。度々述べていますが向精神薬由来の失敗/脱落症例は7~8割に上ります。失敗/脱落症例の内訳は、今件のALS様症状に限らず男性の40~50代に偏ります。背景には仕事や家庭があり、発症により仕事が奪われ、社会的権威も失した方が焦った行動を取ります。焦った行動とは急減薬や一気断薬等を意味します。

また、仕事柄か規則等に縛られ続けた方も失敗/脱落へ繋がり易い印象を持ちます。要は決まり事の世界で生きてきた人間は自由な発想を嫌い、権威や肩書きに靡き、病気は国が治すものだ的な思考を持つ場合も上手くいきません。各方面に都合の悪い事情が並ぶ向精神薬由来症例は国の動向を待っていたところで何も起きないと思いますし、仮に離脱症状の発症理由、症状継続理由がニューロンやレセプター側のトラブルの場合、検査上は陰性となるケースが極めて高い為、見えないものと相手をするのを嫌う歴史は今に始まった事ではありません。

厚労省やPMDAが近年ベンゾ系の規制を敷き続け、常用量離脱等の存在を公的に発表してから、ベンゾの一気断薬例やオレキシン受容体拮抗薬への一気変薬による厳しいベンゾの離脱症状の例が増えたのは、多くの人間が国が言ったら急激に方向転換をしてしまう危険性を孕んでいる可能性を意味します。ベンゾは一気に止められるものではありませんし、止めたからと治るものでもありません。

ベンゾを飲んだ事がない私がベンゾを危険と言い続けるにはある程度の理由があって、決して感情論のみで訴えている訳ではないのですが、大概信用しませんし、言うだけ混乱を生む現状があるのは身を以て知っています。その為、私は患者側から向精神薬由来ではないかと話が来ない限り一切ノータッチなのです。だからこそ見えてくる部分もあります。

しかし此処まで規制が入り、常用量離脱が認められる流れになったのも、その裏には多くの犠牲者が声を挙げたからこそ成し遂げられた実績である事は決して忘れてはいけないと思います。

さて、予想以上に理解の相違が多い向精神薬由来のALS様症状ですが、本態性ALSは「進行性の運動ニューロン疾患」です。要は運動を発生させる為の経路が進行的に機能/器質異常/脱落性の疾患で、一般的には知覚神経症状や自律神経症状が併行する事は考え難い疾患です。ここで改めて「向精神薬でALSになった」と訴えた方々の症状の一部を羅列してみます。

「使用部位から筋減少が起こる」「強い疲労やストレス、睡眠不足で筋減少が起こる」「朝起きたら痩せていた」「食べても痩せる」「爪の菲薄化や変形、伸びが悪い」「髪質の変化、伸びが悪い」「肌質の変化、保水機能の低下」「傷が治りにくい」を大半が併発しており、この他、上記症状と時系列的にも併行し、知覚神経症状や自律神経症状も併発しています。例えば本態性ALSに罹患した場合、以下の症状群は出ない(又は出ても極めて一部)と思います。

うづきと痛み、動揺また落ち着かない、アカシジア、不安、恐怖とパニック発作、かすみ目、胸痛、離人症抑うつ自殺念慮、現実感喪失、下痢、瞳孔拡大、めまい、複視、口渇、不快、電撃の感覚、疲労と衰弱、インフルエンザ様症状、胃腸問題、聴覚障害、頭痛、火照り、寒気、嗅覚過敏、高血圧、入眠時の幻覚、心気症、触覚過敏、音過敏、頻尿、優柔不断、不眠症、集中力低下、記憶と集中の障害、食欲不振と体重減少、金属味、軽度から中等度の失語、気分変動、筋けいれん、筋肉痛、筋攣縮、吐き気と嘔吐、悪夢、強迫性障害、痺れ、偏執病、止まっているものが動くような知覚、汗、羞明(光で目が痛い)、起立性低血圧、反跳性REM睡眠、むずむず脚症候群、音がいつもより騒がしい、凝り、味覚と嗅覚の障害、頻脈、耳鳴り、振戦(ふるえ)、視覚障害、緊張病、死に至ることもある、混乱、発作、昏睡、振戦せん妄、妄想、幻覚、熱中症、殺人願望、躁病、悪性症候群、器質性脳症候群、心的外傷後ストレス障害、自殺、叫ぶ、投げる、壊す、他害する、暴力等々があります(ベンゾジアゼピン離脱症候群より(wikiより))

この羅列を仮に神経内科的な視点で見ても、ALSの診断に至る事はないでしょう。無闇矢鱈に問い詰めても精神科に回されて「体感幻覚ですね」で終わります。ALSは死を意味する診断で、神経内科のプライドに掛けて下手な診断は出来るものでもありませんので、上記症状を羅列しても経過観察で終わるでしょう。余談ながら1つ希望を挙げます。仮に本態性ALSに罹患しても、死の転帰を取らないALSも一部存在します。ある一定のラインで停止する症例も存在します。

個人的に向精神薬離脱症状グルタミン酸の過剰分泌によるニューロン変性説は腑に落ちる印象を持ちます。しかし、それがALSと同様の転帰を辿る症例を知らない事が1点(気管切開するほど呼吸筋が侵されたり、totally locked in stateに至る事)、回復症例を持っている事が1点、回復情報が入っている事が1点、そしてもっと重要な事は、この手の症状は患者側がALSという表現の使用の有無関わらず有り触れています。

有り触れているから良いかと言えば別ですが、向精神薬は中枢神経に反応を及ぼす薬剤である以上、運動ニューロンを罹患する可能性もあります。只、上記の鍵括弧内の症状を羅列された段階では、運動ニューロン疾患よりも栄養経路の代謝異常による飢餓状態の継続と捉えたくなります。その為、ベンゾ離脱を中心に有り触れるのかもしれませんし、前項でも述べた、SNRIやNaSSAの離脱症状でも手指や足趾、上肢や下肢の運動に異常を来す例が見られるのかと推測します。

考え方によってはALSは運動神経のみですが、向精神薬由来症状は知覚神経や自律神経も侵す為に症状の幅は広く複雑です。只、仮に現症を離脱症状だと既知した場合でも、極めて雑な服薬をしない限り極端なリスクを背負う事はないと思いますし、自死を除きその病態が死ぬまで追い詰める可能性は限りなく低いと現場を通して思うところです。上記URLにはALSの現段階で考えられる仮説の羅列に続いて

>>本態性ALSに罹患した場合、残念ながら現段階では治る疾患ではないとされているが、上記の発症起因が大脳皮質内で生じている神経細胞仮死で生じている場合であれば回復する可能性もゼロではないと言う観点で話を進めたい。既存仮説から抜粋した場合、グルタミン酸放出過剰説・グルタミン酸トランスポーター異常説、栄養因子欠乏説に近い。

と、当時より罹患部位が何処であれ、グルタミン酸による興奮毒性で神経細胞が傷付き発症した場合、何とかなるのではないかとの感覚を持ち続けて治療を行っていたのも、記憶は曖昧ですが治療反応性を以て感じ取る部分があったからなのかもしれませんし、発症由来を除外し続ければ、当該理由しか残らなかったのかもしれません。

~交感神経の持続的亢進による脂肪及び筋減少の成立と改善~

交感神経の亢進に伴う内分泌の動態の1つに、コルチゾル分泌の増大が推測されます。その事で様々な弊害が身体/精神に表れ、ALS様症状の訴えの契機となる脂肪及び筋減少も存在します。好発部位は頸部や腰背部、臀部や下腿等の抗重力筋の他、高頻度に使用される手関節や手背、手掌や手指、膝関節周囲や足関節周囲、足背や足底、足趾も目立ちます。また、発症初期は運動不足と誤認し、筋力トレーニング等をするも実施した部位から痩せる事で異常を察するケースも散見されます。

この現象は糖新生の促進で生じる異化状態の持続が推測され、この理由が継続する限り、脂肪及び筋減少は進行します。メカニズム的には糖尿病の末期/重症期に訪れる現象を想像すると理解は早いと思います。人間は生命維持の為、臓器に貯蓄している糖が枯渇しても、脂肪や筋肉等を分解して栄養を送る生理的な反応を有しています。

誰しも起きる生理的反応ですが、コルチゾル分泌の持続的増大による環境では、栄養摂取をするも即時的に糖が消費され、脂肪や筋肉が分解される事で、抗重力筋を中心に使用頻度の高い部位の痩せ現象が進行します。その為、患者表現の「使用部位から筋減少が起こる」「強い疲労やストレス、睡眠不足で筋減少が起こる」「朝起きたら痩せていた」「食べても痩せる」が訪れますし、食欲減退での痩せ、迷走神経の異常による消化管の活動異常による痩せの併発も往々に考えらます。

この度は大変興味深い写真の掲載許可を頂きましたので、エピソードも踏まえ掲載します。
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40代 ベンゾ服薬中(減薬中)

10代半ばより向精神薬を服薬。約3年後、頭痛や肩部痛、酷い倦怠感、眼痛に悩むも精神的なものとされる。

20代前半よりベンゾとSSRIを服薬していたと記憶。20代後半に検査で低血糖が分かり、栄養療法を開始。体重の減量と共に体調も改善し、服薬量を大幅に減らせ、アトピー性皮膚炎も著しく改善。

数年後、体重のリバウンドに伴い睡眠状態が悪化。服薬量も増える。約1年半後に睡眠時無呼吸症候群と診断と当該治療を受け、改善は見られるも満足のいく睡眠は得られず、サプリを服用するも効果なし。

40代前半、離職の際に一気断薬。離脱症状に耐えるも約2年後、頸部痛や顔面の突っ張りが増悪。更に約2年後、階段昇降を契機に筋減少を自覚。再服薬。(※治療介入はそれから数か月後)

受療時の症状

筋減少(頸部周辺 手関節周辺 臀部周辺 踝周辺 手指や足趾の円錐上の痩せ)不眠 肩頸部の酷い凝り 頭皮/顔面の強張り 臀部に筋張りがあり、押圧で下肢に電撃様疼痛 頸部/背部/股関節/膝関節/足関節等の各関節が鳴る 耳鳴 耳の奥が引っ張られる感覚と痛み 喉がいがらっぽい 爪の一部の薄皮が無くなる/剥がれる 光過敏 不安/対人恐怖 温度変化や緊張で異常発汗 疲労時は乱視のように焦点が合わない 胃腸の不具合 冷え 歯ぎしり
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治療介入からいつの間にか筋減少は停止していた模様も、筋力を要する日常ではない為、筋肥大の自覚も得られていませんでした。そのような折、治療介入から1年と数か月後、数日に渡る肉体労働を契機に、胸部に浮いて見えていた肋骨が見られなくなった事で、筋肥大のご自覚が得られた模様です。また、間も無くの針治療時も刺針部に筋の隆起が見られ、異物を押し出そうとする筋細胞の健全な活躍の確認も取れた為、掲載許可を頂きました。

1枚目は肉体労働を終え、約1か月を経てから、2枚目は約1か月半を経てからです。1枚目と比較すると隆起は乏しいですが、重要なのは筋肥大には相応の負荷を掛け続ける必要がある中、負荷を掛け続ける環境下に置かれた際には筋肥大が可能である代謝状態に改善して推移している事と、他部位の筋減少が認められなかった事です。

また、他症状は減薬都度、顔面や頭皮の強張り、肩頸部の痛み、下肢痛は一時的に増悪し、症状の波はあるものの全体的に改善傾向であり、下肢痛の発症範囲も狭くなっている他、無症候となる症状群も見受けられ、新規の症状も惹起されていない順調に推移している例です。

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離脱症状は薬物調整で治らないと気付く必要性と重要性~

大雑把に書くと副作用なら止めれば済む話も、離脱症状は薬物調整で回復する要素が見当たりません。何らかの要因で受傷したニューロンやレセプターの機能/器質的異常が、仮に現在服薬している薬物で発生した場合、その薬物が引き続いて回復に寄与する事は極めて難しいと判断せざるを得ません。動いて腰を傷めたのに、治る為には動けと言われる位の違和感を持つのが、離脱症状を薬物調整で何とかしようとする行為です。

ベンゾ離脱の持続的な過興奮の症状群にメジャーが反応するのは、脱抑制でモノアミンの分泌が著しく上昇している為と推測され、疾患名で例えると、統合失調症の陽性/陰性症状を往来する症状群が溢れ続けるからであり、数年来流行りの「うつ病ではなく実は双極性障害でした」も、上記の経過で高確率に起きる事象です。メジャーに反応したから統失とか双極性障害とかではなく、ベンゾ離脱の脱抑制をメジャーで抑えつけただけです。

精神症状はアルコールでも類似する経過を踏みますし、ステロイド薬や降圧薬、H2受容体遮断薬や糖質過多による各種ホルモン分泌異常、身体/精神/環境ストレスで発症する場合もあると思います。難治例の疾患や障害を負った場合でも起こるでしょう。また、上記はうつ的な精神症状を例に挙げましたが、初期の服薬契機は様々です。

大概は外傷や疾患ではなく、自然発症の睡眠障害や脳神経症状に始まりますが、ベンゾ離脱を既知であれば有名な「ベンゾ離脱は身体の最も弱い部位から症状が出る」は、見方を変えれば「持続的な過興奮に伴う各神経細胞の栄養供給が不全状態に陥った事で、自覚/無自覚問わず身体の弱い部位から症状が出る」と考えられます。

人間は一人ひとり同じように見えて異なります。先天後天問わず、骨格や脈管の奇形や破格、異常走行は大小含めれば珍しくないでしょうし、成長期であれば脊椎の成長に脊髄が追随出来ずに末梢神経や脳幹のテンションも高まった事で、脆弱性を抱えている→各種身体/精神症状の易惹起の可能性もあります。

家事や職場環境によっては、同一姿勢や反復動作を強いられる事で、当該部位の機能/器質的な脆弱性保有しているかもしれません。勿論、前項で述べたように、脳神経も各々酸素要求量(酸素消費量)の高低がある為、視神経や内耳神経、三叉神経由来の諸症状に偏るのも理由にあるかもしれません。

その為、例えば網様体賦活系に脆弱性を元来抱えていれば睡眠障害が先行的に起きる身体状態であり、内耳神経に脆弱性を元来抱えていれば難聴や耳鳴、目眩等々の症状が先行的に起きるだけの話で、発せられた症状がどうだからこうだという話でもなく、そして何を以て症状の度合いが左右されるかも、患者対社会的接点の内容で変動し、困り度の表現も連動する為、数値化が難しい症状ほど客観的評価は難しいものです。

また、これらの諸症状はベンゾ離脱でなく自然発症でも同様な症状を出す事が混乱を生む要因かもしれませんが、自然発症性と薬剤性の分け隔ては難しくなく、前者は大概が脳幹と間脳まで、後者は脳幹や間脳の他、大脳や小脳、脊髄由来の中枢神経症状が混合してきます。また、時系列を追えば分かるものなので判定は難しいものではありません。

大脳や小脳の受傷度合いや部位によっては病識の有無も左右します。要は患者自身が異常行動を起こした場合に異常だと自覚出来るか否かです。例えば「攻撃性」「暴力性」「衝動性」による他害行為を自身が異常と察する事が出来るかです。病識が無ければブレーキを効かせる効かせない以前に気付いていない為、自分の身体が壊れる事も分からず破壊し続けます。

精神病棟へ直行させられるケースが、自害他害や感情を顕にした表現の連続によるものが最多の印象を受けますが、患者家族も疲弊し、対応能力の閾値は日々低下し、何処かのタイミングで措置入院を講じるケースもあります。患者家族とて精神病棟へ追い込んだ以後の状況は既知としても、送り込んだ後の患者家族の安堵の顔を見てしまうと、私も是非の判断をし難くなるのが正直なところです。日々の暴力や罵声、破壊に怯える患者家族も辛いのです。

さて、これらの幾つかの事情を乗り越えた上で現症と対峙する事になるのですが、冒頭で述べた通り離脱症状とは服薬しているから発症しているのではなく、過去に当該部位を主に急性的に受傷し継続している症状群と捉えられ、現在の症状の程度で推移しているのは、現在の服薬がスタビライザー的な要素を持っているからとも捉えられます。

故に、程度の差こそあれ服薬量を弄れば症状は増悪しますし、ベンゾを増量しても、既存症状には然程寄与出来ないのでしょう。離脱症状は薬物が主となり身体/精神症状を惹起している作用/副作用とは異なり、薬剤耐性獲得後より分泌能やレセプターが傷んだ機能/器質的異常で生じている症状群である事が、特に断薬後も症状を継続する患者群から明瞭に見えてきます。

このように、冒頭でも述べた通り薬物によって生じた異常が薬物で治る要素が無い理由がクリアに見えます。度々述べていますが、改善過程は各々絶対的に異なります。受傷度合いや受傷時期、症状の数から服薬内容、代謝酵素や日々の食生活まで全く異なる為、参考にはなりませんし、参考にする事はリスクを伴います。その為、回復には回復理由よりも増悪理由を探し回る事が大切です。

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イメージ 1  ~針治療から病態定義の見直しを~