藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

H25の症例を振り返っての反省点


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症状 腰下肢痛 診断名 腰椎椎間板ヘルニア

患者さまよりお写真を頂戴致しました(写真撮影はH28.12.14)。手前から下記症例の患者さまと奥さま、私です。今だからこそ笑って写真撮影したり、当時を振り返る事が出来ますが、当初は半寝たきり状態と言う深刻な状況から治療は始まり、笑えるような状態では無かった事は今でも記憶しています。
下記内容は事前にご確認頂き、間違いないとご判断頂いた上で掲載しています。今回、何故やや古い症例を上げるかの理由に関しては、H25当時の私自身の治療内容全般に対しての反省点も踏まえていきたい部分もあり、敢えて過去の症例を上げる事に致しました。
下記症例の月日をご覧頂ければ分かるかと存じますが、症状がほぼゼロに至った治療日と言うのがH25.12.13、そして今回の写真撮影がH28.12.14と言う事で、ほぼ3年前です。折角の機会と言う事で、過去と今、そして過去の反省点を振り返る良い機会かと思い、事前許可を頂いた上でまとめてみました。

Sex m  age 43(当時)
主訴 右下肢の痛み・痺れ(右腰部~右臀部~右鼠径部~右大腿裏~右下腿裏~右前脛~右足関節外側に掛けての激烈な痛みと痺れ) 
副主訴 不安感、不眠、体重減少、イライラしがち(当院注釈⇒主訴に伴う合併症状かと推測される)
・既往歴 特筆事項なし
・今症状に於ける医療機関での診断 腰椎椎間板ヘルニア 
医療機関での処方薬物 リリカ トラムセット デパス ルボックス ロキソニン ムコスタ(カルテに記載はありませんが、湿布薬等の外用薬、サプリ等の使用もあったと口述されていたと記憶しています)
・カルテに記載されている今症状の患者表現
一日中痛む(当院注釈⇒臥床位でも症状の改善なし)・あぐらで症状が強まる・敢えて楽になる姿勢を挙げれば、掴まり立ちや椅子に座って肘で支える姿勢で楽になる(当院注釈⇒肘を机や大腿前面に付く事で、上半身の荷重を分散させる動作の事かと思われる)
・発症から当院受療に至る迄の症状及び経緯
H25.2 頻回に腰部を回旋する作業にて腰部伸展(股関節伸展)が不可能となる(腰が伸ばせない、伸ばし難い状態となる)
H25.4 同年2月の症状が継続及び憎悪し続け、常に腰部屈曲(股関節屈曲)姿位しかとれなくなる(腰が伸ばせなくなる)(腰が九の字のままとなる)
H25.7この頃より、右腰部(右こし)~右臀部(右おしり)~右鼠径部(右そけい部)~右大腿裏(右太ももウラ)~右下腿裏(右ふくらはぎウラ)~右前脛部(右スネ)~右足関節外側(右の足首の関節の外側)に掛けての激烈な痛みと痺れが姿勢変化に関係なく一日中続くようになる。
若干の症状の改善姿位や憎悪姿位は上記参照。同年同月より厳しい症状の為、1日2時間程度しか眠れなくなる。
・当院受療迄の薬物治療以外の治療歴(医療・代替医療機関)
牽引 神経根ブロック×3 針治療 カイロプラクティック 他(※これらの受療時期や受療期間、受療頻度は不明だが、それぞれの治療をある程度の期間、毎日のように頻回に受療されていたと口述されている。※神経根ブロックに関しては保険制度に則ったスパンでの治療だとは思われる)
代替医療を受療する事になった経緯
画像所見上、椎間板ヘルニアとの診断から牽引及び神経根ブロックを3回受け、治療反応性が乏しかった為、ドクターから手術を勧められていたが、当該患者さまの知り合いの看護師から「あなたの足は手術しても治らないわよ」と言われた事で、手術以外で回復する手段を模索するようになり、針治療やカイロプラクティック等を受療するようになる。
・当院(藤原)を受療する事になった経緯
当該患者さまが受療された代替医療(針治療 カイロプラクティック)での治療反応性も残念ながら乏しかった為、当ブログから当院(藤原)を受療される事になる
・初診時の当時の所感
駐車場まで迎えに行った際(当時は当院の看板がなかった為、場所を見つけられない新規患者に関しては駐車場まで迎えに行っていた)、車を降りての歩行状態を見た限り「大丈夫かな…(治るのかな…)」と言う程の疼痛性跛行(右足の痛みを避けるような歩き方)を呈していたのを今でも記憶しています。
凡ゆる治療を試された上での当院受療と言う事は、逆の見方をすれば、何をしても効果が出ない可能性もある、と言う意味も含まれてきます。異なる手段でもせめて僅かでも反応があれば救いはある可能性もあるのですが、過去の治療で全く反応しないと言う過去を持っていると言う事は、治療云々以前に「(私の針も)効かなかったらどうしよう…」と言う恐怖心が先立つものです。

以下は当院(藤原)での治療歴です
※メールで症状変動の推移を教えてもらっている部分も下記に含めて書きます(初診時のみ)
※メールでは更に細かい情報を遣り取りしていたのですが、あくまでカルテ記載のみからの抜粋です
※VAS値をカルテに記載していない治療回もありますが、治療初期は2~3割減程度でしか推移出来なかったと記憶しています
※VAS(ビジュアルアナログスケール)…簡単に説明すれば、「10の痛みは今5まで良くなりました」的な数値での表現方法です
初診H25.10.22
治療中(置針中)は右下肢の症状が消滅するも、抜針後、症状再燃。メール⇒治療一時間後は症状が憎悪した感覚があったが、その後VAS10⇒6~7 ※この後の治療も、治療中はVAS10⇒0となり、抜針後、再燃するを繰り返す事になる
2診H25.10.23
治療中は前回治療同様、症状は消滅するも抜針後に症状再燃する。それでも当初期の疼痛レベルはなくVAS10⇒8を維持
3診H25.10.24
以前は右下肢の痛みの為、2時間程度しか就寝出来なかったが、5時間程度就寝出来るようになる。VAS10⇒8
4診H25.10.25
治療の累積効果か、元症状が改善傾向によるものか、治療直後の治療反応性も良くなってくる。抜針後の症状発症部位が狭小化している模様。※治療終了後、ベッドに腰を掛けて貰っても、発症部位が臀部のみとなる。立位も以前と比較すると楽に感じられる模様
5診H25.10.29
昨日、ショッピングモールで5時間程度の買い物を楽しむ事が出来た。VAS10⇒6
6診H25.11.2
歩行スピードを緩めれば(ゆっくり歩けば)、身体を真っ直ぐにしての歩行も可能となる。VAS10⇒4
7診H25.11.6
※特筆事項なし VAS10⇒4
8診H25.11.13
※特筆事項なし
9診H25.11.19
同年11.16にタイヤ交換をした際、右背部から右下肢に掛けて激痛が走る。腰部を伸展しようとすると右下肢に激痛が走るが、当初期の足関節まで痛みは出ない
10診H25.11.24
身体を左右に倒しても(側屈)問題なくなるが、左側屈で右下肢に症状が出ている模様
11診H25.11.30
※特筆事項なし
12診H25.12.4
右臀部に痛み(恐らく、右下肢の痛みも残存しているものと思われる)
13診H25.12.10
※特筆事項なし
14診H25.12.13
※特筆事項なし この頃より症状の著しい改善が始まる。※以下に記載

・当時の所感及び所見
同年12.13の治療後、2~3日を経て右下肢の症状は一旦VAS10⇒0(近位)になる。その後症状がVAS10⇒3~4程度となり、当院に改めて治療予約が入るが、
「恐らく今の再燃は放っておいても又数日でゼロになる」と伝え、治療は敢えて行わず様子を見てもらう。結果、VAS10⇒3~4程度の状態は、2~3日後にVAS10⇒0となる。
その後も僅かに当初期の症状を思い起こすような右下肢の症状が軽微に出るも、安静にする、又は針治療を受けられる事で即時的に改善されるようになる。症状が軽微且つ受療時期が早期であれば即時的に治療に反応し、軽快する状態となる。
当初期の症状回復後は仕事も再開され(相当身体負荷が伴う作業内容は以前同様変わらない)、度々上肢や下肢、腰部への症状を訴え来院される事になるが、今症状の激烈な右下肢痛に関しては、上記の経緯を辿り、改善したものと思われる。

・今にして思う当時の反省点
今現在は針と言うツール自体の反応性も生理的にも把握しつつあり、今症例に限らず、発症時期や発症内容等、当時に比べれば自分自身も針治療を通してどのように症状が変動していくかの事前予測等も一層明瞭化してきた為、今症例のような連日治療を行うと言う荒削りな手段は基本的に少なく思います。
その為、今現在は患者の症状にもよりますので一概には言えない部分もありますが、ある程度の治療反応性を予測した上で、逆に治療スパンを空けると言うスタイルを取り、治療外時間でも如何に症状改善に向かわせるかと言う治療内容とスタイルに変化しているものと思います。
このような「治療で症状を潰す」と言う観点から「治療で症状を自然治癒に至らせる」と言う思考に変化し、且つ刺針部位や同一症状に対しての病状の見立てが変化してきたのは、これよりももう少し後の事だったと記憶しています。
詳しくは参考関連をご覧頂ければ、何故、筋筋膜を標榜しなくなったのか、刺針部位が同一症状でも変化してきたかの理由は書いているかと思います。上述反省点も含め、当時の反省点を幾つか箇条書きすると
1) 連日治療と言う荒削りなスタイルを当初は取っていた(恐らく当時は連日治療しなければ治らないと言う観念を私自身が持っていた為)(これに伴う患者のデメリットは通院に伴うトータルコスト増の懸念。今症例の患者さまは通院に片道2時間30分程度掛かる距離にお住まいだった為、初診~4診迄の連日治療は、「今にして思えば」必要だったのか疑問)
2) 当時の私はMPS(筋筋膜性疼痛症候群)をメインとした治療を標榜していた為、症状発症起因に筋筋膜的要素が深く関与していると思っていた為、症状発症部位の広範囲に渡り刺針をしていたと記憶している(これに伴う患者負担としては、刺針部位が多い事に伴う身体的負荷の増加の懸念)
3) 今症例も、下肢痛は筋筋膜由来の関連痛と言う観念から、筋筋膜の動脈血流量の促進で症状の改善に至ると言う意味合いで太めな針を使用しており、治療由来の疼痛も高かったのではないかと思われる(※当時は主に8~10番針。現在は2~3番針を主に使用)(2)と同様、治療時の身体負荷増の懸念)

・ 全体を通しての今症例に対しての所感
既に3年前の症例なのでカルテ記載以外の記憶は若干曖昧な部分はお許し頂きたく思いますが、当時は一生懸命やっていた事だけは記憶しています(今が一生懸命ではない、と言う意味ではないです)。
確かお灸や灸頭針等も散々試してみたり、患者さまにメールを通して症状発症部位の圧痛点を探してもらって押して(指圧)もらったり(確か当時は虚血圧迫と言う手法をセルフでしてもらったと記憶しています)、今考えると「若かったな」と自分自身に思えるものです。
他、就寝時間は当初2時間の中、片道2時間30程度掛け治療に来られ、治療中(置針中)は少なくともVAS10⇒0になられていた事から、治療中は治療ベッド上でよく眠られていた事を記憶しています。その為、当時は数十分から1時間程度、置針したまま眠って頂いていた記憶は今でもあります(今は如何なる症例でも置針しても2~3分程度で同様な結果を出せる事が分かりましたので、基本的に長時間の置針はしていません)
今現在は治療内容も相当シンプルになっている事(参考関連参照)、使用針も異なる事から治療由来の疼痛も相当軽減されているものと思われます。シンプル且つ治療由来疼痛の軽減と言うのは、例えば今症例のような「後がない」的な症状を持つ患者さま以外の、軽微な疼痛性疾患や非疼痛性疾患にもカジュアルに対応出来るものと思われ、今現在のスタイルに結果的になれた事は私自身も良かったと考えています。そうでなければ10代未満や10代の患者に対して3年前のような治療を行う事は出来ないかと考えてもいるからです。
他、1番大きな変化と言うのは以前は所謂MPS(筋筋膜性疼痛症候群)と言うスタイルを持っていましたが、今現在は持っていないと言う部分かもしれません。今症例に限らず、様々な症状発症由来、症状継続由来と言うのが(要は見立ての事です)過去と現在では異なる点かもしれません。これに関しても参考関連をご覧頂ければと思います。では、以上ザックリとでしたが、これで今症例に対しての反省を終えようと思います。

参考関連1 (クリックでリンク先にジャンプします)

Steal Syndromeの疾患概念を逆視点から考察する針治療

参考関連2 (クリックでリンク先にジャンプします)

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