藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

特殊症例の相互事情

表題的には「特殊」としましたが、症例が特殊化する要因として「どのような背景、考えを持つ人間が、どれだけ絡んだか」、又は「どのような病態解釈を患者が情報として取得し、信頼を置き、その解釈に沿った治療を受けたか」により変動します。椎間板ヘルニアを代表とする脊椎変性疾患1つ取り上げても、術者側が異所性発火論(※後述)」を信頼している人間か否か、又は患者側が異所性発火論を信頼したか否か、それだけでも大きく身体的将来性が変動します。その為、根本的には「特殊」ではありません。元々は純粋な整形領域疾患や自然発症性の自律神経症状が色々な事情で拗れただけの症例群でしかないのかもしれません。
医学的根拠や科学的根拠、エビデンスや論文と言う権威を好む人間が病気になればエラい事が始まります。簡単に取得出来る情報、目で見える情報の多くは既に操作された内容が発表されているだけに過ぎない事も知らなければならないでしょう。信じる信じないの話は宗教戦争の様態を呈する為に扠措き、ヘルニア1つ取り上げても数十年も業界内部で戦争が起きています。何故異論や反論が上がり続けるかと言えば、術後無効例が絶えない、術後後遺症例が出る、手術によって経時経年で椎間不安定症が発症する懸念材料となる、
後述する事にもなりますが、犬猫の神経根に電極の輪を取り付けて散々研究を行った異所性発火論の権威とプライドを保つ為など様々あるでしょう。結局は曖昧な状態で時代が流れた結果、中枢神経系に反応を及ぼす鎮痛薬や向精神薬が整形領域疾患にも堂々と承認され、その流れが加速しているに過ぎず、且つ、2次的弊害は直隠しにされている現状があります。乱暴な表現ですが、第三者的視点に立って眺めると、エンドポイントが存在し難い鎮痛薬や向精神薬の延々投与のほうが余程乱暴です。幾度となく書いている事ですが、予後の短い、がん性疼痛に使用されるような薬物が、予後の想定がない、今後も長きに渡り人生を過ごす事になる骨性や関節性由来、末梢の神経浮腫や神経萎縮で生じる諸症状に使われています。
どんな病名が付こうが最終的な投薬内容は殆ど同じです。殆ど同じなのですが、個の患者は自身の疾患しか見え難いものなので、他疾患を持つ患者も同じ薬を飲んでいる事に気づけません。「仕方ない」と言う人間もいるかもしれません。「仕方ない」と消極的な思考を持っても良い状態は、「極めて危険性の高い薬物治療をしてない」状態であれば言える事かもしれません。しかし、多くは「極めて危険性の高い薬物治療をしている」状態で口を揃えて「仕方ない」と言います。忘れてはいけない事があります。それは服薬し続けている状態である事実は変わらない訳で、服薬し続けている限りリスクが上回ります。

お互い様と言われればお互い様かもしれませんが、多くの症例は一旦病院を経由します。手術を控えている、手術をしても良くならなかった、その時々で針治療受療時の心境も異なるものでしょう。その為、後がない環境に置かれている人ほど成功症例は多く、成功確率も高く、その逆に後がある症例ほど簡単に手術や薬物治療と言われる「後のある治療」をし、その結果、無効例、又は冒頭でも書いた通り経時経年で椎間不安定症から他脊椎高位の神経損傷、又は当該部位の神経損傷の再発と言うのは皮肉なものです。
本当は後がある軽症時のほうが早期回復出来るのですが、こればかりは又、個々の「その時」の心境や、個々の病態解釈によって左右されるものでしょう。やってみなければ、やってみるまで分からない、と言うのはどの治療でも同じ事だと思います。但し、私は「後のある治療」をしてからの身体的状態も常に踏まえています。人間と言うのは、仮に関節や脊椎が著しく変形し、その事で神経的ダメージを食らったとしても適応出来る生き物です。その為、限り無く低リスクな手段を模索し、急がない焦らない事を願っています。神経浮腫や神経萎縮が一度生じた場合、軽症例又は早期事例を除き、1~2日で改善するものではありません。
医療は権威性が高くなるほど正義や良識や誠実さが希薄になります。社会的にタイムリーな症例、特殊症例、難治例の多くは大きな病院も絡む事から、「針刺したら治ったで」なんて言おうものなら何故か患者が激怒されるケースはあるもので、医療は政治、プライドの塊りである事を何度も何度も痛感します。気持ちは分からないではありません。散々研究や臨床を重ね「治らない」とされたものが「治ったら」それこそ大変な事態です。術後後遺障害を隠し、精神病だと告げられた患者が回復しても大変な事態です。
しかし、もっと大変な事態に巻き込まれているのは1人の患者である事を忘れてはならないと思います。

「頚椎変性疾患に対しての薬物治療に抵抗性を持つ中、針治療により症状改善するも向精神薬SNRI)の離脱症状からの脱却に苦しむ1例」
sex f age 40 遅発性離脱症状SNRI)の疑い
主訴 左上肢の痛み
既往 特筆事項なし
1~4年程前に左上肢全般に激痛が発症し、MRIで頚椎椎間板ヘルニア(c5~6)と診断され、NSAIDsやステロイドの経口薬他、神経根ブロックに対しても抵抗性を示した事からヘルニア切除の手術。
一旦は症状が消失したが2ヶ月後に再燃。固定術を提案されるも本人の意思により経口薬で対処出来ないかと相談した結果、NSAIDs SNRI ベンゾ オピオイド鎮痛薬等を処方されるも症状の軽快が見られず当院(藤原)を受療。
左上肢症状に関しては2ヶ月程度で消失(治療スパンとしては当初期は4~5day/1回、日常生活に支障がないレベルまで症状が落ち着いた頃から10day/1回に切り替え)した頃より、初期から処方されて残っていたSNRIの減~断薬を3ヶ月掛けて行う。
減~断薬過程では幸いにも離脱症状は起きず、断薬完了後も目立った症状は出ずに安定していたようだが、一ヶ月半後頃より「乾性の咳が止まらない」「鼻出血(片方)が止まらない」「一睡も出来ない」となった為、
医療機関で検査するも原因不明。鼻出血の原因は粘膜に傷が付いたのでは?と言われるも、本人は特に傷付けた記憶もなく、毎日のように鼻出血が継続するのは傷を付けたものではないと疑問に思うようになる。
他、一睡も出来ぬ不眠が1週間続く事から(不眠発症から2~3日経過した時に医療機関を受診。その際にベンゾを追加処方され服薬するも改善なし)体力的に厳しくなり、
先日断薬したSNRI離脱症状を疑い再服薬すると全ての症状が消失。睡眠障害も改善される。この事から断薬から1ヶ月半程度後に惹起された諸症状はSNRIによる離脱症状であったと推測される結果となる。
現在も未だ経過追跡中でもある為、現段階では此処までの事しか書けませんが、多くは5~10種類の多剤が大半な中、単剤での遅発性離脱症状は少数かと思われる為、1つの参考症例として載せておきます。
左上肢の激痛に関しては、痺れや知覚鈍麻等の知覚神経実質の著しい損傷も無いと思われる事、及び運動神経系等が損傷したような様態でも無かった為に、比較的良くある症例(病態的にも好発例)であり、治療反応上からも下位頚椎神経の持続的過剰牽引に伴うdrg損傷によるものと見て良く、上述の通り整形領域疾患に関してはコンスタントな受療も可能だった為に比較的安定性を保ったまま段階的に収束していったものの、
問題は処方された薬物による2次的被害(離脱症状)から抜けられるか否かが一番の問題となり、今件の症例に限らず、整形領域疾患⇒向精神薬処方⇒向精神薬依存~薬剤耐性⇒現症状である整形領域疾患は改善したものの向精神薬を止められなくなる、と言う類似ケースは多くある。
今に始まった話ではないが、患者が減~断薬に起こりうる諸症状を既知とし、柔軟な対応を自己で出来れば問題ないかもしれないが、一度薬剤耐性が付いてしまえば止められなくなるケースも散見され、少しの拍子で向精神薬を処方されたばかりに、一生飲み続けなければ症状が安定しないと言う状態に陥る患者も少なくないと思われる。
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「腰椎変性疾患の術後障害に対して精神病扱いされるも腰下肢痛は針治療で改善。当時処方されていた向精神薬(SNRI)の離脱症状からの脱却に苦しむ1例」
sex m age 50 遅発性離脱症状SNRI)の疑い
主訴 両足趾の冷感 腰痛
既往 腰部脊柱管狭窄症に伴う手術(椎間孔開大)
5年前の腰部脊柱管狭窄症の椎間孔開大術から数ヵ月後、実際に触っても冷たくはないが、季節関係なく極めて厳しい冷感を両足趾に感じ、夏場でも靴下を2枚重ね履きしても落ち着かないと言う事で受療。冷感自覚は大きく分けて2つあり、実際に触って冷たい血流障害型か、腰部神経叢の知覚神経の損傷に伴う偽陽性型冷感に分けられ、
今件の患者は後者に分類されると思われる事を臨床反応上示し、約数回の治療にて症状が改善され始めるものの、私(藤原)が伝達した腰部神経叢の知覚神経由来である事を気に掛けていたのか、MRI撮影を後日行うとL4/5に側方突出型の椎間板ヘルニアの所見が認められ、手術を勧められる事になる(この時点では下肢症状は当初の足趾冷感のみ)。
一度手術は考え直したほうが良いのではないかと告げるも、本人の意思は固く手術(LOVE法)となる。術直後は腰痛は軽減されるも2weeksで腰痛は再燃。両足趾の冷感は残存する。症状が残存する事から医師にその事を訴え、ファセットブロック×回数不明、仙骨ブロック×回数不明、神経根ブロック×3を受療するも症状軽減に至らず、当該術後領域とは異なる神経走行部位に症状が出始める。
後述する事にもなるが、当初は主訴の通り両足趾の冷感 腰痛だった症状が、両大腿前面、両下腿前面、両腰部、両臀部、両大腿~下腿裏へ激しい疼痛と、両大腿前面は皮膚知覚異常が出始める。1つの可能性を考察すれば、術後の脊椎の不安定性より、両上下の脊椎高位が神経損傷を起こした事に由来するものと後の治療で推測される。
少し話は戻すが、先のブロック施行にも反応性が悪い事、更に異なる部位に症状が拡大した事を訴えると、固定術の提案ではなく、精神病院への紹介状を出され、精神科へ9ヶ月程入院する事になる(理由は伏せ)。診断名 うつ病 身体表現性疼痛。その間、様々な薬物治療を受けた模様(この時点での薬剤名不明)だが、退院後はリリカ トラムセット デパス リボトリール サインバルタ ロキソニン ムコスタ等を服薬。
処方内容に関しては取り分け珍しいものではなく、針治療受療により両下肢症状は約4ヶ月程度を経てvas10→1程度となり(4~5day/1回~10day/1回)、日常生活には支障のない腰痛のレベルとなり、下肢痛は消失。一部大腿前面の皮膚知覚異常は残存しているが、経時的に改善模様の為、今後もフォローしていく事になるが、
症状の軽減と共に本人が薬物治療の必要性を感じなくなった事から、掛かり付けの医師に相談をしたところ(そこの外来には3人担当がいる)、1人は薬物を止める事を認めてくれなかった為、もう1人に相談したところ、そこの親分的存在から既に当該患者の情報が伝達されており(薬を止めたいと言う意思)、「止めるなら止めれば」と言われ、今後の診察を拒否される。本人も止められるチャンスだと思い断薬する事になる(自己判断に伴う一気断薬)。
幸いにも1ヶ月程度は症状(離脱症状)を自覚する事はなかったようだが、その後、シャンビリ 頭鳴 耳鳴 めまい 歯肉出血 不眠 胃痛 動悸 肋間神経痛様症状に悩まされる事になり、本人も「精神科に入院させられる位なのだから精神病なんだろうな」と思い込むようになり、
再度精神科を受療し同様な向精神薬を服薬したところ(サインバルタのみ 他の薬物は整形外科から処方されている)、3日程度の期間を経てシャンビリ 頭鳴 耳鳴 めまい 歯肉出血 不眠 胃痛 動悸 肋間神経痛様症状が消失。この事から上記症状はSNRIによる離脱症状と推測される結果となる。その結果から本人も薬物の恐さを知り、再度減薬に励んでいる。
向精神薬は「止めるなら止めれば」で済むような薬ではなく、止め方次第で直接的にも間接的にも本当に死人まで出る場合もあり、如何なる理由でも向精神薬を一気断薬へと結び付けてしまうような対応と言うのは極めて危険である事が分かる1例でもある。

「精神病棟からの退院時、急激な減~断薬が行われた事に伴う急性離脱症状に対しての1例」
「急性離脱症状惹起の経緯」
以下に挙げる診断名は医療機関が提示したもので、精神病名や定義不明瞭、病態定義不十分な疾患名も書かれています。(尚、具体的な薬剤名や年齢、性別、エピソードは若干改変しています)
sex m age 65
診断名 逆流性食道炎 うつ病 線維筋痛症 
既往 特筆事項なし
15年前に逆流性食道炎様症状が惹起された事で検査。同症状の改善を見越す為に当該薬物が処方されるも著効せず2週間経過。その事を医師に伝えると「精神的なものでしょう」と言う事で、うつ病と診断され、三環系抗うつ薬とベンゾ系薬を処方。
本人曰く処方された薬物に好感触を得たのか、1週間程で逆流性食道炎様症状が改善されて以降も、日中は抗うつ薬、就寝前にベンゾ系、嫌な事があった時には頓服的にベンゾ系の服薬と、次第に量が増えていく。
(服薬量の変動迄は分かりませんが)服薬内容は変わらず約5年後、両前腕と両下腿、両背部に姿勢変化問わず持続的な疼痛他、不安感や焦燥感、睡眠障害等が出始め、これらの症状から情報を収集したところ、線維筋痛症と言う病名を見つけ、
コレではないかと言う事で遠方の病院まで診察に行き、線維筋痛症と診断を受ける。その際に抗てんかん薬を処方される。しかし当該薬物でも著効せず、次第にベンゾ系の量が増えていき、以降身体疼痛も全身に拡がり、精神症状も更に感情の起伏が激しくなってきた頃、知人の紹介で精神病院を紹介され入院となる。
入院直前迄は際限なく過量服薬する傾向があり、主にベンゾ系を服薬すると幾分落ち着く事から入院先での管理された服薬内容では納得がいかず、退院を申し出。退院以降もベンゾ系を主として服薬を継続するも症状が落ち着かない事から再入院。
この頃から過眠と不眠が繰り返される事になる。今度は高用量のベンゾ系や抗うつ薬抗精神病薬を処方された事から症状が一見落ち着いたように見えるも、患者家族が服薬内容を見て驚愕し(要は多剤大量処方)、退院と減~断薬の申し出をする。その事で病院側は患者の退院後、1週間で半分。2週間でゼロとする。
その後、間も無く当初から抱えていた全身性の身体疼痛や精神症状以外にも、アカシジア、ジスキネジア、全身の痙攣や痺れ等が出始め、再度医療機関に掛かるも相手にしてもらえず、再服薬をするも回復なし。
異なる医科を巡るも精神科の通院履歴があると言う事を理由に、入院先の精神科外来を受療するよう促されるか、異なる心療内科や精神科で向精神薬が処方される程度で回復の兆し無し。唯一ベンゾ系には若干反応していた為、ベンゾ系の過量服薬が再度始まる。その頃、当該患者と親交のある別の方より当院(藤原)に連絡が入り治療開始となる。
治療中及び直後は全身性の疼痛や極度な不安感、焦燥感は治まるも、翌日弱再燃傾向を繰り返しの治療が2度過ぎた頃、知人が患者宅に用事で伺った際、患者の姿が異様な光景に見えた事から(アカシジアやジスキネジア、不安発作状態を見ての事と思われる。知らない人が見れば確かに異様と言えば異様と言う表現も分からなくもない)そのまま車に載せ、以前の入院先とは異なる精神病院に連れて行き入院となる。
後日連絡者の方から電話を頂き伺った話では、向精神薬の点滴とECT(電気けいれん療法)を受け、微動だにせず寝ているとの事。古典的な治療を好む精神病院に入院した模様。
>>臨床像考察
時系列からベンゾ系の中長期的服薬に伴う常用量離脱から生じた反跳性筋硬直(否 ジストニア)や反跳性不安を線維筋痛症と診断した事例と推測される。過ぎた話を幾ら検討しても仕方ないが、15年前の1週間の服薬のみで休薬すれば、このような事態には繋がらなかったと思われる。これはあくまで推論である事、病態に対しての見方の違いも含まれての話にはなるが、
ベンゾを過量服薬して症状が若干落ち着くと言う理由が線維筋痛症と言う疾患を落ち着ける訳ではなく、長期服薬で生じたベンゾの常用量離脱(薬剤耐性に伴い惹起された反跳作用)を落ち着けると言う行為にしか見えない。その理由も、1度目の精神病院入院で管理された服薬環境に納得がいかないと言う精神状態が物語っている。
他、当該患者に限った話ではないが、明らかに減薬スピードが速過ぎる。しかし、多くの医療機関は仮に「減薬しましょう」と協力姿勢を見せた場合でも、この位の減薬スピードはザラに聞く話なので、このような類似例は全国的にも数多くあると推測される。

http://blogs.yahoo.co.jp/anti_white_supremacy/14220596.html
見過ごしがちなベンゾ系単剤の副作用及び常用量離脱症例(3例)
「入院中、不眠を訴えた事で処方されたベンゾ単剤の副作用及び常用量離脱からの回復」
age 60 sex f ハルシオン0.125mg 
激しい頭痛 目眩 吐き気が数日に掛けて憎悪した事から近医内科を受診。「風邪でも引いたのでしょう」と言う事で感冒薬を処方され服薬するも著効せず。その後、脳外を受診しMRI撮影。受傷時期は不明だが脳挫傷と診断され即入院。点滴治療で当初期の症状は寛解したものの、入院中に不眠を訴えたところハルシオンを処方される。
当初期の症状は点滴治療で間も無く落ち着き、3週間程度で退院。以降もハルシオンは処方され続け約3ヶ月後、不安 焦燥 健忘 離人感 宅内外問わず自分は何をしているのか全く判断が出来ない と言う症状が出始め、ハルシオンの常用量離脱を疑い、脳外を再受診するも「認知症でしょう」と抗認知症薬を処方される。
本人はハルシオンが原因であると直感で感じ減薬に励む。約8ヶ月程度の期間は3/4。当初は1/2で試みたが不眠や不安感が酷くなる事から極めて微細な漸減を用いる。8ヶ月後以降から12ヶ月後迄1/2で比較的症状が安定。12ヶ月後から20ヶ月後迄1/4。その後、フラッシュバックが惹起されたタイミングは増量する柔軟性を持ち調整しながら約35ヶ月後、当初期の症状は全て改善。20ヶ月以降は長期旅行も可能となり、日常生活に支障はなくなっていた。
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「整形領域下肢痛で生じた不眠によるベンゾ系単剤の離脱症状からの回復」
age 65 sex f マイスリー 
下肢症状が継続する事で3~4時間しか眠れなくなり、その事を訴えた事でマイスリーが処方される。1週間程服薬したところで具合が悪くなり(症状不明)休薬したところ、当日から一睡も出来なくなる。布団に入るも目が冴えて眠れず。体力的な限界が訪れた時に気を失うように眠った感覚を覚える時はあるようだが、殆ど寝ていないに等しい期間が約2週間程続く。
本人曰く、「眠れる薬を止めたらもっと眠れなくなったから飲むのが怖い」と言う事で服薬拒否。2~3週間目以降から徐々に睡眠時間は取り戻されたが、その期間中、及びその後から頻尿 腹痛 下痢 不安が発症し、これらの抹消及び中枢自律神経症状は3ヶ月継続した。
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「脊椎変性疾患術後後遺障害に伴うベンゾ系単剤の離脱症状からの回復」
age 25 sex f デパス 
腰椎変性疾患術後後遺障害を呈し、当該科でデパスを処方。5年間服薬。当初は術後後遺障害を呈した腰部痛及び下肢神経障害が全身痛に派生した事から服薬しているデパスを疑い自己判断に伴い一気断薬。
1週間程度は何事もなく、寧ろ全身痛が軽減された事より喜んでいたが、2週間目より全身痛ではなく全身に痺れが生じ始め、主に肩頚部領域は左右が日差変動を伴う強い痺れが出始める 両下腿激痛 不眠 頻尿 不安 仕事をしていても同僚や顧客の言動を全てネガティブに受け止める感覚に陥り3週間程度の休職。
不眠や不安感、頻尿は2ヶ月程度で改善傾向を示すも常に不安定なまま1年経過後、時折フラッシュバックしつつも徐々に波は治まり症状が安定する。

「神経根ブロック及び神経根近位ブロック(コンパートメントブロック)の注入圧に伴う神経損傷(タイムラグ損傷含む)からの回復」※下のケースは回復経緯は書いていませんが、大方2~3ヶ月。
age 65 sex f
右上肢外側~橈骨茎状突起程度まで広範な牽引痛が起床時から伴い整形を受診。X-rayでC6/7に僅かに狭小化が認められた為に、頚椎症性神経根症と告げられ、透視等々は行わずブラインドでc6神経根近辺にブロック注射を行った。施行直後は症状が無痛となるも、約3時間後より以前よりも強い痛みが上腕外側及び前腕全般に伴う他、痺れが生じる 
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age 80 sex f
両大腿外側に歩行も出来ない程の痛みが生じた為、整形を受診。患者本人は受診先の病院で入院を依頼する程の激痛が生じていた中、手術等の対象でも無いと言う事でリリカ、ロキソニンムコスタを処方。
他、詳しくは施行した医者しか分からないので患者からの情報を元に推測でしかないが、両下位腰部に注射を刺入し、下肢に電撃痛の走るブロックを外来で処置(恐らくL4かL5)。約4回前後の受診で両大腿外側の疼痛は軽減したが、その2日後に両下腿全般及び足底に渡り強い絞扼感と痺れ、皮膚感覚鈍麻が生じる
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age 80 sex f
右下腿外側に牽引されるような疼痛を3ヶ月に渡り伴い、整形にて右L5に神経根ブロックを施行後、約3日後に同下腿全般に極めて激しい疼痛と痺れが生じ歩行不能状態に陥る

http://blogs.yahoo.co.jp/anti_white_supremacy/13985098.html
「特発性か薬剤性かは定かでないがALS様症状からの回復例」
age 65 sex f
既往疾患なし(降圧薬は服薬していたが別に飲むほどの血圧でもない)
初期症状は頚椎症性神経根症を思わせる右上肢~手指へ放散する痛み及び手指の脱力が生じた為、整形外科を受診。画像所見上では頚椎下位に僅かな狭窄がある程度で、その器質的異常が上肢症状へ発展する事はないとし、鎮痛剤等の処方のみ。
その後、両下肢の脱力と右上肢の症状が進行した為、改めて頚腰部と脳のMRI、血液検査も異常なし。しかし、症状は進行傾向であった為、神経内科へ受診し、暫く時を経てからALSと診断。私と遭った時はリルテックとマイスリーを処方されていた。患者の依頼では(正確には患者家族)長期臥床に伴う腰痛を治してほしいと言う事だった。「ALSは治らない」と言う観点は誰しも持っているし、常々言うが誤診であってほしいと言う観点で取り組んでいるのも私自身正直なところである。最早此処までくると誤診だろうが何だろうが関係ないのだが。
球麻痺も出始めていた為、これらの症状改善を見越した処置をし続けた結果、幸いにも上肢や下肢症状の進行も止まり、更に加療を続けたところ、痩せた筋力は目覚しい回復は得られていないが、一般概念で進行する諸症状が止まった。これらの状況から再度逆説的に考察した場合、「この患者が診断されたALS」は、「何らかの理由で大脳皮質で生じた神経変性」である事の証明ともなる。
単純に頚部神経及び腰部神経の運動・知覚神経損傷に伴う純粋な末梢神経系の損傷に自律神経症状が加わった複合的疾患をALSと診断(誤診)しただけかもしれないが、この年代の患者が車椅子と長期臥床が強いられる程の末梢神経系損傷が起きる事は考え難く(両下肢は痛みがないまま歩けなくなっていった)、中枢神経系の問題により、このようなALS様症状を呈したと考えるのが自然である。念の為書いておくが、全く進行を止められないALS症例もある為、上記症例とは又異なる起因でALSが発症したとも考える事も出来る。
 
※)忌々しき異所性発火論…
簡単に歴史と説明をすると、現代の「椎間板ヘルニア⇒神経根部圧迫⇒腰と足に痛み痺れ」の基礎になる仮説です。100年程前に生理学者が仮説立て、脊椎外科医が数十年前に威信を掛けて研究し、火のないとこにも煙は立つ異所性発火論としてオーバーグラウンド化しましたが、如何せん理論に脆弱性がある事も数十年前から指摘され、常に論争の対象となっています。
痛覚受容器の存在しない神経根部がヘルニアで圧迫された事で損傷し、貪食細胞の働きの際に下肢痛が出る事をベースとして述べていますが、一般的な知覚神経由来となる下肢痛発症は瞬時且つ持続性を持ちます。貪食細胞の働きを持つ事になる前者を肯定した場合、腰部痛、又は下肢痛発展迄は幾分のタイムラグが生じる事になりますし、数ヶ月も数年も貪食細胞が炎症時に生じた停滞物質を食べ続ける(症状を出し続ける)事は流石に考え難いものです。
後者は瞬時に下肢痛へ発展し、持続する事になり、相当の割合が後者に当て嵌るものと思います。基礎学的検証と臨床学的検証の差異は此処に由来するもので、現在も「椎間板ヘルニアが神経根部圧迫⇒腰下肢痛」の話題が絶えない1つの理由です。但し、改めてとはなりますが、異所性発火論を肯定した場合、以下の数個の質問にも耐えられない脆弱性を持っています。
1)痛覚受容器が無い神経根に対し、柔らかい線維輪や髄核が脱出して触れたところで症状は出ない
2)腰椎に至っては馬尾状に展開する神経群に於いて、脊柱管内でヘルニアが仮にも生じ、圧迫するにも神経の逃げ道は十分確保されている
3)無症候の椎間板ヘルニア持ちは70%を超える
4)貪食細胞が数ヶ月数年と停滞物質を食べ続け、それに伴い下肢痛を発症させ続ける事は考え難い
5)画像所見上、脊椎変性疾患を認識されない状態でも、同様な症状を呈しているヒトは沢山いる
6)異所性発火論及び神経根にヘルニアが触れている=痛い、を肯定すると、日内日差、姿勢変化問わず常に痛いはずだが、多くは日内日差変動があり、姿勢変化により症状の憎悪寛解を示す
7)そもそも論として神経が圧迫されれば痛みではなく、麻痺が生じる等など(故に2)と関連する事になるが、頚椎ヘルニアの場合(主にc5、c6)脊柱管内での逃げ場が少ない為、麻痺症例が散見される)
問題は異所性発火論を否定されてしまうと(又は否定してしまうと)、整形領域疾患の多くの既存病態定義にもメスが入り始める事になり、何としてでも死守しなければならない事情も垣間見れるものです。その為、術後無効例が後を絶えない1つの理由にもなっているものですが、例えば未だに古典的なLOVE法が1番有効改善率が高い理由の1つは全身麻酔を掛ける事によるもの、及び術創が広くなる為、術後ベッド上で安静にしている期間による事であると思われます。
ヘルニアを弄る以前に、全身麻酔で血管平滑筋に存在する交感神経が働かなくなる⇒強い血管拡張が生じる⇒筋弛緩や神経根知覚神経部に存在する後根神経節等の機能回復、神経浮腫の改善⇒全般的な症状改善へと繋がると推測されます。このような話は昔からデータが取られており、「椎間板ヘルニア+下肢痛」を持つ患者を2群に分け、1群は「全身麻酔+ヘルニア切除」、1群は「全身麻酔のみ」とした結果を見たところ、有効改善率は同率であった事からも、上記推測は裏付けられます。
その結果、手術一発で症状が改善する例と言うのは「痛み」までである例が多く、神経萎縮が生じたと推測される「痺れ」等々に至っている場合、手術一発での回復例は低く、コンスタントに栄養供給が求められる手段が有効となるのです。


次回予定…案外拗らせ症例の割り合いとして多いのは、三叉神経が関与している症状群です。「特発性三叉神経痛」的な症例。頭痛・顔面痛・顎関節様症状・歯肉痛・歯痛・口内へ飲食物を放り込んだ時の痛み・目の奥の痛み・鼻の奥の痛み・耳の奥の痛み・副鼻腔炎様症状・光過敏・音過敏etc…。
凡ゆる医科歯科を回り、消去法的に手術や薬物治療、抜歯をしても落ち着かず的な症例は少なくありません。特発性三叉神経痛ガイドライン的なものを見ると、「瞬間的な痛み」とか「長くても数分の持続的な痛み」とされていますが、実際のとこ、そうでもないですよね。朝から晩まで痛い人は三叉神経痛とは言わないのか何なのか。
三叉神経に限らず、神経が濃厚に絡む症状は本当にユニークに患者に症状として教えてくれるものですが、そこに対して定義を創っても、定義から外れた患者は即時的に心因性や精神異常扱いされる今の時代は非常に窮屈に感じます。


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イメージ 1 ~針治療から病態定義の見直しを~