藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

2013年を振り返り


2012年から、患者さんのご厚意、ご協力にて設けられた
秋田県横手市青森県青森市の出張所のお陰もあり、
在宅治療(往診)に抵抗のある方でも気軽に足を運べる事で、
重軽度問わず、様々な症状を持つ方々とお会いする事が出来ました。
他、県外への往診依頼も増え、知らぬ土地での出会いも数多くありました。
 
本院及び往診に関しては、部位別変動制の治療費制度を敷いている事で、
一般的な一律治療費制度とは異なり、極々軽症の患者の相談から治療までありました。
年齢層問わず、寝違えやギックリ腰等の初期症状であったり、オスグッドや野球肩、腱鞘炎の類まで。
 
鍼灸治療は上記の整形外科的疾患等々に関し、他の追従を許さない程の治療効果を示すのですが、
鍼灸治療を選択するに至るまでは、鍼灸治療を避けるかの如く様々な病院や治療院を巡り、
最後の最後で選択される方が多い故、発症からの時期が相当経過していると同時に拗れている場合も多く、
結果的に治療回数は増え、治癒までの期間が長期間に及ぶ方々が圧倒的多数を占めてきます。

鍼灸治療は非常に歴史のある治療法で、今では世界各国で鍼灸治療の研究が行われ、
各地で大きな成果を上げています。世界から見た日本の鍼灸は取り残されているのではないかと思う位、
諸外国の鍼灸治療は進んでいます。日本の医療保険制度の問題も孕んでいるかもしれませんが。
 
但し、感覚的要素が強く、1人1派と言われる鍼灸治療の世界では、
良い意味で機械的にマニュアル化された術式が存在せず、
且つ術者の思想が色濃く滲む治療法である為に、
治療の効果、再現性、確実性が左右されてきます。
 
私自身は誰でもコピー可能な治療理論を日々構築しております。
誰でも同じ結果を出し続ける理論を持つ事が出来れば、
鍼灸治療のスタンダード化も実現化、具現化し、
不透明な部分や不安も払拭される事で、
治療院へ足も運びやすくなることでしょう。
 
但し、私自身の治療理論も常にトライアル&エラーで構築されてきた節はあり、
未だに100%の治療だとは夢にも思っていません。
且つ、患者依存型の治療理論の為に、患者の理解や協力があって初めて治療効果が加速していきます。
この事で、理論との整合化やバランスが取れ、治癒までの予測が簡便になってきます。

上述の通り、鍼灸治療は薬物治療(鎮痛剤の類)と異なり、
患者協力があり、初めて症状改善の自覚を得ます。
軽症であれば然程患者自身の努力は必要ないのですが、
症状が重ければ重い程、患者自身の努力も必要になってきます。
 
要は、拗れれば拗れる程、治癒までの過程も面倒臭くなってきます。
億劫な気持ちになりたくなければ、予防知識を備える事と早期治療が大切なのです。
 
治療は気づきを得て頂きながら、
回復の阻害因子、悪化因子を回避し、治療回数を重ね、治癒までを追い求めていく事になります。
治り方にも段階があり、症状によっては段階を踏む度に逆に痛みや痺れを生じたり、
思わぬ箇所に痛みや痺れを生じたりもします。
 
鍼灸治療の回復過程に於いては、現症状を逆方向に歩みます。
その為に、過去の痛みが再現されるかの如く、
治療期間中は痛みが飛んで歩くような感覚にも苛まれるでしょう。
この部分を理解し、納得して頂かなければ治療脱落の原因にもなりますし、
治療脱落故、中途半端な痛みを引きずってしまう結果ともなりかねません。
 
2年と1ヶ月経過した中での反省点として、上述した治癒過程に於ける理解と納得という点が、
患者に対してどれだけ納得して頂く事が出来たか不明瞭であり、
今後の課題であると考えております。
 
都心と地方では患者層も異なれば年齢層も異なります。
当院は20~50代の患者層が占めており、高齢化が進む地方部に於いての実費での治療院としては、
比較的若い方々が来院されているかもしれません。
但し、高齢層患者に対して治癒過程に於ける理解を得ながら治療を進めていく為には
私自身の至らぬ点もあり、説明の仕方に関して幾度と無く失敗はありました。
 
納得してもらなかった一つの理由として、
現代医療の対処療法と鍼灸治療による治癒過程を
混同されるケースが多かったのかもしれませんでした。
極端に言えば、座薬を刺せば痛みが消える(治る)という理論を、多くの患者は持っていました。
その為に、痛い所に鍼を刺せば痛みが消えると自己解釈されている方も多く見受けられました。
 
湿布薬を貼る理由も、座薬を毎日入れる理由も、
解熱鎮痛剤を過剰服用する理由も、痛みを止めたいが故の行動かと思われます。
しかし、これらの対処療法の数々は、鍼灸治療の効果と逆行してしまう事を
どうしても納得してもらえず、対応する事が出来なかったケースもありました。
 
「痛くない=治癒」の図式が頭に擦り込まれている以上、鍼灸以上に即効性のある薬は沢山あり、
手を伸ばしたくなります。鍼灸治療を受けるよりでしたら、薬を飲むほうが100倍気軽ですからね。
但し、「痛みが消えた=治癒」という図式は、薬物治療を取り込んで為しえたとしても、
間違いである事を今後も幅広く納得してもらえるように努めていかなければならないと考えております。
 
痛みはQOLを急激に低下させます。
時として、痛みにフィルターを掛ける薬を飲まなければ仕事も生活もままならない時はあるでしょう。
しかし、多くの方々に、それは治癒ではない事を今一度知って頂かなければなりません。

他、鍼灸治療が初めてという方々にも多く巡り合う事が出来ました。
都心部で治療を行っていた時は、周辺には鍼灸治療院も他の代替療法の機関も沢山ありました。
都心部での来院患者の多くは、既に鍼灸治療を何処かで受療された経験があり、
当院の治療内容に関して多くの賛同を得る事が出来たのは、
玄人向けの治療内容であったからだと思われます。
 
一般の方は分からないかもしれませんが、世間にはアチコチの治療院を周り続け、
治療内容や効果を吟味している「プロ患者」と言われる患者層が存在します。
 
特に都心部に関しては、プロ患者や同業者の探りも多く、
このような患者層にグウの音も出ないような結果を出し続け、群を突き放していく必要性があります。
では、このような治療内容を鍼灸治療が初めての方に施すとどうなるかというと、驚く方も多いものです。
但し、私はあくまで治療内容よりも早期治癒を重視していますので、
治療内容に関しては大きく軸を変える事はないと思います。
 
治療院も競争社会です。ダラダラやっても何とかなったのは戦後間もない時代までだったでしょう。
未だに地方部の整形外科はダラダラやっても患者もダラダラと流れ込んでいるようで理解に苦しみます。
今に始まった事ではないですが、NSAIDsの処方は真綿で首を絞めていくようなものです。
殊更、今は中枢神経へ作用する薬も多く出され、真綿も鎖に変化していくのではないかと考えております。

今年7月には青森県五所川原市にタタミ4畳分の野立て看板を立てました。
ご覧になられた方は分かるかと思いますが、鍼灸院という文字は小さく、住所も入っておりません。
私の名前がボテッと書かれた看板になっています。来院を誘導する看板ではありませんが、
気になった方が検索して頂き、当ブログを読んで貰い、色々な事を考えてもらえればそれで良いと思ってます。
そもそも、このブログを読んで「鍼灸院に行こうか」なんて思う人がどれ位いるか分かりませんが、
いつか分かってくれる日がくれば良いです。それが数年先の話であったとしても。
 
当ブログの軸となっている内容というのが、
知識や情報を得る事で、被害を回避する事が出来る、
若しくは被害を最小限に抑える事が出来るという内容が軸になっています。
予防知識を有していれば、コストも掛けずに自己解決する事も出来ますし、
要らぬ薬に手を出す事もなくなります。
 
先程も書いた通り、鍼灸治療を受療される患者層は重症度が飛躍的に高くなってきます。
但し、鍼灸治療が有効となる疾患の多くは、自然治癒する症状が数多く占めているのも現実です。
それでも尚、自然治癒する余地が無くなってしまったのか、問題はここに集約されてきます。
 
整形外科に於ける器質的異常と発痛要因とのボタンの掛け違いもあるでしょう。
ボタンを掛け違えると、手術や投薬、保存療法は全て無駄に終わります。
精神科に於ける根拠無き診断、且つ依存性と離脱症状の認知度の低さ、
処方時の患者への説明不足、及び薬で治ると過去から今に掛けて喧伝し続けた割には、
患者は増える一方、増やす一方という精神医学の矛盾点や問題点もあるでしょう。
 
「副作用や依存性も無く安全です」とは医師の弁ですが、これを厚労省に問いかければ、
「副作用や依存性が無い薬なんてありません」となります。
意外と厚労省や製薬会社は正直に教えてくれるものです。
 
このように、長期に渡り多くのボタンを掛け違え続ければ、
多くの掛け違えたボタンを外し、掛け直さなければならなくなります。
それは、患者の身体面も然る事ながら、思考面に関しても同様な事が言えると思います。

当院は盆暮れ関係無く治療を行っておりますので、来年の目標という言い方も変な話かもしれませんが、
2014年に関しては、理解と納得を得られる説明を行えるよう心掛けていこうと思います。
 
知り合いの整骨院がボヤいてましたが、「肩もんでくれ~もんでくれ~」と言う患者に対して、
肩を揉んでもらいたい理由を問い質したところ、患者に激怒されたようです。
肩が凝る理由もロクに教えてもらえなければ術者側は何も出来なくなるのです。
癒しと治療の境界線はこの辺りになってきます。
 
このような患者の思考を変革させる為にも、そして何で「肩もんでくれ」と至ったのか、
多くの情報を引き出しやすくする工夫も必要になってくるでしょう。
当院に於いても、上記の整骨院のようなやり取りの事例は例外ではありません。
恐らく術者だったら1度や2度、若しくはそれ以上の回数を経験していると思います。
 
「揉んでもらいたいんだったら近所のラ○ィネにでも行け」とは心の中で思うのですが、
何かしかの理由があっての来院だとは思いますので、無碍に扱う訳にもいきません。
その肩には重篤な病が潜んでいる可能性もありますし、揉んで悪化する肩なら教えなければなりません。
 
患者と術者の関係、痛みの相互理解、痛みの成立機序による治癒過程の変異、
様々な要素から派生している症状に対して、お互いが納得して治療を行えるような関係性を
保てる治療院にしていかなければならないと考えております。
 
「肩もんでくれー」と気軽に来て貰える低い敷居は賛成ですが、
これでは治るものも治らない患者が出てきますからね。されど肩凝りです。
 
となると、最終的に行き着くところは術者側の人間性という問題になるのでしょうか。
月並みな答えとなりましたが、治療を行うには患者からの情報が大切になってきます。
技術の研鑽は当たり前の事ですが、
一つでも多くの情報を頂ける術者になるべく、来年は取り組んでいきたいと思います。
治療院は休み無く開いてますが、今年のブログ更新はこれが最後です。では、良いお年を。

 
                      

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  ~針治療から病態定義の見直しを~