藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

針治療の不確定要素惹起の傾向及び追求と検討の前に


                      ※電話に出ない日があります【お知らせ】10月15~17日【ですよ】
物事は悪めに捉えたほうが良いというのは私の持論である。だから疑うべきは疑い、患者が府に落ちないのであれば全身隈無く精査してもらったほうがお互い治療は進み易い。それは針治療時も同様で、治療後に一時的にも引き起こされる忌々しい症状は、好転反応やメンゲンという表現を用いて良いものかと常に悩みのタネである。既に市民権を得たこれらの言葉はプラスに作用する場面もあるかもしれないが、個人的にはあまり好きではない。それは副作用でありリバウンドに過ぎないからだ。私達の業界は東洋医学という言葉で患者を煙に巻き、良い事ばかりを書き過ぎではないのだろうか。
 
今回は簡単に概要を述べ、徐々に具体性を上げていきたいと思う。私は散々薬物の副作用を書いてきたが、針治療の副作用に関しても厳しく書いていきたい。多くの患者は未だ針治療という行為自体を知らない。知っていたとしても術者によって治療時の思考性はバラバラであるからますます迷走する。しかし、身体に針を刺す事で起こりうる反応というのは、どのような思考性を持った術者であれど変わらない。
 
如何なる治療手段でも、否、治療というカテゴリ以外に関しても、作用を求めれば反作用も付き纏う事は過去から述べてきた。それは針治療でも同様で、強い作用を求めれば反作用のリスクも増加していくのは変わらない。
分かり易い例を挙げれば、「弱い作用を持つ薬は副作用も弱い」、「強い作用を持つ薬は副作用も強い」と書けば分かるだろうか。副作用のリスクのない如何なる治療手段は作用もない。それは最早治療でも何でもなく、プラシボか癒しとでも言い、小麦粉を丸めた物でも飲ませておけば良く、寧ろ、そっちのほうが安全で効果が高いかもしれない。薬に関しては、代謝酵素の問題や多くの内臓器官に於いて、代謝時に負荷を掛け続ける為に不確定要素は高く、何が起きるか分からないと言い切ってしまっても良いものかもしれない。このような書き方をすれば揚げ足を取るような見受けられ方をするかもしれないが、事実なのだから仕方ない。その反面、針治療に関しては薬のような代謝過程が生じない為、内臓器官への負担が無い。あくまで、基礎身体状態を基盤とした、患者自身が有する生理的現象を利用し治癒に運ぶ事が出来る。昔の人は上手い事を言ったもので、自然治療という言葉が該当するであろうか。
 
幸い、人間には自然治癒する機構は備わっているものの、重篤化した症状の場合、自然に治るには無理だろうと素人目でも判断出来る方々というのは多く存在する。痛みが強すぎて歩けない状態に陥っている状態や、背筋を伸ばせば腰下肢に激痛が走る為に、常時股関節の屈曲を強いられ、気づいたら腰曲がりになっていたとかが良い例ではないだろうか。術者は経験を重ねれば現場を通して分かるものかもしれないが、重篤化した症状ほど副作用が高まるリスクがある事を大々的に公表する事はない。運動器系の症状も重症化が極まれば、現症状が辛すぎて針治療の痛みなど無痛かもしれないし、高齢になれば痛覚受容器の減少下に伴い無痛かもしれないが、治療後のリバウンド的現象の自覚は、重篤化した患者であれば自覚し易いのは変わらない。リスクの詳細な提示はアドヒアランスが悪化する事を知っているからであり、更に、「鍼灸治療=副作用がない」という長年構築してきたファンタジーが破壊されるのを恐れているからである。まして、現代医学では治らないから東洋医学に来たとかと言う話もよく聞くが、それは違う。それ以前の問題として、治りたいのか否かを問い、その答えを導くには医学的なカテゴリは撤廃した上で治療に挑む必要がある。
 
仮に鍼灸治療時に於ける思考性が東洋医学的観点であれど現代医学的観点であれど、患者の体内に針を刺入すれば生じる反応は同一であり、更に細分化すれば、刺入箇所、刺入深度、刺入本数、刺入時の手技、患者の心理状態、治療時の基礎身体状態、発症時期、症状の度合い、年齢、基礎疾患、服薬内容等々により異なり、更に書けば、リバウンドという忌々しい症状が生じた際の患者の心理状態、患者周囲の情報伝達内容により、治療期間が左右されると同時に、薬物治療という手段に慣れてしまった治療思考の場合、治療ベッドに寝ていれば、後は好き勝手な行動を取っても治るという概念がある場合、更なる治癒遅延は察しがつく。
 
他、副作用というカテゴリに入れるかは別かもしれないが、多くの患者は基礎疾患(?)を抱え薬物を飲んでいるという現状も忘れてはならない。最も多い例は、中高年齢層の降圧剤ではないだろうか。大半は原因不明の本態性高血圧と、言われるがまま降圧剤を服薬しており、幾ら減塩と運動を勧められたところで良くならないのは私以上に患者が熟知していると思う。私は本態性高血圧の原因は肩頸部の持続的な筋緊張下に苛まれた結果、各種脈管系の絞扼から派生した血流の不安定供給より発症していると考えている。他、湿布好き、解熱鎮痛剤好きが次点として最も多いと思うが書けば長くなるので割愛する。勿論、それに伴う基礎身体状態の脆弱性により披露やストレスに暴露されれば更なる昇圧に直結するとも思う。それを証拠に、これらの患者に対して別件であれど肩頸部に処置を行い続けると、皆一様に降圧作用が中長期的に生じ、適正値に落ち着く為、降圧薬が必要なくなる。では、このような状況で私の伝達を聞かず、血圧も日々計らずに薬を飲み続けたらどうなるだろうか。針と薬で必要以上に降圧作用が伴い、血圧の標準値がどうであれ、患者にとっては低血圧状態を呈してしまう。高血圧を主訴に針治療院に来る患者なんていないのだから、これらは聞き出さなければ教えてもらえない事であり、結果的に針治療で具合が悪くなったと捉えられてしまう。そのような中、「薬は飲まなければならないもの」という強迫観念が患者の根底にあればどうなるだろうか。
 
後は、時折糖質制限の話しをする場合もあるが、既にインスリンを打っている患者が糖質制限をしたらどうなるだろうか。必要以上に血糖値は落ち、低血糖状態になる。他にも、糖尿病を起因としていなくても、心疾患や脳血管疾患を患った際、再発予防として処方される薬でも、糖質制限をすると低血糖になるのが幾つかある。そのような様々な背景を持つ患者がいるという事を私達は知り、針を打つという行為以前の問題として、針を打つ事でどうなるか、食事を変える事でどうなるかという事を、患者の理解と共に進めていかなければならない。
 
患者には「治る」という意味や、今現在「治る」と思って取り込んでいる種々薬物治療の作用と現症状とのマッチング、日常生活時に於ける「回復に向けて」という意味を履き違えないように理解してもらうべく励んでいるところではある。それを簡単に示したのが【針治療を受けられる方々へ】【適応症・諸注意】に示した内容であるし、現場でも更に別紙を渡している。内容はとても当たり前の事なのであるが、やはりこれも前述した通り、痛いから湿布を貼り、痛いから鎮痛剤を飲む事で「治る」という事を先行的概念に有している場合、難化する。仮に鎮痛作用を得られたという満足感の裏側では、鎮痛作用を得る為の計り知れない負の代償が巻き起こっている。
 
薬物による鎮痛という作用が生じる裏で起きている身体内部で発生している生理的現象を患者に伝達した先生方も多くいると思うが、現実問題如何であろうか。そんなに状況は変わっていないと思う。貼るなと言っても貼っているだろうし、飲むなと言っても飲んでいるのは何処の地域でも同じである。良くも悪くも寛容になった今、私は無理強いはしなくなった。この手の話しは散々書いてきたし、単に患者がマイナスポイントを蓄積しているだけに過ぎないのだから、術者側が痛手を負う事はない。来年から湿布が保険外適応になりそうなので、1人でも多くの患者が患者自身で鎮痛剤の原理を調べれば、治らない理由も分かるであろう。

私自身、気づくのが遅かったかもしれないが、身体に負荷の掛かり、且つ治療に繋がらない行為、所謂対処療法(鎮痛薬や向精神薬等々)を発信するのは無駄であった(頂くメールや検索ワード、アクセス記事数等を見れば、常に薬害問題の記事がトップなので実際には無駄ではなかったのかもしれないが)。
 
医療選択に強制的要素は無いのだから、どれだけ薬漬けだろうと添加物塗れの食べ物を食べていようと、その患者が何歳であれど言う事を聞かない患者は聞かないのだから、これらの患者に対して発信したところで変化を来す事はない。そもそも分かっている患者は分かっており、幾ら医者に出されようとも初めから飲まないし食べない。そして、分かっている患者が他者に発信したところで変わらない事もこちらは分かっている。例を挙げれば講演会とかがそうだ。講演会に集まる人の大半は既に演者が誰であるか知っており、どのような思考性を持っているか、どのような内容を発表するかも知っている上で足を運ぶ。
 
その内容がマイノリティかマジョリティかは然程関係なく、結果的に人間の個々の意識下に変化を来さなければ外野から言われたって煩いだけなのだ。もしかしたら訴え続ける事にも意義はあるのかもしれない。訴え続けた事で様々なコンタクトが取れ、情報は入るようになった。幸い、追い風になりつつある今、情報を発信する人は増えてきたし、何より、実際に向精神薬や鎮痛薬の被害にあった当事者(患者)がインターネットなどを通じて多く発信されている現状を鑑みれば、然程、私が熱を上げて取り組み続けるべきでもないような気がした。
 
勿論、これらの患者群の早期脱出の期待に応えられるよう検証や研鑽は日々行い続けているつもりだが、幾ら「危険性」という部分に対してフォーカスを当てた内容を発信したところで、現在好き好んで薬漬けになっている患者自身の意識が変わらない限り変わらないという事もようやく分かった。不誠実と言われればそれまでかもしれないが、ただ単に、当該被害患者の発信内容こそが説得力があり深い事に変わりない。

そのような事もあり、最近は針治療による不確定要素の惹起傾向及び追求と検討が日課になっている。私も折角なので一般的に提示されている副作用はどのようなものか調べてみたところ、http://www.skincare-univ.com/article/006074/には、「刺入時の痛み、針を抜いた後の痛みやかゆみ、針の痕が残る、微量の出血、皮下出血、めまい、ふらつき、疲労感、倦怠感、眠気、吐き気など」と書かれている。実際に治療を受けた人であれば経験すると思うが、刺入時の痛みに関しては、針を刺すという行為である以上、全く無痛という人もいるが、大なり小なり痛みは感じるものである。抜いた後の痛みやかゆみに関しても炎症メディエーター(主にプロスタグランディンやブラジキニンヒスタミン)の働きによるものである。
 
その為、下記にも記載しているが、NSAIDs等の薬物(湿布含む)及びステロイド等の抗炎症作用の薬物を使用している場合、リバウンドは軽微に済む。但し、針治療の作用を相殺するという現象も生じる。血管拡張にはこれらも関わるからである。出血は細心の注意を払っていても、時に微細な血管は損傷するし、それに伴う皮下出血も生じる。めまいやふらつき以後は針治療に伴う血管拡張作用によって生じた一過性の降圧作用や自律神経症状の急激な高低によるものであろう。
 
そして、これらは健康と言われる人に針を刺したとしても生じる事であり、本質はそこから先なのである。当たり前だが、針治療の来院患者というのは、何か症状を抱えていなければ来る場所ではない。先ほどの副作用がベースとなり、更にそこを増幅する、若しくは軽微にする、若しくは全く異なる副作用を発する事になってる。それが以前も僅かにまとめたように、副作用(リバウンド)の惹起傾向患者というのは、暴露期間が長い患者、上下肢問わず神経障害症状を持つ患者 、自律神経症状を持つ中高齢患者、症状発症が間もなくとも、高齢層の患者、向精神薬で過鎮静状態が形成されている患者、向精神薬で減薬及び断薬間もなく、離脱症状を日常的に自覚している患者、長期間コルチゾール分泌が多いと推定される患者、糖質及びコレステロール摂取が多いと推定される患者が主になり、リバウンドが生じる可能性が低い、及び軽微に済む患者群として、栄養摂取状態が健全な若年層の筋骨格系疾患、暴露期間が短い患者、突発的に筋骨格系症状を惹起した患者、自律神経症状を持つ若年層患者、NSAIDs等の薬物(湿布含む)及びステロイド等の抗炎症作用の薬物を使用している患者になる。前にも書いた内容ではあるが、現場を通して見た場合、
 
A)age 50 sex f
3年前、肩に激痛が伴い右上肢挙上不能となる。近場の整形でレントゲン、MRIで異常無し。五十肩と言われ、鎮痛剤と湿布が処方される。1年間の患者自身のリハビリの結果か、90度程度迄外転可となる。その後、鳩尾~右頸部前面へ掛けての痛みと、上腕外側及び内側~前腕外側中部までに痛みが出るようになる。肩関節の可動域も依然変わらず。三角筋中部及び、肩鎖関節周囲に動作時痛、安静時痛、夜間痛あり。
内蔵疾患なし。精査済み。
 
B)age70 sex f
主訴 左右腰背部痛 左右下肢後面痛 左右膝部内側痛
既往 糖尿 脂質異常 高血圧 難聴 頻尿 下痢 睡眠障害
5~6年前より腰部、膝部夜間痛あり。起床時激痛。日中夜間はVAS10⇒7程度まで改善。10m程度の歩行で両臀部後面~大腿後面~下腿後面及び側面に痺れと痛みが出て歩行不能となるも、前屈及び座位姿位を1min保持で改善。仰臥位及び腹臥位にて、右大腿後面~右下腿後面に引き攣れが生じる為、横臥位のみ。x-rayにてL4/5に若干の狭窄があるが、手術する迄もないとA整形で言われる。両膝部に顕著なOAが見られ、僅かな段差も上がれない。膝部内側とは言え、関節部ではなく鵞足部に著名な疼痛。同整形で人工関節の置換術を提案されている。過去、腰部に各種ブロック、膝部にヒアルロン酸ステロイドを受けるも著効せず受診。

C)age18 sex m
主訴 大腿二頭筋短頭第2度筋断裂
2週間程前、サッカーの練習中に相手と上半身を接触。当該部位との直接的な接触はないが、接触直後より大腿後面の痛みに伴い転倒。その後、コールドスプレーで疼痛が緩和された為、練習再開。数日間、強い痛みは伴っていたが歩行は可能だった為に気にしていなかったが、大腿後面の内出血を第三者に指摘され整形外科を受診。第二度筋断裂と診断。その後、テーピングを捲くよう指示を出され、更に数日後、低周波やホットパック等の物療を受けるも、練習再開が出来る程の回復が見えてこず、他に方法はないかと受診。

D)age15 sex m
主訴 右第2趾中足骨脱臼骨折後に生じたモートン病及び後脛骨神経炎を示唆する症状
約6ヶ月前、野球の練習中にスパイクで踏まれ、第2趾中足骨脱臼骨折。ギプス固定。骨癒着確認後、練習再開。若干の外方転移が第2趾中足骨に認められる。数週間後、第2趾、第3趾と下腿内側中部(患者が示す部位は内果から腓腹筋内側頭に掛けて)に痺れ。モートン病及び後脛骨神経炎を示唆するTinel兆候。
 
E)age 60 sex f
主訴 肩こり
発症時期不明。僧帽筋上部繊維周辺に強い症状を自覚。業務時間の経時変化により、締め付けられるような痛み、及び冷様感が肩背部広範に自覚、両側頭部の頭痛、吐き気、めまい、両前胸部から手指に掛けての痺れ。小休憩時の姿位変化にて僅かに改善。湿布が手放せなかったが、光線過敏症を友人に教えてもらってから、怖くて湿布が貼れなくなり、他に手段はないかと受診。肩関節ROM制限なし。
 
F)age 30 sex m
主訴 アクセレーション期に痛む右肘痛
既往 右棘上筋腱部分断裂
現役引退後も社会人野球に所属していたが、数年前より投球回数に比例し肘の内側が痛むようになる。医師からは野球肘と言われ、ステロイド注射を数回受ける。他、湿布と鎮痛剤を処方されているが、効果を自覚出来ない為に受診。部分断裂箇所に今は痛みなし。右肩甲上腕関節前方下方転移が認められる。要はルーズ。神経障害、肩関節ROM制限なし。
 
G)age 60 sex m
主訴 右下腿裏の痛み
3年程前より長期座位姿勢からの歩行開始時より右下腿裏全般が痛むようになる。整形でMRI撮影をした結果、L5/1の椎間板ヘルニア(後方脱出)が認められるものの、異常箇所と発症箇所の整合性が取れないという事で、観血的治療及び保存療法は見送り。様子見となる。
 
A)であれば初診⇒48時間 2診⇒48時間 3診⇒24時間 4診⇒0 。B)であれば、初診⇒48時間 2診⇒24時間 3診⇒治療後15時間 4診⇒治療後2~3時間 5診⇒治療後1~2時間となり、リバウンドの度合いや日数を照らし合わせて見ると、A)B)E)G)>F)>C)>D)になる。上記説明と再度照らし合わせれば何となく分かると思う。但し、時にはリバウンド発生にはタイムラグが生じる場合もある。例えば頚椎や腰椎の神経根周囲由来の神経症状を呈している場合に多く見られる。多方は1週間もすれば消失するものなのだが、理解が無ければ単に悪化したとしか捉えられない。その為に、早期回復を見込みながら治療を継続する為には患者の理解が無ければならないのである。特に神経由来症状の場合注意が必要であるし、陳旧例に至っては、単なる筋由来症状のように見受けられる症状群に関しても、神経由来の混在型が大半となってくる為、全ての患者に知っておいてもらって損はない事である。そもそも、鍼灸治療院に来る患者は相当年季の入った症状を抱える群が多いのだ。今後はこれらの症状群とリバウンド傾向を更に検討していこうと思う。

他、以前も記述した事があるが、針治療を行う事によっての作用というのは根本的に弛緩である。針治療の作用というのは、原則的に筋実質への刺入であり、血管実質や神経実質へ刺入しても効果はない。硬化した筋細胞への刺入により弛緩した結果、内部走行、及び直下を走行する神経や血管等の疎通が開始され、刺入箇所の弛緩、及び疎通の促進による誘導が生じ、症状の軽減を見込んでいく事になるのだが、やはりここでも副作用的症状というのは患者は自覚する事になる。硬化した筋細胞は外的刺激に対して鈍麻傾向を示すが、弛緩により神経や血管の疎通が改善される事で、外的刺激に対して過敏傾向を示す患者もいる。
 
その頃には、治療後のリバウンドというのも軽微になるかもしれないが、治療時の疼痛自覚は強まる(痛覚閾値低下)。これらも事前に伝えておく必要がある。更に以前の問題として、針治療に対して不安感や恐怖感を抱いている場合や、向精神薬の服薬による反応で、日常的にも顕著に不安感が増幅されている場合も、外的刺激の反応には過敏傾向を示す。先端恐怖症のような特異的な表現をする場合もある。
 
この段階では、私は既に針は使わず、超音波のみの照射で対峙しつつ、不安感という症状が改善してきた段階で針治療に切り替えている。【向精神薬被害患者との対峙】や【腰椎変性疾患(器質的異常の有無問わぬ腰神経叢由来下肢症状含む)患者との対峙1】【~2】でも触れているが、常用量離脱や減~断薬間もない患者は全ての外的刺激が即座に交感神経亢進から離脱症状憎悪を示し、頸部にプローブを当てただけでも2~3日もの間、睡眠障害を起こす程にデリケートなのだ。そのような状態の患者に針を打つことは出来ない。そして、向精神薬の被害というのは甚大であり、回復には相応の時間が掛かる。上リンクでも触れてはいるが、患者自身が薬物反応により陥っている現状態を受容出来ぬ限り、何をやっても無駄になる。仮に針治療という手段を用いたとしても、薬物反応である事を受容せぬ限り、針治療の意義がなくなり、双方が疲弊するだけだ。
 
ある程度の反応はまとめているから改めて掲載する。明確な所見を呈するジストニアやジスキネジア、パーキンソン様症状、明白な過鎮静等は副作用や離脱症状群という括りになってはいるが、脳の伝達物質の分泌不全で生じた症状というものは、以下記載以外にも何が起きるか分からない。機能的症状としては対称性である事が挙げられ、症状発症部位は両手指、両足趾、両前腕、両下腿、両上肢、両下肢、両肩頚等が左右差なく呈している場合、他、整形領域様症状である神経根症状や頚椎症性脊髄症が疑われる症状、日内変動や日差変動の著しい(固定している場合もある)各種自律神経症状、且つ、如何なる理由でも向精神薬の服薬がある(あった)場合は複数回の治療で判定する必要がある。
 
一見、多発性筋炎、多発性硬化症、関節リウマチ、シェーグレン、ギランバレー等の自己免疫疾患と類似してくる諸症状を呈する場合や認知症様症状、ALS様症状、パーキンソン様症状、他、多くの脳疾患由来と推定とされる症状を呈する場合も見られる為、医療機関を未受療の場合は、精査依頼をする必要もある。だが、多くの患者群は既に各種検査が済み、異常がない故に、線維筋痛症慢性疲労症候群、薬物由来であると否定されてしまったむずむず脚症候群、複合性局所疼痛症候群等と診断されているケースも目立つ。過去にも書いた通り、日常的にも起こりうる症状が圧倒的に占めてくる他、一見、自己免疫疾患を疑う諸症状も多く、患者は常にたらい回しにされる現状がある。仮に向精神薬や中枢神経に反応を及ぼす鎮痛剤等を飲みながら以下の症状が出ているようであれば、先ずは自身に付けられた無価値な診断名に踊らされているよりも、薬を疑ったほうが良い。しかし、これらの薬は急には止められない。服薬期間や力価にもよるが、患者に知識が無ければ地獄行きの禁断症状の切符を渡されるだけになるからだ。※下記症状と類似性があるからと、急激な減薬~断薬は命を脅かす状況にもなる為、絶対に急激な減薬~断薬はしないほうが賢明である事を追記しておく。 
 
~精神症状及び身体症状~
 
易興奮性(イライラ・落ち着かない)、不眠、悪夢、睡眠障害、不安の増大、パニック発作、広場恐怖、社会恐怖、知覚変容(痛覚過敏等)、離人感、非現実感、幻覚、錯覚、抑うつ、脅迫観念、妄想的思考、激怒、攻撃性、易刺激性、記憶力、集中力の低下、侵入的記憶、渇望、痛み・筋肉の凝り(四肢、背中、頸、歯、顎)、ピリピリする感覚、痺れ、感覚の変容(四肢、顔、胴体)、脱力(下肢に力が入らない等)、疲労感、インフルエンザ様症状、筋肉がピクピクする、ミオクローヌス、チック、電気ショック様感覚、震え、めまい、朦朧感、バランス失調、霧視(ぼやけて見える、目がかすむ)、複視(二重に見える)、眼痛、ドライアイ、耳鳴り、過敏性(光、音、触覚、味覚、嗅覚)、消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、腹部膨満感、嚥下)、体重の変化、口渇、金属様味覚、嗅覚異常、潮紅、発汗、動悸、過呼吸、排尿障害、月経異常、皮膚発疹、かゆみ、ひきつけ
 
~臨床現場で高頻度で見受けられる症状~
 
「顔面や背部が重い」「頸部や背部に雑巾を絞るような痛み、抓られるような痛み」 「背部が引き下げられる感覚になる」「顔面が詰まる感覚になる」「微熱の持続」「涙が出る(もしくは涙が出そうになる感覚が持続する)」「頭痛(側頭部~頭頂部~後頭部)」「耳鳴り(耳閉感も含む)」「飛蚊症」「ドライアイ様症状」「強い不安感」「強い孤独感」「両鼻共、空気は通るのに鼻が詰まった感覚がする(副鼻腔炎様症状)」「粘膜出血」「体内(もしくは頭部)に熱がこもる感覚」「目を常に押し付けられている感覚がする」「顔面や背部が硬直するような感覚になる」「異常発汗」「口が苦くなる(金属臭や味覚障害的症状も含む)」「血圧の異常上昇」「下肢が重い」「下肢が落ち着かない」「背中を押される、若しくは引っ張られる感覚」「手指・足趾の強張り」「アロディ二ア」「動悸」「睡眠障害」 「生理痛」「胃腸障害(腹痛・便秘・下痢・便秘と下痢を繰り返す)」「過食」「食欲不振」「集中力低下」「思考低下」
 
私たちは針師であるものの、患者は「針を打たれたい」という心理で来ているのではなく、「今の症状を何とかしたい」という心理で来ているのであるから、嫌なら無理に針を刺す必要はないと考えているし、私自身も以前から書いている通り、治る意味を履き違えずに治るのであれば、針で無くても良いのである。針を使う理由は、単に高効率、高作用且つ、骨間を関係なくアプローチ出来るから、理屈通りの治療が出来るだけに過ぎない。よく針は難しいという話しを聞くのだが、当該患部に処置する際に深達性を望む場合、針治療以上に簡便な手段はない。

※10月22日追記
 
野方での勉強会に参加して頂いた皆様、朝早くから有難う御座いました。拙い内容で失礼しました。今だから書きますが、「勉強会の参加費用は幾ら?」と何件か頂いてました。端から参加費用や肩書きを羅列してメールをされた方に関しては、「1億円掛かるから参加しないほうが良い」と答えていました。実際は、勉強会は無料で全て持ち出しで開催したものです。皆、迷いながら臨床に挑む日々である事には変わらない以上、そして私も悩み続ける日々であり、治療に満足という日が訪れる事は絶対にない以上、金を取るつもりは初っ端からありませんでした。参加頂いた皆様、何処かに迷いが生じた時、勉強会の内容を追試してみるのも良いと思います。
 
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  ~針治療から病態定義の見直しを~