藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

鍼先から得られる情報

イメージ 1 例えば、陰部神経を殿筋から刺入する場合を例にとってみると、皮膚や真皮を破った後は、厚い脂肪を過ぎ、硬い仙結節靭帯、梨状筋を貫き、陰部神経へと10センチ前後の鍼を進めていく事になります。
 
 その間、上記にも記した通り、幾枚にも及ぶ障害を乗り越えて、鍼先を進めなければなりません。人によっては、仙骨が広い人もいる為、仙結節靭帯と間違えて、グイグイと鍼先を進めようとするも進まない場合もありますし、仙結節靭帯の硬さを仙骨と間違えて、打ち直しするも、結局は仙結節靭帯だというオチもあります。
 
 そこで必要になるのは、先ずは、刺し手が感じる鍼先の感覚を鋭敏にしておく必要があります。この陰部神経刺鍼に限らずなのですが、鍼を打つときは、切皮をきっかけに、目標部位まで進む際、表皮の終わり、真皮の始まり、真皮の終わり、筋膜の始まり、筋肉の中、筋膜の終わり等々を感じながら鍼先を進めていかなければなりません。
 
 骨格も神経も血管の走行も、教科書通りではない為、こればかりは場数を踏まなければならない事もあるでしょうし、過去に手術等をして、走行が通常の位置とは異なっている可能性も考えられます。様々な情報を得つつの刺鍼が必要とはなってきます。
  
 では、どのように刺し手の訓練を行うかというと、実はそんなに難しい事はないと思うのです。
常に臨床の場で、同じ番手の鍼を使い続ける事により、自然に感じ取れるようになってくるはずです。
今でこそ、10種類位の鍼を使い分けてはいますけど、鍼を打ち始めた当時は、近所のたにぐち書店で売られていたセイリンの寸6の1番のみ購入し、2年位使用していました。
 
 そして、周りの人間を生け贄にしての日々でだったのですが、1番の鍼の場合、少し硬い箇所等は入らないんですね。だから、少しずつ送り込みを行うのですが、その時に様々な感覚を養えたのではないかなと思っています。足三里付近の筋膜を1番鍼でようやく貫いた時の感覚は今でも覚えてます。
 
 要は、常に細い鍼で、寸6全部を体内に入れてしまう毎日が、刺し手の訓練に繋がったのでしょう。
筋膜にあたる、骨にあたる、靭帯にあたる、硬結にあたる、指では届かない深い筋肉の凝り具合を、鍼先で探る、鍼先は体内で曲がる事なく、目標部位に向かっているか等など、鍼先は打ち手に情報を伝えてくれているはずです。そこを見逃すと、全く効果が出せなかったり、事故へと繋がっていってしまう訳です。
 
 世間では押し手を重要視していると思いますが、何より刺し手の重要性を蔑ろにしてはいけませんね。