藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

【参考症例】PMDAによるベンゾ危険性周知による弊害


【広島往診】は定期的に行われています。単独往診とは異なり、広域に渡り治療場所を点在しながら移動する費用分散型往診になる為、ご希望通りの日時に行えない場合もありますが、ご連絡頂ければ大まかなスケジュールはお伝え出来ると思います。ご治療希望の方fujiwaranohari@tbz.t-com.ne.jp迄お願いします。

参考⇒

ベンゾ服薬者の総分母数は計り知れませんが、服薬者自身がリスクを既知した上で服薬している患者数は極めて少ないと推測されます。リスク未知での服薬層が厚い事より考えられる2次的リスクは、今件のようなPMDAの公的機関の発表により、自身が服薬している薬が同様のベンゾであると知った事で急速な減~断薬を執り行ってしまう事による極めて厳しい離脱症状の惹起、又はベンゾのリスクを軽視した杓子定規な減~断薬指示の拡散に伴う離脱症状惹起等の現場の混乱が考えられます。
 
先日、PMDAからベンゾの中長期服薬に伴う弊害や減~断薬時の注意喚起が医療機関に周知された事は記憶に新しいものですが、それに伴う弊害の1例を挙げます。この他にも類似例は数件あり、皆一様にエピソードも似ていますが、参考症例のように、高齢且つ既に脊椎変性疾患を幾つか抱えている場合、身体症状をベンゾの離脱症状とは捉えられず、純粋な整形領域疾患と誤解される懸念や、整形領域に於いても画像所見依存の弊害の幾つもの問題が浮き彫りとなり、結果的に無効手術や薬物増量の懸念となる他、服薬している事に対しての是非は扠措き、中長期的に服薬し続け曲りなりにも症状を安定させている高齢患者に対しての将来性等、幾つか課題もあると思います。
 
仮に服薬している患者がベンゾの負の側面を既知としないまでも、幾らPMDAが何と発表してようともリスク周知を理由に急速に引き剥がす事は(今症例に於いては急速に引き剥がしたとは思っていない対応ではあるが…)、患者の残りの人生を考えても良かった事なのか等、色々と考えられる側面も多いですが、このような事象はPMDA発表以前からも日常茶飯事でもあり、安易に誇張された反向精神薬情報を垂れ流す危険性や、情報提示の在り方も改めて考えなければならないのかもしれません。
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age 75 sex f 服薬歴 ⇒ ベンゾ10年(中長期作用型) 
・頚椎椎間孔狭窄・腰部椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症・両膝OA
 
定期的に通院しているクリニック(心療内科)にて「先日、ベンゾの長期服薬に伴う危険性が周知された事で、ベンゾではない睡眠薬に切り替えようと思う。但し、いきなり止めるとリバウンドが出る為、徐々に移行する事とする。」と告げられ、選択的デュアルオレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ/スボレキサント)の処方と共に、服薬していたベンゾを1weekで1/3、2weeksで1/5の減薬内容を指示通り服薬したところ、

激烈な頸部痛 不安感 焦燥感 絶望感 振戦(全身性) 不眠 入眠時幻聴 悪夢
 
を発症(全症状が同一タイミングで発症したかは不明)。当該クリニックに伝えたところ、頸部痛及び全身性に渡る振戦も整形領域疾患による頸神経及び腰神経由来から派生しているもので管轄外、他症状は薬物に弱い肝臓だからと告げられる。本人曰く「ガクガク震えて歩けない」「本来明るい性格だったが幾ら努力しても明るく振る舞えない」となる。当該クリニックは画像検査機器を有していない事から、他院(脳外)で脳MRIと頚椎及び腰椎MRI撮影するも、年齢相応のものと言われる。他、甲状腺機能等のホルモン検査をするも異常なしと言われる。この度は不備な対応を考察する事で他症例にも活かせるものと思いますが、
 
1)減薬速度が速過ぎる。(「いきなり止めるとリバウンドが出る為、徐々に移行する」と伝えながらも、この速度は一気断薬に近い)但し、この減薬速度は減~断薬に協力的な機関でも珍しい速度ではない
 
2)エピソードを時系列で掌握しているはずの当該クリニックが、急速に発症した激烈な頸部痛や、全身に渡る振戦を頸神経及び腰神経由来とするには無理がある。整形領域疾患の場合は、新規発症や再発症問わず、ある程度の発症エピソードは明瞭性が高く、今までも痛いなりにも生活をしていた患者が、減薬タイミングで整形領域症状とは到底考え難い症状が出た場合、その症状迄も整形領域疾患として押し付ける事は少々乱暴な印象を受ける
 
3)「薬物に弱い肝臓だから」と言うものの、この患者は10年に渡りベンゾを服薬しており、今更「弱い」と言うには無理がある。又は真意の回答ではなく、心療内科や精神科に於いては、恐らく上記症状を抱える患者群が相当数いると推測され、対応が面倒臭くなった為、2)の対応、3)の対応をした可能性もある(精神病が前提となったフィルターが掛けられている為、精神病ありきで見られるかもしれないが、漫然と通う多くは、向精神薬の(常用量)離脱症状を精神病扱いされた層が9割以上ではないかと思っている。この推測が正解であれば、9割以上の患者は(常用量)離脱症状による精神症状や身体症状を向精神薬で調整しているだけの存在となる)
 
4)減薬速度の指示内容から考察しても、オレキシン受容体拮抗薬への移行期に生じた諸症状に対し、離脱症状を存在なきもので無視した対応
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他 参考症例
 「ベンゾ服薬歴/1年のキノロン系抗生剤投与に伴う離脱症状発症」

このような症例も過去受療機関で誰も知らない教えない認めてくれないから患者に不幸が訪れる。年齢は伏せてはいるが比較的高齢であるこの患者は、早期タイミングで脱する事が出来たから良かったものの、ズルズルと引き伸ばされていれば、単なるボケ老人扱いで施設行きである。下記にも記載のある通り、向精神薬由来と思しき新鮮例は極めて珍しい。そして、陳旧例患者が大半であり、数ヶ月~数年と治療期間が要する可能性の高い患者方には申し訳ない話だが、新鮮例は回復速度も著しく早い。治療回数は2回で略治となった。

如何なる傷病名を抱えていたとしても、そして如何なる処方理由及び服薬理由であれ、耐性が獲得されていると思しき時期のベンゾ服薬者が、キノロン系抗生剤を服薬すると離脱症状を発症する話は有名で、その発症間もない症例を参考まで。

age 伏せ sex 伏せ 服薬歴 ベンゾ/1年

1ヶ月程前に内科的疾患を煩い外来で通院治療。その際にキノロン系抗生剤を投与。内科的疾患に関わる諸症状は点滴及び抗生剤投与で軽快したものの、約3週間後より 右上肢及び右下肢の感覚鈍麻と痺れ 右上肢が挙上し難い(脱力感) 舌の痺れ 味覚脱失 嗅覚過敏 不眠 食欲減退 不安 離人感etc…を発症。これらの諸症状より患者は脳卒中を疑い救急を受診。検査の結果陰性。原因不明と告げられる。また、内科受診、及び慢性的に患っていた他疾患も有していた事より、こちらの疾患から発生しているのものと推測し他科へも受診。

各々の科では身体的所見が乏しい理由により、精神的な問題でしょうとされ帰される。当院(藤原)受診は上記症状発症より約1週間。但し、治療中の会話より抗生剤投与後から「飲めば飲むほど具合が悪くなる」とも言っていた事から、正確には抗生剤投与間もなくより身体及び精神的違和感を覚え始めていたのかもしれない。あくまで上記症状に至る迄が3週間と言う見方が良いのかもしれない。

当院受診理由は、数ヶ月前に別件で整形領域の神経痛症状により、器質的異常が乏しい理由でNSAIDs程度で濁されていた状態を、1~2度の治療で仕事復帰出来た過去があったからと告げられる。向精神薬症例を取り扱っていると、離脱症状発症から何をやっても奏功しないまま数年と言う時間を経て、極めて厳しい状態にまで追いやられてから訪れる患者が大半だが、今件のように明確なエピソードを持ち、離脱症状発症から僅か1週間で当院を訪れた例は珍しい。元々薬剤過敏もあるらしく、過去にも何かの薬物で1度具合が悪くなった経験があるようで、この度のベンゾ+キノロン系にも過敏に発症したものと思われる。

理由は分からないが、1度薬剤に対して過敏反応を起こした過去を持つ場合、その後も何かしかの薬物を服薬する際には注意したほうが良い印象を持つのは、この患者に限った話ではない。治療上は左右頚椎椎間孔近傍及び左右頚椎交感神経節への処置。度々書いているが、交感神経節は人によって配置箇所と数が異なる場合があり、杓子定規に処置していては結果は付いて来ない為、確実性と再現性を見込み、全頚椎高位へ処置をしている。

治療直後より右上下肢の諸症状、舌の痺れ等々は軽快。腹が減ったと帰る。他症状は日常生活との関わりを持って評価してもらう事とし、今後もフォローアップ予定。再度書くと、離脱症状発症から極短期且つ明確なエピソードを持つ新鮮例は個人的にも珍しい。患者も前回の神経痛様症状の治療結果を過去に持つ事から、幸いにも私の話には信頼を寄せて頂いている。これらの理由もあり、回復迄は簡単に漕ぎ着ける事は出来ると思う。

何より今件に限らず、この手の薬剤性由来は、医師が否定した旨の話を患者に告げると、患者はその話を先ずは信用し、精神的な問題であると鵜呑みし、その結果、抜け出せない程の向精神薬を投与されるケースが大半となり、それが現場での混乱を生み、そして患者の将来を途絶えさせる。そもそも、ベンゾ+キノロンの話は他医科では出ていなかったようだから既知としていなかった可能性もある。様々な事情や感情が絡み合って回復する患者、脱落する患者もいるのが向精神薬症例の特徴かもしれないが、今回は脱落理由となる障壁は既にない。累積治療に伴う新鮮例と陳旧例の治療反応性の差異も含め、今後も注視していきたいところ。
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「精神病棟からの退院時、急激な減~断薬が行われた事に伴う急性離脱症状に対しての1例」
「急性離脱症状惹起の経緯」
 sex m age 65
既往 特筆事項なし
 
15年前に逆流性食道炎様症状が惹起された事で検査。同症状の改善を見越す為に当該薬物が処方されるも著効せず2週間経過。その事を医師に伝えると「精神的なものでしょう」と言う事で、うつ病と診断され、三環系抗うつ薬とベンゾ系薬を処方。本人曰く処方された薬物に好感触を得たのか、1週間程で逆流性食道炎様症状が改善されて以降も、日中は抗うつ薬、就寝前にベンゾ系、嫌な事があった時には頓服的にベンゾ系の服薬と、次第に量が増えていく。
 
(服薬量の変動迄は分かりませんが)服薬内容は変わらず約5年後、両前腕と両下腿、両背部に姿勢変化問わず持続的な疼痛他、不安感や焦燥感、睡眠障害等が出始め、これらの症状から情報を収集したところ、線維筋痛症と言う病名を見つけ、コレではないかと言う事で遠方の病院まで診察に行き、線維筋痛症と診断を受ける。その際に抗てんかん薬を処方される。しかし当該薬物でも著効せず、次第にベンゾ系の量が増えていき、以降身体疼痛も全身に拡がり、精神症状も更に感情の起伏が激しくなってきた頃、知人の紹介で精神病院を紹介され入院となる。
 
入院直前迄は際限なく過量服薬する傾向があり、主にベンゾ系を服薬すると幾分落ち着く事から入院先での管理された服薬内容では納得がいかず、退院を申し出。退院以降もベンゾ系を主として服薬を継続するも症状が落ち着かない事から再入院。この頃から過眠と不眠が繰り返される事になる。今度は高用量のベンゾ系や抗うつ薬抗精神病薬を処方された事から症状が一見落ち着いたように見えるも、患者家族が服薬内容を見て驚愕し(要は多剤大量処方)、退院と減~断薬の申し出をする。その事で病院側は患者の退院後、1週間で半分。2週間でゼロとする。
 
その後、間も無く当初から抱えていた全身性の身体疼痛や精神症状以外にも、アカシジア、ジスキネジア、全身の痙攣や痺れ等が出始め、再度医療機関に掛かるも相手にしてもらえず、再服薬をするも回復なし。異なる医科を巡るも精神科の通院履歴があると言う事を理由に、入院先の精神科外来を受療するよう促されるか、異なる心療内科や精神科で向精神薬が処方される程度で回復の兆し無し。唯一ベンゾ系には若干反応していた為、ベンゾ系の過量服薬が再度始まる。その頃、当該患者と親交のある別の方より当院(藤原)に連絡が入り治療開始となる。
 
治療中及び直後は全身性の疼痛や極度な不安感、焦燥感は治まるも、翌日弱再燃傾向を繰り返しの治療が2度過ぎた頃、知人が患者宅に用事で伺った際、患者の姿が異様な光景に見えた事から(アカシジアやジスキネジア、不安発作状態を見ての事と思われる。知らない人が見れば確かに異様と言えば異様と言う表現も分からなくもない)そのまま車に載せ、以前の入院先とは異なる精神病院に連れて行き入院となる。後日連絡者の方から電話を頂き伺った話では、向精神薬の点滴とECT(電気けいれん療法)を受け、微動だにせず寝ているとの事。古典的な治療を好む精神病院に入院した模様。
 
>>臨床像考察
 
時系列からベンゾ系の中長期的服薬に伴う常用量離脱から生じた反跳性筋硬直(否 ジストニア)や反跳性不安を線維筋痛症と診断した事例と推測される。過ぎた話を幾ら検討しても仕方ないが、15年前の1週間の服薬のみで休薬すれば、このような事態には繋がらなかったと思われる。これはあくまで推論である事、病態に対しての見方の違いも含まれての話にはなるが、ベンゾを過量服薬して症状が若干落ち着くと言う理由が線維筋痛症と言う疾患を落ち着ける訳ではなく、長期服薬で生じたベンゾの常用量離脱(薬剤耐性に伴い惹起された反跳作用)を落ち着けると言う行為にしか見えない。その理由も、1度目の精神病院入院で管理された服薬環境に納得がいかないと言う精神状態が物語っている。
 
他、当該患者に限った話ではないが、明らかに減薬スピードが速過ぎる。しかし、多くの医療機関は仮に「減薬しましょう」と協力姿勢を見せた場合でも、この位の減薬スピードはザラに聞く話なので、このような類似例は全国的にも数多くあると推測される。
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見過ごしがちなベンゾ系単剤の副作用及び常用量離脱症例(3例)
「入院中、不眠を訴えた事で処方されたベンゾ単剤の副作用及び常用量離脱からの回復」
age 60 sex f ハルシオン0.125mg 
 
激しい頭痛 目眩 吐き気が数日に掛けて憎悪した事から近医内科を受診。「風邪でも引いたのでしょう」と言う事で感冒薬を処方され服薬するも著効せず。その後、脳外を受診しMRI撮影。受傷時期は不明だが脳挫傷と診断され即入院。点滴治療で当初期の症状は寛解したものの、入院中に不眠を訴えたところハルシオンを処方される。
 
当初期の症状は点滴治療で間も無く落ち着き、3週間程度で退院。以降もハルシオンは処方され続け約3ヶ月後、不安 焦燥 健忘 離人感 宅内外問わず自分は何をしているのか全く判断が出来ない と言う症状が出始め、ハルシオンの常用量離脱を疑い、脳外を再受診するも「認知症でしょう」と抗認知症薬を処方される。
 
本人はハルシオンが原因であると直感で感じ減薬に励む。約8ヶ月程度の期間は3/4。当初は1/2で試みたが不眠や不安感が酷くなる事から極めて微細な漸減を用いる。8ヶ月後以降から12ヶ月後迄1/2で比較的症状が安定。12ヶ月後から20ヶ月後迄1/4。その後、フラッシュバックが惹起されたタイミングは増量する柔軟性を持ち調整しながら約35ヶ月後、当初期の症状は全て改善。20ヶ月以降は長期旅行も可能となり、日常生活に支障はなくなっていた。
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「整形領域下肢痛で生じた不眠によるベンゾ系単剤の離脱症状からの回復」
age 65 sex f マイスリー 
 
下肢症状が継続する事で3~4時間しか眠れなくなり、その事を訴えた事でマイスリーが処方される。1週間程服薬したところで具合が悪くなり(症状不明)休薬したところ、当日から一睡も出来なくなる。布団に入るも目が冴えて眠れず。体力的な限界が訪れた時に気を失うように眠った感覚を覚える時はあるようだが、殆ど寝ていないに等しい期間が約2週間程続く。
 
本人曰く、「眠れる薬を止めたらもっと眠れなくなったから飲むのが怖い」と言う事で服薬拒否。2~3週間目以降から徐々に睡眠時間は取り戻されたが、その期間中、及びその後から頻尿 腹痛 下痢 不安が発症し、これらの抹消及び中枢自律神経症状は3ヶ月継続した。
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「脊椎変性疾患術後後遺障害に伴うベンゾ系単剤の離脱症状からの回復」
age 25 sex f デパス 
 
腰椎変性疾患術後後遺障害を呈し、当該科でデパスを処方。5年間服薬。当初は術後後遺障害を呈した腰部痛及び下肢神経障害が全身痛に派生した事から服薬しているデパスを疑い自己判断に伴い一気断薬。
 
1週間程度は何事もなく、寧ろ全身痛が軽減された事より喜んでいたが、2週間目より全身痛ではなく全身に痺れが生じ始め、主に肩頚部領域は左右が日差変動を伴う強い痺れが出始める 両下腿激痛 不眠 頻尿 不安 仕事をしていても同僚や顧客の言動を全てネガティブに受け止める感覚に陥り3週間程度の休職。不眠や不安感、頻尿は2ヶ月程度で改善傾向を示すも常に不安定なまま1年経過後、時折再燃しながらも徐々に波は治まり症状が安定する。
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SNRI単剤の遅発性離脱症状と推定される諸症状を2例(※プライバシー保護の為に改変しています)
sex f age 40 遅発性離脱症状SNRI)の疑い
主訴 左上肢の痛み
既往 特筆事項なし
 
3~4年程前に左上肢全般に激痛が発症し、MRIで頚椎椎間板ヘルニア(c5~6)と診断され、NSAIDsやステロイドの経口薬他、神経根ブロックに対しても抵抗性を示した事からヘルニア切除の手術。一旦は症状が消失したが2ヶ月後に再燃。固定術を提案されるも本人の意思により経口薬で対処出来ないかと相談した結果、NSAIDs SNRI ベンゾ オピオイド鎮痛薬等を処方されるも症状の軽快が見られず当院(藤原)を受療。
 
左上肢症状に関しては2ヶ月程度で消失(治療スパンとしては当初期は4~5day/1回、日常生活に支障がないレベルまで症状が落ち着いた頃から10day/1回に切り替え)した頃より、初期から処方されて残っていたSNRIの減~断薬を3ヶ月掛けて行う。減~断薬過程では幸いにも離脱症状は起きず、断薬完了後も目立った症状は出ずに安定していたようだが、一ヶ月半後頃より「乾性の咳が止まらない」「鼻出血(片方)が止まらない」「一睡も出来ない」となった為、医療機関で検査するも原因不明。鼻出血の原因は粘膜に傷が付いたのでは?と言われるも、本人は特に傷付けた記憶もなく、毎日のように鼻出血が継続するのは傷を付けたものではないと疑問に思うようになる。
 
他、一睡も出来ぬ不眠が1週間続く事から(不眠発症から2~3日経過した時に医療機関を受診。その際にベンゾを追加処方され服薬するも改善なし)体力的に厳しくなり、先日断薬したSNRI離脱症状を疑い再服薬すると全ての症状が消失。睡眠障害も改善される。この事から断薬から1ヶ月半程度後に惹起された諸症状はSNRIによる離脱症状であったと推測される結果となる。
 
現在も未だ経過追跡中でもある為、現段階では此処までの事しか書けませんが、多くは5~10種類の多剤が大半な中、単剤での遅発性離脱症状は少数かと思われる為、1つの参考症例として載せておきます。左上肢の激痛に関しては、痺れや知覚鈍麻等の知覚神経実質の著しい損傷も無いと思われる事、及び運動神経系等が損傷したような様態でも無かった為に、比較的良くある症例(病態的にも好発例)であり、治療反応上からも下位頚椎神経の持続的過剰牽引に伴うdrg損傷によるものと見て良く、上述の通り整形領域疾患に関してはコンスタントな受療も可能だった為に比較的安定性を保ったまま段階的に収束していったものの、
 
問題は処方された薬物による2次的被害(離脱症状)から抜けられるか否かが一番の問題となり、今件の症例に限らず、整形領域疾患⇒向精神薬処方⇒向精神薬依存~薬剤耐性⇒現症状である整形領域疾患は改善したものの向精神薬を止められなくなる、と言う類似ケースは多くある。今に始まった話ではないが、患者が減~断薬に起こりうる諸症状を既知とし、柔軟な対応を自己で出来れば問題ないかもしれないが、一度薬剤耐性が付いてしまえば止められなくなるケースも散見され、少しの拍子で向精神薬を処方されたばかりに、一生飲み続けなければ症状が安定しないと言う状態に陥る患者も少なくないと思われる。
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sex m age 50 遅発性離脱症状SNRI)の疑い 2
主訴 両足趾の冷感 腰痛
既往 腰部脊柱管狭窄症に伴う手術(椎間孔開大)
 
5年前の腰部脊柱管狭窄症の椎間孔開大術から数ヵ月後、実際に触っても冷たくはないが、季節関係なく極めて厳しい冷感を両足趾に感じ、夏場でも靴下を2枚重ね履きしても落ち着かないと言う事で受療。冷感自覚は大きく分けて2つあり、実際に触って冷たい血流障害型か、腰部神経叢の知覚神経の損傷に伴う偽陽性型冷感に分けられ、今件の患者は後者に分類されると思われる事を臨床反応上示し、約数回の治療にて症状が改善され始めるものの、私(藤原)が伝達した腰部神経叢の知覚神経由来である事を気に掛けていたのか、MRI撮影を後日行うとL4/5に側方突出型の椎間板ヘルニアの所見が認められ、手術を勧められる事になる(この時点では下肢症状は当初の足趾冷感のみ)。
 
一度手術は考え直したほうが良いのではないかと告げるも、本人の意思は固く手術(LOVE法)となる。術直後は腰痛は軽減されるも2weeksで腰痛は再燃。両足趾の冷感は残存する。症状が残存する事から医師にその事を訴え、ファセットブロック×回数不明、仙骨ブロック×回数不明、神経根ブロック×3を受療するも症状軽減に至らず、当該術後領域とは異なる神経走行部位に症状が出始める。後述する事にもなるが、当初は主訴の通り両足趾の冷感 腰痛だった症状が、両大腿前面、両下腿前面、両腰部、両臀部、両大腿~下腿裏へ激しい疼痛と、両大腿前面は皮膚知覚異常が出始める。1つの可能性を考察すれば、術後の脊椎の不安定性より、両上下の脊椎高位が神経損傷を起こした事に由来するものと後の治療で推測される。
 
少し話は戻すが、先のブロック施行にも反応性が悪い事、更に異なる部位に症状が拡大した事を訴えると、固定術の提案ではなく、精神病院への紹介状を出され、精神科へ9ヶ月程入院する事になる(理由は伏せ)。診断名 うつ病 身体表現性疼痛。その間、様々な薬物治療を受けた模様(この時点での薬剤名不明)だが、退院後はリリカ トラムセット デパス リボトリール サインバルタ ロキソニン ムコスタ等を服薬。処方内容に関しては取り分け珍しいものではなく、針治療受療により両下肢症状は約4ヶ月程度を経てvas10→1程度となり(4~5day/1回~10day/1回)、日常生活には支障のない腰痛のレベルとなり、下肢痛は消失。
 
一部大腿前面の皮膚知覚異常は残存しているが、経時的に改善模様の為、今後もフォローしていく事になるが、症状の軽減と共に本人が薬物治療の必要性を感じなくなった事から、掛かり付けの医師に相談をしたところ(そこの外来には3人担当がいる)、1人は薬物を止める事を認めてくれなかった為、もう1人に相談したところ、そこの親分的存在から既に当該患者の情報が伝達されており(薬を止めたいと言う意思)、「止めるなら止めれば」と言われ、今後の診察を拒否される。本人も止められるチャンスだと思い断薬する事になる(自己判断に伴う一気断薬)。
 
幸いにも1ヶ月程度は症状(離脱症状)を自覚する事はなかったようだが、その後、シャンビリ 頭鳴 耳鳴 めまい 歯肉出血 不眠 胃痛 動悸 肋間神経痛様症状に悩まされる事になり、本人も「精神科に入院させられる位なのだから精神病なんだろうな」と思い込むようになり、再度精神科を受療し同様な向精神薬を服薬したところ(サインバルタのみ 他の薬物は整形外科から処方されている)、3日程度の期間を経てシャンビリ 頭鳴 耳鳴 めまい 歯肉出血 不眠 胃痛 動悸 肋間神経痛様症状が消失。この事から上記症状はSNRIによる離脱症状と推測される結果となる。その結果から本人も薬物の恐さを知り、再度減薬に励んでいる。
 
向精神薬は「止めるなら止めれば」で済むような薬ではなく、止め方次第で直接的にも間接的にも本当に死人まで出る場合もあり、如何なる理由でも向精神薬を一気断薬へと結び付けてしまうような対応と言うのは極めて危険である事が分かる1例でもある。

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