藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

読み物 1

具体名と引用元は伏せます。
ここのところ立て続けに、何人もの人からこんな相談を受けた。
 
肉親・知り合いに薬を飲んでいる人がいるのだが、
どう見ても、病気というより副作用でさらに状態が悪くなっているようだ。
しかし、本人に言ってもまったく聞く耳を持たず、
それどころから、最近では、会えばそんな話になるので、かなり煙たがられている。
が、このままでは絶対によくなるとも思えない。
どんなふうに説得すれば相手に伝わるのでしょうか……と。
 
これは本当に難しい問題だとつくづく感じている。
というのも、私にもそのような友人がいて、
いろいろ言っているがまったく通じていないからだ。
少し前に電話をしたところ、相変わらず○○の診断のまま、
○○薬を20㎎、○○薬は1㎎から4㎎に増量。
それと副作用止めである。

肝心の幻聴はまったく改善されていない。
「じゃあ、薬は何も効いていないということじゃないの?」というと、素直に、
「そうですね」という返事。
「もしかしたら、○○という診断じゃないかもしれないですね」
「そうですよね」――これは前回にはなかった回答。
「○○さんは、○○という診断名といわれたことはあるの?」
「前に、いわれたこと、あります」
「幻聴はフラッシュバックによるものじゃないかしら?」
「そうかもしれません」
セカンドオピニオンを受ける気はある?」
「ないです」
「薬を減らしてみるというのは?」
「減らすのは怖いです」
「今の先生でいいと考えているの?」
「はい」
「それは、ご家族みんなの意見? ご主人とか、お母さんとか?」
「そうですね、みんな、今のままの治療を続けたほうがいいと思っているみたいです。旦那がいってましたけど、この頃はちょっといいんじゃないかって」
「でも、幻聴は減ってないんでしょ?」
「そうですね」
「今の先生は優しいの?」
「はい、すごくいい先生です。話もよく聞いてくれるし、私が前に書いた本(○○の歴史をつづった本)も読んでくれて、すごく褒めてくれました」
「でも、薬ふえちゃったわね」
「でも、また減らしてくれると言っていました」

これ以上、何が言えるのだろう。
主治医を信頼し、そのことで多少の安心感を得ているとしたら、
それをぶち壊して、彼女から薬を奪う権利は私にはない。
 
しかし、どこかで論理が破たんしていることに、
本人も家族も気づいていない――つまり、薬を飲んでも症状は改善されていないこと。
薬を増やしても改善されていないこと――話していて、そこが何とも切歯扼腕なのだ。
いったいどう伝えれば、相手を傷つけずに、影の部分を伝えることができるのだろう。
薬の副作用を感じながらも、薬を飲まずにいられない心理は、
おそらく病気への恐怖、飲まなければ今よりさらに悪化するかもしれないという恐怖が大きいのだろう。
 
医師でさえ薬を減らすことを怖がるのだから、
素人がその恐怖を乗り越えるのは至難の業である。
それで結局、行きつく先はどうなるのか。
それがある程度見えるから、何とかと思うのだが……。

しかし、一方で、そうした身内を抱える人に向かって、
薬の害を少々大げさに伝え、訳知り顔で「そんなに飲んでいたら、死にますよ」と
おかしなアドバイスをする人もいるらしい。そんなふうにいわれた肉親は、
いったいどんな気持ちになるだろう。
 
子どもなら親が薬を管理できるが、相手が成人していて、
しかも同居していなければ、「死にますよ」などと脅された肉親は、
それこそその人が病気になってしまいそうなほど心配し、
やきもきすることになるだろう。
そんなアドバイスは不必要な薬と同じくらい害である。

それでも、やはり、薬を減らした方が(あるいはやめた方が)いいと思える人は、
確実に多いと感じる。はたからみれば多すぎる薬の副作用でさらに悪化しているとわかるのに、本人にその意識がなく、薬の恩恵にあずかっていると信じて疑わない。
○○にかかわる人の中で、この層が一番多いのかもしれない。
 
こうした人たちに、どんな言葉で○○のこうした事実を伝えれば、
抵抗なく受け入れてもらえるのか。
さまざま相談を受けて、私自身、何の答えも持っていないことに気が付いた。
 
様々な治療法や治療手段に関しても、
最終的には人対人であり、他者(治療をする側)が患者に介入する以上、
信頼や共感があり成立するものであると考えています。
そして大切なのは「治す事」の一言に尽きます。
 
どの治療法や手段に於いても、
強力な紹介者が居ない限り信頼や共感なんて端からある訳がありません。
大半の方が、恐々と電話を架けて足を運ばれ治療を受けます。
鍼灸治療なんて最もたるものでしょう。
 
いざ門を叩いたら
治るまでは信頼も共感も玄関の靴の数も自転車の数にも目を向けず、
只ひたすらに、自身に対して施されている内容と効果を感じ、
良くなった時に初めて信頼すれば良い話であるし、
治療理論にも共感すれば良い話なのです。

全ての医療機関に通院し続ける「患者」と呼ばれる立場の方々が、
術者に対しての妄信と盲信が含まれていない事を切に願います。
妄信と盲信が入り込んでいる段階で、医療が成立する事はありません。

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