藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

鍼灸業界の踏ん張りどころか 2

復習を兼ねていきましょう。


強圧でのマッサージや指圧、整体等の類を受け、
筋線維の崩壊、筋線維の粗雑化より、伸収縮能力の低下から他の柔軟性を持つ筋群との
柔軟性の差異により、より一層の伸収縮能力の低下から派生される各愁訴が広範囲に渡り、
気が付いたら全身に及んでいたというケースは珍しくありません。
 
これらの患者には、身体に鍼を落とし込む事で、
鍼尖の抵抗感より即座に判断が付けられますので、
患者に対して確認後、注意を促すようにしております。
 
クラッシュ症候群は極端な例としても、
強烈な痛みを伴う徒手療法は筋線維の崩壊から柔軟性の欠如⇒血流低下を招き、
結果的に良くなる事は有り得ません。
施術中~施術直後に自覚される開放感は脳内麻薬のエンドルフィンによる作用です。
 
その後、筋線維が崩壊した患者に関しては、今以上に強い刺激を求め、
より一層の強圧が無ければ「満足感」を得られない身体になります。
筋の柔軟性を得なければ所謂肩凝りも腰痛も治癒へ向けて走らないのは言うまでもありませんが、
 
筋線維の崩壊が行われた身体は個々人の差はあるかもしれませんが、
未加療の場合、長期間に及び回復する事はありません。
しかも、その間に関しても、そのような患者は常に強い刺激を求め続け、
指圧棒の類で空いた時間に刺激を与えたり、より強い刺激を与えてくれる店舗を探し回る事になり、
悪循環が避けられない状況となります。
 
その間も先程記述した通り、
伸収縮能力が失われ、血流が低下している状況にて現われている愁訴に関しては、
局部のみならず全身に波及し、どうしたものかと医療機関に足を運ぶ可能性もあるでしょう。
 
そうですね、我々では当たり前の事を当たり前に行うだけの患者群であるにも関わらず、
各種医療機関に関しては様々な検査が行えます。写真でも血液でも尿でもetc…。
(因みに、これらの検査は全く無駄ではありません。寧ろ、後々に鍼灸院を受療される際に
                検査結果を携えてくれる事で、安心して治療を行う事が出来ます。)
 
この段階で、画像所見や各種検査で異状所見の有無に関わらず様々な診断名が付けられ、
様々な治療法を受ける事になると思います。(ここの医療機関が何処かにより、患者の将来を決める事になる。)
 
余談ながら我々鍼灸院に関しては、鍼という道具にて原発及び対象部位に対して器質的変性を加え、
栄養源となる血流増加と血流確保を行い、粗雑化した筋線維に対して柔軟性を与えるような処置を行います。
彼等彼女等のように、徒手で崩壊させられた身体に関しては、極めて浅層~中層部までである為に、
早期段階であれば比較的早く快方に向かわせる事は可能でもあります。
その間も指圧棒でグリグリ行ったり、強圧な指圧等々を受けなければというのが大前提ではありますが…。


一般の方もご覧になっているでしょうから、違う例えも一つ提示します。
身近に大酒飲みの人がいたら、聞いた事のある話かもしれません。
 
大量飲酒は即座に筋を破壊します。「急性アルコール筋症(ミオパチー)」は、
筋力低下、筋痛、血中へのミオグロビンの溶出、筋繊維(特に速筋繊維)の部分的壊死、
筋のタンパク合成の低下(超回復が期待できない)が起こります。
 
慢性アルコール筋症に関しては、
酒を長期にわたって常飲すると筋力低下と筋の萎縮が起こります。
主要因は成長ホルモンやインスリン様成長因子-1(IFG-1)の分泌低下と考えられ、
筋力の低下は、それまでの総アルコール摂取量に比例します。
 
アルコール依存症患者が痩せて筋肉も衰えているのは、
単純に連続飲酒で食事が取れないせいだと思い込んでましたが、実はこういう理由もあったのかもしれません。
ちなみにラットの実験では、アルコールを含む餌を16週間摂取したラットは、
血中IFG-1濃度と骨格筋のタンパク合成量がともに約40パーセント低下したそうです(Langら、 2001)。


このように、筋肉を傷める(痛める)要因は多岐に渡り、
打撲したとか肉離れしたとかだけが、筋肉を壊す原因ではありません。

 
改めて復習してみましょう。
 
横紋筋融解症は、骨格筋の細胞が融解、壊死することにより、
筋肉の痛みや脱力などを生じる病態をいいます。
その際、血液中に流出した大量の筋肉の成分(ミオグロビン)により、
腎臓の尿細管がダメージを受ける結果、急性腎不全を引き起こすことがあります。

また、まれに呼吸筋が障害され、呼吸困難になる場合があります。
横紋筋融解症は多臓器不全などを併発して生命に危険が及んだり、
回復しても重篤な障害を残したりする可能性のある危険な副作用です。
すみやかな対応(服用中止、輸液療法、血液透析など)により腎機能の保護をはかり、
回復の可能性を高める必要があります。
 
「手足・肩・腰・その他の筋肉が痛む」「手足がしびれる」、「手足に力がはいらない」、「こわばる」、
「全身がだるい」、「尿の色が赤褐色になる」などの症状に気づいた場合で、
医薬品を服用している場合には、放置せずにすみやかに医師・薬剤師に相談してください。

(1)自覚症状   筋力低下・疲労感・筋痛が主症状である。
(2)他覚的所見  筋力低下・筋肉の圧痛・把握痛・ミオグロビン尿(発症時期により所見無し)などがある。


UpToDate⇒
「Clinical manifestations, diagnosis, and causes of rhabdomyolysis(横紋筋融解症の原因、臨床症状と診断)」
には「The degree of muscle pain varies widely among patients with rhabdomyolysis. (筋肉痛の程度は患者によって様々である)」
 
UpToDate⇒
「myoglobinuria may be absent in patients with renal failure or those who present late in the course.
(腎不全があったり、進行してから受診した患者では、ミオグロビン尿を認めないこともある)」
 
重篤副作用疾患別対応マニュアル 横紋筋融解症⇒
筋痛・筋力低下の分布は下肢とくに大腿部などの近位筋が主体である。
ときには全身性の場合もあり、呼吸筋・嚥下筋が障害される場合もある。
多くの場合、筋痛が先行する時期があるので、軽症のうちに対応することが重要である。
 
再考するにも検査機関としての機能が皆無な鍼灸院に関しては、
様々なデータと臨床の場に於いて推測していくしか出来ないというのが些か歯痒い点ではありますが、
今回の事例に関しては絶対に無視の出来ない状況であります。
 
以前も少々記述致しましたが、今後は鍼灸院に来院される患者のみならず、
他の各医療機関でも脅威に成り得る可能性が考えられます。
 
我々は幸いにも治療という観点から患者の身体内部に鍼を刺す事も
そして、確認や検査という観点からも鍼尖の抵抗感にて現況の筋肉の状態を把握する事も可能です。

http://www.am.nagasaki-u.ac.jp/pt/basic_pt/image/collagen.jpg
コラーゲンに対する免疫組織化学的染色

左:正常ラットのヒラメ筋

右:拘縮モデルラット(不動4週後)のヒラメ筋


http://www.am.nagasaki-u.ac.jp/pt/basic_pt/image/kinmaku.jpg
筋内膜の走査電子顕微鏡

左:正常ラットのヒラメ筋の筋内膜

右:拘縮モデルラット(不動4週後)のヒラメ筋の筋内膜
 
まだまだこれ位は可愛いものです。
患者の治癒までのコントロールと症状の推移が予測可能な範疇です。
これらの筋群が融解した場合、治療予測回数が急激に難航します。

とは言ってもですね、尻拭い的治療である事には変わりありません。
最初から懸念材料の回避が必要であり、患者意思にて避ける事は幾らでも可能な事例なのですが、
恐らく現状の動向を見る限り、我々は後手に回り治療を行う機会が増えるでしょう。
 
「やった!300mgに増えた(はあと)」
なんて喜んでいる患者もいる限り、患者教育のほうが困難かもしれません。
 
時に外傷やスポーツにても発症する横紋筋融解症、
これらが人為的に作り上げられる医原病的状況にて発症するのだとしたら。
 
何故コレステロールの薬を飲んでいるでしょうか。数値と医師の説明は?
その値では何が発症すると言われたのですか?動脈硬化ですか?
 
何故画像所見で椎間板ヘルニアや狭窄症と言われたから薬を飲んでいるのですか?
飲んでいる薬と画像所見から見出される疼痛機序の相関関係と医師の説明は?
説明足らずの矛盾と疑問が溢れる神経障害説では無かったですか?
 
全く必要の無いところで全く必要の無い新たな病を作り上げた場合、
その後の処置が難航していくのは言うまでもありません。
 
今では処置不能、原因不明の患者のニーズに応えて、必要の無い診断名あります。
そのような診断名を告げられたところで、患者にメリットはありません。
 
原因が分からないと言われている以上、
薬を飲んでも何も変わらない以上、
どんな診断名を告げられていようが
本質を何も知りえていないのと変わらないのです。
 
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 青森から鍼灸治療の意識改革を~