藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

続Q,鍼灸師です。痺れの患者に処方するNSAIDsの理由って?

前項にて、腰下肢痛患者に対して提示した日常生活動作に於ける注意点を数点挙げた記事を取り上げました。
今回は前回の続きとはなるのですが、対処療法及び保存療法と治療との違いも踏まえて書こうと思います。
 
外傷を除く運動器疾患に関しての悪化因子は日常的に転がっています。
受傷機序が不明という場合であったとしても、何らかしらのキッカケがあって発症及び、
自覚、無自覚関わらず負荷姿勢の継続が蓄積され発症するものかと考えています。
 
例えばギックリ腰が良い例かと思います。
実際に重たい物を持っている最中に発症するものかと思えば、
靴紐を結ぼうと腰を屈めた時、物を持ち上げようとした時、一歩踏み出そうとした時等、
腰臀部の筋緊張を強くしない段階で発症するケースというのも多く、
これらが、過去に継続的に負荷姿勢を蓄積した結果、発症したものかと思います。
 
ギックリ腰と一つ取っても筋膜、筋肉、靭帯の損傷度合いにより痛みの強さや治癒までの過程も
大きく左右されるでしょうから一概には言えませんが、休養出来る時間を作れる方であれば
寝ていれば治るものです。勿論、鍼治療を行う事で急激な回復も可能です。
 
私事ですが、大塚に越して来た際に電子レンジを持とうとして(まだ持ち上げていない)ギックリ腰を発症。
しかし、せっかくの休日だった為に神楽坂飯店で一升炒飯にチャレンジ。後一口のところで断念。
その後、店内の2階のトイレに行く為に階段を昇ろうとして悪化。これはヤバイと思い、
近場の治療院に行ったら腹臥位を強要され、痛みに追い討ちを掛けられて帰ってきた記憶があります。
 
イメージ 2
経験のある方なら分かるかと思いますが、ギックリ発症したての腰部への刺激って気持ち良いんですよね。
しかし、その後起き上がれなくなる事態に苛まれるのは、マッサージ云々も然ることながら、
以前も書いた通り、治療姿位が問題だったりする事があります。
更に強揉みの術者にあたってしまった場合、炎症を助長させ、悪化を加速させます。
※復習ですが、このタイミングでNSAIDsの効果は強く出ます
 
このような形で、新鮮期(急性時)の痛みの時に関しては、絶対に無理はしない事、
及び適切な治療を受けなければ、どん底に落ちていく事になります。
新鮮期は謂わば治癒まで引き上げやすい時期とも言えますが、
悪化因子を一つでも抱え込むような行動を取ってしまうと、
より一層悪化してしまう時期でもあると考えています。
 
健康な人間であろうとも、元々腰痛(腰下肢痛)を抱えていようとも、負担の掛かる姿勢というのは存在します。
以前も掲載した画像を再度貼ります。
イメージ 1
上図に関しては、どちらかと言えば腰下肢痛を抱えていない健康な人間に対して提示された
内容及び数値とはなります。腰痛を抱えていた場合は、数値25の姿勢と数値75の姿勢が入れ替わる程度で
他は大差が無いと思いますが、人間は立って座って寝なければならない生き物です。
その為には、常に腰臀部の柔軟性を保持していなければなりません。
 
しかし、生活や仕事を忙しく過ごしていると、自身の生活姿勢なんて構っていられなくなるのも現実です。
このような積み重ねにて、狭窄症や椎間板ヘルニアと診断される過程を一歩一歩進んでいく事になります。
その結果、腰が伸びきらない姿勢となり、下肢への症状もオマケで付いて来て、病院に行って
写真を撮ったら狭窄症だのヘルニアだのと不遇な診断を下される事になり、要らぬ治療が始まる訳です。
では、前項の生活注意点の指導を改めて見てみましょう。
 
▽前かがみを絶えず意識する
▽歩くときはつえを突いたりカートなどを押したりする
▽寝るときには横向き(側臥位)になる-といったことを注意するとよいでしょう。
 
上記の3点は、腰痛を抱える患者にとっては大概当てはまってくると思います。
腰痛の為に逃避姿勢とも言える腰部屈曲状態を無自覚で保持している患者にとっては楽な姿勢です。
 
▽前かがみを絶えず意識する
⇒腰部の持続的屈曲姿勢が楽なのは、腰部の屈曲筋群が疲労に負けて短縮しているからですね。
  これらを無理に伸ばそうと思うと、強い筋緊張が始まる為に、痛みを伴います。
 
▽歩くときはつえを突いたりカートなどを押したりする
⇒ステッキやカートにて自重を預ける事により、歩行時の負荷が軽減されますね。
  及び、前傾姿勢が自然に形成されますので、腰部は楽ですし、腰部(脊椎周辺の傷めた筋群)を
  支える為の股関節周辺の筋群の負荷も軽減されます。
 
▽寝るときには横向き(側臥位)になる
⇒以前、私が「あの」「その」言いながら拙い動画を挙げた中でも触れましたが、
  横向きになると、患者は無自覚にて自身の腰部屈曲筋群に適した屈曲角度を形成、保持する事に
  なりますので、比較的楽に時間を過ごす事が可能となります。
 
私論とはなりますが、各筋の作用を知っていれば、腰臀部痛患者問わず、
楽な姿勢というのは幾らでも患者に伝えられる事が出来るようになります。
前項でも書いたLactic Acidosisが発生しにくい姿勢、要は患者にとっての弛緩位を
指導する事により、患者は楽に時間を過ごせる事になります。
しかし問題なのは、この姿勢を継続的に続けさせる事による弊害です。
 
無論、新鮮期の痛みの強い時期であれば上記の姿勢も致し方ないと思います。
しかし、何ヶ月も「治らないわね~」と言われるまで誤った保存療法及び対処療法にて来院させ、
上記姿勢を継続させた場合、60代という年齢の患者にとっては
筋肉の弱化が進んでもおかしくない状態となります。カートやステッキにての歩行をした事により
臀部筋群の弱化も起こりうるでしょう。そうなると上半身を支える事が出来なくなり、
カートやステッキが無ければ歩けない身体となる可能性もあります。
 
もしかしたらステッキやカートが外せた場合でも、腰部の持続的屈曲が形成されている為に
仮に痛み痺れが経年により自然治癒した場合でも、廃用性萎縮化が進み、
腰部の伸張が出来なくなるかもしれません。簡単に言えば円背ですね。
横臥位で寝かし続けるのも同様の結果が生まれる可能性があります。
 
そんなこんなの内に、ステッキやカートを持ち歩く生活が当たり前となると、外出するのも面倒臭くなり、
宅内での生活が続き、より一層の各筋群の弱化が進む。酸素を取り込む量も減れば、
将来的には呼吸器系統も弱くなり内科的疾患を患う可能性もあります。
 
そのような事が無い為に、早期治療を訴えかけているのですが、
如何せん保存療法を間違えている以上、治癒遅延が招いた弊害は刻一刻と進んで行く事になるのです。
 
必要なのは、上記3点の姿勢を守るように(若しくは、上記3点の姿勢にならないように)と言うのは
簡単なのですが、この姿勢を持続させなくても済むように治療しなければならないのです。
そんな折に薬は効かん、ブロックは効かん、コルセットをしたら悪化したor手放せなくなった、
いきなりマッケンジー体操を教えて悪化し、リハ室でブロックしただの、
牽引で悪化してリハ室でブロックしただの、そんな事をしている場合ではないのですね。
 
受傷時期や症状の度合いにより治癒までの過程は患者個々によって大きく左右されます。
一人一人に合った治療は必要と言いながらも、皆に対してやる事が同じでは、
患者によっては故障を招く可能性もありますね。
 
これと同様に患者の年代や筋肉量、
症状の度合いに応じた生活時の注意点を与える事にはなるのでしょうけど、
あくまで此れ等は「治療効果」が伴う事を大前提として伝えなければならないのです。
そうでなければ故障の原因を術者が作ってしまう事になりかねません。
 
あくまで、対処療法や保存療法は治療の枠を超えられないのが現状です。
痛みを麻痺させる手段を取る術者と、
痛みを起きないような身体を作る手段を取る術者では理論の根底が違います。
私は後者なので、治療にもセルフケアにも段階があります。教える体操や生活指導の内容が個々で違ったり、
治療回数に応じて治療内容が変化していったり、治療日を指定する理由があるのもこの為なのですね。
ここが、対処療法及び保存療法と治療の違いかと思います。
 

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イメージ 2 青森から鍼灸治療の意識改革を