藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

科学的根拠に基づいた腰痛診療のガイドラインの策定に関する研究

科学的根拠(Evidence Based Medicine;EBM)に基づいた
腰痛診療のガイドラインの策定に関する研究
 
腰痛に対する鍼治療の箇所を抜粋しました。


研究期間
1966-1997

研究デザイン
2-1 非ランダム化比較試験

対象者数
11のrandomized controlled trials

検証の対象となったマネージメント
systematic reviewの目的は、針灸が、非特異的な腰痛の治療法として効果的な方法かどうかの判定。
針灸と未治療との比較、針灸とプラセボとの比較、針灸と皮膚の針刺激 (sham刺激) との
比較の文献を検討した。急性、慢性の非特異的腰痛の保存療法の効果を判定すること。
文献は、1966-1996年の文献をMEDLINEから、1988-1996の文献をEMBASEから検索した。

結果
選んだ文献はRCTのみ。文献の対象者は、12週続いている亜急性腰痛もしくは12週以上続く
慢性腰痛患者を対象としたもの。針灸を治療法に用いたもので、
対照群は、プラセボか他の治療法もしくは未治療群。
outcome measureには、VAS、golbal measure、 functional status (Roland-Morris Disability QuestionaireやOswestry)、return to workを最低限含むもの。
これらを含む文献を抽出し、1人が文献をダウンロードし、2人で検討した。
検討項目は、1.Methologic Quality Assesment 2.Data Extraction 3.Analysisについて評価した。
そして、各文献をLevel 1-4に分けた。結果: 11文献は、軒並みmethologic qualityはlowであった。
どの文献も、針灸を急性腰痛には用いてなかった。どの文献も、未治療と針灸を比較して、
針灸が効果的であったとするものはなかった。針灸は、トリガーポイントブロックもしくはTENS
より効果的ではなかったとする中等度信頼の置ける文献があった。
針灸は、プラセボやsham刺激と効果は差ほど変わらないとする、限られた信頼度の文献があった。

意義
このレビューでは、鍼灸はを慢性腰痛に効果的であるとした文献は見当たらなかった。
この著者は、積極的に針灸を慢性腰痛の野治療法に用いることは示唆しないといっている。

エビデンスレベル
行うわないことを中等度に指示する根拠がある。


研究期間
Aug 1996- Feb 1997

研究デザイン
2-2 コホート研究,症例対照研究

対象者数
60人の腰痛のある正常妊娠妊婦

研究施設
University of Linkoping

検証の対象となったマネージメント
腰痛のある30人の妊婦に針灸を最初の2週間は週3回、その後は週2回。1回の治療時間は30分、1ヶ月以内に合計5回行う。physiotherapyは18人。週1または2回6から8週以内に合計10回行う

測定された効果指標
pain: VAS disability: Disability Rating Index (DRI: 0がno disability) overall effect of the effect treatment

用いた統計手法
2群間の平均値の比較にはt検定、割合の比較にはカイ二乗検定 有意水準5%

結果
治療前の両群間の痛み、disablityは似通ったものであった。針灸群では、朝、夕両方とも、
治療前の痛みのVASの平均値より治療後のVASの平均値が有意に減少。physiotherapyでも同様であった。
しかし、physiotherapy群は、VASの治療前後の差で見てみると、夕のVASの治療前後の差は有意であったが、朝のVASの前後差は有意ではなかった。disabilityでは、針灸群では、DRIの12項目のうち11項目で、
治療後の平均DRI値が治療前の平均DRI値より有意に減少していた。
また、治療後のすべての活動項目についてのDRIが針灸群がphysiotherapy群より有意に低い値であった。
治療評価は、両群ともgoodであった。

意義
妊娠者の腰痛に対して、針灸療法は、physitherapyよりも痛みを減少させ、生活活動制限を解除する。


研究期間
May 30 1997-October 21 1997

 
研究デザイン
1  ランダム化比較試験

 
対象者数
262名

 
研究施設
Group Health Cooperative, a large staff-model health maintenance organization

 
検証の対象となったマネージメント
治療はAcupunctureとMassagはともに10週間以上で10回来てもらい行う。self -care Educationは腰痛に関する本とビデオをわたし自主訓練するもの。治療後4週、10週、52週間後に、電話による調査を行った。

 
測定された効果指標
Symptom bothersomeness sacle, Roland disability scale, National Hearlth Interview Survey questions, SF-12

 
用いた統計手法
continuous variables-ANOVA, Pairwise comparison-Sidak, Simple analysis-Kruskal Wallis P<0.05

 
結果
4週目の結果: マッサージがsympto scale、disability scaleでself-careよりも有意にscoreが低かった。
マッサージは、また、針灸よりもdisability scaleが有意に低かった。
1年後の結果: マッサージは、針灸よりもsympto scale、disability scaleともに有意に低かったが、
self-educationとは差がなかった。マッサージ群は、他の群よりも内服薬の使用が少なく、
医療費が最も少なかった。

 
意義
マッサージは、慢性腰痛に治療に効果があり、長期的にも一見効果がある。
慢性腰痛には慣習的な医学的治療と比べ慢性腰痛には効果的だろう。

 
エビデンスレベル
行うことを中等度に指示する根拠がある。


上記の論文より
 
鍼治療に関する論文は4編であった。Systemic review (van Tulder:1999 )の結果、
針灸を急性腰痛に用いた報告はなく、未治療と針灸を比較して、針灸が効果的であったとする文献はなかった。針灸は、トリガーポイントブロックもしくはTENSより効果的ではなかった、
とする中等度信頼の置ける文献があった。針灸は、プラセボやsham刺激と効果は差ほど変わらないとする、
限られた信頼度の文献があった。
他の3編での結果は他の治療法に比して効果あるとするものはなく、
他の治療法に比して同程度または効果が劣っていた


 
鍼を扱う医師及び鍼師なら目を疑うような結果かもしれませんが、
上記の内容が公の場で発表されている以上、
鍼治療に対して向けられる目というものは、
最悪の状況である事と考えれます。
 
まるっきり効果なしとも受け止められるデータです。
タイトルは度忘れしましたが、
この論文内容が記載された本が数年前に一般の書籍店でも並び、
やっぱりオカルトだ何だと一時期話題になった記憶があります。
 
椎間板ヘルニアの手術もオカルトじゃないかと思いますが、
この話をすれば熱くなるので別な機会に置いといて、
この結果は真摯に受け止めておくべきだと思います。
 
>>針灸は、トリガーポイントブロックもしくはTENS
より効果的ではなかったとする中等度信頼の置ける文献があった。
 
何故、このような文献を抽出して発表したのかは定かではありませんし、
治療時の使用鍼やアプローチ内容が記載されていない為に、詳細も分かりかねます。
 
しかし、現実は最悪の状況である事を、鍼灸師は覚えておいて損はないと思います。
病院等々で行われているような、使用鍼や時間に制限のある息苦しくない環境下にいる
個々の開業鍼灸師の奮闘が、何時の日か鍼灸に追い風を吹かせてくれる事になるでしょう。
気合いを入れていかなければなりませんね。
 
 
 青森から鍼灸治療の意識改革を~