藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

椎間板ヘルニアに対しての疑問

脱髄性や明確な神経損傷の領域に踏み入ると内容が混乱する可能性があるので、                 これらを除外した前提での話しとはなりますが、
神経圧迫による痛み痺れの説は随分と術者側に都合良く造り上げられている内容が多く、
痛みや痺れに苦しむ患者を困惑させる一因となっています。
 
緊急手術が必要となる馬尾障害の発生は約2%と言われ、
大半の椎間板ヘルニアと診断された患者が悩む痛みや痺れに比べたら相当低い確率です。
 
更に馬尾障害発生の起因は、外力による脊椎へのダメージにより髄核が脱出し、
即座に障害が起こるケースが大半を示している事から、椎間板ヘルニアと診断され、
腰下肢痛を伴いながらも生活を送っている患者の場合、
急に馬尾障害に発展する可能性は極端に低いように見受けられます。
 
幾つかの矛盾点を考察していく事で、
治療法の取捨選択が可能であるかと思います。
 
手術による症状改善のケース⇒
 
全身麻酔と局所麻酔では、患者の声を現場及びネット上で集めさせて頂いたところ、
全身麻酔による痛みや痺れの再発率が低いということです。
 
これは、ヘルニア摘出の有無に関わらず、麻酔による骨格筋弛緩の範囲が全身に及ぶか、
局所で留まっているかの違いでしょう。他、各ブロック注射でも同様な事が言えますが、
穿刺する角度により罹患筋を貫いた結果、筋弛緩が起こり症状が改善されたとも考えられます。
 
現に、国外ではヘルニア摘出の有無に関わらず、
全身麻酔を施しただけでも症状の改善がなされているデータがあります。
そして、手術と保存療法では時間経過による症状改善率はほぼ同じです。
 
仮に、手術以外の治療も一切行わず、
痛みや痺れの症状が改善された患者が、改善理由を気にしてMRIを撮った場合、
ヘルニアが消失していたらマクロファージ云々の説明があるかもしれません。
 
しかし、依然ヘルニアがあった場合はどのように説明されるのでしょうか。
非常に興味深いところです。
 
そして大きな矛盾点としては、手術と保存療法の2択を患者には提示されるという事です。
ヘルニアが神経を圧迫しているのを前提とした理論であるのなら、幾らでも低侵襲で短期間で退院の
出来る手術があるのですから、保存療法は行わず、即座に手術を行うべきなのではないでしょうか。
 
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注射による症状改善のケース⇒
 
神経ブロックや神経根ブロック、仙骨硬膜外ブロック、腰部硬膜外ブロック等々ありますが、
効果は芳しいものではないようです。
しかしながら、神経ブロックや神経根ブロック、腰部硬膜外ブロックは仙骨硬膜外と比較しても
やや効果が上がっているように見受けられます。
 
上記の3点のブロックに関しては、
ヘルニアの発生高位に対して針が刺し入れられます。
ヘルニアは強く負担の掛かった箇所で起きる事は以前も書いた通りです。
この発生箇所(もしくは付近)に針による傷を付け、炎症作用を起こした場合に起こりうる反応を紐解けば、
効果が出る可能性も往々にあるでしょう。
 
あくまで麻酔は麻酔であり、麻酔薬による効果は短時間でしょうけど、長期的に症状改善が
なされている場合は、麻酔ではなく針による傷から派生した筋弛緩による副産物的効果では
ないかとも捉えられます。
 
 
そもそも、神経は剥き出しになっているのかという問題⇒
 
諸説ありますが、末梢神経は電線のように膜で保護されている為、
物理的圧迫でも痛みを感じないが、神経根だけには膜が無い為に圧迫により痛みを感じるという説。
若しくは、神経根~末梢神経全てに膜がある説です。
仮に膜が無かった場合はどうなるでしょうか。
極端な話、首や背中、腰をマッサージされるだけでも、
神経に沿った電撃様の痛みが走るのではないかという単純な疑問も沸きます。
 
可能性としては、神経根だけ膜が無いという都合の良い話はなく、
電線のように膜が巻かれていると考えるのが妥当ではないでしょうか。
 
 
ヘルニアは石や硬質ゴムのように硬いのかという問題⇒
 
内視鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(手術動画)
水分量によって硬度は違うでしょうけど、動画上にあるような柔らかい物体が、
仮に後方脱出で馬尾神経側に抜け出したとしても、
どこまで圧迫出来るのかという疑問です。側方の場合は逃げ道だらけではないでしょうか。
 
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何故、腰下肢痛の無いヘルニア患者が存在しているのかという問題⇒
 
下記のグラフは、腰下肢症状の無い健康な人を集め、写真を撮った結果です。
症状の無いヘルニアは76%というデータがあります。
有痛性ヘルニアと無痛性ヘルニアの2種類あると解釈するにはあまりにも無理がある話です。
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ヘルニアが神経を圧迫しているのなら、何故神経に沿った痛みが出ないのかという問題⇒
 
「とある有名ドクターのQ&A
 Q 神経を圧迫するってすごいつらそうな感じがしますけど、症状としてどのようなものがあるんですか?
 A 腰椎椎間板ヘルニアの症状はまず腰の痛み、そしてお尻から足にかけての坐骨神経痛です。
   圧迫される神経というのは坐骨神経と呼ばれ、腰から足先にかけて伸びています。           」
 
ヘルニアは脱出箇所の神経を圧迫する事により痛みや痺れが発生すると説明があるにも関わらず、
脱出箇所を起点とした痛みや痺れではなく、お尻から足にかけての坐骨神経痛という表現が不可解である事、
そして、椎間板ヘルニアと診断された患者は、神経の走行と完全に一致している痛みがあるかという疑問。
私は残念ながら、そのような患者に遭遇した事はありません。
 
これらの話より、ヘルニア発症の際に神経が炎症を起こして痛むという説も成り立ちません。
そもそも炎症って数ヶ月~数年も続きますか?骨を折っても長くて数週間ですがな。
疼痛が日内変動を伴いつつ数年も続くような炎症ならとっくに難病指定されてますよ。
 
こんな時期にロキソニンを処方して何になる?
COXをナンボ阻害しようが、昨日たまたま引いた風邪の症状が落ち着く程度です。
 
 
何故、鍼灸治療で症状が改善されるのかという問題⇒
 
鍼灸に限らず、各手技療法にても改善されている事実があるということ。
観血的治療が行えない我々の治療でも症状の改善がみられるということは、
ヘルニアが痛みや痺れの原因ではないと示唆しているのではないでしょうか。
 
 
この他にも多くの疑問を抱かせる椎間板ヘルニアの診断に関しては、早期段階で決着を付けなければ
医療費の圧迫、患者の社会復帰の遅延、そして経済的、時間的、肉体的負担は絶対に避けられません。
 

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