藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

入り口を間違えると修正不能のまま強制排出される結果となる

「私は、腰椎分離すべり症で固定術を受け、6年程経ちましたが、足のしびれは消えず、腰痛に関しては手術前より動きも悪くなり、痛さが増したと感じている者です。
再度の手術でさらに痛みが増えるのではないかと怖くて、抜釘はしないでいました。
先日、レントゲンをとったところ、固定した上の椎間板が、減って傾いていました。(お腹側がすり減って傾斜)
主治医からは、私が訴える痛みは
 
【気のせい。しいて言うなら、固定した腰椎の上にある椎間板がすり減っているから腰痛がある。すり減った椎間板はもどらない、腹筋背筋を鍛えるしかない】と言われました。
椎間板がすり減って、腰痛が悪化したと言われると、現状の足のしびれが残っていたり、腰痛が増えた私にしてみると、固定術の手術自体が意味があったように思えなくなっていました。

腰痛、足痛の他、首肩も悪いので、頭痛・めまいは常にあり、正しい姿勢で座っているのが辛いです。
体を診てもらってないので、どの程度の治療が必要か定かではないと思いますが、このような症状の人ですと、どの程度の通院期間・注射回数なのか目安を教えていただきたいです。
                                      (愛知県在住なので滞在計画を検討したいです)」                                      
この方だけの悩みでは無いですね。
そして、100人や200人の悩みでも無いですね。
 
脊柱管狭窄症、分離症、椎間板ヘルニア骨粗鬆症etcにて固定術を行うも、
結果が出ない患者は、残念ながら世の中にゴマンといます。
 
何故なら、結果の期待出来る治療法ではないですからね。
 
原因を釘で打ちつけても結果は出ません。
寧ろ、釘を打ち付けた所は可動性を損ないますので、悪化の一途を辿る結果しか見えません。
 
治る概念を知らなければ上記の結果に陥ります。
それは、最早堂々巡りでしかありません。
 
私達は治す為の概念を常に追求し、深化させています。
鍼を持てる人間であれば刺鍼技術と触診技術の鍛錬で、
当院の場合、どの医師や鍼師が鍼を打っても同じ結果を出せるよう、
日々、良い意味でのマニュアル化に努めています。
 
高い再現性と、確実性、低侵襲にて高い効果と永続性を標榜する持続性を追求しています。
 
只、今の状態では明らかに治せる人間の頭数が少なすぎます。
 
そして、肩書きは同じ鍼灸院や整骨院であっても、
治せる概念を持ち合わせていなければ無効治療ばかりで終始してしまいます。
 
簡単に言えば、
治療ベッドから降りた段階で症状がぶり返す、
出口のドアを開けた段階でぶり返す。
治療後、スーパーで買い物をしていたらぶり返す等々。
 
経験ありませんか?要は、その場凌ぎの結果しか出せない事になります。
 
それを治療とは決して言えません。
 
私も含め、今後も更なる修練を積み重ねていかなければと思います。
 
補足⇒
【気のせい。しいて言うなら、固定した腰椎の上にある椎間板がすり減っているから腰痛がある。すり減った椎間板はもどらない、腹筋背筋を鍛えるしかない】
上記の医師の発言で正しい箇所は、「すり減った椎間板はもどらない」だけです。後は全て間違えています。
 
>痛みを気のせいにしてはいけません。痛みこそ病気であり障害なのです。
>椎間板はすり減っても腰痛は発生しません。
>痛みを受容している箇所を腹筋背筋で負荷を掛けたら余計悪化させるだけです。
 
そもそも論として、下部腰椎に固定術を行ったから、可動性を持つ上の椎間板に負荷が掛かり、
器質的な問題が出てきたのではないのでしょうか?椎間板のすり減りは固定術が原因ではないですか?

 
TheBackLetter
 
脊椎治療に携わる医師は、 労災補償請求患者に脊椎固定術を勧めないようにすべきであろうか? そしてさらに重要なことには、 患者はこの治療選択肢を勧められたら必ず断るべきであろうか?

労災補償患者に対する固定術に関する一連の研究 の結果を知れば、こうした疑問が生じるのは当然かもしれない。最近発表されたOhio州の対照コホート研究によると、 固定術は慢性腰痛とそれに関連する活動障害を軽減するが、 同様に悪化もさせるようである。

Trang Nguyen博士らは、 脊椎固定術を受けた男女の労災補償請求患者725例と保存療法を受けた同数の比較対照群についてレトロスペクテイブな調査を行った。
その結果、脊椎固定術を受けた被験者で2年間の追跡調査期間内に仕事を再開した患者は26%にとどまることが明らかになった。 手術を受けた患者の3分の1以上が術後合併症を経験し、27%が2回目の手術を受けていた。

脊椎固定術を受けた患者の4分の3以上が手術後もオピオイド使用を継続していた。 そして、 オピオイドの平均1日用量は手術後に41%も増加していた。
Nguyen博士と共著者のDavid Randolph博士は最近の電子メールで、 オピオイド使用量の増加は気がかりだと述べている。使用量の増加は機能的な改善の促進にはつながらないようであった。

博士らは「オピオイドの使用が仕事の再開に影響を与えるという我々の印象は変わらない」としている。多変量モデルにおいて、オピオイドの総投与量は、手術を受けた被験者の合併症、再手術、手術前の合計欠勤日数、および法定代理人の登場への有意な予測因子であるとともに、仕事を再開しないことの有意な予測因子でもあった。

2009年にWashington州で行われた研究では、脊椎固定術を受けた労災補償請求患者の死亡原因の第1位はオピオイド過量投与であり、気がかりとされる鎮痛薬に関連する死亡率は約1%であった。またOhio州で行われた研究では、試験期間中の死亡例数は対照群11例に対して固定術群では17例であった。
Nguyen博士とRandolph博士によると「これらの被験者の死亡原因については、予備的調査の段階であるが、大部分の死亡は薬剤に関連することが明らかになった」。

それでは、この研究の総合的な結論は何か?「椎間板変性、椎間板へルニア、あるいは神経根障害の診断に対する腰椎固定術は、労災補償請求者では活動障害、オピオイドの使用、長期欠勤、および仕事再開困難の有意な増加と関連する」とNguyen博士らは結論づけた(NguyenetaI.,2010を参照)。
Nguyen博士とRandolph博士は「椎間板変性疾患と椎間板へルニアに対するこの手術のアウトカムから考えて、これは治療選択肢として適切でない」としている。

危険な賭けでしかない?

労災補償患者においては、この種の手術は危険な賭けでしかないように思われる。 Kentucky州で最近行われた症例対照研究では、受傷し、その治療に固定術を選択した労働者の大多数で、この手術の有意な臨床的有用性は認められなかった。

Leah Carreon博士らによると、固定術後に活動障書(Oswestry活動障害度で評価) に臨床的に意味のある改善がみられたのは労災補償請求患者の19%のみであった。身体的状態(sF-36質問票で評価)に臨床的に意味のある改善がみられた患者はl6%のみであった。
固定術を選択した労災補償請求患者は、研究開始時も終了時も平均疼痛スコアが気がかりなほど高かった。

「外科医は労災補償患者と腰椎固定術の有効性を話し合う場合に慎重を期すべきであり、術前の健康関連の生活の質が低い患者ではなおさらそうすべきである。労災補償患者には腰椎固定術の前後で心理・社会的、職業上およびリハビリテーション面での追加的な支援が必要と考えられる」とCarreon博士らは述べている(Carreonetal., 2010を参照)。

更なる研究の必要性

残念ながら、労災補償請求患者に対する固定術に関する今日までのすべての研究では、多様な診断の患者をひとまとめにしていた。そのため、このような集団では単一の適応症に対して脊椎固定術が有効か否かは不明である。

Steven Atlas博士はSpine誌の“The Spine Column” というプログでCarToon博士らの研究を論評し、労災補償請求患者の手術および保存療法のアウトカムについて更なる研究が必要であるとしている。

Massachusetts General HospitalおよびHar- vard Medical Schoolのプライマリケア医であるAtlas博士は、 Maine Lumbar Spine StudyおよびSpine Patient Outcomes Research Trialの被験者を含む労災補償請求患者において脊椎手術のアウトカムを検討する複数の研究を実施した。

Alias博士によると「労災補償患者は固定術のアウトカムが劣っていたという観察結果から、その後の労災補償患者の治療方法が決まるわけではない。…これらの研究や他の研究が示しているのは、比較的均質な基礎的条件を有する労災補償患者におけるさまざまな治療のアウトカムの比較が急務だということである。労災補償患者における別な治療法との比較を行う無作為比較研究が必要である」。
Nguyen博士らも無作為比較研究(RCT) の必要性を主張しており、Alias博士と同様、関連する可能性のあるすべての影響を考慮できるのはRCTのみであると指摘している。

Nguyen博士とRandolph博士は両者とも産業医であり、労災補償システムの中で無作為比較研究を行うことは可能であるが費用がかかるであろうと述べている。
そして博士らは「大規模RCTの実施は気の遠くなる仕事である」として、次のように述べている。「これはアウトカムを客観的に評価 できるような大規模多施設共同研究にすべきである。また、長期追跡調査を行って脊椎固定術の長期的影響を評価すべきである」。

脊椎固定術はめったに行われない手術であるべきか?

整形外科医のStanley Bigos博士は最近の電話インタビユーで、労災補償患者に対しては脊椎固定術はめったに行われない手術であるべきだと強調した。

Bigos博士は、 この患者集団では特定の病態に対する脊椎固定術が決まった効果を発揮してきたとは言えないと述べている。
博士は「この手術には適応の見極めが必要である」 としている。この手術によって悲惨なアウトカムがもたらされることもある

そして「脊椎固定術はほとんどの労災補償請求患者には適さない。なぜなら、治療成功の確率が低く合併症と有害事象の発現率が高いためである」と付け加えた。
博士は、脊椎固定術は明らかに脊椎の不安定性のエビデンスを有するごく少数の患者集団に限定して実施すべきだと考えている 。

また、そのような患者集団であっても、慢性腰痛のある労災補償請求患者はしばしば雇用問題や心理・社会的問題に直面しており、それによって治療の失敗や長期活動障害のリスクが上昇する可能性があることから、固定術を実施するかどうかは慎重に検討すべきである。さらに労災補償をめぐる争い自体が治療成績を悪化させる可能性もある。

 
 
 青森から鍼灸治療の意識改革を~