他の筋肉ではどうなのかというご意見を頂いたので、別な筋肉を用い今回は記述致します。
今回は臨床上頻繁に用いられる斜角筋群に対してのアプローチです。
私自身前回のを読み返したのですが、これは特に中枢感作に対してだけの話ではなく、臨床上に於いて、治療
中の患者の姿勢が楽かどうかというだけの話かもしれませんね(笑)今回の斜角筋アプローチの場合は、
頸肩腕症候群、胸郭出口症候群、RSD(reflex sympathetic dystrophy)、カウザルギー、幻肢痛、断端痛、
肩関節周囲炎、TAO、ASO、Raynaud病やIBS、NUD等々の腹部自律神経症状等々にまで多岐に渡り考えてい
かねばならない事です。
斜角筋群周辺には、総頸動脈、椎骨動脈、腕神経等が富に走行している箇所でもありますし、
患者によってはC6辺りまで肺尖が伸びている場合もありますので無理な刺鍼は出来ない箇所だと考えましょ
う。
前置きとして、ジャクソンやスパーリングと言った神経学的テスト(これらのテストは神経ではなく筋の状態を診
ていると私は考えています)で頸を伸展や屈曲、側屈させた場合、患者が局所に疼痛を感じたり、放散痛、はた
また迷走神経反射が起こったりするケースも見られます。これらの患者に対して(陽性、陰性問わず)、初診時
から斜角筋群へアプローチを掛けようと、横向きだったり、座位での刺鍼は迷走神経反射やリバウンドのリスク
が高まります。
①強度短縮位 ②軽度短縮位 ③通常 ④軽度伸張位 ⑤強度伸張位
この5つの状態を考えながらアプローチを行おうとなると、強度短縮位(もしくは強度伸張位)の患者の頸に対し、
ジャクソンやスパーリングを行うだけで痛みが出るのは明白であり、初診時から座位で頸にアプローチを行おう
ものなら重力により自動的に出来上がったスパーリングテスト+鍼という、傷に塩を塗るような状態になってしま
いますね。これは避けていかねばならない状況です。
では、どのような姿勢が一番安全で患者が楽なのか…
①仰向け ②仰向けで頸だけ横向き ③横向きで枕高め ④横向きで枕低め
⑤うつ伏せ(顔を埋められる枕付き) ⑥うつ伏せ(顔を埋められる枕なし) ⑦座位
このような順番になっていくと思います。更に細分化も出来ますが主要な治療姿勢はこんなもんでしょうか。
これらの姿勢を患者の治療回数や状態で使い分け、
最終的には難なく斜角筋群へアプローチ出来る筋肉まで回復させてあげる事が重要課題なのかもしれません。
前回も同じ事を書きましたが、我々が頭の中にある軽度伸張位と、患者にとっての軽度伸張位は違うという事で
す。横向きで枕が低めの状態が、我々にとっては軽度伸張位だったとしても、患者によっては強度伸張位になる
場合もあるということです。このような場合は、枕を高めにする事で、患者にとっては軽度伸張位になります。
最後は、座位どころか立位でもスルスルと鍼が入っていく程の身体まで回復させてあげたいですね。
ではまた、ご意見、反論等が御座いましたらお気軽にご一報下さい。