藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

続 ソフトバンクホークス 小久保裕紀選手のヘルニアから考える

最近はNHKの健康番組でも取り上げられていましたからご存知の方もいるかもしれませんが、
 
学術誌「Spine 」で1995年に報告されている
           ・腰痛のない健康な人の76%に無症状のヘルニアが見つかった。
 
           ・腰痛のない健康な人の85%に椎間板変性が発見された。
 
という内容に関して、「ヘルニア=痛み」と信望している医療従事者は反論の余地を無くしたのではないでしょう
 
か。私の知る限り、関西や北陸、関東で活躍している医師、鍼灸師等はこの理論を組み入れ、多大な功績を残
 
しています。しかし、何故未だに「ヘルニア=痛み」と唱える方が多いのでしょうか。
 
その説明は余りにも説得力に欠け、こちらの反論に耐え切れないものばかりです。
 
ヘルニアが神経に触れる、若しくは圧迫する事により痛みや痺れが発生すると唱えた時代は
 
1911年まで遡り、Goldthwaitが「腰椎椎間板の突出が坐骨神経痛を引き起こし得る」と考えたのが最初
 
だと言われています。
 
100年前の考えを未だに引きずってきてしまっている現状は、
 
医学の教育現場で誤った知識を叩き込まれてきたからでしょう。
 
誤った知識を持つ人間が、誤った知識で教育を行う。このスパイラルにより、今の今まで
 
「ヘルニア=痛み」という時代が続いてしまったと考えられます。
 
反論を唱えていた人間は当時もいましたが、圧倒的多数の既存の考えを持つ人間により、
 
今でこそ正しいと言われ始めた意見は潰されてしまいました。
 
前回のブログでも書きましたが、ヘルニアが突出、脱出する一つの要因は大腰筋の短縮です。
 
                     http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/images/herniapsoas.jpg
 
・術後、ヘルニアが再発する。 
 
・術後、症状が改善されない。
 
この大きな2つの問題点を患者に詰め寄られた執刀医も反論が出来ないでいます。
 
執刀した医師が患者に納得した説明が行えないのです。 
 
その理由は明確で、医師が検査時に見ていないポイントが存在しているからです。
 
画像所見に頼るばかり、最も重要な筋肉の存在を見落としたのが問題だったのです。
 
しかし、喜ばしい事に筋肉に着目する医師も増えてきました。
 
TPBも保険適用となり、安価で治療が行える時代になってきました。
 
TPBによりある程度の疼痛は緩和されていく事でしょう。
 
只、問題はその先にあると私は考えています。
 
ペインクリニックを開業している医師の論文の中には、
 
「麻酔を体内に入れなくとも、注射針を体内に刺入するだけで同じ効果が出る」
 
と書かれているものも多くあります。その結果、「ドライニードリング」という概念が生まれ、
 
空の注射でも同等の効果を出せる事が分かったと同時に、鍼灸治療の研究も更に加速しています。
 
そうなると、注射針で届く範囲の筋肉であれば、薬液を体内に入れなくても効果が出るという事です。
 
そして、この注射針で届く範囲というと、前にも書きましたがせいぜい10センチ弱までの筋肉しか届かない。
 
痩せた方なら10センチの長さの針があれば、大抵の筋肉に直接アプローチ出来ると思いますが、
 
皮膚から筋肉までの間に10センチの脂肪があるような大柄な患者の場合は、
 
全く効果を出せない事になってしまいます。このような大柄な患者に対してはどのようにペインクリニックの
 
医師は対応しているのでしょうか。今後はより長い注射針の製造が求められる事になるでしょう。
 
もしくは、針を鍼に持ち替える日がくるかもしれません。
 
 
では、少し論点を変えます。
 
ヘルニアの除去手術で治った人も世の中には大勢います。
 
この実績が、現在まで既存の考えを引き継いだ結果でもあるのでしょう。
 
ヘルニアの除去手術にはどのようなものがあるのでしょうか。大雑把にまとめますと、
 
 ・ラブ法 ⇒ 全身麻酔で、肉眼でヘルニアを摘出
 
 ・MD法 ⇒ 全身麻酔で、顕微鏡視下で摘出
 
 ・MED法 ⇒ 全身麻酔で、直径約2cmの筒の中に内視鏡と器械を入れてモニターを見ながら摘出
 
 ・PN法 ⇒ 局所麻酔で、椎間板に管を差し込んで、内径約5㎜の管の中から特殊な器具を通して隋核を摘出
 
 ・PLDD法 ⇒ 局所麻酔で、内径数㎜の管の中からレーザー光線で髄核を焼いて縮める
 
 他、更に侵襲性の少ないPELD法もあります。自費の場合、合計で150万円弱も掛かるだとか。
 
上記の手術法の開発、開拓により、患者さんへの肉体的負担はどんどん少なくヘルニアの除去は
 
可能となってきました。では、何故上記の手術を受け、治った人がいるのでしょうか。
 
とある医師はこのように分析しています。
 
全身麻酔により筋緊張、痙攣が解けたから」
 
「患部(ヘルニアの場所)までへの穿刺により、筋肉に物理的刺激を与えた結果、筋緊張、痙攣が解けた」
 
と解説しています。
 
この医師の解説を頭の隅に入れた状態で、術後の患者の具合を考えるとどうなるでしょうか。
 
A「全麻の場合、各骨格筋は弛緩し、一度リセットする事になる為、術後の状態は良い。
 
  しかし、再発した原因は、患者の生活様式で問題点を改善しなかったから起きた。」
 
B「局麻の場合、腰部の筋に物理的刺激を与えた結果、穿刺をした筋の緊張が弛緩し、
  
  腰周りの具合は良好となった。只、術前からあるヘルニアの症状だと言われていた足の痛みや痺れは消え
 
  なかった。更に、再発した原因は、患者の生活様式で問題点を改善しなかったから起きた。」
 
納得出来ませんか?生活や仕事の時の姿勢や体の使い方で無理が祟り続け発生した症状は、
 
手術や鍼灸治療で良くなったとしても、日常の生活を改善しない限り再発すると私は考えています。
 
そして、Bの「只、局麻手術の場合、術前からある症状の足の痛みや痺れは消えなかった」の部分に関しては、
 
足の痛みや痺れの原因が、神経にヘルニアが触れて痛みが起きていないという証拠でしょう。
 
この段階で「ヘルニアが神経を触っているから痛む」という図式が崩れます。
 
ヘルニアを除去するから痛みが無くなるのではなく、筋緊張を弛緩してあげる事により痛みが無くなると
 
考えられます。
 
もっと単純に述べると、
 
椎間板ヘルニアと診断され来院する患者さんの話を聞くと、痛みがその時々で憎悪したり緩和したりするとあり
 
ます。この事について、「ヘルニアが神経を触っているから痛む」と考えている方達はどう捉えているのでしょう。
 
ヘルニアがその時々で出たり引っ込んだりしていると解釈するのでしょうか。
 
そして、画像所見に異常が無くても、ヘルニアと診断された患者さんと全く同じ症状を持つ方も多くいます。
 
異常所見が無かった場合は、坐骨神経痛や原因不明等と下されていきますね。
 
ヘルニアや脊柱間狭窄症、坐骨神経痛、原因不明諸々…何故、
 
「筋肉痛ですね」
 
と言えないのですか?フクラハギがこむら返りを起こすように、腰やお尻の筋肉だってこむら返りを
 
起こす事もありますよ。痛みの原因ではなく、構造の問題を告げられても
 
患者さんは途方にくれるだけじゃないですか。しかも、構造の問題が痛みを発している訳でもなしに。
 
 
 
手術が大好きな医師は別として、多くの医師は手術よりも保存療法を先ずは提案します。
 
侵襲性の少ない術式がある現代に於いても尚、保存療法を提案するのは何故でしょうか。
 
保険適用の手術であれば、高額療養費の対象となり、
 
患者の経済的負担にも天井が出来るのは十分知っているでしょう。
 
ある医師は言いました。
 
「手術をしても大した良くならないのは知っている。只、私は上の指示に従うしかない」 という事です。
 
この医師を責める事は出来ません。古くから続く体制が、今日の現場に立つ人間をなし崩しにしているのです。
 
 
しかし、このような組織を離れ、痛みの原因を「筋肉」に着目し、個々に開業している医師や鍼灸師が増えている
 
のも事実です。全体から見たらまだまだ少数かもしれませんが、同じ理論を持つ個々が団体となり、
 
一般人の目に触れるメディアにも浸透していく程に力を強めてきています。
 
確かな実績が、今後の信頼を生むはずです。あの人は治ったけど、この人は治らないじゃ医療ではない。
 
今後の展望を変えていく為にも、日々臨床の場において私達が実績を積み上げていくしかないのでしょう。
 

 
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