藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

ソフトバンクホークス 小久保裕紀選手のヘルニアから考える

小久保選手の術後が芳しくないと今朝のニュースで流れていた。
 
前にも落語家の歌丸さんが3度目の脊柱間狭窄症の手術をする話を聞いた時に同じ事を伝えたのだが、
 
やはり状況は変わらないようだ。広く認識されるまで何度でも言うが、「構造の変化と痛みは相関しない」。
 
ヘルニアが痛みの原因ではないのだから、手術をしても状況が改善しないのだ。
 
要は、ヘルニアが神経を圧迫しても腰痛や痺れは起きないということだ。
 
ヘルニアが発症したから腰痛となったのではなく、腰痛が酷くなりヘルニアとなる。
 
画像所見から見た結果を追い求める治療ばかりを行い、原因を追い求めないから改善が見られないのである。
 
先ず、何故ヘルニアが起きるのかを考えてみるところから始めるべきだ。
 
イメージ 1
 
 
 
 左の図がヘルニアの好発箇所である。
 
 主に、背中の後方や外側に向けて髄核が突出する。
 
 腰椎に好発する理由は、腰椎が胸椎等に比べ
 
 大きな可動性があり、強い筋群が周囲を囲んでいるからで
 
 ある。そして、何故大半のヘルニア患者と言われる方々
 
 が後方や外側へ髄核が突出するかと言うと、単に
 
 屈曲する頻度が伸展に対して多いからである。
 
 腰を屈曲させる周囲の筋群と言えば、
 
 大腰筋、小腰筋の代表的な筋肉の他、
 
 各腹筋群も屈曲の役割を果たす。
 
 
主にこの中の脊柱(腰椎)を強く支持する筋肉が大腰筋である。大腰筋の解剖図を今一度見てみると、
 
イメージ 2
イメージ 3
 
 右の写真は3番が大腰筋である。
 
 このように、大腰筋は腰椎の両側を強く支持し大腿部まで伸びている。
 
 所謂インナーマッスルの代表的な筋である。この筋肉は相当深部にある為、一度強く短縮してしまうと、
 
 なかなか元に戻らないのである。痩せた患者であれば、仰向けの状態でお腹側から大腰筋を触知する事も
 
 可能であるが、ほぼ触知は無理だと考えても良いかもしれない。指が届かない距離にある為、
 
 我々は鍼で直接的にアプローチするしかない箇所である。
 
 では、この大腰筋が強く短縮するとどうなるであろうか。
 
 強く腰椎の屈曲が起こり、髄核が押し出される形で突出する事になる。
 
 ギックリ腰を繰り返せばヘルニアに発展する話はよく聞くと思う。
 
 ギックリ腰も何タイプかに分かれているが、大きな要因はこの大腰筋の異常痙攣によるものだ。
 
 その為、一度目のギックリ腰で処置を誤ると、ギックリ腰がクセになり、髄核の突出と至ってしまう。
 
 その頃には腰部の痛みも相当強いであろうから、整形外科にて画像診断を受ける事になり、
 
 「ヘルニアですね」と診断を受ける。只、ヘルニアが神経を圧迫しているから痛みが出るという事はない。
 
 大腰筋の異常痙攣、もしくは強い短縮により様々な筋肉が代償した結果、お尻や足が悲鳴を上げてしまったの
 
 である。
 
 もし仮にヘルニアにより神経を圧迫し、痛みや痺れが出ると仮定しよう。
 
 ヘルニアの好発箇所はL4~L5、L5~S1間となる。
 
 仮にL4~L5だった場合、L5~S1だった場合は症状の拡がりはどうなるか。
 
イメージ 4
 
L4~L5の場合は、L5の部分に症状が出る。 L5~S1の場合は、S1の部分に症状が出る。
 
だが、実際問題どうだろうか。来院される患者の疼痛部位はこの部分だけであろうか。
 
大概のヘルニアと診断を受けた患者の症状は、腰やお尻、大腿、下腿、足裏と拡がりを持っている。
 
という事は、神経の圧迫による痛みや痺れは関係が無い事が分かる。
 
何より、神経が圧迫された場合、痛みや痺れではなく「麻痺」が起こる。
 
その場合は馬尾障害が起き、排泄排尿に障害が生じる。
 
小久保選手のようにプロスポーツの選手ともなれば、大腰筋以外の各筋肉も一般人に比べたら相当鍛えられて
 
いるだろう。その為、大腰筋の異常短縮や痙攣が起きていたとして痛みが出ていた場合でも、
 
他の筋肉が代償していた結果、試合をこなせていたのだろう。
 
しかし、適切な処置を早い段階で取らないと
 
 
この記事の最後の部分にもあるように、試合後には身体は「くの字」になってしまう。
 
他の代償筋も悲鳴を上げてしまい、大腰筋の短縮に耐え切れない状態となってしまうのだ。
 
では、小久保選手のバッティングフォームから、腰痛の発生原因を見てみよう。
 
左上から1~2枚目の写真で、腰の周囲の弱体化した筋群を右足にて逃がしているように見受けられる。
 
写真を見る限り、既にこの頃には大腰筋や腹部の筋は相当辛かったのかもしれない。
 
左上の端の写真の、右足の内転筋群の踏ん張りが腰の痛みを物語っている。
 
イメージ 5
 
 
左上から3番目の写真から左下の1番目の写真に掛けて、異常に強く臀筋群に力みが入っているように
 
見受けられる。大腰筋の痛みを臀部の筋で補っている。
 
主に、臀筋群の中臀筋や小臀筋は太ももの外転に作用する筋肉である。
 
外転に作用する筋肉をグッと一度体幹に引き寄せ、右上の端の写真にあるように強く地面に付け、
 
左下の端の写真まで強いブレーキングを臀筋に掛けながら、反動でバットを回しているようにも見受けられる。
 
この動きが、他の記事にもあったように、左臀部の強い張りを呈している結果なのだろう。
 
一つの目安としてトリガーポイントのチャート図を紹介する。
 
イメージ 6
 
×印が罹患箇所で、この部位にトリガーポイントが発生すると赤い部分に痛みや痺れが生じやすいというも
 
のだ。
 
疲弊した状態でこの動作を何度も何度も繰り返すとどうなるであろうか。
 
いつのまにか症状は固まり、慢性的に症状を出し続ける事になるのだろう。
 
そして、慢性的に痛みを出し続ける事になれば、代償筋の弱まりを他の筋が代償する。この繰り返しにより、
 
負担の掛かる筋はどんどん飛び火していくのである。だから、何事も早期治療が必要なのだ。
 
上記のURLの記事にもあるように、電気と鍼にて治療を続けたという事だが、
 
しかと、上記に掲げたインナーマッスルを緩めていたのであれば、今のような状況は起こり得なかったであろう。
 
これから適切な治療を受ければまだ間に合う。
 
小久保選手の回復を心よりお祈りする。
 
 
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