藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

刺針時に関する個人的見解


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上段写真は患側となる刺針部位が床側となっていますが、これは撮影タイミングによるもので、実際の刺針時の姿勢(治療時姿位)と異なります。実際には下段の写真のような状態で刺針したものです。普段私は左手にニトリルのグローブを用いてますが、万一の出血に備えた感染対策等の衛生的な意味合よりも、刺針時(切皮時)の皮膚伸張に際し、グリップ力を高める事が主な目的です。
副産物的に左手に熱がこもる事で患者の皮膚接触時に冷感を与え難いと言うメリットも生まれます。余談ながら、ラテックスアレルギーの話は有名ですが、時にニトリルでも湿疹やカブレが生じる可能性はゼロではないようです。ただ、現在までそのような話は聞いた事がありません。

刺針中の写真も在りますが、今回はこちらの写真を使用します。人それぞれですが、刺針後数分~数十分間は、このように刺針部位が隆起する人もいます。その為、今回は、このように刺針部位が明確に分かる写真を使用します。恐らく、異物である針に対しての抵抗反応かと見受けられますが、筋活動量が多い方に散見され、その逆に筋活動量の少ない方には見受けられない現象です。

これらの刺針に対しての適応(症)の話は今回全て除外しています。その為、以下をお読み頂いても「何に効くか」と言う説明はありません。あくまで個人的見解に基づく刺針時の注意点等に関するものです。
一見一律に刺針痕が並んでいるように見えますが(上段写真)、実際には患者の抱える基礎的身体状態によって異なります。椎体や椎間板の摩耗や圧壊、すべり等に伴う構造的な異常や元疾患性問わず、治療時に自然形成される椎体の捻れ等も生じている場合も多々ある為、この限りではありません。
後述する事にもなりますが、目的部位への刺針に際して安全性や確実性を求めた場合、腰頚部問わず治療時の姿位は横臥位が最も良い印象を受けます。今回は腰部の説明ですが頚部も含めた治療となると前頚部も治療対象となる為、仮にも仰臥位であれば前方刺入となりリスク高度(椎骨Aや内頚Aの穿刺リスク)になりますし、腹臥位であれば、そもそもアプローチ出来ない(し難い)姿位になります。
腰部に関しては、仮に腹臥位で治療を進行させた場合、腸骨稜が強くせり出ている場合や、椎体や椎間板の摩耗や圧壊、すべり等が著しい場合、上後腸骨棘とL5肋骨突起間のスペースも極端に狭くなる他、仰臥位でも同様な事が言えますが、フラットなベッドの場合、治療姿位を取るだけで腹圧及び重力等で生理的に保持されている腰椎の前弯が後弯化する懸念がある為、、治療姿位そのもので損傷性が高まりますし、腹臥位で治療時間を進行させた場合、有孔ベッドであれば問題はなくても、往診先の環境も考慮すれば横臥位が最も負担は少ない姿勢となるでしょう。
刺針時に関してはL6等の奇形等も伴う事も考慮すれば、ヤコビーライン等で単純に位置決めする事はせず、各脊椎高位は原始的に仙骨から棘突起を指標にナンバリングしていくのが一番良いかもしれません。肥満体形や高齢者の場合、棘突起の同定すら困難な時がありますが、このような場合でも棘突起の際を指圧するように沈みこませ、各脊椎高位の棘突起の形状を把握すれば不可能ではありません。
一般的な体形であれば、刺針部位の棘突起を4~5指のDIPで、1~2指の手指先端で椎間関節の幅を触知し、見当付け出来れば椎体の幅もイメージし易いものと思います。L5/Sは、上後腸骨棘とL5椎間関節で見当付けするのが良いと思います。腸腰靭帯の存在も踏まえれば、若干外側から当該部位へアプローチするのも良いと思われますが、腸骨陵も外側になる程に膨らみを見せますので、刺針時の困難度は上がるものと思われます。
基本的に各脊椎高位も肋骨突起間を貫くスタイルになる為、摩耗や圧壊、特に微細な椎体の圧迫骨折を繰り返した円背傾向を示している場合、数ミリの幅に対して針先をブラインドで送る事になる為、仮に一回で目的部位に入れられない場合もあり、肋骨突起に針尖が触れる事もあります。その時は無理に刺針転向せず、その針をランドマークとし、新たな針を用いるのも患者負担を考慮すれば悪い事ではないと思われます。

写真中段の通り、腰椎は基本的に生理的な前弯を伴っています。勿論、先程の通り、摩耗や圧壊等の構造的異常、側弯や奇形を伴う人もいれば、経時経年の過負荷により、占拠性病変や器質的異常はなくても常時後弯化(常時後弯と言うのは一般的にはストレートネックやストレート胸椎、ストレート腰椎と言う意味)している人もいます。横臥位になる事で自然に後弯を形成する人もいますので写真の限りではありませんが、写真上では一見腹部に対して垂直に刺されているように見受けられるものの、身体内部では扇状に広がるように刺針されています。
一般的にL5/Sは腹臥床でも横臥位でも、脊椎外側(遠位)から刺入しようと思うと、外側であるほど腸骨稜が邪魔をする為、刺針部位はヤコビーライン上からに見えるかもしれませんが、仙骨側に刺針角度(針尖を尾側に向けている)を付けています。その為、患者体形によってはL4高位からL4/5、L5/Sに針尖を振り分ける時もあります。
近位(脊椎側)から遠位(腰方形筋側)に掛け、大腰筋部、椎間孔部、腰部交感神経節部への刺針となります。腰部交感神経節部に関しては肋骨突起間を貫くような技術的介入度は下位腰椎の場合必要ないかもしれませんが、L2/L3、L3/4辺りは内臓器への懸念もある事から写真のように刺針幅を狭くとります。
手術等の為に鎮痛作用を齎す為ではなく、あくまで神経実質の機能回復及び周囲軟部組織の機能回復を見越す場合、神経実質に刺す理由は臨床上での意義はないと思います。あくまで近傍の小動脈血管の拡張目的、当該神経支配領域及び当該神経支配領域交感神経節の機能回復を求めます。
より選択的損傷行為を同定したい場合は、神経根症等の髄節性、非髄節性、椎間関節性他、個人的には消極的ですが、上殿皮神経(以下N)、上殿N、下殿N、股関節性等もあるかもしれませんが、根本的な問題を考慮すれば枝葉的でしかありませんし、1回の治療毎に損傷行為の同定や確認を求めたところで、あくまで症状改善を見越す来院目的である患者ニーズとは沿わない内容になると思います。
勿論、整形領域的視点で見れば、筋肉や筋膜、靭帯の損傷等もあるかもしれませんが、これらの軟部組織が、仮に一過性ながらも損傷⇒交感神経反射⇒血管収縮⇒低酸素状態に陥いり、ネガティブな循環に陥った場合だとしても、幸いにも酸素分圧保持の為、生理的な血管拡張から自然治癒は起きる為、個人的には重要視していない部分でもあります。その為、これらの部位に対して刺したほうが良いか、刺さなくても良いか、と言う2極論で捉えた場合、答えは前者になるかもしれませんが、個人的には過去からの治療反応性も踏まえた経験側も大いに含まれますが、必要性は感じていません。
多くは非外傷性且つ陳旧性を伴う症例が大半を占めてくる為、あくまで症状発症や憎悪、持続的に症状を惹起している原因を考える事が一番だと思われ、侵害受容器の持続的賦活化環境部位の形成理由を探る事が肝要かと思います。少々深く考察すれば、世間一般で言う中枢感作と言う概念が最も近くなるのかもしれませんが、現行での中枢感作と言う定義自体、非常に変動性の多い不安定な存在なので、そこの内容に依存している訳ではありません。
このように、中枢に強制反応を来した結果、体調不良を起こす(例 脳幹由来の自律神経症状や内分泌異常等)薬害絡みではない場合、上記内容で充分な症状改善要素を摘めると思います。
L4/5及びL5/S等の混合的な損傷等の多根性神経障害は高齢になる程多く、一般的なL4/5、L5/Sのみならず、L2/3、L3/4の損傷も少なくありません。大腿Nや閉鎖N、座骨N等のダブルにもトリプルにもクラッシュしていると推測されるような症例も珍しくない事から、あくまで診断的意味合いや損傷高位同定としてではなく、治療行為として捉え、且つ患者トータルコストを鑑みた場合、このような手法も良いと思われます。

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 ~針治療から病態定義の見直しを~