藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

筋肉や筋膜を標榜する脆弱性を考える


各部位の(狭窄性)腱鞘炎様症状や各部位の関節痛様症状、他、各部位の神経痛様症状等も含めだが、一見発痛部位が原因部位と見立てられがちな症状も、その多くは発痛部位に加療しても症状の軽快感を得られない患者が多数を占める。
「症状の改善が無い」と言う情報から幾つかの仮説が立てられる。その治療作用が弱いか、その治療手段が持つ作用による回復を上回る損傷を繰り返し続けたかも考えられるが、発痛部位が原因部位でない理由も多い。
部位問わず、これらの状況を精査し、現場感覚や現場結果も含めて考察、構築した場合、その多くは脊椎と脊髄の関連性と問題に集約してくる事が分かる。
成長期の脊椎と脊髄、そして抹消へ走行する際の関連性、高齢期の脊椎と脊髄、そして抹消へ走行する際の関連性、家事や労働内容に伴う脊椎と脊髄、そして抹消へ走行する際の関連性、重力と占拠性病変や器質的異常の生じている脊椎変性疾患を抱える群と、異常の無い脊椎での改善速度や治療安定性、再燃率、進行が緩慢なのか敏捷なのか等、非常に興味深いものがある。
凡ゆるテンションの強弱に伴い、神経系症状は多種多彩な症状を患者に自覚させ、軽微な外的刺激も増幅させる。勿論、それは外的刺激のみならず、自動運動でも同様である。これらの症状は患者に「動くな」と言うサインであり、患者にとっては短期回復を促す有益性の高いサインでもある。増幅させなければ患者は今以上に破壊、症状を強大化させてしまう事は全ての人間が実体験にて既知している事だろう。しかしながら、そのサインが中長期的に継続した場合は日常生活を脅かす結果となる為、復帰を臨もうと何かしかの治療手段を模索する事になる。
神経実質が傷んでいない症状であれば手術も適応するかもしれないが、神経実質そのものが傷んだ場合に生じる様々な症状に関しては、手術と言う手段は実に弱い作用しか持たない事を患者は教えてくれる。幾ら低侵襲が存在するとは言え、10回も20回も同部位を手術する訳にもいかないとは思うし、かと言って数十回も手術をする理由も見つからない。
除圧でも切除でも何でも構わないが、その事で回復の確率は上がるかもしれないが、多くは手術した事での経時経年での他部位損傷のリスクも背負う事になる。
それであれば、保存療法で、且つ頻回治療にも耐えられ、カジュアル性の高い方法を構築する事が患者の有益性を高める一因となる。神経実質が傷んでいない上での症状、そして神経実質が傷んでいる症状の両面に適した手段の構築を考える必要がある。これに関しては突飛とした治療変化があるものではないが、結果的には複合的な要素が孕んだ症状を多数の患者は抱えている。
私自身、筋肉や筋膜と言う存在には然程興味を示していないが整形領域の患者を診ていないと言う意味ではない。これは、何故針治療で中枢神経系疾患の改善が見込めるかと言う、「針治療の作用の波及性」を鑑みる事で、頚部から下、言わば抹消の凡ゆる諸症状に関しても、筋肉や筋膜を操作すると言う理論理屈は、極めて治療反応性の不安定感が高く不確定要素が高いと言う意味が分かってくるものである。
しかしながら、何故これ程迄に筋肉や筋膜と言う存在がクローズアップされているのかも患者側は知らなければならない事だと思う。これは悪意を持って書いているのではないのだが、先程も書いた通り、痛み治療は迷走し、星の数ほど存在する凡ゆるケア、及び代替療法が突っ込める部位と言うのが、筋肉や筋膜「まで」なのだ。故に多層である群が筋肉や筋膜を標榜する為、オーバーグラウンドとしての立ち位置に居ると推測される。
そして、筋肉がメインとしての症状であれば、寝ているだけで大半が治る。それも多くの方が実体験として既知としているはずである。極めて鋭敏な痛みも、急性時期の炎症が過ぎ去れば、取り敢えずは痛いながらも日常復帰は可能である。
勿論、神経実質の損傷(非損傷含む)等も含め、どの症状に関しても人間は自然治癒する能力は保持しているとは思うが、筋肉がメインの損傷であれば、横になってゴロゴロしているのも治療手段としての価値は高い。そして、ゴロゴロしても治らない症状は、何故ゴロゴロしても治らないのかを考えなければならない。
一見、肩凝りや腰痛のように見受けられる筋肉や筋膜、と言う存在が痛みを発しているようなものであったとしても、寝てても治らない人は大勢いる。このような状態は筋肉や筋膜に原因がない事を治療反応性から知る事もでき、そして結果的には神経の痛み、神経部位の異常である事が分かる。
以前も書いたかもしれないが、筋肉は直接的に脳に痛みを送ってくれないし、脳は直接的に筋肉を動かしてもくれない。筋肉は筋肉に栄養を送る事もないし、筋肉が筋肉を動かす事もない。そのように考えると、基礎知識として配置や走行は知らなければならないかもしれないが、症状改善と言う臨床に適応させようと思うと、筋肉や筋膜と言う存在価値は薄くなる。
レーニングをすれば太り、寝ていれば痩せる、若ければ柔軟性があり、年を取れば硬くなる。国際大会に出る程に仕上げられているフワフワした筋肉を持つ人間が肩凝り腰痛を訴える一方、針が曲がる程に硬い筋肉を持つジジババが元気にシャンシャン歩いている。そのような良くも悪くも変動性に富む細胞と言うのは、症状改善と言う手段にリンクしない。
勿論、当該部位を揉んだりストレッチしたりウォーキングすれば筋細胞の血流量は改善するかもしれないし、軽快感と言うのを自覚される方々も多くいるのは知っている。知ってはいるが、それでは治らない人も大勢いると言う事だ。そうなると、原因は筋細胞には存在しない。
勿論、明確な筋損傷等(筋断裂等)があれば話は別かもしれないが、日常生活を起因とした多くの非外傷性の諸症状に対して、筋肉と言う見立てで急回復を成し遂げられる症状と言うのは限定され、今後も個人的には更に限定されていくものと感じている。
仮にも、それが選択的治療の手段を持ち得ない多くの薬物療法は全身投与となる為、仮に原因部位が何処であれ、症状を抑え込む事が出来た場合、それ以上の事は考える必要もなくなる。温泉やサウナも全身投与と言えば全身投与になる。
患者側にとっては良くなれば何であったとしても構わないかもしれないが、治療する側にとっては発展性を高めていく為には全身性の療法よりも選択性である事のほうが価値は高く、且つデータ構築が可能となり易い。そして一番のメリットは既存の病態定義の洗い直しが可能となる、と言う事であり、改善率を上げていく事が出来ると言う事だろう。
その多くが神経と血流が絡む。全ての細胞は血液によって栄養され、血流によって維持される。その部位が何処であるかで様々な機能障害を呈する。
但し、先程も書いた通り、神経系は多種多彩な症状を出し続ける為に、様々な病名が生まれては消え、時代によってトレンドもあるかもしれない。年代別で要らぬレッテルが貼られる場合もあるかもしれないが、針治療と言う極めてシンプルな作用を持つ手段しかしていなければ見えてくるものもある。

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