藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

ベンゾジアゼピン系の中長期服薬による反跳性筋硬直の考察


普段は向精神薬の有害性について述べているが、以前も記載した通り、私は患者自身から薬物関連の意見を求められない限り、明らかな薬剤性由来は除き、一切対応していないというスタンスである。仮にもベンゾジアゼピン系(以下 ベンゾ系)を服薬していようが、非ベンゾ系由来の諸症状(例えば整形外科的疾患)を複合的に抱えている患者が圧倒的に多いからである。そのようなスタンスを保持する事で見えてくるものもある。
高齢層のベンゾ系服薬率は極めて高い。主に睡眠薬と言う名目で処方されているケースが圧倒的多数を占める事になるのだが、中長期服薬に伴う同用量の服薬は多かれ少なかれ耐性が伴う事で反跳性作用ではないか?と推測されるケースも多い。
その1つに不安と言う感情が高度である。睡眠障害等の改善目的として、睡眠薬名目として服薬し続けるケースとてベンゾ系はベンゾ系には変わらず、抗不安作用の耐性も獲得した事で、感覚的なものかもしれないが、不安神経症様症状を呈している群と言うのを多く見掛ける気がする。偏見のような気がしないでもないが、ベンゾ系長期服薬者はナーバスで神経を鋭敏に尖らせているようにも見受けられる。
針治療やブロック注射と言う治療手段は他の保存的治療とは異なり、極めて有効性、奏功性も高いが、末梢神経系機能異常の諸症状を呈している場合、治療由来のリバウンドと言うのも時として発生する。強い血管拡張を求める治療手段である為、効果が高い分、リバウンドも他の治療手段より発生率は高いかもしれない。
ウチで取ったデータとしては末梢神経系機能異常がメインの症状の場合、受傷2weeks内で4%、受傷2weeks以降で8%と、割合としては少なくはない。100人いれば10人弱がリバウンドを自覚する計算になる。その為、私はリバウンドがどのようなものか初診時には書面で渡し、口頭でも伝え、仮にリバウンドが発生したとしても安心するよう伝えているのだが、これもあくまで感覚的なものかもしれないが、中長期的に渡るベンゾ系服薬群がリバウンドの話を聞く、若しくは実際にリバウンドが発生した場合、非ベンゾ系服薬群と比較すると、何となくだが感情表現と言うべきか、反応が異なるのである。
うまく書けないが、執拗以上に不安に感じていると言うとストレートな書き方かもしれないが、そう言う事である。更にベンゾ系で先ほどの反跳作用も生じている状態であれば、外的刺激に対しての疼痛閾値も極めて低い傾向にもある。不安と言う感情は、それだけで凡ゆる外的刺激に対しての閾値を下げてしまう為、ベンゾ系の長期服薬者は極めて治療由来疼痛も厳しく反応を示すのも事実かもしれない。
それが以前も記載した通り、SSRISNRI、NASSa等の抗うつ薬をメインとして服薬している群は、外的刺激に対しての閾値も極めて高くなる為、治療由来の痛みを殆ど感じないケースが大半である。外的刺激の閾値が上がれば「痛い」から「気持ち良い」、もしくは「何も感じない」になる。これらは今後も観察していく必要性は感じる。
では本題に入るが、改めて高齢層のベンゾ系服薬率は高い。服薬する目的は睡眠薬であれ抗不安目的であれ、ベンゾ系には「筋弛緩作用」がある事も忘れてはならない。、もしかしたら私達の業界は「筋肉」と言う細胞に目を向けている方々も多いだろうから重要な部分かもしれないが、先ほどの睡眠障害を改善する目的であったり、抗不安作用を求めての服薬であったとしても、中長期的な服薬に伴い、耐性が獲得されたまま同用量を服薬し続けると、反跳性作用として、著しい不安が生じる事は書いたが、それ以外にも、筋弛緩の反跳性作用として筋硬直起きる可能性もゼロではない。
この筋硬直と言うのは厄介なもので、日常的に負荷が掛かり続ける組織でもある為、日内変動や日差変動も伴い、一定ではない。規則性がない。故に、患者自身も軽度の反跳性筋硬直の段階では、さして気にも留めていないかもしれない。精々、夜間就寝時の行動量の減少時から起床時の強張りを自覚する程度かもしれない。
この反跳作用による筋硬直も重篤化した場合、加齢に伴い、且つ脊椎に変性を持つ高齢層群はどの様な症状を呈してしまうのかと言うのを考えなければならない。勿論、若年層とて生じるものであるが、元来構造的な変性疾患を抱えていると、椎間孔部の易損傷性も高率となる事が容易に推測される。
それが仮にも神経根部、DRG部、脊髄部等、部位は何処でも構わないが、得てして片側性、両側性の不規則性が高いながらも症状を呈してしまう事があるのではないかと現場に立っていれば何となく考えてしまう事でもある。
しかしながら、これもあくまで推測である。体幹硬直は高齢層であれば日常的に見受けられる為に、硬直由来がベンゾ系だけではないと思うし、リウマチ因子やNSAIDsの中長期服薬に伴う血管収縮による筋組織の柔軟性の欠如等、他の理由もあるだろう。しかしながら、仮にも抹消遠位部まで症状を呈した患者とて、極めて中枢部近位の部位に対して処置をする事により症状が軽減していく事を鑑みれば、やはり可能性はゼロではないとも思える。

~参考補足~
下記のような患者がいたとしよう。初期は両手指の強張りと痛みを起床時に自覚し、整形外科で各種検査にて陰性、リウマチを疑い血液検査を行うも陰性。
その後、血清反応は陰性であれど「取り敢えず」と言う事でステロイド経口薬やMTX、tnf-α阻害薬、NSAIDs等の薬物治療が始まるが全て無効。その後、リリカやトラムセット、ノルスパンテープ等が追加され、一時的に疼痛軽減自覚があったものの、経時変化に伴い発痛部位が広範化し、初期の手指の痛みや強張りは体幹部や下肢へと広範化し、精神科を紹介される。
抗精神病薬抗うつ薬睡眠薬等が追加されるも、服薬初期は症状が軽減したかのように自覚はあったものの、やはり一時的な軽減自覚しかなく、広範囲な疼痛や強張りの他、手指や足趾、前腕や下腿全域に痺れを自覚するようになる。整形外科での診断は「線維筋痛症」「慢性疲労症候群」と言うお決まりの診断。精神科側では「よく分からん」と言う診断。全身に渡る機能性疼痛他、頭痛、頭鳴、耳鳴り、眩しい、便秘、体重増加、食欲減退、睡眠障害、頻尿、嗅覚や味覚障害、手指や足趾がソーセージのように腫れる等などの症状を抱える。
さて、このような流れを組む患者は全国に沢山いるが、これは「線維筋痛症」であり「慢性疲労症候群」だろうか。そもそも、これらの診断と言うのは薬害問題の隠れ蓑としては調度良い病名である事に気づけるだろうか。改めて、私は7年ほど前に「線維筋痛症」や「慢性疲労症候群」と言う傷病名を知り、随分と患者の追跡をしては微妙に違和感を感じ続けている。
各国で診断定義が異なったり、月日が経つごとに定義が変化したりする事は別にどうでも良いのだが、これは向精神薬や鎮痛剤の服薬に由来する症状、「薬害」ではないのか?勿論、「薬害」と言う定義を紐解けば異なるかもしれないが、向精神薬由来の諸症状を此処まで隠し通してきた歴史を鑑みる限り「薬害」と言う言葉がピッタリくる。

~参考補足 2~
機能的な症状として対称性の疼痛が高率であり、対称性の症状惹起時期に関しては、発症時期も同時であるケースが高い。整形外科的疾患からイメージした場合、頚椎症性脊髄症に近く、発症部位が両手指、両足趾、両前腕、両下腿、両上肢、両下肢、両肩頚等が左右差なく呈している場合、他、整形領域様症状である各脊椎高位神経根症状や頚椎症性脊髄症が疑われる症状、日内変動や日差変動の著しい(固定している場合もある)各種自律神経症状、且つ向精神薬の服薬がある(あった)場合。
一見、多発性筋炎、多発性神経炎、多発性硬化症、関節リウマチ、シェーグレン、ギランバレー等の自己免疫疾患と類似してくる諸症状を呈する場合や認知症様症状、ALS様症状、パーキンソン様症状、他、多くの脳疾患由来と推定される症状を呈する場合も見られる。しかしながら各種検査が陰性であり異常がない故に、線維筋痛症慢性疲労症候群むずむず脚症候群、複合性局所疼痛症候群等と診断されている場合、アイザックス症候群様症状、スティッフパーソン症候群様症状との類似性の高度も他、明確な所見を示すパーキソニズムやアカシジア、ジスキネジア、ジストニア、過鎮静、ファシクレーション、極度な不安感、極度な焦燥感、アクティべーションシンドローム等々の明確な薬剤性由来の症状が惹起されていれば即時的に判断は付き易い。
向精神薬の作用上、脳神経系伝達物質に反応を来す為、自然発症性の自律神経系症状と極めて類似性も高く、日常生活に多大な影響を及ぼし、後述するが、初期から高力価、多剤で処方されるケースは少なく、耐性獲得に伴い増量されていく事で緩徐に症状を呈し始めるケースも少なくない。外的刺激に対して疼痛閾値の極端な低下や上昇状態は明確に見られる。頭痛、原因不明の視力低下、異常発汗、ホットフラッシュ、めまい、耳鳴り、難聴、立ちくらみ、胸の締めつけ、喘息のようなセキ、飲み込みづらい、喉の違和感、不整脈、息苦しさ、季節に関係ない手足の冷え、下痢、便秘、生理痛、生理不順、頻尿、閉尿、夜尿症、勃起障害、慢性疲労睡眠障害、うつ症状等々は薬物由来でなくても発症する。
~主な精神症状及び身体症状~
易興奮性(イライラ・落ち着かない)、不眠、悪夢、睡眠障害、不安の増大、パニック発作、広場恐怖、社会恐怖、知覚変容(痛覚過敏等)、離人感、非現実感、幻覚、錯覚、抑うつ、脅迫観念、妄想的思考、激怒、攻撃性、易刺激性、記憶力、集中力の低下、侵入的記憶、渇望、痛み・筋肉の凝り(四肢、背中、頸、歯、顎)、ピリピリする感覚、痺れ、感覚の変容(四肢、顔、胴体)、脱力(下肢に力が入らない等)、疲労感、インフルエンザ様症状、筋肉がピクピクする、ミオクローヌス、チック、電気ショック様感覚、震え、めまい、朦朧感、バランス失調、霧視(ぼやけて見える、目がかすむ)、複視(二重に見える)、眼痛、ドライアイ、耳鳴り、過敏性(光、音、触覚、味覚、嗅覚)、消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、腹部膨満感、嚥下)、体重の変化、口渇、金属様味覚、嗅覚異常、潮紅、発汗、動悸、過呼吸、排尿障害、月経異常、皮膚発疹、かゆみ、ひきつけ
~主に臨床現場で高頻度で見受けられる症状~
「顔面や背部が重い」「頸部や背部に雑巾を絞るような痛み、抓られるような痛み」 「背部が引き下げられる感覚になる」「顔面が詰まる感覚になる」「微熱の持続」「涙が出る(もしくは涙が出そうになる感覚が持続する)」「頭痛(側頭部~頭頂部~後頭部)」「耳鳴り(耳閉感も含む)」「飛蚊症」「ドライアイ様症状」「強い不安感」「強い孤独感」「両鼻共、空気は通るのに鼻が詰まった感覚がする(副鼻腔炎様症状)」「粘膜出血」「体内(もしくは頭部)に熱がこもる感覚」「目を常に押し付けられている感覚がする」「顔面や背部が硬直するような感覚になる」「異常発汗」「口が苦くなる(金属臭や味覚障害的症状も含む)」「血圧の異常上昇」「下肢が重い」「下肢が落ち着かない」「背中を押される、若しくは引っ張られる感覚」「手指・足趾の強張り」「アロディ二ア」「動悸」「睡眠障害」 「生理痛」「胃腸障害(腹痛・便秘・下痢・便秘と下痢を繰り返す)」「過食」「食欲不振」「集中力低下」「思考低下」
脳神経系機能の異常や自律神経系機能の異常、自律神経系異常が伴う内臓機能異常、運動器疾患を彷彿とさせる末梢神経系異常の類に関しては、患者自身が薬物由来であると自覚出来る状態というのは、服薬後間もなく生じた異常により、自己判断出来るレベルである為、長期服薬で発生した種々の副作用や常用量離脱は判定し難いし、判定してもらえないケースが圧倒的に多い。
自然発症性の症状に対して向精神薬が処方されるケースが最も高いと思われるが、これらの自然発症、要は服薬せずとも自身の恒常性で治癒へ向かう可能性のある病態に対し、強制的に分泌物質の変動が及ぶ為、服薬し続ける為に病態が混沌としてくる。
冒頭でも述べた線維筋痛症慢性疲労症候群、血清反応陰性関節炎の類に関しては今件では言及しないが、治療反応も異質性の高い向精神薬由来の反跳性筋硬直に関しても、治療中及び治療直後、患者によっては数日間のVAS値の著しい減少が伴い日常復帰出来るケースは多いのだが、症状惹起の傾向としては類似性が高いのは先述の通り頚椎症性脊髄症や脳血管障害後の視床痛が挙げられ、治療反応も同様な反応を示すものの、向精神薬由来の場合、症状改善に伸びがない事が最も治療現場では敏感に感じる部分である。病態として多発性硬化症を例に挙げる人も多いが、多発性硬化症のように改善と寛解のサイクルが向精神薬由来の症状の場合、あまり見かけない。よくよく経過を観察すると異なる事が分かる。
しかし、離脱症状の急性期にも関わらず、治療中や治療直後には著しい改善自覚を得られているという事実と、その刺針箇所から鑑み考察した場合、症状惹起の原因部位はあくまで脳神経機能や脳幹部の機能破綻と言う、中枢の異常に伴う症状である事には変わらず、未だ解決に至っていないのが本音である。多くの患者は手指や足指等のあくまで末梢部の症状を日常生活では不便であると自覚する為、視点は末梢部位(遠位)に行きがちではあるが、
体幹部位も硬直している事には変わらず、治療から判断する逆視点から見た場合でも、脊髄に極めて近位な部位への刺針箇所の選定にて手指や足指等の症状の改善も得られる事から考察すると、やはり甚大な筋硬直が体幹にも及んでおり、それに伴い脊椎近辺部の軟部組織の硬直から派生する椎間孔部位での狭窄、整形外科的に言えば椎間孔狭窄や神経根症、後根神経節由来の症状が全脊椎高位で生じていると推定してもおかしくはない現象である。純粋な整形外科領域とて単根での損傷にも関わらず厳しい症状を抱えていると言うのに、これらが多根性に渡って損傷を受けているとイメージすれば、何れ程の疼痛に曝されているかが分かると思う。
末梢部位の諸症状と(この場合、上肢や下肢、体幹部での疼痛や痺れ、皮膚知覚異常、知覚鈍麻、温冷感異常、脱力、硬直等々)、中枢部位の諸症状(この場合、脳神経系機能異常や脳幹部異常)を一旦分別して考えた場合、刺針部位の選定も容易につくものではあるかもしれない。問題なのは、この手の中枢神経系の機能異常を生じた諸症状を呈している患者群、特に向精神薬由来の諸症状の場合、治療継続に伴う累積結果が乏しいという点が挙げられる。
勿論、解決策はある。筋硬直を伴う薬物を止めれば良いだけの話であるのだが、急激な減薬や断薬はしてはならないと思うし、あくまで、その過程でのADL向上に対しての寄与としての治療と捉える必要がある一方、断薬後の遷延性が濃厚である状態に対しての治療反応の低下が1番の問題でもある。さて、場合によっては数年単位に及ぶ中長期的な治療を視野に入れなければならない向精神薬由来の諸症状は厳しい環境下に患者が置かれる事も既知としておかなければならない。
今件から見えてくるのは、世間一般で呼称されているアロディニアや中枢感作、中枢神経障害性疼痛というワードが出てくると思われるが、中長期的に生じた疼痛に対して「脳が認知した」と言う一般的な考察は異なると思われる。勿論、痛みは「脳が認知」し、抹消へ信号を送る事にはなるのだが、「脳が痛みを認知し、記憶する」と言う観点が異なるのである。先ずは問題点として挙げられるのは、患者が過去から現在に至る迄に取り込んできた治療内容に著しい身体破壊の伴う治療手段を用いていなかったかと言う点を考察しなければならない。とある今流行の傷病名の患者群の身体症状の初発の1つに肩頸背部(C1~TH12)の疼痛を初期的に抱えるものがある。では、この身体症状が生じた場合、どのような治療手段を取り込んだかを例にして挙げてみると、指圧マッサージを疼痛発症部位に受ける、針治療を疼痛発症部位に受ける、TrPブロックを疼痛発症部位に受ける、が代表的な例かもしれないが、治療改善自覚の伸びを獲得する為の治療手段では無い。
勿論、これらの治療手段も治療中や直後は他の諸症状と同様に一時的なりにも軽快感は得られるかもしれないが、この手段は間違いである。何故間違いであるかは解剖書でも開いてみれば理解は早いが、末梢部である所謂ポリモーダルの感作に対しての外的刺激は極めて治療効果が弱い。
この手の症状に関しては、病態の根本が炎症でも無い為に解熱鎮痛剤の効果も弱く、まだ、この段階では先に挙げたマッサージや針治療やTrPブロックを疼痛部位に受ける事が患者自覚としては高い効果であると感じている。しかし、これらの諸症状も臨床上の意義としては低く、且つ、中長期的に伴うマッサージや指圧の類を受けていた場合は、受療部位の筋組織の微細な断裂に伴う広範な血腫形成の繰り返しにより、筋組織の柔軟性が奪われ、一層の疼痛閾値の低下が招かれる可能性もある。
疼痛閾値が低下する事で、凡ゆる外的刺激に対しても過敏性を伴う。それは気温や気圧、水道から流れる水温1つとっても以前とは異なる感覚になるだろう。それを異痛症やアロディニアと表現しても良いかもしれないが、ここで再度考察すれば、中長期的に渡って脊椎脊髄近傍部へ強い刺激を加え続ける事が、症状の改善には繋がり難いどころか、症状を憎悪させ続けてしまう一因にもなると推測される。特に頸部への強い圧刺激は簡単に神経機能の破綻を起こすほど、浅層を走行している。
そして、多くの患者は疼痛閾値が低値になった事で日常生活への支障を感じる事になり、向精神薬の処方へと繋がっていくケース散見されるのだが、SSRISNRI、NASSaの類は疼痛閾値を上げる作用もある為、疼痛の軽減を得られている患者もいる事は事実だが、以前も書いたとおり、患者によっては「ナイフで手の甲を切っても痛くない」と言う状態にまで狂わされてしまう事になる。
何れ薬物とて中長期的な服薬が続けば耐性が獲得される為に効果自覚も乏しくなれば更なる増量を求める場合もあり、悪循環である事には変わりないが、即時的に鎮痛を要求する患者の気持ちも汲んで話を進めていけば、あくまでこれらの薬物で軽快感を得られるのは「痛み」だけであると言う部分に対してもスポットを当てて考えなければならない。冒頭で挙げた
>>末梢部位の諸症状と(この場合は上肢や下肢、体幹部での疼痛や痺れ、皮膚知覚異常、知覚鈍麻、温冷感異常、脱力、硬直等々)
の「疼痛」のみの軽減しか多くの患者は得られていない事を自覚しなければならない。一言で神経根症と言えば話は早いのだが、取り敢えずは基礎的な発症の病態が異なる為に分けて書く。勿論、ここに至るまでは血清反応の有無に関わらずステロイド投与も散見されるが、病態自体がNSAIDs含めステロイドともマッチングしていない為に症状の軽減は殆どない。では、再度振り返ってみれば、この手の症状を抱える、基礎的な部分を鑑みた場合、ベンゾ系の服薬歴がなかったかと言う事である。
先ほど挙げたSSRISNRI抗うつ薬であるが、所謂、睡眠薬抗不安薬気分安定剤と呼ばれるベンゾ系を他症状として服薬しているケース、及び整形外科領域疾患で服薬しているケースと言うのは少なくなく、潜在性患者は想像以上に多いと思われる。この抑制系であるベンゾ系の作用であるGABAが脳内に必要以上に蓄えられた場合、疼痛閾値の低下、即ち過敏性の惹起、要は抑制系として働くGABAが暴走するという研究結果もある。ここから発症している例と言うのも少なくないようである。
要旨:痛みを伝える末梢神経の損傷や機能異常は神経障害性疼痛という耐えがたい慢性疼痛をひきおこす.しかし,その発症メカニズムが不明のために有効な治療法がなく,モルヒネなどの鎮痛薬も奏功しがたく,全世界で2,200 万人以上の患者が苦しんでいるとされている.
われわれは,末梢神経損傷後に脊髄で活性化したミクログリア細胞にイオンチャネル型 P2 プリン受容体サブタイプ P2X4受容体が過剰発現し,その受容体刺激が神経障害性疼痛に重要であること,更に,P2X4受容体の活性化によりミクログリアから脳由来神経栄養因子(BDNF)が放出され,それが痛覚二次ニューロンの Cl-イオンくみ出しポンプの発現低下をひきおこし,それゆえ,触刺激により放出された GABA の二次ニューロンに対する作用が抑制性から興奮性へと変化し,このようにして,触刺激が疼痛をひきおこすことを示した.
その後更に,P2X4受容体過剰発現メカニズムや,ミクログリアの活性化がインターフェロンガンマによりひきおこされることをみいだした. また, 活性化ミクログリア細胞には P2Y12受容体が発現し,独特のメカニズムで神経障害性疼痛に関与する.これらの事実は,神経障害性疼痛発症における P2 プリン受容体―ミクログリアニューロン連関の重要性を示唆している.
触刺激は Aβ を介して一部が脊髄後角介在ニューロンへ入力しており,介在ニューロンからは抑制性の神経伝達物質・GABA などが放出される.正常時には GABA は二次ニューロンへ抑制的に働き,痛み伝達を抑制している.しかし,アロディニア病態では,P2X4刺激により活性化型ミクログリアが BDNF を放出し,BDNF は痛覚二次ニューロンの Eanionを脱分極側へシフトさせるために,触刺激により放出された GABA は痛覚二次ニューロンへ興奮性に作用してしまい,その結果,二次ニューロンでスパイクが発生し,それが大脳皮質知覚領へと伝わり激痛として認識される.(臨床神経,49:779―782, 2009) 
これらの観点を統合した場合、結果的には何かしかの自然発症性によるものでも、事故や怪我の外傷性でも構わないが、初動で取り入れた手段の誤りがこれらの症状を引き起こし、引き起こし続けるという事も十二分に考えられる。では、これらを逆説的に見ていくことが治癒へ向けての一歩である事も分かり、薬剤性由来の症状を薬物で抑える事は甚大な被害を心身に及ぼし続ける事になるとも言える。
余談(ここから先は副作用の話です。中長期服薬に伴う常用量離脱や減~断薬時に伴う反跳作用とは異なります)…抗うつ薬他に関する骨格筋に関連する副作用(否 離脱症状)と、妊婦、産婦、授乳婦等への投与を添付文書から幾つかピックアップ。本当はこのようなピックアップの仕方をするのは良くないと思うのだが(偏った抽出の場合、思考にも偏りを生じかねない為)、薬物に伴う中枢神経系を由来とする骨格筋の不随意運動や筋痙縮、筋硬直、筋痙攣、筋緊張、各関節痛の出方は純粋な整形領域疾患とは特異的な出方をしていると言う点が挙げられるが、やはり現場を通して見ても、残念ながら規則性は見当たらないし、当たり前だが「これら」を基礎として日常生活に掛かる負担が上乗せしているというイメージに近い。その為、日内変動も日差変動も伴うし、治療反応も整形領域疾患群と同様な経過を示す場合もあるが、若干、経過が異なってくるのが憎いところ。そもそも、一般の患者は「薬剤性」なんて知らないケースが殆ど。類似性として定型亜型含め、脳血管障害後に生ずる視床痛や肩手症候群の状態に陥っているとイメージすれば分かり易いのでしょうか。
A)副作用
B)妊婦,産婦,授乳婦等への投与
サインバルタ】(抗うつ薬)
A)関節痛 筋痛 肩こり 筋痙攣 筋緊張
B)呼吸窮迫 チアノーゼ 無呼吸 発作 体温調節障害 哺乳障害 嘔吐 低血糖症 筋緊張低下 筋緊張亢進 反射亢進 振戦 ぴくつき 易刺激性 持続性の泣き
ジェイゾロフト】(抗うつ薬)
A)不随意性筋収縮 背部痛 関節痛 筋緊張異常(筋硬直、筋緊張亢進、筋痙攣等)
B)呼吸窮迫 チアノーゼ 無呼吸 発作 体温調節障害 哺乳障害 嘔吐 低血糖症 筋緊張低下 筋緊張亢進 反射亢進 振戦 ぴくつき 易刺激性 持続性の泣き
ルボックス】(抗うつ薬)
A)関節痛 筋肉痛
B)呼吸困難 振戦 筋緊張異常 痙攣 易刺激性 傾眠傾向 意識障害 嘔吐 哺乳困難 持続的な泣き
トレドミン】(抗うつ薬)
A)筋緊張亢進
B)副作用の記載なし
パキシル】(抗うつ薬)
A)緊張亢進
B)呼吸抑制 無呼吸 チアノーゼ 多呼吸 てんかん様発作 振戦筋緊張低下又は亢進 反射亢進 ぴくつき 易刺激性 持続的な泣き 嗜眠 傾眠 発熱 低体温 哺乳障害 嘔吐 低血糖
【レクサプロ】(抗うつ薬)
A)関節痛 筋肉痛 肩こり こわばり
B)呼吸窮迫 チアノーゼ 無呼吸 発作 体温調節障害 哺乳障害嘔吐 低血糖症 筋緊張低下 筋緊張亢進 反射亢進 振戦 ぴくつき 易刺激性 持続性の泣き
【チャンピックス】(禁煙補助剤)
A)筋痛 筋痙攣 関節硬直 関節痛 背部痛
ストラテラ】(中枢神経刺激剤)
A)筋痙縮
コンサータ】(中枢神経刺激剤)
A)筋緊張 関節痛 筋痙縮 筋痛 四肢痛 筋攣縮

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【休診日】 なし 土・日・祝祭日も診療しています
【PCメール 
fujiwaranohari@tbz.t-com.ne.jp お返事には数日要する場合も御座います

  ~針治療から病態定義の見直しを~