藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

傷病名と治療がイコールで結ばれない原因/ミオラブの使い方


「傷病名と治療がイコールで結ばれない原因」
ワード 
「当該患部の栄養支配領域の確保」
「症状発症部位の神経支配領域の確保」
「発症患部に於ける疼痛等より発生したと推測される交感神経系の亢進による血管収縮箇所の開放」
「kinetic chainを基礎とする維持・確保を望む広域な刺針箇所の選定」

ペインフルアークと肩峰下の疼痛由来は肩関節外転時に於ける狭小化に伴うインピンジメントとして再現性を望む神経学的検査上での所見であり、処置対象部位としては、其の通り肩峰下滑液包炎と診るも良し、腱板部へ走行する棘上筋への処置として診るも良し。
しかしながら、先に書いた発症時期という「時間」を鑑みて各種神経学的検査を行う場合、臨床的意義としては相当低いものばかりである事が分かる。これならば、患者に普段は如何様な姿位が楽であり、如何様な姿位で憎悪増強するかをチェックする事のほうが鑑別は付きやすく、極めて治療精度や治療成績も上がっていくものである。
臨床上の感覚的なものかもしれないが、発症後2week以上経過した諸症状の場合、先のペインフルアークやドロップアーム、ダウバーンとて、仮に陽陰性関わら臨床上の意義は低下していく事が分かる。
それを証拠に治療を通してVAS値の変動を患者に観察してもらう事で一層根拠は高まるものであり、棘上筋に処置した場合であれば、VAS値10⇒8程度で改善自覚期間が1~2日だとしよう。
これでは基本的に無効治療と呼ばざるを得ない。では今度は棘上筋を支配する、より中枢部は何処かを鑑み処置をする事でVAS値が10⇒5となり2~3日後以降も軽減したまま日常生活に戻れたとしたら、答えは棘上筋には無い事が分かる。
受傷初期や疼痛部位等々に関して誰がどのような視点で見ても明確な部位であったとしても、受傷時期が中長期化した場合、得た傷病名に沿った治療内容ではラチが開かないという事である。
まして、この時期は明確な炎症期も過ぎている為、解熱鎮痛剤の服薬もNSAIDs含有の貼付剤も奏功するタイミングでもなく、使用頻度が高度になればなるほど罹患部位の脆弱性を生み続ける。
時間の経過に伴い原発部位も変動する為、この時期に医療機関で肩峰下付近や疼痛部位にトリガー注射を受けても薬効時間しか疼痛の軽減が得られない理由がここにある。勿論、これらの症状とて無加療でも治癒(自然治癒)に至る可能性もゼロではないが、中長期的に症状とはマッチングしない手段を用い続ければ自然治癒する確率も落ちていく事になる。それが更に経時経年で疼痛憎悪していく場合、やはり向精神薬が処方されるという、最後は結局このオチ。
…神経学的所見や受傷部位、罹患部位、発痛部位も明確に呈している諸症状であったとしても、治療部位は異なるという事実。これも記載した通り、針というツールが深達性を求める際にも「力価に変化が無い」という、他の治療手段では見られないパフォーマンスを持っている故に一線を画す力を持っているものである。
それが、既存の病態把握や病態定義の誤りを針治療を通して垣間見てしまう事も出来るし、既存の凡ゆる治療手段に於いても、仮に「対処療法」としか明示されていない疾患に関しても、「根治療法」として昇格させる事が出来る。勿論、症例によっては双方に根気も要する場合もあるかもしれないし、何より針治療を選択肢とするに至るまでは凡ゆる治療手段を既に行っているという事実を抱えた患者が大半を占めてくる。患者にとっては背水の陣かもしれないが、それは術者側にとっても常に背水の陣である。何処に行っても治らない症状を治していくというのは、術者側にとっても蓋を開けてみればシンプルな側面も併せ持つが、臨床データが希薄な特異的な症状を持つ患者群である事には変わらない。患者も既に後がない。余裕がない。痛みのあまり性格まで変貌しているかもしれない。
さて、そんな患者は随分と見慣れたものである。特に向精神薬由来の諸症状を抱えた場合は、四六時中、どのような姿位を取っても症状の軽減されない極めて悪質な自律神経系異常、精神症状を来し続けている。これらの患者群を診ていれば、純粋な整形領域患者群が幾ら詰め寄ってこようがどうって事ない。治す気があるか。治す気がないのか。ここで頑張らなければ薬漬けになり将来を潰す可能性が飛躍的に高まる。自然発症性の自律神経系異常に向精神薬を被せて重篤化した患者だけが被害者の対象ではない。多くの整形領域患者とて十数年前から向精神薬の処方はされ続け、気付いた頃には初期的な純粋な整形領域疾患など忘れてしまう位の向精神薬由来の諸症状によって困惑しているのだ。
そのような患者の将来迄を見越して、今の内に強い治療意識を保持してもらいたいと常に働きかけている。実際には自身が「その状態」に陥るまで気づけないものなのであるが、私は「その状態」に陥ったプロセスを持つ患者群も見ているから言えるのであって、別に嘘を言っているつもりは一切ないのである。
それが、今後も延々と続く鎮痛剤による薬物治療の弊害であれど、患者の知らぬ内に向精神薬が処方された場合の弊害であれど、各種疾患に対して仮にも手術をした場合の術式による有効率や再発率、更に術後の中長期的な経年変化による脆弱性の惹起まで見越している。
患者個々人は、痛みを抱えた場合、どうしても自分自身しか見えなくなる。周りが見えなくなる。傷病名に固執し、様々な治療手段を試みる。都合の良い物事しか見えなくなる。しかしながら、その都合の良い物事を体験したものの、成果の上がらなかった患者群を私は既に診続けているという事も時に考えてほしいと思っている。

「ミオラブの使い方」
シリアルナンバーを見てもらえれば極初期からのユーザーである事は分かるが、最近になって又使用頻度が上がってきたのは確実。
私は患者の身体を押圧すると、約1分でドケルバンになるほど弱い。相当細かい作業が続く刺針作業に於いては、将来性も鑑みれば自身の指を壊しかねない行為は常に控えているものである。
かと言って、マッサージの有用性や優位性も分からないから元々行っていないのだが、刺針時に切皮痛を軽減させる、若しくは一時的にでも皮膚の痛覚閾値を上げる手段として刺針前の押圧は重要でもある。その為、こちらでは前揉と言う言葉も存在する。そのように、指を壊さず、且つ早期に弛緩を得られるツールがミオラブなのだが、時として様々な使用方法が思いつく。
こないだチラと先生とはお話していた内容で、本来の使い方とは違うが、私は写真上のようにミオラブのフロントに針管を固定させ、フロント及びリヤごと沈め、皮膚の伸張位を更に高度にし、切皮痛の軽減を求める使用方法をする時もある。
主に脂肪層の厚い患者や、老齢により皺の多い場合、皮膚の伸張度が一律に取れない場合もあり、複数本刺入していく場合にリズムが取れない場合にも多く遭遇するものである。
その為にもニトリルのグローブを嵌めて押し手のグリップ力は高めているのだが、更に伸張度を保ちたい場合はミオラブが上を行く。
※余談ですが、医療用グローブを普段からはめていれば、良い意味で手の中に熱がこもってくれる為、冷たい手の持ち主でも患者に言われなくなりますよ。手が冷たい人は心が温かいそうです(笑)
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  ~針治療から病態定義の見直しを~