藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

陳旧例に於ける解熱鎮痛剤の有効性が乏しい証明


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このグラフは陳旧例に於ける解熱鎮痛剤の有効性が乏しい証明を示した

神経実質に麻酔薬を打つ手段は手術以外の場面で何れ位必要でしょうか。
確かに神経根ブロックの鎮痛作用は著しい。しかしデメリットも多い。
受けた事がある人ならその意味も分かると思いますけど。

そこに気づいている術者や関係者も沢山いると思うのですが、
何故、現在もそのような物々しい仰々しい治療手段が手術以外の場面でも
用いられているか調べると、色々と裏事情が見えてくるものです。

特に、麻酔薬を用いない針治療に関しては、より必要はないでしょう。
原因患部近傍に刺入する事で派生する栄養供給が本来の効果自覚かと。
仮に原因患部が神経由来であり、神経に栄養を求める事で症状の回復が得られるなら、
原因患部近傍への栄養で良い訳であり、神経実質に麻酔薬を注入する事により得られる
栄養というのは何れ程のものでしょうか。

陳旧期(慢性期)の諸症状の本態は炎症で無いという事は、
抗炎症作用が著効しない事を意味します。抗炎症作用を持つ薬物が著効しないという事は、
現行医療に於ける薬物の多くは著効を示さない事を意味し、
故に、中枢神経系に働かせる薬物が蔓延し始めた。

但し、諸症状の本態は(局部的)低酸素状態という単純明快な所見であり、
現行医療に於いて、針治療のように低酸素状態を急激に解除する手段が無かっただけの話なのです。
(厳密に言えば無い訳ではない。但し、凡ゆる制度上の問題(保険制度上、ガイドライン上)で「出来ない」という表現が適切なのかもしれない。「出来ない」という事は「ない」に等しい。一般的な医療機関で同様な手段を取り込もうとするとコストパフォーマンスが悪過ぎる為に出来ないという意味である。厳密に費用を換算すれば1回の治療費が数万円~数十万円単位となる為、積極的に出来る事ではない。しかし、そこを実現させ続ける事で既存の病態把握や病態定義の見直しや新たな知見が見えてくる。そして、「治療手段がない」という現行医療の意見を針治療は簡便に覆す事が可能となる。)
(退行性、遷延性を色濃く示唆される状態、疾患に於いては対処療法も場合によってはメリットがあるかもしれませんが、好転、維持し、回復した状態が中長期的、(半)永続的に維持される多くの種々症状に於いての薬物的対処療法って結構まずい状況を作っちゃう。大半の疾患がそうなんですけど。塩辛いからと砂糖を足し、甘くなったからと塩を足す。そんな感じ。そして更に、仮にも退行性、遷延性と世間一般で称される状態だったとしても世間一般での認識は「現代医療的治療手段のカテゴリ内で生じた状態」である事も忘れてはならない事かもしれません。驚異的に積極的な治療を施す事で回復が得られるなら、それは退行性や遷延性という枠を外す事が出来ます。それが保険上、ガイドライン上、倫理上、前例がないとかあーだこーだとか言っている内は、患者の為ではなく術者の保身であるのかもしれません。)
後は、如何に患部に栄養を安定的に供給させ、且つ、維持及び確保出来るかに努め、
早期回復を求めるかが術者の腕の見せ所ではないでしょうか。

その為、筋骨格系疾患に至っては、初動さえ間違えなければ比較的簡単に収束します。
オピオイド系、まして向精神薬を処方するのは症状の本態が見えなかった証拠でもあり、
解熱鎮痛剤の長期服薬は症状の上っ面しか改善しないでしょう。

患者の症状の惹起状態を観察し、
神経由来(馬尾や椎間孔、神経根、DRG等々)か筋由来かを見極め、治療及び治療後の経過
(発症時期(炎症がメインか低酸素(部位によっては鬱血という表現が的確な場合もある)がメインか)
及び、神経由来がメインか筋由来がメインかで治療後の経過は異なる)に対しての
行動制限を提示すれば良いだけの事。注)

注)過去から「低酸素」や「鬱血」という表現が出ますが、局所的及び広範化した「低酸素」や「鬱血」によって当該部位に発生する諸症状を示しているものになる為、「低酸素」や「鬱血」そのものが「直接的」に関与して諸症状を惹起しているという意味ではありません。本来は、もう一段踏み込んだ記述が正確になるのですが、ややこしくなるのでこの辺りで止めます。)

このように物々しく書かなくても、エビデンスなんて隣近所にゴロゴロいますから別に良いのですが、
薬自体が存在しないという事は、ある意味、薬物投与依存の医療機関では打つ手が無くなる事を
意味し、場合によっては向精神薬への処方へと発展します。

今は、初診から向精神薬を処方するケースも多く見受けられるので上記の通りではありませんが、
自身の領域を越えた症状を患者が呈した場合(呈し続けた場合)、やはり向精神薬が出ます。

画像所見と身体症状が一致しない場合、術後も症状を呈し続けた場合、
患者が自ら望んだ場合(眠れないとか)、患者が医師に対して感情的に詰め寄った場合、
患者が医師を前に非常に落ち込んでいた場合等などキリはありませんが、
ありとあらゆるケースで向精神薬は処方される可能性があります。

各種検査で異常が見つからなければ「歳のせい」「気のせい」「心因性」「精神疾患患者」という
レッテルが貼られるだけで、不遇な待遇が待ち受けているのは今も昔も変わりません。
とは言っても振り返ってみると、自身の受傷理由や初期症状を鑑みれば、
症状を長期化~増大化~難治化させた理由は、そんなに複雑でもなく、
初期症状も複雑怪奇ではなかったはずです。アレコレ突っ込んでいくから結果的に
謎めいた病態になるだけであり、日々、症状が安定しない状態に陥るのです。

私が行動制限を提示するのは腰神経叢由来の下肢神経症状を呈している患者群程度で、
他の諸症状に関しては特に提示していません。
本来であれば全患者、全症状は行動制限をしたほうが回復が早いのですが、
患者は行動制限を一番嫌う生き物だというのを知っています。
その為、患者が日常的に損傷する以上に
針治療の作用を上げ、回復力を上げ続けているだけなのです。

しかし、腰神経叢由来の下肢神経症状に関しては
常に負担の掛かる部位、且つ、早期脱出しなければ、症状を自覚している間は
ADLの急降下は目に見えている為、提示しているに過ぎないのです。

初期治療時から行動制限を強いたほうが圧倒的に回復速度が早いというのは
当たり前であるものの、患者努力が絡む痛み治療は厄介事が多くなるのです。

※至極当たり前の話を並べて恐縮ですが(上記内容とて1年前に当ブログで書いた記事を抜粋しただけのもの)前にも何処かで書いた記憶があるのですが、解熱鎮痛剤の類の作用と、針治療の作用は真逆です。そこを患者さんに理解してもらう事が先ずは大切な事なのではないかと思います。以前、中野で開催した勉強会のレジュメが参考になるかと思いますので以下に併せて転載します。

2015/10/15 東京 中野区
 
主題 
整形外科領域に於ける腰下肢痛患者と針治療
 
目的 
整形外科領域患者の多くは、自己の症状を比較的把握しながらも、医療・代替医療機関の受療に対して消極的な現状がある。幾つかの理由として、既に一般的な医療機関が標榜する治療内容を患者が把握している事、及び、治療効果が芳しくない旨を把握している事が理由として挙げられる。一般的な保存的治療として外用薬、内服薬、各種ブロック他、牽引や電気療法、マッサージ等の他、一部医療機関では針治療を取り入れている箇所も存在するが、リスクや治療時間を重視している為、患部に直接的に侵襲出来る程のアプローチが乏しいと判断されると共に、患者1人辺りに対して使用出来る時間が少なく、患部及び当該患部の栄養支配領域に至るまでの処置が難しい側面がある。開業鍼灸師のメリットは、上記短所を全て網羅出来る点が挙げられ、日常生活を脅かす腰下肢領域の諸症状に関しては、早期にでも症状を改善したい患者ニーズの柱になる事が可能である。他の治療手段よりも圧倒的な効果の差を叩き出し続ける事が受療動機に繋がり、鍼灸業界の発展に寄与出来るものと思われる。積極的治療姿勢を見せる患者の期待に応えられる針師を目指す勉強会。
 
概要
明白な外傷性要素や内臓疾患を伴わない筋骨格系様疾患に関しても、症状の寛解憎悪因子より損傷筋群の推定は可能であり、且つ、損傷筋群名を当該患者に対して告げる事は治療内容の明確性が生じる為に重要な事項であり治療指針にはなるが、更に治療内容に発展性を求めていくのが今件の課題である。先行的に、筋肉は筋肉に栄養供給をしていない事を念頭に置く。とかく私達は筋肉に対して目を向けがちではあるが、それは所見及び患者伝達時に於ける価値しかない事を知る。無論、発症形成に至った当該患部への処置により、血流量の増加は求められ、一時的な症状改善を患者は自覚する事になるかもしれないが、損傷部位の発症に至る理由は当該患部には存在しないという事も知らなければならない。器質的異常が直接的な症状を惹起するか否かの因果関係に関してはここでは触れないが、各種腰椎変性疾患としての所見に至るまでの理由も同様であり、椎間板が突出(脱出)や摩耗、椎間関節や棘突起の摩耗、種々靭帯の肥厚や場合によっては骨棘の形成に至るまでも、更に神経根、馬尾、椎間孔由来等々の諸症状に発展するまでも、同様に即時形成によるものではなく累積結果にしか過ぎない。故に、発痛部位はともかく、発痛由来を解除しなければ長期効果は求められず、症状の段階的収束にも至りにくいと思われる。当該患部に対して脆弱性を生じる(生じ続ける)部位が把握出来れば、患者に対して日常的に回避姿勢を促す事ができ、治癒速度の向上に寄与出来る。刺針行為で生じる理屈は刺傷を起点とする動脈血の強制流入にて、患者保持の恒常性による刺傷再生時の経時変化の利用であると推定され、この事で、各種損傷部位の低酸素解除、炎症拡散による疼痛除去、柔軟性保持、柔軟性確保、柔軟性惹起、柔軟性維持、神経損傷の回復(部位問わず、観血的治療が必要でないと判断された程度のneurapraxia)、椎体付近(神経根・馬尾・椎間孔・後根神経節)の炎症拡散、及び低酸素解除による神経症状の改善が見込まれる。針の作用は広く、簡便に行える手段である故、患部近接部位及び当該患部栄養支配領域の処置に至るまでも比較的短時間で可能である。尚、発症中の一般患者を募る理由は、発症初期及び特定刺針箇所に於ける特異的に賦活化された部位反応を共有する為である。
 
※「経絡経穴」「MPS」「TrP」「アナトミートレイン」「運動連鎖」「交差症候群」等の理論解釈は含まれません。患部近接部位及び当該患部栄養支配領域の血流動態異常により派生し惹起された諸症状と捉えての理論展開の為、あくまで脈管理論で進行する解剖学が基礎理論になります。目新しい単語は飛び交いませんので予習の必要はありません。
 
勉強会内容
A)症状発症初期の神経症状惹起患部箇所の特定手段の検討
B)症状発症後期の神経症状惹起患部箇所の特定手段の検討
C)腰椎及び仙椎の神経由来症状惹起箇所の栄養供給箇所の検討
D)腰椎及び仙椎の神経由来症状惹起箇所の栄養供給箇所の維持及び確保の検討
E)神経根及び後根神経節周囲の状態を、刺針を通して把握すると共に、症状消滅理由の検討
F)腰下肢痛発症患者に対しての日常生活時に於ける注意事項と禁止事項をC)及びDを踏まえ検討
G)各種腰椎変性疾患に於ける摩擦・張力・牽引力による症状寛解と憎悪理由の検討
H)画像所見が乏しいにも関わらず、腰椎変性疾患と同様の症状を発症する理由を検討
I)A)~H)を包括出来る治療内容と治療展開の検討
J)筋細胞、神経細胞及び脈管を自動及び他動する事による不確定要素の検討
K)累積治療によるVAS変化の検討
 
「勉強会にあたって」
 
痛みや痺れ、感覚鈍麻、脱力等々の発症理由は諸先生方で見立ては異なるかもしれませんが、今回の勉強会に関しては、身体観を統一して頂きたく思います。私は、下肢症状(痛み、痺れなど)の発症理由は神経根や後根神経節、及び、デルマトームに則していない広範な下肢症状に関しては多根(一般的なL4/L5、L5/Sだけでなく、L2/L3、L3/L4とか)の神経根や後根神経節症状と捉えており、比較的現代医学的考察に準じているものの、一般的な種々腰椎変性疾患が直接的に症状を引き起こしているとは考えておりません。しかし、器質的異常が引き起こす腰椎の不安定性は考慮した上で治療を進めています。臨床上での私見では、腰下肢症状に限らず、針治療を行う事によっての患者の改善自覚を追跡する限り、筋肉症状⇒自律神経症状⇒神経症状の順にタイムラグが生じているように見受けられる。神経症状を発症している場合、神経機能の回復の改善自覚が得られるまでは、推定上の話しではあるものの、筋細胞が弛緩し、周囲の血流量の増加が伴ってから神経機能の回復が得られる事になる為、
 
1)針治療はあくまで筋肉細胞への処置となり、神経実質や血管実質に刺針した事によって効果を示す事はない。筋肉実質への刺入で弛緩した事により、内部走行、及び直下を走行している神経及び血管の疎通が改善され、当該刺針箇所の血流量増加、及び走行下抹消、中枢部の機能改善が見込まれる。
 
2)整形領域の症状発生要因、及び追随する自律神経症状群は、患者個々の身体適応能力を超過し続けた事による、筋肉の低酸素状態持続による筋萎縮に伴い、内部走行の血管や神経が絞扼される事より始まると推定される。故に症状が重度である場合、絞扼及び圧迫度合が高度であれば、刺針の感覚も鈍麻となるが、治療継続により弛緩傾向となるに従い、刺針感覚も敏感になり、場合によっては当初と同様の針を使用していたとしても、患者自覚は無痛となる場合がある。
 
3)針治療の作用は当該患部の低酸素状態が萎縮された筋肉へ刺入する事で、意図的に組織損傷を発生させる。組織損傷を生じると、血管拡張・血流増加・血管透過性亢進による血管反応が生じ、それに伴い炎症兆候(発赤・疼痛・熱感・腫脹)が生じる。血管透過亢進状態を視認的に認められる皮膚の白い患者は、刺針箇所から直径2~3cmに生じる為(フレア反応)、(※一部伏せ)余談であるが、針治療は骨間を抜けられるメリットを保持している為、例えば大腰筋刺針という手段に於いても、(※一部伏せ)。
 
4)これらの種々血管反応(3)の部分より)により動脈血流が強制流入されて、栄養源を補充された筋肉は弛緩する。
 
5) ※伏せます
 
6)この事で、腰部筋群に広範な低酸素状態が生じ、筋細胞が萎縮した結果、内部走行及び近接を走行している神経や血管も絞扼及び圧迫傾向(自由度が低下すると表現しても良いかもしれない)となり、常に脆弱状態に曝されている事になる。このような状態の時に突発的に強い力が生じると、突発的な腰痛へと発展すると思われる。そして、場合によっては突発的に強い脊髄近接部での損傷(炎症)が生じ、下肢症状へと発展すると推測される。器質的異常(椎間板ヘルニア 腰部脊柱管狭窄症等はその結果である)の有無関わらず、下肢症状が発生するのは、患者自覚の有無に関わらず、持続的に委縮した筋細胞内で自由度の失した神経根、後根神経節、馬尾神経、椎間孔の種々異常で生じると思われる。
 
7)発症初期含め、比較的強い症状を生じている場合、棘突起外側から数センチ(主に神経根部)を押圧する事により、下肢への放散痛及び、押圧箇所の特異的症状を自覚する場合も多く、これらの場合は恐らく神経根、後根神経節が炎症状態が生じている為、押圧のような外的刺激に対しても過敏になっているケースが多く散見される。そのために、当該部位への刺針に関しても、患者は刺針による強い痛みを自覚すると共に、無症状の患者には見られない、下肢への電撃様疼痛が引き起こされやすい。
 
~不確定要素の検証~
 
冒頭で器質的異常(新鮮期以外)が直接的な症状を引き起こす事はないと述べたが、画像所見上、異常が認められている患者群に於いては、治療時に注意を要するように見受けられる。結果的に器質的異常が生じた場合、椎間板ヘルニアによる椎体間の不安定性、分離すべり症による不安定性、狭窄による不安定性等は生じているものと思われ、仮にこのような患者群に対して針治療を行った場合、筋弛緩が原因と思われる異なる症状を呈するケースが数件見られる。検証した結果、リスクが高度となる条件が幾つかあり、1)大なり小なり画像所見上、器質的異常が認められる患者 2)症状発症箇所が両下肢、単下肢問わず、治療を両腰臀部にした患者が先行条件に挙げられ、更に患者側が1)行動制限が出来ない環境下に置かれている患者2)行動制限が出来る環境下にいるにも関わらず、症状を無視した仕事や運動を行い続けた
 が挙げられる。これらのリスク回避には、初診時の段階で、患者に対して器質的異常の有無の確認と、行動制限が可能な否かの確認が必要となる。リスク高度な場合は、仮に症状が両下肢に出ていたとしても、単下肢のみの治療で段階的に症状の収束は可能であるし、単下肢の場合であれば、リスクは元々低い。
 
~行動制限時に於ける注意点~
 
別紙にも禁止事項として書いているが、腰椎神経の由来と思われる諸症状に関しては、歩く事で腰椎への負担が高度になり、下肢へ走行する神経や血管の損傷が高まる。運動は抹消筋群の血流量増加に伴い、一時的にも症状の軽快を患者は自覚出来る事になるかもしれないが、あくまで一時的なものである事を知る。その為、神経由来症状を呈している患者に対しては、動かない事に努めてもらう事が肝要である。
 
【Steal Syndromeの疾患概念を逆視点から考察する針治療】
 
※血液をAに持ってこようとするとBにある血液は持っていかれるという基礎概念下で考察
※Aに100を持ってきて回復を強化させたい場合、Bにも処置すると、血液流入量は分配され、極論ではあるものの、A:50、B:50となり、治療効果が薄れるという基礎概念下で考察
 
1)筋由来、脊椎神経由来、自律神経由来の症状発症要因の理由として、日常生活の負荷の累積結果により生じた当該患部の低酸素及び鬱血に伴う状態により痛覚閾値を超えた時点で症状自覚、且つ、筋細胞萎縮に伴う内部走行及び直下走行の神経や脈管を絞扼及び圧迫する事により、神経機能異常や自律神経系異常が生じるものであると同時に器質的異常の有無問わぬ腰下肢に派生する神経症状に関しては、腰部エリアの常時萎縮に伴い、神経根部の摩擦や伸張位が高度となり下肢症状へ発展するものであり、仮に椎間板ヘルニア等の異常が生じている場合は、間接的ながらも症状への発展はし易いものであると考察は可能である。しかしながら神経根部及び周囲組織の損傷さえ回復すれば、器質的異常の有無問わず無症候になるものである
 
2)針が体内に刺入され生じる現象は(鎮痛作用となるGate control theoryは除外した上で)刺傷を起点とする動脈血の強制流入にて、患者が保持する恒常性による刺傷再生時の経時変化を利用する。この事で損傷部位の低酸素解除、炎症拡散による疼痛除去、柔軟性保持、柔軟性確保、柔軟性惹起、柔軟性維持、神経損傷の回復(部位問わず、観血的治療が必要でないと判断された程度のneurapraxia)、椎体付近(神経根・馬尾・椎間孔・後根神経節)の炎症拡散、及び低酸素解除による神経症状の改善、各種自律神経症状の安定化、脳内血流量増大による、脳血管障害後後遺症や、各種中枢神経疾患由来の諸症状、高齢に伴う脳血流量減少から派生する脳神経系由来の症状に対して回復を求む事になる
 
3)これらの現象を再考察するに辺り、刺入箇所に動脈血が強制流入されるという事は、他箇所から血液が移動してくるという現象が生じるという推測が可能となり、信頼度が高い現実的な問題となる。この理屈が現実であれば、発症箇所が仮に広範囲であれど、原因患部が比較的明瞭且つ、損傷箇所のエリアが微小な神経由来症状に関しては、当該患部に対して分散させない血液流入を求め、既存の治療指針である「1)当該患部の栄養支配領域の確保」「2)症状発症部位の神経支配領域の確保」「3)発症患部に於ける疼痛等より発生したと推測される交感神経系の亢進による血管収縮箇所の開放」「4)kinetic chainを基礎とする維持・確保を望む広域な刺針箇所の選定」を求める4つの理論を併せて一度の治療で落とし込む治療手段は適当とは言えなくなり、1)及び2)のみに刺入箇所を絞り、刺針部の血流量増加を求める事で様々なメリットが生まれると推察される。

以下にメリットとデメリットを術者及び患者を含め記述。
 
術者メリット
・刺針部位が減少する事により術者疲労が軽減される
・時短化に伴い治療可能患者を増やせる
・刺針部位を敢えて絞る事により、1回毎の治療に於いて効果の判定が容易になる
 
患者メリット 
・刺入箇所の減少、治療時間の時短化に伴い、治療時の疲労やストレスが軽減される
 
患者デメリット
・痛い部位に刺入する事を「治療」だと誤った認識をしている場合、治療行為と見なされない可能性がある(勿論、事前に解剖的な説明を踏まえて且つ治療効果が伴っていても)

が挙げられる。しかしながら、適応疾患はあくまで神経由来症状が適当であり、例えば外傷性要因の高い疾患、及び外傷性要因の高い疾患に付随した疾患に関しては、患部血流量の増加(血管新生も含む)を求めなければならない為に、必要な箇所には処置しなければならない事には変わらないのと同時に、患者の訴える疾患が神経由来か筋由来かの見立ての正確性は必要となる為、見立て誤りは効果を落とす結果に直結する。

一般的な日常生活で発症する諸症状と対峙出来る事が理屈上起こる。中には完治には至らないであろう疾患も混じっている(VAS値低下による日常生活のQOL向上のみに寄与可能)が。主に針治療を受ける患者群というのは、総じて大関節疾患及び脊椎疾患由来の症状や自律神経系含む中枢神経疾患が占めてくるものの、これらの諸症状は勿論、上記疾患を抱える患者が全員針治療を受療するかと言えば別であるが、これらの諸症状とは十二分に対峙出来る事も意味する。しかしながら、症状も重篤化及び、世間一般では「針灸適応外では?」という疑念を患者が抱えている場合や、既成疾患概念に洗脳されている場合(「○○病だから治らないのよ」「○○は手術なのよ」「○○は薬を飲んで治すものなのよ」等々)の基礎的思考を持つ患者の場合は簡単に脱落するものなので、結果的に治癒まで治療継続可能なケースというのは整形領域や自律神経系領域以外の疾患では少ないのではないかとも思われる。得てして、その既成疾患概念に準じた治療が施されて治らない患者が来るところが針屋であり、幾らでも情報は集まる場所というのを一般患者は知らないのだから仕方ないのだが。
 
結果的に手術を勧められた、若しくは手術を行う、他、如何なる治療手段に於いても効果を示さなかった難聴や視力低下、三叉神経痛等の脳神経経由来症状や何十年も続いた耳漏やEDや頻尿が良くなったというのは副産物的要素(勝手に偶然と捉えられる)でしか受け止めないだけで、これらを主訴として来院するケースというのは、○○専門と謳っている場合以外は少ないのではないかと推測される。○○専門と謳っているから治せるかと言えば、また別なのがこの業界であるが。

改めて治療時の4本柱を記述すると「1)当該患部の栄養支配領域の確保」「2)症状発症部位の神経支配領域の確保」「3)発症患部に於ける疼痛等より発生したと推測される交感神経系の亢進による血管収縮箇所の開放」「4)kinetic chainを基礎とする維持・確保を望む広域な刺針箇所の選定」が基礎的な治療内容になり、これらを包括しうる理屈を構築していた訳だが、SSの概念から考察し、限り無く減らし治療効果を引き上げる要素として1)~4)の柱のどれかを削り、患部に対しての栄養供給を強化させる必要性もあるだろう。このように考察すると3)と4)は必要なく、1)と2)に対して精力を注ぎ込む事が肝要である事が分かる。
 
この概念を取り込む事により、凡ゆる治療手段や日常生活動作時に於いて「してはいけない事」と「しても良い事」、「したほうが有用である」「したほうが確実性が高まる」というのも見えてくるものである。尚、これらの概念下に於いての治療手段を用いれば、脊椎由来疾患の諸症状のみでなく、小関節等々のアロディニア的要素が高い諸症状の判定も簡便になるというメリットも生じる。そして、3)と4)の理論「のみ」では、アロディニア的要素は勿論、陳旧例の筋及び神経由来症状に対しての効果は限り無く薄くなる。改めて記述するが、治療効果というのは針治療の作用時間を過ぎてからのVAS値の推移が低下して初めて有効治療と判定する為、直後に症状が無症候になったとしても、それは判定材料にならない。即時効果を患者が得たいのであれば別として、経時変化での原因患部の収束による段階的症状の改善手段として臨床的意義はないと感じる。

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  ~針治療から病態定義の見直しを~