藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

「治るとは」を今一度


引き続きアンケートと協力患者を募っています。宜しくお願いします。

参考関連

前項にて【針治療を受けられる方々へ】というのを書きました。
更に、その以前の課題として、「治るとは」という意味を改めて相互に考えても良いかもしれません。
 
私は10代以下~90代まで、幅広い年齢層の患者を診ています。
診断名問わず、多くの諸症状と対峙していく中で分かった事があります。
人は何歳になっても自然治癒出来る力を持っているという事です。
 
勿論、10代と90代では回復力や回復速度は違います。
高齢層であればあるほど、代謝速度が遅い故、回復力や回復速度が遅いのは否めません。
しかしながら、「高齢である」という理由が、「改善しない」という事にはイコールでは結びつかないという事です。
 
若かりし頃、首や肩、腰や膝に負担を掛け続けてきた事による、
相応の骨格変形は当該筋の伸張短縮率に変化を齎し、
その事により当該筋の低PHに陥る速度というのは、
骨格の変形を持たない人間よりも速いかもしれません。
 
しかしながら、治療を行い続ける事により、
仮に日常生活に於いて患部に負荷を掛け続けてきてしまった場合でも、
僅かな休息を取るだけで飛躍的に回復ができ、
患者自身が「症状」と捉えるまでの状態まで陥る事はなくなります。
 
人は日常の生活を行うだけでも、大なり小なり細胞に損傷は加わり続けます。
それが重度に及ぶ為に「症状」として人は自覚し、症状の訴えを起こします。
それでも、人は自身の力で治れる機構を持っています。
それでも尚、負荷を掛け続けてきた結果が今となり、
治れない身体になっているという状態を認識する必要があります。
 
損傷速度が回復速度を上回れば、症状は憎悪していると自覚します。
損傷速度と回復速度が一定であれば、症状は平行線であると自覚します。
回復速度が損傷速度を上回れば、症状が軽快していると自覚します。
 
針治療は、人が本来持つ回復機構に対して処置を行い続ける行為になります。
それが炎症や虚血や鬱血の解除であれ、
持続的な患部の動脈血流量増加を目的とした神経損傷の回復であれ、自律神経症状の回復であれ、
針治療の基礎的作用機序である局部及び広範囲に及んだ低PHの解除を目的とする事で、
様々な諸症状の回復を図れる事になります。
 
今一度、私達の身体は何により形成されているか考えてみましょう。
筋肉も神経も血管も内蔵も骨も、全ての細胞、器官は血流により維持されているという事です。
 
脳血管障害により後遺障害を起こす理由は何故でしょうか。
血流の遮断により、組織が破壊された故の結果です。
 
自律神経症状と言われる諸症状を引き起こす理由は何故でしょうか。
交感神経亢進下に於ける血管収縮に伴う患部の血流量減少によるものです。
副交感神経亢進による血管の異常開大による患部の血流量減少もあるでしょう。
 
首や肩、腰や膝が痛い理由は何故でしょうか。
日常的なオーバーユースによる当該箇所の筋細胞の低PHによる柔軟性の低下により、
血管絞扼が伴った事による患部の血流量減少によるものです。
 
これらの諸症状に対して必要な処置というのは何であるかを改めて考えてみると、
常々述べている、治効理論の柱となる「患部血流量の維持及び確保」が必須事項となります。
それらの患部に対して、どのようにアプローチを行っていくのかが治癒へ向けての第一歩です。
 
この治療手段が、血流阻害を助長するような行為であればいつまで経っても治る事はないですし、
処置の箇所が誤り続けた場合、症状は平行線~悪化の道を辿る可能性も秘めています。
 
私は、これらの基本的事項に対して、マイナスの可能性になる手段を考え、患者から話を聞き続けました。
人は、針を打たなくても治れる人間です。勿論、針を打つ事により急速な回復を得る事が出来ますが、
もっともっとそれ以前の問題として、治れない身体になった理由を知らなければ、
患者は治癒遅延を招き続ける行為を「良かれ」と思って行い続ける可能性があるからです。
 
治す立場として現場に立っている以上、
損傷が確実に上回る行為を行い続ける事に対しては危険視しています。
先ほども述べた通り、損傷速度が回復速度を上回れば、治癒遅延が招かれるからです。
それでも尚、損傷が確実に上回る、身体を損傷し続けても尚、
その行為が患者にとっての生き甲斐や幸福に繋がり続けるのであれば、
それも患者自身にとっては1つの価値や意義のある事かもしれません。
但し、それは薬物を使用をしておらず、
あくまで純粋な筋骨格系等の諸症状を呈している程度の人迄と、限定しておきたいものです。
 
       
 
「治す」という行為は「引く」という行為が重要である事は以前から述べていました。
それは、過剰摂取の栄養素を引く事であり、嗜好品を引く事であり、
負荷の掛かり続ける強い指圧やストレッチ、体操を引く事であり、
血管の絞扼を招くようなコルセットやサポーターを引く事であり、
怪我予防の為にと腹筋や背筋をしている行為を引く事であり、
「体重分散」、「楽」と宣伝文句で販売されている器具や家具も、
実はよくよく見てみれば、一点の部位に圧が掛かり続けている器具や家具を引く事であり、
仕事内容に於ける負担を引く事であり、極論を言えば重力を引く事でもあります。
 
「何もするなって事?」という質問もあるでしょう。そうです。正解は何もしない事です。
未知の諸症状が出始めてから患者自身が行い出す行為というのは、残念ながら大抵間違えています。
未知の諸症状が出始めてから躍起になって取り組んだ行為は、焦燥の下、調べ上げた手段です。
医者の言葉も、ネットの情報も、健康雑誌の情報も、目に付いたものから全て鵜呑みにする傾向があります。
そして、一番目に付き易い情報は、何故、一番目に付き易い位置にあるのでしょうか。
 
筋トレをしたら遅発性筋痛が出る。未来予測が可能な既知の症状が惹起されても心配せず放っておくでしょう?
それは何故でしょうか。自身が行っている行為により起こりうる将来が予測可能だから不安視しないのです。
 
では、ここまでの、「治るとは」という事に関して分かって頂けたと思います。
では、これらの行為を引く事で、人は治れるという理屈も分かったと思います。
 
私は最近、針治療を行う以前の問題の話を延々とし続けています。
それは何故かという話もしなければなりません。
それは、患者側は常に「引く」事はせず、「足す」一方であるからです。
 
先ほど、幾点か挙げた引かなければならないの多くの行為は患者に対して快楽と鎮痛を齎します。
糖質や脂質の過剰摂取や強圧による指圧、痛みを伴う程のストレッチや体操は脳内麻薬を惹起します。
血管の絞扼や収縮を招けば、一時的に感覚も鈍麻します。
身体全体が包み込まれるような家具は、全身の体重が分散され、
楽になる気がするかもしれませんが、常に一点には圧が掛かり続けているという裏側があります。
取り込んでいる種々の行為は「楽」に感じるだけで「治癒」とは程遠い行為である事も認識する必要があります。
「快楽」と「治る」を履き違え続けた結果、治れない身体になってしまったという事も認識する必要があります。
 
これらの行為を停止する事は、あくまで患者自身の努力が必要となる為、
患者自身が積極的に回避し続けなければなりません。
治る為には、労力が掛かります。
重症であればある程、患者負担は増していきます。
重症であればある程、患者の苦痛も増していくでしょう。
それは、針治療の回数や治療時間の増加による負担だけでなく、
日常生活の制限も多く加わるからです。その労力が伴わければ治る事もありません。
その為に、道半ばで諦めた脱落患者が急に薬物を乱用し始めるのも、その理由からなのです。
プロ・アマ問わず、第一線を離脱したスポーツ選手が、アンチドーピング派から一転、
薬物を乱用し始めるのも、その理由からなのです。そして抜け出せなくなります。
何故なら、「快楽」「楽」「鎮痛」、これらの長期使用に伴い形成されるのは依存性だからです。
 
私は常に患者を見続け、追い続けました。
嫌われる覚悟も上等で嫌な質問をし続けました。その中で見えてきた事があります。
敢えて診断名は述べませんが、多くの自律神経症状を持ち合わせている患者、
筋骨格系の重症例患者、他、局所だけではなく、全身性に及ぶ症状を抱えている患者。
これらの患者には幾つもの共通点があります。
その共通点は、この場では述べませんが、誰しも起こりうる可能性があるという事だけは事実です。
 
人は楽に生きたいものです。それも事実でしょう。
しかし、楽に生きるという行為を掴む為に、多くの反作用が最終的には自身の身に降りかります。
それが、医療というカテゴリで話をすれば「健康被害」です。
 
医原病とも言える患者が来ます。患者自身が医原病だと自覚されているのであれば話は早いのですが、
医原病だと自覚出来ていない患者も多くいます。
薬を飲み続ける事が健康への一歩であり、家族の為であり、近所の人の為であるという認識。
家族が患者へ薬を飲ませ続ける行為が、健康への一歩であり、患者の為であり、近所の人の為という認識。
周囲のコミュニティ形成の為に飲み続けているという行為自体が間違っていると認識しなければなりません。
患者家族へ。子どもの為にと一生懸命になって飲ませている、その薬は何ですか?
大騒ぎしている子どもを大人しくさせる為、飲ませようとしている行為は、子どもの都合ではなく大人の都合です。
 
書けば書くほどキリがなくなりますが、治る迄には多くの障壁をクリアしなければなりません。
それは、患者自身の認識であり、患者家族の認識であり、協力であり、理解であるかもしれません。
しかしながら、その認識や協力や理解が間違え続けた場合、患者は憎悪の一途を辿ります。
 
人は何歳になっても自然治癒出来る力を持っている、と、冒頭で書きました。
その治癒力を阻害する行為は一体何でしょうか。様々な視点から見なければ答えは出ないのかもしれません。
 
そのような状態に陥る前に、そして針を打つ打たない以前の問題として、私達の課題は山積みかもしれません。

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  ~針治療から病態定義の見直しを~