藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

「合う」「合わない」という考え方 2


馴染みの薄い食事療法ですが、歴史は古く、このようなミルクも販売されています。
ケトン食は、小児の難治性てんかんの治療で発展を重ね、100年の歴史があります。
 
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生まれつきの代謝の異常などにより、母乳や市販の粉ミルクを飲めない赤ちゃんがいます。
こうした乳幼児のために、明治は栄養補給や治療用の「特殊ミルク」を製造し、お届けしています。
特殊ミルクには、国の助成事業として無償で提供される「登録特殊ミルク」と企業が無償で製造・提供する
「登録外特殊ミルク」があり、あらゆる適応症に対応したミルクを供給し続けています。

前項の続きです。出所を失念してしまいましたが、下記の青字は何方かが和訳した内容です。

Stafstrom CE, Rho JM. The ketogenic diet as a treatment paradigm for
diverse neurological disorders. Front Pharmacol. 2012;3:59. Epub 2012 Apr 9.

ケトン食(KD)は薬剤抵抗性てんかんに対してその効果が証明されている、
総摂取カロリーの7580%が脂質で構成される高脂質、
低炭水化物の治療食である(Vining et al, 1998; Neal et al., 2008)

そしてその抗てんかん効果の基礎となるメカニズムは
いまだに完全には判明していないままであるが
Hartman et al., 2007; Bough and Stafstrom, 2010; Rho and Stafstrom, 2011)
その幅広い神経保護性質については経験的エビデンスが蓄積されつつあり、
同様に多彩な神経疾患の状態に
対しての使用を支持するデータが出てきている(Baranano and Hartman, 2008)。

この総括論文ではてんかん以外の神経疾患においてKDを用いる
理論的根拠と関連する食事療法について詳しくみていく、
そして最近までの臨床経験を要約する。

●ケトン食による神経保護作用

KD
治療の二つの顕著な特徴は肝臓におけるケトン体産生の上昇と血糖値の減少である。
ケトンの上昇は主として脂肪酸酸化の結果である。アラドン酸やドコサヘキサエン酸、
エイコサペンタエン酸などの特定の多価飽和脂肪酸PUFAs)は
それ自身が電位依存性ナトリウムおよびカルシウムチャネルを
ブロックすることによって神経細胞膜の興奮性を制御し(Voskuyl and Vreugdenhil, 2001)、
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPARsCullingford, 2008; Jeong et al., 2011)の
活性化を通して炎症反応を抑制し、また活性酸素の産生を減少させる
ミトコンドリア脱共役タンパク質を誘導する(Bough et al., 2006; Kim do and Rho , 2008)。

ケトン体そのものは高められたNADH酸化とミトコンドリア膜透過性遷移現象
mPTKim do et al., 2007)を通じてATP値を上昇させ活性酸素産生を減らすことによって
神経保護作用を持つことが示されてきている。

生体エネルギー機構を改善する同様のラインを通して、
KDミトコンドリア発生を刺激し、結果としてシナプス機能を
安定化させることが示されてきている(Bough et al., 2006)。

第二のKDの主要な生化学的な特徴は解糖系の流量の減少である。
解糖の減少は痙攣を抑制する(Greene at al., 2001)だけでなく霊長類を
含む多数の種において生存期間を延長させる
Kemnitz, 2011; Redman and Ravussin, 2011)ことが示されてきている。

他の重要なメカニズムとしてはミトコンドリア機能を改善させ
酸化ストレス減少させること(ケトン体やPUFAsでみられる現象も同様)、
アポトーシス促進因子の活性化を減少させること、
インターロイキンや腫瘍壊死因子α(TNFα; Maalouf et al., 2009)のような
炎症メディエーターを抑制することが挙げられている。

さらに細胞内ホメオスターシスや神経傷害や機能不全を
防ぐことにも寄与しているかもしれずKDの神経保護に関するメカニズムは
他にもたくさんありそうである。

てんかんとケトン食

医学的に難治性てんかん患者(特に小児)のてんかん発作を改善する効果を
持つことにはもはや疑いの余地はない(Vining, 1999; Neal et al., 2008; Freeman et al., 2009)。
KDは今世界中のほぼ主要なてんかんセンターにおける装備の不可欠な部分となってきている。

●加齢とケトン食

KD
が酸化ストレスとその下流での反応結果を減少させるという事実は、
加齢による悪影響を遅らせるとみなすことに関する合理的な論理的根拠を
提供している(Freemantle et al., 2009)。

アルツハイマー病とケトン食

アルツハイマー(AD)の患者において神経興奮性が上昇しているという
認識が高まってきている(Noebels, 2011; Roberson et al., 2011)。
MCTKDでのランダム化二重盲検プラセボ対照試験ではADAPOε4陰性患者での
認知機能をかなり有意に改善する結果であった。

この重大な臨床的な改善は、ミトコンドリア機能の改善に引き続いて起こると
考えられた。またKDアミロイドβの蓄積量を実際に減少させるかもしれない
VanderAuwera et al., 2005)。

興味深いことに、地中海食のような他の食事もADでいくらかの
有望性を示してきており(Gu et al., 2010)、おそらくは全身性炎症反応を抑制し、
代謝プロフィールを改善することを通しているものと思われる。

パーキンソン病とケトン食

PD
と関連があるとされているミトコンドリア複合体Ⅰでの活動性の欠損を
ケトン体がバイパスするという認識に基づき、小さな臨床研究ではあるが
7人の患者のうち5人が標準的なPD評価スケールのスコアに改善したということが
実証された(Vanitallie et al., 2005)。

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メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(MPTP)によって
生み出されたPDの動物モデルでは、BHB注射によって通常その毒素によって
引き起こされるミトコンドリア呼吸鎖の傷害が改善した(Kashiwaya et al., 2000)。

ALSとケトン食

筋萎縮性側索硬化症ALS)は他の神経変性疾患と同様に、
エネルギー産生システムの関与が一定の役割を果たしており、
おそらくミトコンドリア機能障害が疾患の病態生理に寄与しているであろう。

ALS
のモデルマウスへKDを注射することでKDでない食事を与えられた
動物に比べて組織学的にも(運動ニューロン数の増加)機能的にも(ロータロッド試験での運動機能の保持:※ゲッシ類における協調運動と運動学習を測定するテスト)
改善をもたらした(Zhao et al., 2006)。ところが、KDは非KDの対照マウスに
比べて生存期間を延長しなかった。

注意すべきことは、これは全ての神経変性疾患にあてはまることであるが、
KD治療の保護効果に関して介入のタイミングが命運を左右するのかどうかを
決める必要があるということがある。

 
●癌とケトン食

基本的に癌細胞はブドウ糖を通常の燃料供給として代謝回転が速いので、
KD2DGを用いることによって)急速に分裂するのを防ぐことは治療になりうる
Aft et al., 2002; Pelicano et al., 2006; Otto et al., 2008)。
ただ臓器系が異なれば腫瘍のタイプも区別されKDやその他の
食事療法に異なった反応を示す可能性がある。

脳卒中とケトン食

最近までに、脳卒中患者でKDの効果をみた臨床試験は実施されていないが、
低酸素‐虚血の動物研究ではいくつか食事の有益な効果の潜在性が支持されている。
そうした研究はエネルギー代謝を助ける生化学の変化が重症脳損傷の急性期に対して
保護的に働くであろうことを暗に示唆している。

ミトコンドリア疾患とケトン食

Kang
ら(2007)は14名のミトコンドリア欠損が複合体Ⅰ、Ⅱ、Ⅳにあり、
全員が医学的に難治性てんかんを持つという小児患者たちにKDが安全かつ
効果があるということを報告した。一しかしながらKD治療は原発カルニチン欠損症
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)ⅠやⅡ、ミトコンドリア輸送体の変異を含む)や
脂肪酸β酸化異常(例:中鎖アシルデヒドロゲナーゼ欠損症:Kossoff et al., 2009)の
個人には勧められていない。

●脳外傷とケトン食

外傷後のてんかん原性の臨床的な問題およびKDが痙攣活動を減少させうるという
事実の観点からみると、食事療法が脳外傷を、そしておそらくは長期の
てんかんのような結果を改善するという考えが出てきている。

●神経疾患(うつ病)とケトン食

うつ病におけるKD潜在的な役割はラットでの強制選択モデルで研究されてきており、
伝統的な抗うつ薬にとってもたらされるのと同等の有益性があるとされている
Murphy et al., 2004; Murphy and Burnham, 2006)。

自閉症とケトン食

現在、限られた臨床的エビデンスKD自閉症スペクトラムの疾患の
子供でみられる異常行動のいくつかを和らげるかもしれないという興味深い可能性を提示している。

片頭痛とケトン食

慢性的な片頭痛にはKDを考慮する理論的な理由があり、
特に医学的に難治性の集団に対して考慮に入れる価値がある(Maggioni et al., 2011)。

中枢性の疾患や損傷に関しては、栄養摂取面が非常に重要になってきます。
上記には記載がありませんが、向精神薬による離脱症状にも有用性は高く、
ケトン食を実践する価値はあると思われます。
 
では、そもそもの糖質なのですが、糖は自分の身体で作られます。
 
 
自分の身体で作られるにも関わらず、外部から摂取する事により、
代謝の過程で心身には多大な負担が生じます。
 
代表的なのが、インスリン、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、グルカゴン、
副腎皮質ホルモン(コルチゾール)、副腎髄質ホルモン(アドレナリン・ノルアドレナリン)の必要なき分泌です。
 
血糖値が約80mg/dLを下回ると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌が極端に低下します。
約65-70mg/dLに低下すると、血糖値を上げるホルモン、グルカゴン、アドレナリンが大量に放出され始めます。
約60-65mg/dLに低下すると、三番目の血糖値を上げるホルモン、成長ホルモンが放出されます。
最後に60mg/dLをきるようになると、最後の血糖値を上げるホルモン、コルチゾールの分泌が亢進します。
極端な事が無い限り、下限まで低下しないとは思うのですが、念の為に記載しておきます。
 
糖質に関しては、「健康体だから大丈夫」、「不健康体だから避けて」という考えは
私には無く、タバコや酒、コーヒー等の嗜好品と同じ、依存性を伴う要らぬ食品だと捉えています。
その為、糖の摂取に関しては「合う」「合わない」以前に
「摂取の要らない食品」という結論です。
 
少し話しが小難しくなりましたが、
砂糖を止めた方々がどんな反応を示したかと言う
身近な話を添付して今回は終わります
 
 
※再度書きますが禁忌者も極一部ですがいます。オレもオレもと急に始めるのは危険です。

※余談ですが、「食事療法」という呼び方も一種の「健康法」のカテゴリーに当て嵌められるようで、
個人的には好きではありません。「食事療法」と名の付かない「食事」というのは何なのでしょうか。

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  ~針治療から病態定義の見直しを~