藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

東日本大震災から学ぶ薬の取捨選択

2011/3/18

全般的に

継続を要する薬剤はあるとしても、急を要しない薬剤、中止可能な薬剤を知っておく必要があるでしょう。
また、この時期には中止しないと危険な薬剤があります。薬剤が流されて、何日か服用できず離脱症状
起こす可能性のある薬剤(睡眠剤、安定剤、抗うつ剤ステロイド剤)、
食糧不足のために薬剤を服用していなくても血中濃度が上昇しうる危険な薬剤もあります(抗精神病剤など)。
さらには、急場にどうしても必要があって一時的に使用したとしても、安定剤や睡眠剤など依存に陥る可能性のある薬剤は、不要になればできる限り早く離脱を考える必要があります。一時中断後、再開に際して、
特に注意を要する薬剤もあります(抗うつ剤、リファンピシン、甲状腺ホルモンなど)。
これらの薬剤を区別しておくことが非常に重要と考えます。

コレステロール低下剤−中断してもかまわない、むしろ中止すべき

報道でたいへん奇異に感じたのは、被災地の医師や看護師らが、
インタビューに応じて、降圧剤やコレステロール低下剤などが不足しているので、
脳卒中が心配などとコメントしていたことです。大災害の時には、危機的な状況を乗りきるために、
体のあちこち、とくに筋肉や脳が酸素や栄養を要求します。血液を多量に送りこむために、
アドレナリンを出して血圧を上昇させています。また、ストレスに耐えるために、
ステロイドホルモンが多量に必要ですので、ホルモンの原料となるコレステロールを増やす必要があるのです。
 
しかし、食糧不足で、多くの被災者は十分に栄養が取れない状態になっています。
体の外からコレステロールそのものの補給が十分でありませんし、コレステロールの原料になる
栄養素(主に糖分の分解産物)も供給不足に陥っているのですから、
体の内外でコレステロールは供給不足状態にあります。
 
その状態でコレステロール低下剤が使われるとどうなるでしょうか。
特にスタチン剤は、原料となるアセチルCoAからメバロン酸を作る段階を妨害しますから、
コレステロールそのものができにくくなるだけでなく、コエンザイムQ(ユビキノン)という重要な
物質もできにくくなります。ステロイドホルモン不足とともに、ユビキノン不足となると、
免疫も低下して大変危険です。
 
以前相談を受けた中に、骨折で入院した後食事が取れなくなっていたのにコレステロール低下剤が続けられて、コレステロール値が100mg/dLを切り、60台で溶血性貧血を起こして心停止し、
さらに30台まで下がって死亡した人がいました。大震災で低栄養の人では、最悪では、
こうした状態になる危険があります。ここまで極端でなくとも、
コレステロールの低下で感染症が悪化しやすくなり、
神経障害や横紋筋融解症など、重大な害を生じる危険があります。
したがって、コレステロール低下剤は、使用を継続するより、逆に中止する必要があります。
 
コレステロール低下剤で下がりすぎて急に激烈な症状が起きることはあっても、中止によって、
その反動で何か病気が急激に悪化するということはありません。
仮に服用していて利益があるような人がいるとしても、その効果は長期的なものであり、
一時的な中止によって生じる害は、ほとんど無視しうるとみてよいでしょう。

降圧剤−合併症がなければ中断しても大きな影響はないはず

危機的な状況では、先にも述べたように、体のあちこち(特に筋肉や脳、心臓)が
酸素や栄養を多量に要求します。血液を多量に送りこむために、
アドレナリンを出して血圧を上昇させているからです。必要があって上昇している血圧を下げると、
重要な臓器に血液が不足してしまうことになりかねません。
 
そして、一時的に高くなっていても、事態が落ち着いてくれば、自然と血圧はさがってくるものです。
降圧剤によってむりやり血圧を下げると、かえって不都合が生じることになりかねません。
特に、ARBは、炎症反応・免疫を低下させるため、感染症を多発しやすいのです。
カルシウム拮抗剤も同様です。免疫細胞にもカルシウム・チャンネルがあります。
それを抑えると免疫が抑制されるのです。栄養不足により感染症に弱くなる被災地では、
ARBやカルシウム拮抗剤は、むしろ控える必要があると考えます。
 
ただし、大動脈瘤心筋梗塞を起こしたことのある人など、合併症のある方にとっては、
降圧剤は欠かせないでしょう。こうした場合は、個別的に考える必要があるでしょう。

解熱剤、かぜぐすり−飲まない方がよい

今回の大震災の被災地は寒冷地です。今年のインフルエンザの流行は、
ほぼ終了しつつありますので、これは幸いであったと思います。
しかし、一部の地域でB型インフルエンザが最流行し始めているとの情報もありますが、
国立感染症研究所感染症情報センターの病原微生物検出情報(IASR)によれば、
先週より報告数が増加した都道府県はありません。したがって、ほとんど終息していくと考えてよいでしょう。
 
また仮に、流行が再開したとしても、インフルエンザワクチンは無効です。
噂に惑わされないようにしていただきたいと思います。
ただ、インフルエンザでなくとも、かぜには罹りやすくなります。
栄養不足のために、かぜであっても重症化しやすくなる可能性があります。
特に、幼児や高齢者では、重症化しやすいので注意は必要です。
 
このような状況のもとで、解熱剤を含んでいるかぜ薬、
とくに非ステロイド抗炎症系の解熱剤(きつい解熱剤)を用いると、
たかがかぜでも、感染症をより重症化して、死亡率を高めることになります。
 
熱は必要があって上がっているのです。せっかく苦労して体温を上げているのに、解熱剤、
特にきつい解熱剤を使って無理やり熱を下げるのはいけません。
ともかく、体を温めて、熱が自然に下がってくるのを待つのが一番です。
ウイルスが熱でやっつけられて減ってくれば自然に熱は下がってくるのです。
特に、乳幼児や高齢者には、かぜぐすり、解熱剤は禁物です。使わないように。

タミフルなど(抗インフルエンザウイルス剤)−必要ない

抗インフルエンザウイルス剤は、インフルエンザの重症化を予防しません。
インフルエンザで高熱になる頃には、ふつうウイルスはもう減り始めています。
インフルエンザで怖いと恐れられているのは、脳症や肺炎ですが、
タミフルもその他の抗インフルエンザ剤も、これら脳症や肺炎を予防するものではありません。
 
それに、タミフルは突然死や異常行動の危険性が高くなります。
タミフルが脳内に入り込んで脳を麻痺させるからです。
つい最近も、タミフルが、意識障害や、せん妄(異常行動の強い症状)を
増加させるという調査結果が学術雑誌に掲載されました。
 
実はこの報告は、
タミフルの販売元である中外製薬から寄付金の提供を受けていた研究者ら自身が報告したものです。
それに、タミフルを使うと異常な低体温になることがあります。解熱剤のところでも触れましたが、
せっかくウイルスを追い出すために熱がでているのに、熱がさがると、治りが遅くなります。
そして、タミフルを使っていると、ウイルスに対する免疫もできにくいという結果も出ています。
 
タミフルをはじめ抗インフルエンザウイルス剤は、普段でも必要ありません。
そのうえ、栄養のよくない状態で重症化した場合には、その毒性がよけいに出やすくなりますから
被災者の皆さんは、使わない方がよいのです。使ってはいけないものです。

抗不安剤、睡眠剤−大量使用者が急激な中断は危険

ハルシオンマイスリーなど超短時間作用型の睡眠剤を大量(常用量上限の4倍以上)常用していた人が、
1日中断しただけで、その翌朝、痙攣や筋硬直から意識消失し、「悪性症候群」あるいは「カタトニア」と
いうような状態に陥ったことがあります。
 
おそらく、常用量の3倍以上も服用している人が1〜2日中断するだけでも、
同じような状態に陥る危険性があると考えられます。
したがって、大量を常用している人の完全中断は危険です。
中止する場合は、すこしずつ減量をしていって、最終的に中止にもっていかなければなりません。
 
しかし、津波で薬もすべて流されてしまったという人は少なくないでしょう。
そのため、震災の日もいつも飲んでいた薬がなくてこまったという方は多いはずです。
とくに睡眠剤を常用していた人は、震災の不安に加えて睡眠剤がないことによる
離脱症状に悩まされたのではないでしょうか。
 
翌日から2〜3日後に、原因不明の痙攣や筋硬直、あるいは意識消失を起こした人については、
この可能性を検討する必要があります。
しかし、常用量程度を使用していた人なら、中断しても特別な不都合はありません。
この機会に中止を試みるのもよいかもしれません。

抗けいれん剤や抗パーキンソン剤の中断も危険 早く再開を

抗けいれん剤も、抗不安剤や睡眠剤と同様の作用があります。
抗けいれん剤は、けいれん抑制のために、比較的大量を長期に用いていることが多いので、
中断すると、もともとあったけいれんが生じるようになりますし、
離脱症状としてのけいれんも加わる可能性があります。
2〜数日後に けいれんを生じる可能性が最も高いと考えられます。
 
場合によってはなかなかけいれんが止まらず、けいれん重積状態に陥る可能性があります。
再開するのには、もとの薬剤がよいのですが、なければ、痙攣のタイプにもよりますが、
とりあえずの代替薬剤として、ベンゾジアゼピン系薬剤なら基本的にどれでも使用可能な場合もあります。
医療提供側は、そのことを考慮して診療にあたる必要があるでしょう。
 
パーキンソン病の薬(抗パーキンソン剤)は、どちらも筋硬直を軽くする作用があります。
中止すれば、もともとあった症状が現れます。筋硬直が強くなり、場合によっては、
発熱する重症の害作用が起きかねません。筋硬直が強くなり発熱する状態を「悪性症候群」といいます。
この場合の治療法は、元の薬剤を再開することです。もとの薬がどうしても手に入らない場合には、
眠剤や安定剤として用いている薬剤(ベンゾジアゼピン系薬剤といいます)があれば、
それでも症状を軽減させる効果があります。
 
ベンゾジアゼピン系薬剤なら、どの薬剤でもよいでしょう。
ともかく、できるだけ早く症状を軽くしてあげることが大事です。
硬直が強い場合には、飲みこむのも不自由ですから、注射が必要です。
静脈注射では呼吸状態に注意しなければいけません。
あまりひどくなく、飲みこむことができるなら、飲み薬でも十分効果があります。
抗痙攣剤や抗パーキンソン剤は、一時的に中断したとしても,
できる限り早く再開できるように、配慮が必要です。

抗不安剤、睡眠剤−依存症になりやすいので安易に開始しないで

一方、被災者の中には、不安や寒さで不眠となる人がいるでしょう。
報道されている様子を見ると、睡眠剤が結構処方されているように見受けます。
医療に携わる者としては、どうしても不安を取り除いてあげたいと
思う気持ちから処方がなされていると思います。
 
しかしながら、注意が必要なのは、これら睡眠剤抗不安剤
抗うつ剤は依存症を起こす危険性を持っているということです。被災による不安があったとしても、
安易な使用開始は、極力避けるべきでしょう。抗不安剤・睡眠剤は、免疫を抑制し、
感染症も起こしやすくします。また、睡眠剤の使用でうつ病罹患が2倍になります。
 
仮に一時的に使用が必要な場合でも、
急激な増量になっている場合にはせん妄による攻撃性が発症して、犯罪行為に及ぶ危険性があります。
したがって、増量にならないよう、ある程度落ち着けば、
できるだけ早期に中止する努力・注意の喚起を怠らないようにという注意が、
医療を提供する側には求められます。

SSRI抗うつ剤(特にパキシル)−中断は危険、再開時も要注意

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)系の抗うつ剤、とりわけパキシルは、
血中濃度の上昇と低下が著しいため、使用していた人が中断すると、一気に血中濃度が低下して、
離脱症状が出やすくなります。離脱症状の中でも、攻撃性が高まって暴力行為や他害行為、
犯罪行為に進む可能性があります。中断して1週間以内が最も起こしやすいのですが、その後も起こします。
また、中断後に使用を再開するにしても、もともと用いていた量でいきなり再開するとたいへん危険です。
この場合も、同様に攻撃性が高まり、暴力行為や他害行為、犯罪行為に進む可能性があります。
再開するにしても、最低量から始め、徐々に増量していかなければなりません。
また、再開によって自殺の危険性も高まりますし、中断でうつ状態が激しくなることもあります。
中断していて、それほど問題にならなかった人は、この機会に中止を試みてみるのもよいかもしれません。

神経遮断剤(抗精神病剤)−栄養不良で命にかかわる中毒症状の危険性あり                 致死性不整脈悪性症候群・カタトニアなど

統合失調症のほとんどの人は、フェノチアジン系やブチロフェノン系[代表例はセレネース
インプロメンヒルナミンなど]、非定型抗精神病剤[リスパダールジプレキサセロクエルなど]を
大量に服用しています。これらの薬剤は、ほぼ例外なく、脂肪に溶けやすい薬剤です。
統合失調症の人は、運動不足と薬剤の性質から、肥満していることが多いのですが、
こうした方々が被災して食事が不十分であると、抗精神病剤の血中濃度が高まり、
命にかかわる中毒症状がでてくることがあります。
 
これは、薬を服用していなくとも起きるのですが、
そうしたことが起きることを認識していないと、医師でも、何が起きたのか、訳が分かりません。
統合失調症の人が手術で麻酔をかけ、絶食状態が続くと突然死する現象は、
麻酔医にはいわば常識になっていますが、それと同様の現象と考えられます。
絶食のために皮下脂肪など蓄積した脂肪を燃やしてエネルギーにするために、
その脂肪に溶け込んでいる抗精神病剤が血液中に溶けだして血中濃度が高まるのです。
この中毒症状は、いずれも命にかかわります。
 
致死性不整脈が最も激しい中毒症状です。
心室頻拍やTorsades de pointesというタイプの不整脈、あるいは心室細動で、
いずれも突然死の原因になります。悪性症候群が、次に激しい症状です。
筋肉の硬直が起きて発熱するのです。発熱して肺炎を合併することもありますが、
肺炎と間違われることがありますし、実際に呼吸ができなくなるので、肺炎も起こします。
しかし、いくら抗生物質だけを用いても治まりません。
 
おまけに、先述の睡眠剤抗不安剤も服用していることが多いので、
その禁断症状も加わるために、よけいに筋肉は硬直して発熱することになります。
この場合には、ベンゾジアゼピン系の薬剤(ジアゼパム:商品名ではセルシンホリゾンなど)が
最もよく効きます。
 
カタトニアというのは、発熱しない程度に体が硬直する状態をいいます。
統合失調症そのものでも起きますが、圧倒的に、統合失調症用の抗精神病剤の過剰で起きやすいのです。
こうした危険な状態の防止には、絶食をさけることが最も大切なのです。
精神疾患の専門病院の患者さんが多数死亡されたことが問題になりましたが、
食事を提供されなかったために、ここで述べたことが現実に起きて突然死された、
という可能性も否定できないのではないかと心配します。
 
三環系抗うつ剤を大量に使用している場合も同様の危険性がありえます。
程度は少ないとはいえ、抗不整脈剤(I型)も抗精神病剤と基本的には同じ性質のものですから、
注意が必要です。

ステロイド剤−中断は危険! 離脱症状は吸入ステロイド剤でも起きる

ステロイド剤(コルチコステロイド剤)は、急激な中断や、減量せざるを得なくなる場合には、
離脱反応として、さまざまな不都合が生じます。吸入ステロイド剤、なかでもフルタイド
アドエア(どちらもフルチカゾンが主成分)も例外ではありません。長期のステロイド療法で、
自分自身の副腎が必要に応じてステロイドホルモンを作れなくなってしまっているからです。
吸入ステロイド剤でもフルチカゾンを含有するものは、脂肪に溶け込み効果が長時間持続するために
体に蓄積していて副腎の働きを抑制しています。
 
飲み薬のステロイド剤の中断で、最も短時間で起きる激しい症状は、
3〜4日から数日で生じるショック状態です。血圧が下がり、低血糖が起こり、
意識がなくなり(昏睡状態)、けいれんが生じることがあり、場合によっては命にかかわります。
吸入ステロイド剤ではこれよりももう少し遅れて同様の症状が起きるようで、
いつの間にか意識がなくなってけいれんが起きていたが原因不明とされることが多いのです。
 
中断して1週間程度後には、発熱をはじめ「かぜ」のような症状がでることがあります。
その後2〜3週間後では、脱力感や倦怠感が起き、喘息の反応が起きる人もあります。
2か月から数か月後頃にはリウマチ反応がないけれども関節痛など、
まるでリウマチのような症状が生じることがあります。
この反応は「偽リウマチ」という病名もついているくらいです。
 
その後数か月から1年程度にわたり、涙が出にくい、唾液が出ない、
なんとなくだるい、など、さまざまな症状が起きるようになります。
ステロイド剤を長期に用いていた人では、急な中断は避けなければなりません。
もしも、原因不明で昏睡やけいれんを生じている場合には、
その人がステロイド剤を使用していなかったかどうか、医療に携わる人は注意をしていただく必要があります。

インスリン−中断は危険 すぐに届けて                                                                 インスリン・SU剤以外の糖尿病用薬剤は中断しても大丈夫

インスリンが必要な糖尿病患者さんにとってインスリンは必須です。
糖尿病の患者さんでインスリンを注射中の人には、命綱ともいうべきインスリンは、
確実に届けてあげてほしいと思います。
しかし、被災地で避難している人は、食事の量が少なくなっているでしょうから、
その場合は、インスリンの量を減量する必要があります。ただ、食事が減って血糖値が下がっているからと、
インスリンを完全に中止してしまうと、代謝状態がぐっと悪化しますので、
低血糖症状が起きない程度に、ごく少量でもインスリンはしておく必要があるでしょう。
 
一方、インスリン以外の糖尿病用の薬剤は必ずしも必要ではありません。
SU剤を使用中の人は、おそらくかなり減量する必要があるでしょう。
場合によっては、中止しても血糖値はあまり上がらないかもしれません
(ただしストレスのために上がることも考えられますが)。
 
グリタゾン剤のピオグリタゾン(商品名アクトス)は、いつ中止しても、
中止により「益」があるだけで「害」は何もありません。
むしろ、栄養が足りないのに続けていると血糖が下がりすぎ、
不全も起こりやすく、骨折も増加することになるでしょう。
このように、害を受ける可能性がたかまりますので、中止が望ましいと言えます。
アクトスは最近、ドイツで健康保険の支払い対象から外されたほどです。
10年前から薬のチェックで言ってきたとおりになりました。
 
アカルボース(グルコバイなど)やボグリボース(ベイスンなど)糖分の吸収を抑える薬剤も、
ただでさえ食糧不足なのですから、中止すべきです。
グリプチン剤(DPP-4阻害剤)であるシタグリプチン(商品名グラクティブ、ジャヌビア)、
ビルダグリプチン(エクア)、アログリプチン(ネシーナ)や、GLP-受容体作動剤である
リラグルチド(ビクトーザ)、エキセナチド(バイエッタ)などは、いずれも2009年12月以降販売が開始された、
ぴかぴかの新薬です。抗結核剤のリファンピシン−中断後再開時にはアナフィラキシーに要注意。
結核剤のリファンピシンを一旦中断した場合、それを再開する際には、厳重な注意が必要です。
再開に際して、アナフィラキシーを生じ、呼吸困難や血圧の低下でショック状態になる危険性があるからです。中断の後に再開する場合には、医療機関の中で少量を服用したうえで、
アナフィラキシーなど過敏反応を生じないことを確認する必要があります。

甲状腺ホルモン剤−必須、ただし中断後再開時は少量から

甲状腺ホルモン剤半減期が長く(平均7日)、効果が長く続くので、比較的余裕がありますが、
2週間以上も長期にわたって中断していると、低下に伴う影響が出現する可能性があります。
そして、極めて長期に中断していて甲状腺機能が非常に低下してしまった場合には、
元の量をそのまま再開するのではなく、少量から再開しなければなりません。

骨粗しょう症骨粗鬆症)用薬剤

骨粗しょう症用として、最近盛んに用いられている新薬(ビスホスホネート剤)も、
継続すると危険です。アレンドロン酸(フォサマック、ボナロンなど)、エチドロン酸(ダイドロネル)、
ミノドロン酸(ボノテオ、リカルボン)、リセドロン酸(アクトネル、ベネット)などです。
それにこれらは、効果持続時間が長いので、中断で不足するということはありません。

認知症用薬剤、肝臓病用剤、ビタミン剤

ドネペジル(アリセプト)は、アルツハイマー認知症に用いることが認められている薬剤ですが、
病気の進行そのものを防ぐことはできません。ただ一時的に多少症状を改善する程度です。
むしろいろんな害作用もあります。震災という非常事態で、必須のものとは言えないでしょう。
肝臓病用剤のウルソやビタミン剤なども、有効性の根拠は乏しく、必須のものとはいえません。
中止しても特に差し支えがあるわけではありません。むしろ、食事が適切に供給されることこそ重要です。

花粉症・アレルギー性鼻炎の薬剤

花粉症・アレルギー性鼻炎の薬剤は、対症療法です。
よほど症状が強い場合以外は、必須のものとはいえません。
ある程度の減量も可能ではないかと思います。抗潰瘍剤、抗リウマチ剤、便秘用剤、
震災によるストレスは、胃潰瘍や、潰瘍性大腸炎、リウマチ性疾患に対して悪化要因として
作用する可能性が高いと言えます。したがって、それらの疾患で使用中の薬剤は、
継続することが望ましい場合が多いでしょう。
ただ、震災のストレスは、普段とは性質が異なると考えられます。
そのため、感じるストレスの程度は、個人によって大いに異なるのではないかと思います。
その程度に応じた対応が必要ではないかと思います。
大震災の被災地では、ストレスのほか、トイレの不備や、食事の変化、集団生活などのために、
便秘の頻度は高まると思われます。
したがって、これらの疾患・症状に用いている薬剤は、優先的に届けられなければならないでしょう。

他の必須の薬剤

インスリンは先述したとおり極めて重要です。
インスリンが中断されると、糖尿病が急速に悪化する人が確実にでます。
絶対に優先的な確保が必要な薬剤です。
そのほか、必須の薬剤としては、抗結核剤など慢性感染症用の抗菌・抗生物質
気管支喘息で使用中の薬剤、癌緩和ケア用のオピオイド剤、心不全で使用中の薬剤、
不整脈剤の中止は危険です。最優先で届けられなければなりません。
 
性感染症用で使用中の抗生物質は、部位や程度によりますが、本格的な感染症には、当然必須です。
また、補液製剤はいかなる状況でも必須です。被災地では特に必要とされる状況が多いと言えます。


表1にまとめをし、表2に緊急用必須薬剤リストを示します。
 
何度も書きますが、どれだけの想いで被災地はここまで立ち直っているか、GSKは知らないでしょう。
そのような地にパキシルを拡散するのだけは絶対に許しません。誰だって地震の事は忘れる事は出来ません。
だからと言って、言葉巧みに自身の利益の為に服薬を迫る医師がいると思うと腸が煮えくり返る思いです。
 

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