藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

下歯槽神経麻痺から考える外傷系浅層部麻痺に対して

暫く県外にいたのですが、鍼灸に対する認知度というのは
相変わらず地域差を大きく感じます。鍼灸が根付いている地域に関しては
自身の症状に対しての対策と今後の発展性を積極的に模索している姿勢を
素晴らしく思うと同時に私自身大きな刺激となります。
しかし、鍼灸治療の認知度の低い地域があるのも事実であり、
我々の力不足である事を日々猛省している次第です。
 
最近は腰痛ばかりに熱くなっていたので、今回は違う内容でもと思うのですが、
各科に於いて、難病奇病でもなく、目の前で原発を特定出来るような患者に対して
痛みの原因と対策を立ち上げられない科ってどないやねんと思いませんか?
 
今度、湿布を処方された際に湿布は何処に張れば良いか、
何故ここに貼るのかを聞いてみたら良いですよ。
湿布を出すという目的は痛みに対しての対策を呈示しているのですから、
納得するまで患者は確認する権利はありますし、
処方した側は説明責任を果たさなければならないはずです。
 
因みに、
・腰椎中部~仙骨上部の帯状の腰の痛みに対し、痛い箇所に貼るのは気休めです。
・側頚部~僧帽筋外端に掛けての張りに対し、
 僧帽筋上部線維が一番痛いからと、痛い箇所に貼るのも気休めです。
 
原発と症状発症箇所が異なる症状に対して、発症箇所ばかり追いかけ続ける行為は
いつまで経っても治らないのは以前にも書いた通り、筋のリフレッシュにはなりますが
根治はないのです。それでも、人間は受傷箇所を元に戻そうという機能が備わっています。
 
その為、受傷後の対策次第で、時間の経過のみでも良くなる事があります。
但し、生活を起因とした症状に関しては、生活を正さなければ治りにくいという条件が含まれて
しまいます。症状の根治には人生をひっくり返す程の生活改善をしなければならない時もありますね。
 
この通り、生活を起因とする症状に対しての治療は、症状発症からの経年や症状具合で
時間が掛かるケースがありますが、逆を言えば、
生活を起因としない症状に関しては、治癒過程を急激に短縮する事が可能となります。
 
それは外傷系ですね。
受傷箇所が浅層であればあるほど、受傷時期が早期であればあるほど
著明な効果を相互に実感し易いものだと思います。
例として下歯槽神経麻痺を取り上げますが、聞き慣れないかもしれないので
少し説明すると、以下の歯科治療時に於いて発症するリスクがあります。
 
・下の親知らずの抜歯
インプラント(人工歯根)を埋めた場合
・下顎の中の埋伏歯(骨の中に埋まっている歯)の抜歯
・親知らずでは無いが下顎の歯を抜歯した場合
・局所麻酔による場合
・下の歯の神経を取る治療をした場合
・下顎の骨の中の腫瘍等を摘出する手術をした場合
・下の顎の周囲の粘膜を切開したり、傷付けた場合
下顎を後方に引っ込める外科手術をした場合
 
このような状況下で発生します。
上記治療時の下歯槽神経麻痺を発症するリスクは3.46%。
完全に離断されている場合は手術適応でしょうけど、そうでない場合は
回復に至るまで数週間から数ヶ月、もしくは完全回復しないケースもあるようです。
鍼灸院はどうしても最後に選択される患者が多い為に色んな話が聞けますが、
下歯槽神経麻痺が治らない原因さえストレスが関与していると言い切る歯科医がいるそうですよ
そりゃ回復過程に於いて精神的要因が関与している場合もあるでしょうけど、人のせいにしちゃいかん。
 
イメージ 2
 
話は戻りますが、
鍼灸治療以外での治療法としては、完全離断時の手術以外は
ステロイドATP、ビタミンB12を投与したりしますが、
下歯槽神経麻痺に限らず、
腕や足の麻痺に関しても同様、気休め程度としか言えない事は前々からご存知の事でしょう。
膝が痛いからとグルコサミンを飲んだりして、ピンポイントで膝に到達するのかいなと同じ理屈ですね。
 
これらの麻痺の類に関しては、言ってしまえば時間の経過に委ねておけば放っておいても
良くなるケースもありますが、急激なQOLの低下に嫌気も差すことでしょう。
鍼灸治療に於いては、1日1ミリ程度の回復が出来る末梢神経に対して、
更なる回復をしてもらうよう加速させてあげる事が目的となります。
 
治療自体は難しくも何ともないので細かい事は割愛しますが、
私はこんな鍼を使っています。
イメージ 1
 
・受傷機序が明確である、謂わば外傷系である。
・患者本人が症状発現箇所をピンポイントで指差してくれる。
・浅層の為に皮膚反応から効果の現われ方が著明であり、予後判定がし易い。
 
下歯槽神経麻痺に限らずですが、上記3点の条件が揃っている場合
鍼治療以上に効果的な治療法は無いのではないでしょうか。
 
栄養を送っている箇所の中枢箇所は何処か、
循環確保に際しての開放箇所は何処か、
浅層深層問わず同様な理論で行っていますが、
安全で非常に良い結果を出し続けられるのが鍼灸の強みです。
 
正直言えば、
新患がいきなり下歯槽神経麻痺で来院する事は少ないでしょうけど、
理屈を知ってれば応用は幅広いですよね
 
 青森から鍼灸治療の意識改革を~